VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 9 -A beautiful female pirate-






Action22 −合唱−




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 惑星アンパトス、それが初上陸となる蒼き惑星の名だった。

調査目的の砂の惑星とは違って、正式に訪問となった星。

タラーク・メジェールを不慮の事故で出奔して二ヵ月半、ようやく生存する人間と巡り会える機会を得た。

ラバットという例外はあったが、彼は彼で謎のまま終わってしまった。

この機を逃さず、ブザムとマグノの交渉でアンパトスの長と正式に対面する事となった。

主賓はカイ、護衛にはメイアがつく事となった。

本来カイも護衛担当だったが、先の戦いで事情が変わった。

今回来客扱いされるのはあくまでカイであり、マグノとブザムは便乗する形である。

そして上陸時間を迎え、用意された小型船に乗り込んで一同は惑星アンパトスへ向かう。


「あんたと一緒に行動するのは初めてだな、ばあさん」

「お前さんがいつも張り切ってくれてるからね。
のんびりさせてもらってるよ」


 遅れて合流したカイだが、今もまだ包帯は取れていない。

一時間しか経過していないので当たり前といえばそうだが、未回復なのは不安でもある。

白い眼帯と首筋より見える包帯を見て、ブザムは尋ねる。


「怪我は大丈夫か?無理はするな」

「平気、平気。それに話をしに行くだけだ。
別に喧嘩する訳じゃないんだから心配はない」


 危険要素は十日前に取り除いている。

確実な平和がもたらされたかどうかは保証出来ないが、刈り取りの気配は今はない。

以前のように惑星内に罠もないであろうし、トラブルが起きる可能性は低い。

少なくとも表面的には元気そうなカイに、ブザムも口出しはやめておく。

小型船内に乗り込み、カイは運転席へ向かった。


「全員準備は出来たぜ」

「そうか、分かった」


 今回保安の意味を含めて、メイアが運転手も勤める。

操縦テクニックで彼女を上回るパイロットはそういない。

発着時や運転中で襲撃があっても、冷静に対処するだろう。


「……ディータとピョロに連絡は取っておいた。
ディータはお前と一緒に行きたがっていたぞ」

「ああ……最後までごねられたよ、こっちも。
あいつが一緒だと話がややこしくなるからな、今回は留守番だ」


 小声で話し合う二人。

明細は確認していないが、メイアはカイの願いを飲んだ。

すぐに船内の二人に連絡を取って、カイの待つ集合場所へと向かわせたのだ。


「ガスコさんとも話をしたそうだな。
頼み事を聞いた身としては、内容くらいは聞きたいのだが」

「なんだ、気になるのか?
―――チームメイトにも無関心だったお前が」

「―――っ」


 ―――理解した。

カイがガスコーニュと、何を話したのか・・・・・・・を。


「―――相変わらずだな、お前は。
他人の事情に土足で平気で踏み込んでくる」

「俺はもう巻き込まれてるんだぞ。
それに……当事者じゃなかったら、無視していい理由になるのか?
問題を先延ばしにしてたからあんな事・・・・になったんだろう、お前ら」

「――――カイ」


 強く唇を噛む。

辛辣なカイの言葉に、言い様のない怒りがあった。

そして、どんなに分かっていてもメイアにも怒りが沸いてくる。

他者の干渉を否定する事により、孤独に耐える強さを生み出す。

他者への干渉を肯定する事により、自立した強さを生み出す。

この一点だけが―――カイとメイアの決定的な相違点だ。


「――ジュラがああなった原因に、お前の短慮な干渉があるのではないのか?
お前の正しさがジュラを傷つけている」

「……」

 それも本当だ。

何が引き金を引く要因になったのかは分からないが、カイがああしてしまったのは事実だ。

そっとしておく事が、もしかすれば一番の解決かもしれない。

不干渉は放置ではない。

本人の強さを信じる思い遣りの一つなのだ。

一人になりたい時は誰にだってある。

それを否定する権利はカイにもない。

少しの間静まり返って―――


「……どうしていいのか分からないんだ、正直」

「カイ……?」

「分かってはいるさ。所詮、苦肉の策だって。
あいつをより一層傷つけてしまうかもしれない。
でも―――女をどう扱えばいいのか、今だに悩む時がある。
男なら背中を蹴飛ばせばいいんだがな」

「……」


 強さへの憧れや価値観は違う。

性別も違えば、生き方もまるで異なっている。

随分ぶつかり合いばかりしてきたが、メイアはもうカイを頑なに否定したりはしない。

カイはしっかりと考えている。

異なるから拒否するのではなく、異なるから理解しようとしているのだ。

嫌な事から目を背けず、真正面から戦いを挑む。

そんな真っ直ぐさが、今は少し眩しく感じられる。


「……難しいものだな、人間とは」

「全くだ。ま、だからピョロにも頼んだんだけど」

「―――?」


 操縦席に座るメイアは振り向いて、カイを見る。

カイはそのままメイアを見下ろして、平然と言った。

「ピョロは機械だろ?それがどういう理屈だかしらねえけど、感情が芽生えた。
言ってみれば、あいつは生まれたばかりの赤ん坊。
人間になりたての機械だ。
案外、面白い意見が聞けるかもしれないぜ」

(―――純粋な奴はもう一人いるしな)


 内心で付け加えるカイ。

近頃成長して来たディータにピョロ、そしてソラ。

マグノ海賊団内では異端に属する面々であり、考え方はそれぞれ違う。

だからこそ―――今のジュラを助けられる可能性はある。

マグノ海賊団や自分でも駄目だった事が出来るかもしれない。


「お前、そこまで考えて……?」

「それにあいつらにもいい契機になるだろ。
赤髪は他人任せな所があるし、どっか夢見がちだ。
ピョロもピョロで生まれたばっかで、生きる目的もねえ。
あいつらはもっと人の心に触れるべきだ」

「それで……」


 何か考えがあるとは思っていた。

奇抜な発想や突発的な思いつきで行動する男だが、何の思惑もなしで動いたりしない。

ピョロやディータを指名したのも訳ありだと、メイアはすぐに悟った。

ただその理由に、彼女達がカイの味方であるからだと思い込んでいた。

いくらジュラの為だとはいえ、男であるカイの頼み事を聞いてくれる人間は少ない。

その点、ディータやピョロは無条件にカイに懐いている。

どんな無理な願いでも聞いてくれる心強い人間だからだと、そう考えていた。

だが、真実はメイアの想像を越えた。

カイはジュラの事だけではない。

ディータやピョロの事も考えて指名したのだ。

味方だからではない。

ディータが必要で、ディータに必要・・・・・・・だから頼んだ。

ピョロが必要で、ピョロに必要・・・・・・だから頼んだ。

ジュラを、ディータを、ピョロの事を思い遣っているのだ……


「お前は……」


 何時の間にこれほど成長したのだろう―――?

出逢ったばかりの頃は自分本位で、周囲の事など見てもいなかった。

他人を心配する気持ちはあっても、親身になりはしなかった。

少なくとも―――激しい喧嘩をしていた頃は我が侭な子供でしか無かった筈だ。

二ヵ月半。

たった二ヵ月半でこうも人は変わるのか?

目標を持って頑張っているからだろうか―――


「ん?」

「……な、何でもない」


 じっと見つめ続けていた自分に気付き、メイアは慌てて顔を背ける。

思い掛けない無様さに、不意に頬が熱くなるのを感じる。


(まさか………見とれていたのか、私は……)


 女が男に見とれるなど聞いた事もない。

近頃の自分は本当におかしい。

確かに故郷で教えられた男像と、カイは全く違う。

心は真っ直ぐで、見た目もそれほど悪くはない。

むしろ顔は近頃引き締まって――――



「お前さん達、いつまで話し込んで―――」

「も、申し訳ありません。すぐに出発します!」



 マグノの声と、メイアの操縦桿の操作はほぼ同時だった。

余程慌てたのか、発射完了としてしまう。

たまげたのはカイだ。


「おいおいっ!?まだ発射口は開いてなぁぁぁぁぁ―――っ!?」


 小型船・隔壁激突―――

被害者:男一名(額をもろに激突)





―――変化は確かに訪れているようだった。



















 バート=ガルサス、操舵手。

今日の彼は大いに悩んでいた。


「どうしよう……」


 ほんの五分前に、マグノより与えられた直々の命令―――



『船の留守は任せたよ。しっかりやっておくれ』



 言葉だけ聞くと子供でも出来そうな明確さがあるが、この場合マグノから命じられたのがバートの苦悩だった。

ようするにマグノはバートに自分の代行を任せたのである。

マグノ海賊団お頭代理―――

この一件に関して、彼の友人はこう語った。


『大した出世じゃねえか!しっかり頑張れよ。
女達に人望を得るチャンスだ』


 言いたいことだけ言って、友人は惑星へと降りていった。

ひどい奴だと思う。

重傷を負って昏睡していた時はあれほど心配したのに……


「どうして僕にこんな大役を任せるんだよ……」


 マグノの代理は普通ブザムが務める。

そのブザムも同行して、不在だからだろうか?

それにしたって、代役はいくらでもいるだろう。

よりにもよって捕虜の自分に押し付けるなんて、何を考えているのだろうか。

いつもの自分の居場所であるナビゲーション席に入りながら、深々と溜息をつく。






『しょぼくれた顔をしておるな、お主』

「うわっ!?何、何!?」





   クリスタル空間内に突如開かれた通信回線に、バートは身構える。

現状で味方になってくれそうな人間は誰一人いない。

何があっても自分で対処しなければいけない立場に、バートは背筋が震える。

そんな彼の動揺を見透かしたのか、


『そんなに怯えるでない。お主に聞きたい事があるだけじゃ』

「聞きたい事……?」


 きょとんとするバートに、通信先の相手―――アイは不敵に微笑んだ。














































































<to be continues>

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