VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 10 -Christmas that becomes it faintly-






Action14 −適任−










 其処は熱気に満ちていた。

照明が眩しく照らし出す中、情報機器が活発に活動。

収集されたデータ類は万を超え、高密処理化されている。
デスクトップに並ぶ盗聴記録・監視映像・人物詳細。

その処理能力は極めて優秀だった。


「――以上が、わたしが情報分析したカイ・ピュアウインドの諜報内容です。
これを見て下さい」


 表示されるデジタルホログラフを見ながら、ピッピッと入力キーを手早く叩いている。

映し出されているのは二枚の映像。

場所は格納庫。

人物はカイ・ピュアウインドともう一人。

マグノ海賊団エースクラスのパイロットの腕と美貌を持つパイロット、メイア・ギズボーン。

黄金色の人型兵器を背景に、男女が向かい合って立っている。

正面から見て左の映像。

不遜な顔をした男が、嫌悪を浮き立たせた女と睨みあっている。

正面から見て右の映像。

照れくさそうに笑う男を、女は小さく微笑んで見つめている。

とても同じ人物とは思えない両者の変化。

収集された人達にどよめきが流れる中で、観察者は冷静に唱える。


「信じられないかもしれませんが、事実です。
クル−内で交流の少ないメイアさんが、このように陥落されています。
たった数ヶ月の間に、です」


 正確に言えば、観察者の諜報活動は二ヶ月である。

虎視眈々と、執拗に――それでいて、水面下で探索。

驚きの事実はこの程度では止まらない。


「この男はあくまで捕虜です。
わたし達が敵視しているタラーク生まれの、愚劣極まりない民族の一員です。
然るに、近頃のこの男の挙動は目に余るものがあるのではないでしょうか」


 ひっきりなしに上がる賛同と歓声。

観察者の指摘は集まった皆の共同認識。

最高幹部のブザムやガスコーニュでさえ、この男の行動にはある程度目を瞑っている面がある。

はっきり言えば、甘すぎる。

降り積もる鬱憤を晴らすかのように、集客された人達は声を張り上げる。


「皆さん御存知の通り、今年のクリスマスはこの男が指揮を取ります。
クリスマス――毎年わたし達が楽しみにしている、ロマンティックな夜。
彩りに満ちた華やかなパーティ。
マグノ海賊団のメインイベントを汚そうとしているこの男――カイ・ピュアウインドを今こそ糾弾すべきです」


 冷静な声色に広がる怨嗟の響き。

冷徹な怒りを押し殺した演説は、聞く者の心を鷲掴みにする。

静まり返った空間の前で、観察者は立ち上がった。

その顔を真っ直ぐに向けて――



「よって船から追い出しましょう、死刑にしましょう。
ええ、もう――!
わたしを、トナカイ役だと、笑って言った、あの失礼な――失礼極まりないあの男を、絶対の絶対に許さな――むーむー!!」

「お、落ち着いてなさいよ、セル」



 涙すら浮かべている可愛らしい後輩の口を、アマローネは溜息まじりにそっと手で塞いだ。















 カイ・ピュアウインド・否定派メンバー。

概ねに言ってしまえば、彼女達の共通点がそれである。

一丸となって集まった人達がそう呼ばれるようになった。

発足は何時頃からか、はっきりはしない。

もしも詳しい生誕日時を調べるなら――カイがこの船に乗った日からだと言える。

常日頃から無軌道なカイの行動を不満に思っていた女性陣が、クリスマス主催の事実を契機に爆発した。

こうして夜、通常勤務を終えてのカフェテリア占拠で集まっていた。

その数は大よそ40から50程度。

船内にいる150名のクルー総数から見れば、半分以下といったところであろう。

セルティック・ミドリはその一員。

噂を聞きつけて、今まで個人で調べていた情報を手土産に入会した。

アマローネは無論反対派――ではない。

言ってしまえばセルティックが心配で、付き添っているようなものだった。


「――セルが自分からあんなに話すのを見るのは初めてね」

「頭にくるもん・・・あいつ」


 カイの前では冷静沈着、クールな女の子を演じている彼女。

心を分かち合う友人の前では年相応の甘えの強さが出る。


「だからって、何もあんなにカイのこと・・・・・・」

「――アマロやベルはいいよね、サンタクロ−スだから。
どうして、わたしだけトナカイなの・・・・・・一応持ってるけどさ・・・・・・」

「も、持ってはいるのね・・・・・・」


 セルティックが反対派に荷担する理由。

まさかと言うか、やはりと言うべきか――カイが原因だった。

アンパトス離陸の日。

ブリッジへ訪れたカイが三人に協力を申し出たのは、クリスマスパーティの受付だった。

カイはこう言っていた――



『クリスマスの当日、急病や事故でこれない人がいるかもしれないだろ?
さすがにそんな奴まで無理に引っ張り出せないからな。
せめて仲間外れにはならないように、一声かけようと思うんだ。
その人数を正確に把握したいんで、お前らにパーティの受付を頼みたい。
そういう人数調整とかって、お前ら得意そうだしさ』


 参加出来ないなら出来ないで、主催者として配慮はしたい。

ブリッジ三人娘は目から鱗だった。

今まで行われたイベントの数々で、そこまできちんと配慮はされていない。

参加出来ないなら仕方ない――それで終わっていた。

悪しき様に言えば、放置であった。 

それなのに、男であるカイが女に対して気遣いを見せている。

三人は表面上どうあれ、協力する気になっていた。

それが――


『で、衣装だ。
話に聞いたところによると、クリスマスにはサンタクロースとトナカイってのが必要なんだろ?
二人にはサンタをやってもらって・・・・・・

トナカイは何か動物らしいだから、クマちゃんがぴったりだな』


 ――悪意のない、されど余計な一言で台無しになった。


「わたしを動物だって言うんだよ!」


 セルティックの言いたい事とは同じ女として理解できる。

その場は何とかカイに気付かれないように穏便にすませたが、セルティックはクマの中で殺意を放っていた。

馬鹿にされたと思っても仕方ないかもしれない。

ただそれでも――と、アマローネは思う。 


「で、でも・・・・・・普段の格好を見れば・・・・・・」


 何しろ、最近はカイの前でだけクマを着込んでいる。

バートや診療に来るドゥエロの前では、顔の部分だけは外しているのだ。

元々業務に差し支えもあり、注意はされていたから。

だがカイが来ると、徹底して素顔をクマで隠そうとする。

愛らしいとはいえ、クマはクマだ。

カイがトナカイと混同するのを、あまり否定は出来ない。


「わたし、女の子なのに・・・・・・

・・・・・・どうせ、ぶさいくなんだ・・・・・・
・・・・・・・・・わたしなんて可愛くなんかないんだ・・・・・・カイのばかばかばか」


 笑顔でトナカイを薦められた事を思い出したのか、また涙ぐんでいる。

怒っているというより、傷付いている様子だった。

必死で皆の前で男は敵だからと主張していたが、むしろカイ一人に個人的な想いをぶつけているようにすら見える。

ただ、どちらにしろカイを拒絶しているのは違いない。

困った問題になったと、アマローネは肩を落とす。

アマローネ自身はカイに否定的な感情は持っていない。

彼女とてブリッジークル最年長であり、他二人の仕事の面倒も見ている。

戦況だけを観察しても、カイが今のマグノ海賊団にどれほど必要な人材なのかはっきりしている。

男としてではなく、人間としてみても温厚で人柄も良い。

口は悪くて感情的な性格だが、いつも周りを大切に思っている。

今度敵対することはないだろうと、今では受け入れてもいた。

だからこそ、今の問題は頭が痛い。


傍らを見る――


情報集は確かにセルティックが行った。

だが、彼女一人がこうも正確で優れたデータは全て出せない。

権限が必要なセキュリティもある。

高度なプログラミングでも操作出来るセルティックだが、違法行為は重罪だ。

船内のネットワークに流通出来る者だって必要である。


そう――艦内全てのネットワークに精通している、人間が。
そう――ルールに従う必要のない、案内者が。


それに、二枚の映像にしてもそうだ。

メイアとカイが映っている瞬間なんて、そう簡単に見つけられない。

格納庫内の監視カメラは毎日常時稼動しており、何日の何時何分に二人が居たかどうかを探すのは至難の業だ。

必要とされる。

そう――常にカイの行動を追っている、人間が。



「あいつってさ、いっつも一人で目立とうとするんだよね!
僕一人のけものにしてさ!

そんな可哀想な僕に是非力になって欲しいって言われてさ、あはははは」

「そうだピョロ、そうだピョロ! 
いつも家来、家来と人――ロボット使いの荒い奴なんだピョロ!
それに!
クリスマスなんて面白そうなイベントなのに、ピョロには一声もかけないんだピョロ!
仲間外れなんだぴょろー!
その点ここにいる女達は優しいピョロよ、一緒にって言ってくれて、うう、泣けるピョロ・・・・・・」

「うんうん、分かるよロボットさん!
宇宙人さん、ディータも邪魔だって話もしてくれないの。
御手伝いしたいのに後でいいとか言って、冷たく追い出されて・・・・・・

ディータ、絶対に宇宙人さんに認められるように頑張ります!」



「・・・・・・」 


 横で和気藹々と盛り上がっている男の子とロボットと女の子。

彼女達三人は反対派よりスカウトされた。

最初こそ反対していたのだが・・・・・・カイに対して不服に思っていた点を突かれ、丸め込まれてしまい、この有様である。

アマローネは心の底から呆れ果てて――苦笑いする。

賛成派と反対派。

話を聞いた時は、怨恨の尾を引く憎しみ合いになると危惧していた。

でも、この反対派の面々を見る限り。


今年のクリスマスは――思いがけなく、楽しくなりそうだった。


「――でもまさか貴方だったなんて意外だったわ・・・・・反対派リーダーさん」


 アマローネはそっと話し掛ける。

反対派のトップ。

求められるのは人を導く指導能力。

そして最低にして、絶対的条件として――


カイに一番被害を被った・・・・・・・人物でなければならない。


反対派メンバーにて、満場一致で選ばれた人材。


「――色々あって、な」


 蒼い髪に髪飾りが似合う女性――メイア・ギズボーンは疲れた眼差しを虚空に向けた。






















































<to be continues>







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