VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 9 -A beautiful female pirate-






Action5 −出撃−




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第一次警戒態勢が発動される。

緊急サイレンが鳴らされて、対抗力となるドレッドの出撃準備が促される。

にわかに慌しくなったニル・ヴァーナ。

その最先端であるブリッジでは、現状報告がなされていた。


「敵、補足。キューブタイプ23機のみ、戦隊は組まれておりません」

「キューブのみ・・・?雑魚ばっかりじゃねえか」


 戦いの予感となって、どこか楽しそうにしているカイ。

カイにとって戦場は宇宙であり、自分の舞台でもある。

成長を遂げるのは戦いばかりではないと先日悟ったが、それでも宇宙を駆け抜ける実感は身体の奥底を痺れさせる。

そんなカイだが、ベルヴェデールの現状報告を耳にし、違和感を口にする。


「・・・我々の撃墜が目的ではないのかもしれない」

「!この星の連中か」

「・・・まだ可能性だ。早期決断は禁物だぞ、カイ」


 ブザムの指摘に、カイはじっくりと考え込む。

敵勢力がこれまでニル・ヴァーナに牙を剥いたのは一度や二度ではない。

その度に敵は執拗に攻撃を続け、勢力を徹底させてきた。

続々と襲い掛かる新型をも撃墜したかと思えば、軍備増強を図った大規模艦隊で攻めてきた。

メイアも重傷を負ったこの戦いだが、辛くもカイの戦略で退けるのに成功。

その後自爆を行使した徹底破壊で望んできたが、逸早く気付いたカイが回避に成功する。

もし刈り取りが自分達を諦めていなければ、更に戦力アップして攻めて来る筈だ。

敵は甘くない。

決して同じやり方をせず、戦力は常に拡大する。

自爆がきかないと知れば、きっと新型を繰り出して襲ってくるだろうとカイも予想して穿いた。

それが今回キューブのみとなれば、疑ってかかるのは当然の心理かもしれない。

事実、エズラがコンソールを見ながら動揺の声が漏れる。


「敵の背後にえーと・・・変な機械が見えますぅ」

「変な機械?
・・・何だそれ、おふくろさん」


 不意に嫌な予感に襲われる。

見た目の印象があやふやなのは、見覚えのない敵機であるという事。

蛮型とドレッドの合体した機体をヴァンドレッドと名付けたエズラが、困惑する形容なのだ。

カイが懸念していた新型の敵機である可能性が高い。

エズラは早速コンソールに映し出されている外部映像を、中央モニターに転送する。


「な・・・なんだい、ありゃっ!?」


 中央モニターを一目見て、マグノは呆気に取られた顔を上げる。

他一同も、驚愕と畏怖を込めた眼差しでただ映像を目にするしかない。

それは巨大なコンテナだった。

キューブの優に五倍はある機体を有しており、正面に巨大な虚空の穴が見えている。

背後まで突き抜けているかと思えばそうでもなく、穴の向こうに見えるのは黒より暗い闇。

何より外見が――――刈り取り特有の生物めいた造詣を保っていた。

全身の染色は趣味の悪い芸術家気取りの作品か、見る者に吐き気すらわき上がらせる。

大きな穴は口にも見えて―――悪意を吐き散らさんばかりに顎が凶悪に開かれている。


「どうやら・・・・今回がアレが本命っぽいな」


 うんざりした顔で、カイは立ち上がる。

まさか自分達を見逃してくれる筈もあるまい。

カイは戦う覚悟を決めて―――


「それでも食べるのは止めないんですね―――
貴方の図太さには感心するばかりです。


って、腹が減っては戦が出来ぬという言葉を知らないな、クマちゃん。
あぐ、はぐ、んぐ・・・・・」


 お皿に残ったお握りの全てを口に放り込んで、もぐもぐ頬張る。

後方で情報収集を続けるセルティックは、ひょっこり耳を垂れ下げた。

まるで呆れて物も言えないとばかりに―――


「貴方には向いている敵かもしれませんね。
そっくりですよ、貴方とあの敵―――


どこが!?
いや、どうしてそこで笑うお前ら!」


 アマローネ達はおろか、マグノも肩を震わせている。

別に言葉にしなくてもいいのに、セルティックの言葉を口にした代償かもしれない。

だがお陰で緊迫感が薄れ、いい意味でクル−達に平静さが戻った。

皆、新たな敵の異様さに飲まれ掛けていた―――

ブザムもすぐに落ち着きを取り戻して、ドレッドの出撃と艦内の警戒を徹底させる。


「敵、一斉にこちらへ向かっています!」


 アマローネが一声を上げ、カイはお皿を置いて踵を返した。

敵が本格的に敵意を向けた以上、例え強敵でも倒すしかない。

格納庫へ向かう必要がある為、カイは急いでブリッジを出ようとする。


「・・・怪我は大丈夫かい?」


 艦長席を通り過ぎたところで、マグノが一声かける。

カイはその場でステップしながら、快活な表情で頷いた。


「どうって事はねえよ。痛みもあんまりないしな。
戦いに支障はねえ。とっとと叩き潰してくる」


 そのままブリッジを出ようとし、カイは一度だけ振り返って―――


「っつう事で援護よろしく、皆の集!
バートが逃げないように監視してけよ」

『お、大きなお世話だ!!さっさと行って来い!!』

「はっはっは、ばいばーい」


 笑い声が木霊し、遠ざかっていく・・・・

姿が消えるまでカイを見送り、ブザムは感慨深げに言った。


「・・・成長しましたね、本当に」

「ああ・・・・いい男になるよ、あれは」


 最後の最後は独力で何とかしようとするカイ。

それは多分今でも変わりはないだろうが―――それでもカイは成長した。

頼りにしている―――

カイは彼女達に、そう言ったのだから。










 






「いつつつ・・・・ちょっと張り切りすぎたか」


 主格納庫の前に到着した途端、襲い掛かる痛み―――

カイは顔をしかめて肩を押さえて、少し乱暴にさすった。

怪我そのものは塞がっており、動きにも問題はない。

ただ支障はないとはいえ、数日前に撃たれた傷である。

医療技術が優れているとはいえ、急に完治する程生易しい負傷ではない。

今後を考えれば、この戦いは回避すべきかも知れない。

でも、やはり気に掛かった。

あの新型兵器――――

構造上から考えて攻撃力・防御力に優れているには見えなかったが、だからこそ不気味だった。

あの大きな穴から何が飛び出すかも分からない。

怪我は全体的に診て八割方は治っている。

ヴァンドレッドが必要な局面に発展するかもしれない以上、ただ黙って休んでいる事は出来ない。

カイは努めて平然と振る舞い、肩をスイングする。


「・・・・問題ねえだろう。
キューブを手っ取り早く片付けて、あの図体のデカイ奴を倒せば終わりだ」


 ホフヌングやヴァンドレッド・ディータがある。

火力を重視して戦えば、あの戦力ならば短期戦で仕留められる。

カイは敵を分析しつつ、開いた自動扉から中へと入った―――



「宇宙人さーーーーん!!!」



「・・・はいはい」


 突然迫って来た人影に、カイは本能で身をかわす。

過去、似たようなシチュレーションを何度となく味わされている。

案の定、人影はそのまま勢いで格納庫を飛び出して壁に激突した。


「あーん、痛いよー宇宙人さん」

「・・・お前、ちっとは進歩しろ」


 壁にもたれて額を押さえているディータに、カイは嘆息する。

呆れたような顔はしているが、彼女を見つめる眼差しは柔らかい。

そのまま様子を見守っていると、近付いてくる足音があり振り向く。
 


「復帰したようだな、カイ」



「ああ・・・面倒かけたな、青髪」


 パイロットスーツを着こなして、メイアは普段のまま立っていた。

本来敵襲撃が行われている以上、先だって出撃しなければいけない身の筈。

何故今も尚格納庫に残っていたのか―――?

今のカイには、その意味が何より理解出来ていた。

指摘も質問もしないで、ただ黙って気持ちを口にする。


「俺はもう大丈夫。怪我も治ったし、落ち着いた。
今日からまた一緒に戦えるな」

「・・・そう・・・・だな」


 少し顔を俯かせ、やがてメイアは小さく頷いた。


「無理はするな。怪我が治ったとはいえ、まだ日が浅い。
私も出来る限りフォローはしよう」


表情こそ頑なだが、言葉と瞳に宿る気持ちは優しい。

心から案じてくれているのが伝わり、カイも何も言わず手を差し出した。

自然に出された手の平にメイアは少し目を見開くが、メイアはそのまま手袋を外す。

透き通るような白い肌つやのある手をそのままに、カイの手を握った。

冷たさと温かさが交差する、握られた二つの手―――

伝える思いに確執は何もありはしなかった。


「ちょっと、ちょっと!
完全にこっちの事、見てないでしょ・・・・?」

「んお?おお、金髪。お前もメールありがとな」


 手を離して奥に目を向けると、ジュラが腕を組んで不満そうに見つめていた。

その背後で、バーネットが苦笑いを浮かべて立っている。

二人のメールの内容は、今も温かく心の内に刻まれている。

だからかもしれないが、二人の顔を見ると少し照れ臭かった。


「そっちで盛り上がるのはいいけど・・・約束、忘れてないでしょうね?
メイアやディータと合体したんだから、当然次は―――」

「お前と、って事だろ?
実は俺もその事でお前らに話が合ったんだ」

「お話・・・?なになに、宇宙人さん」


 ひょっこり顔をのぞかせるディータにカイは、


「今回の戦い―――実験といこうじゃねえか。
俺と赤髪、青髪、金髪の三人で」


 カイは胸に秘めていた提案を打ち明けた。

































































<to be continues>

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