VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 9 -A beautiful female pirate-






Action41 −決意−










 戦略のポイントは構造だと、カイは言う。


「大気圏という灼熱の部屋に包まれた蛮型。
状況を似たような形で再現すればそれでよかった」


 カイの目的はファニータに決意を見せる事。

死に直面する状況下で互いの真意を打ち明けて、心を見せ合う。

理解しあう必要は無い。

互いに生まれ育った環境が違えば、立場だって違う。

人生の在り方を言葉にしたところで、相手に理解してもらえるかどうかは別問題。

マグノ海賊団に忌み嫌われているカイは体験を元に語る。


「熱弁している間に、外部モニターを切る。
大気圏突入間際にUターンすれば、追尾するガスコーニュのデリ機に合流できる。
重力が調節出来る空間で、加速は同一。
コックピットにかかる負担の変化なんて、蛮型に乗った事の無い人間には分からない」


 急加速で急上昇し、急加速で急降下する。

そうすれば後尾するガスコーニュが墜落するカイ機と合流できる。

モニターがなくとも、急上昇・急降下の変化を見破る事は出来るかもしれない。

その為に動揺を誘った。

あえて何も説明せず、勢いのまま出撃したように見せかけた。


「振動を緩和する装甲があったら、熱や振動の変化に気付かれるからな。
別に戦う訳じゃないし、大気圏に突撃する訳でもねえ。
取り外しても問題は無い――とは言わんが、アイの整備で何とかなった」


 デリ機とドッキング後、シールドを展開。

すっぽりと蛮型を覆った後に、ホフヌングを起動する。

ホフヌングはエネルギーを自由自在に変化させられる兵器。

質量から性質、熱量や構成すら変質出来る。

ホフヌングを起動させ、電子レベルから変化させて、シールド内を大気圏・・・にした。


「デリ機のシールドは優秀だからな。
熱を逃がさないようにシールドを張り、ホフヌングを調節すれば死なない程度に出来る。
後は、俺の言いたかった事を全部吐き出すだけだ」



 そして――カイはマグノに杖で一打された。



脳髄に響く痛みにのたうち回るカイを、複雑な顔でマグノは見つめる。


「ガスコーニュに相談した分、少しは成長はしたのかもしれないけどね……
それでも素直には頷けないよ」

「――申し訳ありません」

「メイアを責めないでやって下さい。許可したのはアタシなんですから」


 デリ機と蛮型を着陸させ、カイとファニータの怪我の手当てを行う。

カイが戦略前から気を使った分、ファニータの火傷はさほどでもなかった。

カイが心からファニータを思い、この星の命運を変える為に頑張ったのは良く分かった。

が、怪我をさせたのには変わりは無い。

表情を曇らせて頭を下げるメイアを、ガスコーニュが弁護する。

マグノは嘆息する。


「もう少し穏便なやり方を思いつけないのかね――と、今回ばかりはアタシも言えないね。
アタシの力不足もあった」

「よせよ、気持ち悪い」


 タンコブを涙目で擦って、カイは起き上がる。


「あんたの言葉があったから、俺も努力してみる気になったんだ。
言葉だけでの説得は無理そうだったし、かといってほったらかしにすれば集団自殺しそうだからな。
何とかしたくて青髪やガスコーニュ、アイに頼んだんだ。
責任を問うなら、俺だろ」


 元より、誰かのせいにするつもりは無かった。

負傷を覚悟で特攻するしかなかったと、自らを正当化させるつもりも無い。

開き直るつもりだって無い。


「俺はこの星もこの星に住む人達も好きなんだ。絶対に死なせたくは無かった。
その為だったら、何度だって命を賭ける覚悟だ」


 歪んだ信頼でも、彼女達が向けた好意は本物だった。

相手が信じてくれるのなら、自分は自分なりに信頼を向ける。

命の息吹――それがカイなりに彼女達に与えられるたった一つの捧げモノだった。

マグノが厳しい表情を浮かべたまま、


「……言い出したら聞かない坊やだからね。
お前さんの決意はよく分かった。今回の一件もただの無鉄砲じゃない事もね。
ただ、やっぱり一言相談はして欲しかったね。緊急事態とはいっても」

「――すまねえ……ブザムも迷惑かけた」


 ブザムは珍しく、静かに微笑む。


「反省をしているならそれでいい。
――今回起こした行動には、後悔はないのだろう?」

「それは勿論だ」


 頷く。

相手の気持ちを何も考えず、ただ突っ走る。

反省もせず、開き直る。

悪いと分かっていて、尚これでいいのだと暴走する。

それではただの子供だ。

自分を信じ、相手を信じ、周囲を思いやり、最善を尽くす。

その上で改善点を考えて、反省するべきところは素直に反省する。

カイは未熟だ。

精神的にまだ子供で、危ういところもある。

――でも、磨けばきっと大人らしい大人になる。

今、ここで甘やかす事はカイの為にはならない。

ブザムは目をふせる。


「ガスコーニュとメイア、アイには追って処分を伝える」

「おいおいおい、俺の責任だってさっきから――!」

「覚えておくんだ、カイ」


 納得のいかないカイに、ブザムは伝える。


「誰かと生きていくとはそう言うことだ。一人の行動で、他の誰かにまで迷惑をかけてしまう。
だからこそ、自覚しなければいけない。
己の行為が何をもたらすのか、誰を巻き込んでしまうのか」

「……」


 自分はマグノ海賊団ではない――では済まされない。

そのマグノ海賊団の仲間を巻き込んだのが自分なのだ。


「気にする事は無いよ、カイ」

「ガスコーニュ……」

「お前は立派に責務を果たしたと、私は思っている」


   責任を問われる立場と、責任を取る義務。
 
  二人は仲間であると同時に、多くの部下達を背負うリーダーなのだ。
 
  笑って済ませられない。 それでも何でもないと言うように、二人は柔らかい表情を向けてくれる。 「青髪……
……ありがとう……」


 目頭が熱くなるのを感じる。

彼女達に謝る事は決して許されない。

カイは万感の思いを込めて、礼を言った。

今日は本当に、色々なことを学べた。

自分と他人。
 
  一人一人の気持ちと心。
 
  理解し合えるのは無理でも、判ろうとする努力は無駄ではない。
 
  出逢った人たちの全てを心に刻んで、この旅を続けていこう。
 
  決意を新たにするカイを見て、マグノやブザムは見つめ合って互いに頷き合った。
 
 
  「カイ。御婦人の手当ては終わった」
 
 
   どう見ても場違いな着物が何故か似合う、女傑の卵がやって来る。
 
 
  「どうだ、アイ。あの人の傷の具合は?」
 
  「外傷は全く問題ない。一週間もあれば完治する。
  気を失っておるが、すぐに意識を取り戻すじゃろう」
 
  「そっか、よかった……
  お前に医療の心得があるとは知らなかったぞ」
 
  「女の嗜みじゃ」
 
 
   無邪気さと艶やかさの混じった笑顔を浮かべて、アイは堂々と言った。
 
  着陸後、カイとファニータの面倒を見たのが彼女だった。
 
  なかなか達者な手付きで手当てを行い、カイの目を丸くする。
 
  当人に尋ねると専門でなく、ドゥエロの医療の腕にはまるで及ばないとの事だった。
 
  新たに巻かれた包帯を目に、カイは安堵の息を吐く。
 
  精一杯の事はやった。
 
  上陸してからというもの連続して起きる事件に目が回りそうだったが、ようやく終わりつつある。
 
 
  「――後はあいつ等だな。
  ガスコーニュ達に聞いたけど、刈り取りが攻めて来てるんだってな?」
 
  「こちらから連絡が取れない」
 
 
   交渉中でのバートとの通信後、まだ一度も連絡が取れていなかった。
 
  妨害されているのか、通信も取れないほど追い詰められているのか。
 
  もしくは―― 
 
 
  「やられちゃいないだろ」
 
 
   最悪の可能性を、カイは一笑する。
 
 
  「あのバートがやるって言ってるんだ。
  どういう心境の変化があったのかは知らないけど、張り切ってると思うぜ。
  他の奴等も手を貸してるだろうし」
 
 
   一致団結した彼女達の強さをカイは知っている。
 
  簡単に敗北する連中ではない。
 
 
  「こちらは小型船一隻にデリ機、それにヴァンガードか。
  合流は困難だな……」
 
 
   戦力には到底至らない。
 
  下手に駆けつけても、敵に集中的に狙われる危険性が高い。
 
  ブザムの危惧をガスコーニュが肯定する。
 
 
  「バート達の足を引っ張るだけだね。
  アタシらはバートに、カイを連れて来いって言われてたんだけど……」
 
 
   チラリと、カイを見つめる。
 
  カイは居心地悪そうに、アイに視線を向けた。
 
 
  「うー、やっぱ戦いは……無理だよな?」
 
  「お主が無茶をやらかすから、機体もお主の身体も悲鳴を上げておる。
  死にに行くなら好きにせい」
 
 
   十日前のあの戦い。
 
  蛮型が炭化寸前で、装甲から駆動接続箇所にいたるまで焼け焦げていた。
 
  エンジニアなら誰もがさじを投げる廃棄処分品を、たった十日で出撃可能にしたのがアイである。
 
  しかし、その努力の成果をカイは別の形で発揮させてしまった。
 
  ホフヌングで大気を創造、仮想現実化してしまう。
 
  振動と急激な与圧によって、SP蛮型と呼ばれるハイクオリティな機体も今少しでも動かせばバラバラになりかねない。
 
  ユリ型の牽引ビームに触れただけで、ガラスのように粉々に砕ける。
 
 
  「大丈夫。まだ赤髪と金髪がいる」
 
 
   一同に湧き上がる暗雲を、カイは一言で吹き飛ばした。
 
  安心すらさせるカイの自信ありげな言葉に、メイアは疑問を口にする。
 
 
  「ディータはともかく、ジュラは不安定だ。
  戦線復帰できる状態にあるかどうかは、正直心許ない」
 
  「あいつはそんな弱い奴じゃねえよ。
  俺の可愛い家来共も仲間がへこんだ程度で落ち込むタマなもんか」
 
 
   ディータ・ピョロ・ソラ、残してきた数少ない仲間達。
 
  カイが信じて任せて来た人達。
 
  珍妙で常識はずれな面々だが、仲間を見捨てるような奴等ではない。
 
  そして、それはジュラも同じ。
 
  決して――仲間の危機から目を背けられる女性ではない。
 
 
  「手助けできない俺達に出来る事は、ただあいつらの勝利を信じる。
  応援する、勝利を一心不乱に願う――全部前向きなことだ。
  馬鹿面並べて待ってたら、勝利の女神も嫌がって逃げちまうよ」
 
 
   刈り取りの戦力は侮れない。
 
  前回は新しいヴァンドレッドで切り抜けられたが、それもカイ機が無ければ合体できない。
 
  マグノ・ブザム・ガスコーニュ・メイア・カイの主力が抜けた戦陣。
 
  苦戦を免れない。
 
  だからこそ――残された者達の真価が問われる。
 
 
  「俺は俺でやれる事をやるさ。此処で出来る事をな。
  さて・・・・・・」
 
 
   表情を改めて、カイは向き直る。
 
 
  「おいでなすったか」
 
 
   カイが向ける眼差しの向こうに、無尽蔵の人影が生まれる。
 
  青く広がる空の下で――
 
 
  ――暗い仮面を身に付けた人間達が、カイ達の周囲を取り囲んだ。
 






















































<to be continues>







小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。

お名前をお願いします  

e-mail

HomePage






読んだ作品の総合評価
A(とてもよかった)
B(よかった)
C(ふつう)
D(あまりよくなかった)
E(よくなかった)
F(わからない)


よろしければ感想をお願いします



その他、メッセージがあればぜひ!


     










[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]