ヴァンドレッド


VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 12 -Collapse- <前編>






Action13 −自問−






 謎の少女ソラの助力は正直な話ありがたかった。

どのような手段でシステムに介入しているのか定かではないが、幻想の少女より送られる情報は完璧だった。

マグノ海賊団側の現状況、今後の動きが正確に読み取れる。

ソラからの情報にドゥエロの高度な知性と冷静な判断力が加わって、 敵側の戦略を正確に掴んでいた。

監房からの脱獄を察知した敵は包囲網を広げつつ、三つの場所へ急行している。


カイ・ピュアウインドが船から逃走した射出場。
バート・ガルサスの職場、メインブリッジ。
ドゥエロ・マクファイルの職場、医務室。


極めて凡庸な判断だが、確実性は高い。

カイ達が脱出した射出口は唯一の抜け道、他は以前から厳重に監視体制が敷かれている。

逃走ルートを封鎖すれば、船外への脱出は不可能となる。

警備員を誤魔化した例の偽造死体は奇策の類、二度は通じない。


メインブリッジへ急行するのも至極当然。


ブリッジにはお頭や副長――この船の最高幹部が控える場所。

完全な誤解だが、カイは数人の人質を連れて脱出した事になっている。

簡単に身柄を確保される二人ではないが、身の安全を最優先するのは当然だった。

加えて、メインブリッジには操舵席がある。

ニル・ヴァーナの全コントロールを許された、バート・ガルサス専用の空間――

構造は今だに解明出来ておらず、船は今も停止状態。

万が一にでも船の自由を奪われれば、マグノ海賊団側は圧倒的に不利となる。


医務室も同様だ。


男達の暴挙で医療機器を破壊されれば、彼女達は今後の旅で怪我一つ出来なくなる。

刈り取りとの激戦がまだ続く最中、優秀な医者と医療機器を失えば彼女達は生きていけない。


人質の安全と潜伏先の確保、逃走ルートの封鎖――


立場の不利を今更ながらに実感しながら、ドゥエロ達は医務室を飛び出した。

敵が来ると分かっていて、滞在し続ける意味はない。

バーネットの今の容態が認識出来ただけでも、脱獄を犯したリスクに見合う価値はあった。


「そ、それでこれからどうしよう…・・・僕達、追われてるんだよね?」

「今更何言ってるのよ。ヘレン、絶対怒ってるわよ。
次にバートの顔を見たら躊躇わず射殺するかも」

「こ、怖い事言わないでくれよ!?
へ、平和にいこう、平和に…・・・ね!」

「冗談なのにそんなに怯えるなんて、本当に弱虫だケロー」


 泣きそうな顔をして走るバートを、パイウェイはあどけなく笑って馬鹿にする。

緊張感がないのは困りものだが、悲壮な顔をされても対処に困る。

気の弱い二人がそれぞれ会話でお互いを慰めあっている事に、ドゥエロは声に出さず口元を緩める。

そこへ、現実的な考えの持ち主が注意を呼びかける。


「少しは自分のやった事を自覚しろ、二人とも。
反逆罪が問われていた最中に脱獄したんだぞ。
自分達に非があると認めたようなものだ。

先走った人間がお前達を抹殺に乗り出すかもしれない」

「「えー!?」」


 二人の悲鳴に、並走するメイアは心から嘆息した。


――神経疲労で休んでいたところを、無理やり連れ出されたのがつい先程。


説得どころか、皆に引っ張られるかのように医務室より逃走を余儀なくさせられている。

万が一警備員に発見されれば、仲間の一味として見られるのは間違いない。

何しろこの半年間、嫌になるほどカイの行動に振り回された身なのだ。

前半は考え方の違いから対立の連続だったが、後半は賛同出来る部分もあって助力もした。


カイの理想に共鳴したのではない、自分なりに利になると考えた上での判断だ。


事実皆に批判される立場になれど、これまで自分の取った行動に後悔はしていない。

不思議な感覚である――

常に自己分析を繰り返し、かつての行動に反省と最善を模索した自分が、この半年間の自分に満足出来ている。

馴れ合いを嫌う自分が今、渋々だがドゥエロ達と行動しているのがその立派な証拠だ。

けれど……その矜持も今、失われつつある。


――ディータにリングガンを向けた自分。


先導するあの少女が止めに入らねば、自分の部下を撃っていたかもしれない。

これほど、情緒不安な自分は初めてだった。

自分自身を断罪した事は数知れずあるが、自分をこれほど見失った事はない。

今度ばかりは、本当に参っていた。


不安定な自分。


カイを含めた男達との生活で数多くの経験を積み重ね――経験から何も生み出さなかった自分。

結果カイが居なくなり――守るべき存在が出来ただけで震えてしまった。

今身の回りに誰かがいる事に、これほどまでに安心を覚えている。

強引に連れ出された事に理不尽を感じつつも、どこか安堵を覚える自分。


それは――少年との日々を思い出されるようで……


メイアは心ならずも苦笑した。


「あーうー、おねーちゃん追いかけっこ? ディータが鬼?」

「……そうだな、追われている事には変わりない。
鬼は他にいる、一緒に逃げようディータ」

「うん、ディータ負けないよ!」


 朗らかな笑みを浮かべて、何の疑いもなくメイアの手を握る。


……こんな少女に一度でも恐怖を覚えた自分の弱さを、改めて唾棄する。


見出さなければならない、自分自身の真実を。今度こそ。

完全に破滅した男女問題に関わる事で、自分の立ち位置も見えてくるだろう。


カイと自分、二人の今の関係も――


ディータを不器用にあやすメイアを微笑ましく思いつつ、パルフェがドゥエロに提案する。


「ドクター、今後の行き先は決めてる?」

「いや、正直途方に暮れている。
艦外を封鎖された以上、何処か長期間潜伏出来る場所があれば望ましいのだが…・・・難しいな」


 話し合いを行うにしても、今彼女達に投降するのは危険だ。

メイアの言う通り、問答無用で殺される危険性がある。

逃げ続けても立場が悪くなるのは承知の上で、少し落ち着いて今後を展望したかった。

その上でただ潜伏するだけでは不利になるだけだった。

一日二日ならまだしも、今回の戦いは長期戦が予想される。

こちらには子供や記憶退行の患者がいるのだ。

食糧や水、最低限の生活空間は確保しなければいけない。

ドゥエロの悩みに、パルフェは快活に答える。


「だったら、ウチへ来ない?」

「君の…・・・? 
しかし、それでは君の職場にまで迷惑を――」

「平気、平気。
この程度の騒ぎにビクビクする子いないし、仲間を売ったりもしないよ。
それにあそこペークシス君がいるから、警備も無茶は出来ないと思うよ」


 パルフェが統括する機関室への潜伏――


難色を示すドゥエロに、パルフェは何でもないように意見を出した。

機関室の人間は個人主義が多い。

研究第一で人間関係を重視しておらず、それゆえに男と女を客観的に見つめられる。

彼女達のようなタイプは理解者が少なく、大らかに理解を示すパルフェは皆から尊敬されていた。

パルフェが認めた仲間を拒絶する者はいない。


『私も賛成です』


 大挙して向かっている警備員から逃れるべく、先導していたソラが追従する。

彼女は何でもない事のように――


――重大な事実を口にした。


『マイマスター、カイ・ピュアウインドとの連絡が可能となるかもしれません』


 己が戦いを行うべく、外海へ飛び出したもう一人の仲間。

生死不明の男の名を告げられて、ドゥエロ達は驚愕を露わにした。












































<to be continued>







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