ヴァンドレッド


VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 11 -DEAD END-






Action31 −正義−






   決して譲れない線だった。
 
  誰かを守る為に、誰かを犠牲にする。
 
  マグノ海賊団は自分達を守る為に、大勢の他人を切り捨てた。
 
  ――俺は絶対に、認めない。
 
  それが、開戦の合図となった。
 
  カイは武術の達人でもなければ、パイロットの熟練者でもない。
 
  空気や雰囲気、敵意や殺意は読めない。
 
 
  襲い掛かるレーザーの雨――
 
 
  降り注ぐ前に回避出来たのは、経験則でしかなかった。
 
  六ヶ月間苦楽を共に、生死の境を駆け抜けた戦友達――
 
  裏切者の糾弾を、仲間への非難を軽く流せる度量を持ってはいない。
 
  ブースターを噴射。
 
  操縦桿を傾けて、半円を描いて下方寄りに前進。
 
  人型兵器が描いた軌跡の残像に、光のシャワーが舞い降りる。
 
  回避出来た安堵を無視して振り返らず、カイは機体を直進させる。
 
  九十九式蛮型は陸上戦で最大限の力を発揮する。
 
  標準装備は十徳ナイフ――近距離戦用の武器。
 
  接近して斬りつけなければ、ダメージは与えられない。
 
  機動性の悪さに歯噛みしながらも、先手を打ったタイミングを生かす。
 
  レーザーの一斉掃射を回避されながらも、敵に動揺は無い。
 
  カイがマグノ海賊団を知っているように、マグノ海賊団もカイを知っている。
 
  近距離戦を挑んで来るなど、最初から承知済み。
 
  ドレッドが誇る速度を生かして、チームは行動を開始した。
 
  カイは唾を飲む。
 
  恐るべきスピードで動き、巧みな操縦テクニックで全機が乱れの無い動きを見せている。
 
  決して離れず、近寄らず――チーム単位での配置。
 
  フォーメーション。
 
  ドレッド単体は攻撃・守備力共に蛮型に劣るが、機能的な意味でしかない。
 
  加速力は抜群に蛮型が劣り、何よりドレッドはチーム単位で行動する事で真価を発揮する。
 
  カイ機・ドレッドチームの距離差は縮まるが、接近出来る範囲ではない。
 
  蛮型一機の針路を先回りして、攻撃を開始した。
 
  接近警報――モニター情報に表示する攻撃数は三十七。
 
  一秒に満たない単位で撃たれた攻撃の多さに、されどカイの操縦に躊躇は無い。
 
  レーザーは回避、ミサイルは切り飛ばして離脱。
 
  見極められない攻撃は運に任せて、操縦桿を必死で動かす。
 
  ブレードの先端で苛烈する爆発に身震いしながらも、機体の操縦を固定する。
 
  咲き乱れる殺意の火花。
 
  休む間を与えない攻撃の渦に、防御と回避を繰り返す。
 
 
  (――本気で殺す気だな)
 
 
   ブレードを振る手を止めたら、機体は一瞬で穴だらけになるだろう。
 
  容赦の無い攻撃に、敵味方に別れた現実を思い知る。
 
  完治していない肩が疼くが、無理を重ねなければ死ぬ。
 
  開きっぱなしにしている通信回線に、声が届く。
 
 
  「…馬鹿ね、私達相手に一人で戦おうなんて」
 
 
   ――バーネット。
 
  ホーミングミサイルをブレードを回転させて防衛し、勢いに身を任せて後方へ。
 
 
  「俺は最初から一人だ」
 
  「――っ、よくもぬけぬけと…
 
  ジュラを、巻き込んだくせに!」
 
 
   呪詛の声。
 
  一瞬苦痛の表情を浮かべるが、次の瞬間カイは鼻で笑った。
 
 
  「いつまで、古臭い夢を見ている」
 
  「…どういう意味?」
 
  「人は、変わる。あいつだって、例外じゃない。
  あいつは自分で、自分の生き方を決めたんだ。
 
  お前がそれを否定するのか」
 
 
   "変わってしまったその現実を――皆が祝福するとは限らない"
 
 
  バーネットが否定した変化。
 
  自分と仲間を守る為に、ジュラは身を挺して敵を倒した。
 
  一歩間違えれば死んでいたかもしれない選択――
 
  旅する前は、選ばなかった決断。
 
  生死を隔てる佳境へジュラを押したのは、カイだった。
 
  親友を案ずるバーネットの気持ちに、カイは何も言えなかった。
 
  あの時俯いた顔を、上げる。
 
 
  「・・・あいつが変わった原因は、確かに俺かもしれない。
 
  でも、俺に変化を肯定する権利はないように――
 
  ――お前に変化を否定する権利はないっ!」
 
 
   我が身を振り返り、悩み苦しんで、ジュラは別の道を歩み始めた。
 
  彼女が選び、彼女が歩いている。
 
  ジュラが選んだ道なのだ。
 
  全通信回線がオープン。
 
  主張は白熱し、戦闘は過熱する。
 
  ブレードをランスに切り替えて、突撃――
 
  正面から駆け抜けるドレッド目掛けて、突っ走る。
 
  激化する灼熱の弾群を前に真一文字にランスを構えて、高速の円運動を駆使する。
 
  次々と破裂するミサイルを回転で吹き飛ばして、真横に移動するドレッドに肉薄。
 
  接近する二つの機体――
 
  カイは槍を真っ直ぐに、ドレッドはレーザーを近距離射撃。
 
  鋭利な穂先が、翼を貫通。
 
  精密な射撃が、脇腹に被弾。
 
  動きの止まるドレッドと蛮型――
 
 
  「お・・・おぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 
 
   突き刺したドレッドを抱えて、槍ごと一回転させて投げる。
 
  力強い蛮型に振り回されたドレッドは錐揉みしながら、吹き飛んでいく。
 
  一糸の乱れもないフォーメーションの動きが逆に仇となり、次々と別のドレッドにぶつかって停止する。
 
  人型兵器の利点である強大なパワーが今、発揮した。
 
  命に別状はないだろうが、あの機体は行動不能だろう。
 
  衝突した他の機体も、ダメージは大きい。
 
  フォーメーションを乱され、他の機体の動きにも狂いが生じている。
 
  今が、チャンス――
 
 
  「・・・っ」
 
 
   鈍痛が消えない脇腹を押さえて、カイは機体を走らせた。
 
  手の平の感触に、ヌルリとした液体が付着する。
 
  ――休む暇はない。
 
  先ほどまで居た場所に、レーザー誘導爆弾が着弾する。
 
  プログラミングされた死の弾丸は自律した行動を取り、目標へ突き進む。
 
  蛮型の足の遅さでは逃げられない。
 
  常に先読みして、行動に移さなければすぐに被弾するのだ。
 
  無傷では勝てない。
 
  特に今は接近した為に、敵の領空圏内にいるのと同じ。
 
  フォーメーションの真っ只中に、自ら突入したのだ。
 
  間合いに飛び込むのはチャンスであると同時に、ピンチでもある。
 
  倒し続けない限り、攻撃は決して減らない。
 
  誘導弾をリーチを伸ばした槍を突き刺して無力化し、敵の針路へ飛び込んでいく。
 
 
  「"あたし達は、今までちゃんとやってこれた"だと・・・ふざけやがって。
 
  お前らの変わらない現実を守る為に――」
 
 
   最加速中のドレッドの軌跡に入るのは、高速ロケット弾の前に生身で立つのと変わらない。
 
  一歩間違えれば激突し、相手も自分も大ダメージを負う。
 
  ピリピリと来る緊迫感を、そのまま声に乗せて放つ。
 
 
  「――どれだけの人間を犠牲にしてきた!」
 
 
   ブレ−ドに変化。
 
  磨いたテクニックで巧みに敵へ近づき、右翼を切る。
 
  千切れた翼が宇宙空間へ飛び散って、ドレッドは迷走して墜落していく。
 
  攻撃で姿勢が傾いた蛮型を狙ったように、接近する機影。
 
  ――バーネット機。
 
 
  「海賊に何言ってるの、あんたは!」
 
  「海賊だったら、誰でも踏み潰していいって言うのか!」
 
 
   12本の砲身を持つ、回転式バレッド砲。
 
  数えるのも馬鹿らしい弾数を、秒間単位で大量発射する。
 
  バーネット機に搭載された、旧世代の兵器――
 
 
  「故郷に捨てられた私達は、奪うしかなかった!」
 
  「それが正しいとは限らない!」
 
 
   体勢を立て直すには、一秒以上――逃げられない。
 
  接近を許した時点で、命運が決まっていた。
 
 
  「――なら、あんたは・・・私達に死ねばよかったって言うの!」
 
 
   最後通牒。
 
  ――逃れられない、問題点。
 
  故郷を追い出され、帰る家も失い、明日も危うかったあの頃。
 
  マグノが選んだ、海賊という名の人生。
 
  その決断が多くの難民を救ったのは、紛れもない事実。
 
 
  ――奪う以外に、どう生きろと?
 
 
  理想を抱いて生きるには、厳しすぎる現実だった。
 
  手を汚さなければ、死ぬ。
 
  肉薄する死。
 
  回避不可能、絶体絶命。
 
  絶体絶命の危機。
 
  同じく死を間近にして、カイは――
 
 
  「――ああ、そうだ。
 
 
  奪わなければ生きていけないなら――死んじまえ!!」
 
  「――! あんたはぁぁぁぁ!!!!」
 
 
   掃射。
 
  派手に装甲を撒き散らして――蛮型はスクラップと化していく。
 

































<to be continued>







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