VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action47 −観覧−




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親切な人―――



少しの間話をして、ディータがラバットに抱いた印象がそれだった。

心持ち緊張していたが、少しずつ自分のペースを取り戻していた。


『このお船にはね、男の人が三人いるの。
えーとね、運転手さんとお医者さんと・・・・あと宇宙人さん!』


 ゲートから出て来たラバットに話し掛け、二人はその場から移動している。

ディータとしては話す場所は何処でも良かった。

『ラバットに話し掛けて、情報を聞き出せ』、それがカイより与えられた任務。

話す場所で内容が変わるなんて事は無いので、こだわりも無い。

すると、それならとラバットからリクエストがあった―――





『なら、この船の機関室に案内してくれねえか?』





 意外と言うより、想像外の質問だった。

話し合う場所に、船のメインシステムが搭載されている機関室は適さない。


『どうして・・・・?』


 ヂィータは当然聞き返すと、


『お前さんと同じで、俺も聞きたいことがあってな。
なーに、そんなに難しい事じゃねえ。
この船の事について知りたいんでな、嬢ちゃんの口利きで頼めないかな?』


 判断に困る頼みだった。

ディータは悪意や疑惑に縁のない少女だが、それでもラバットが何か狙っているのは分かる。

でなければ、船の心臓に匹敵する機関部に案内を頼む筈が無い。

考えもせずに鵜呑みにすれば、後々に大きな被害となる可能性がある。

ただ、ここで問題となるのは最初に頼み事をしたのはこちらという事だ。

話を聞きたいと願い、相手はその代償を求めている。

情報を求める返礼に、こっちも情報を差し出せと言っているに等しい。

さすがにそこまでディータは分からないにせよ、単純に頷ける頼みではない。


(ど、どうしよう・・・どうしよう・・・・・・)


 根が素直なのか、内面でも外面でもおろおろとするディータ。

初めてカイに頼られた仕事だ、絶対に成功させたい。

でも引き受けてしまって、後で船に何かあれば皆に顔向け出来ない。

ディータの迷いを見て取ったラバットは、おいおいと苦笑して言う。


『別にそこまで悩まなくてもいいだろうに。
嫌なら嫌でいい、無理強いはしないぜ』

『え・・・・?』


 これは本当に意外だった。

相手側があっさりと引いてくれた。


『嬢ちゃんにだって立場ってもんがあるからな。
嫌がる女を強引にってのは趣味じゃねえ。
嬢ちゃんに嫌われるのは、俺としても不本意だからよ。
言ってみただけさ』


 話しは何処でも聞くぜ、とラバットは気軽にそう言った。

条件でも何でもない、ただの頼みごと―――

もしかしたら何か悪い事を考えていると思っていたのは、自分の思い込みかもしれない。

ディータは内心、少し反省する。

真剣に頼んでくれた相手に対して、無下に断ってしまいそうになった。

自分からは図々しく御願いしたと言うのに――――


(だ、大丈夫だよね、きっと・・・・!
本当にお店屋さんが悪い人なら、こんな風にお願いとかしないし)


 うんっと頷いて、ディータは小さく微笑みを浮かべる。


『お店屋さん、ごめんなさい・・・・・
ディータ、パルフェに御願いして入れてくれるように頼んでみる!』

『おっ?でも、いいのか嬢ちゃん・・・?
俺みたいな奴を入れても』

『大丈夫!お店屋さん、悪い宇宙人さんじゃないから!
えと、その時にその・・・・・』


 もじもじし出したディータに、心得たとばかりにラバットは頷く。


『ああ、嬢ちゃんのお話も勿論聞くさ。男と女の話だったか?
俺はこう見えて経験豊富だからな、何でも聞いてくれ』

『うん、ありがとう!』


 そのままディータは機嫌良く、スキップして歩いていく。

ラバットはそんなディータの背を見つめ、


(俺がいい人、ね・・・・・・)


 どこか複雑な顔で後を歩いて行った。



























 頭が痛くなる思いだった。

それでなくても、今回の自分の役割には不満が多い。

作戦を立てたのがあのカイである事。

その本人が行方不明である事。

監視のみに徹底し、表立ってアクションを起こさないでいる事。

・・・・自分に似合わない服を着せられている事。

そして―――





『あれれ?どうしてリーダーがいるの?』

『おや、もう一人の相棒はどうしたんだ?』





 肝心の仲間が――――目的を見失っている事。

機関室に堂々と訪れたディータとラバットの顔を見て、メイアは身体中の力が抜けていくのを感じた。

もしカイがいれば、その場で怒鳴っていたかもしれない。

その点、メイアは優秀だった。


「・・・・ディータさん、ここでお会い出来るとは思いませんでした。
凄い偶然ですね、本当に」


 渦巻く感情の全てを抑えて、メイアはディータに静かに話し掛ける。

表面上は友好的な挨拶なのだが、聞きようにとっては痛烈な皮肉だった。

穏やかな姿勢にただならぬ雰囲気を多少なりとも感じてか、ディータは汗混じりに笑みを浮かべて、


「お、お店屋さんに頼まれて来たの!
ディータもお店屋さんにお話したかったから、その・・・・」


 ―――交換条件か。

ディータの口振りからその背景を察して、メイアは内心苦々しさを覚えた。

なるほど、それなら断りきれなかったのも無理は無い。

ここで下手に断れば、ラバットの心証を悪くする可能性がある。

聞き込み役という立場上、それは非常にまずい。

ようやく納得して、メイアも落ち着きを取り戻した。

少なくとも、ディータの取った行動は間違いではない。


『おっと、嬢ちゃんを責めないでやってくれ。
この船に興味があってね、俺が頼み込んでちょっくらお邪魔させてもらったんだ。
許可をもらえないなら、さっさと出て行くぜ』


 愛想の良い笑みに加えて両手まであげる。

この部屋では一切何もしないという意思表示なのだろう。

メイアは男の動向を見つめ、パルフェを一瞥する。

この機関部を統括しているのはパルフェ。

マグノ海賊団内では幹部クラスのメイアでも、ここでの権限はない。

決定権はパルフェにあり、メイアがラバットに対してこの場では何も言えない。

メイアの視線に気付いてパルフェは一つ頷くと、


『いいよ、別に。
さっきもらったパーツも取り付けてみようと思ってたし、丁度良かったかも』


 許可して、二人を中へと導く。

メイアは怪訝な顔をするが、パルフェが許可した以上反対するのもおかしい。

下手に勘ぐって正体がばれれば元も子もない。

パルフェとて、機械好きで知識が豊富と言う理由だけで機関長を任されている訳ではない。

ここ機関部はパルフェの聖域であり、誰より彼女が愛している場所だ。

土足で踏み荒らされるのを黙っていられる筈が無い。

メイアは傍にある椅子に座って、様子を見守る事にした。


『ふーん、こざっぱりしているな・・・・
型は大分古いが、ちゃんとメンテナンスされてる』


 ラバットは足を踏み入れて、そのまま中を見渡した。

機関部控え室内は比較的広いが、やや横長の構造になっている。

パルフェ以外の何人かは別作業に没頭していて、今この部屋にいるのは機関部員ではパルフェのみだった。


『パルフェがいつもちゃんと大切にしてるからだよ』


我が事のように嬉しそうな顔をして、ラバットに言葉を投げかける。

パルフェはディータにとって数少ない大切な友人だった。

そんな彼女の職場を評価され、ディータは機嫌が良い。


『愛着があるって訳か。天職なんだな』

『面倒かけるけど、どの子も大事だから』


 散らばる設計図や部品類を丁寧に片付けて、パルフェは言った。

言葉通りの意味で、部品を触るその仕草はひどく繊細だった。

ふーんと尚も興味深そうにしているラバットを、ディータは横から見上げる。


『お店屋さんは機械とかにも詳しいの?』

『当然よ、商品に分け隔てはねえ。モノになるものは何度も取り扱うさ』

『へえ、すごいんだ・・・・・・
こういうのを見ても、ディータよく分からないからすごいよー』

『はっはっは、そう誉められると悪い気はしねえな』

『ねえねえ、じゃああれとかも何か分かるの?』

『ん・・・?ああ、あれは――――』


 ディータが指差す機械類の一つを、ラバットは丁寧に解説する。

教える方も教えられる側も、互いに話に夢中になっている。

マグノやブザムと取引した際の表面だけの冷たさはまるで無く、自然な感じでの対話が男女で出来ていた。

話題も機械関係から日常的質問にもおよんで―――


『へえ、そうなんだ。じゃあやっぱり宇宙人っているの?』

『人間はお嬢ちゃん達だけじゃないって事さ。
宇宙を駆け巡りゃ色んな奴らがいるぜ』

『あ、だからそんなに物知りなんだね!』

『お?いい所に気付いたな、嬢ちゃん。はっはっは』

『えへへ・・・・』


 メイアはその光景を目の当たりにして、呆然としていた。

ディータが男女の垣根を気にしていないのは、今までで分かっている。

嫌われ者のカイや他の捕虜二人を相手に、いつも平然と話をしていたのだ。

今更他の男と話すのに驚きはしない。

ただ―――それでもここまで警戒心も無く、普通に質疑応答を楽しめている。

敵か味方かはまだ分かっていないのだ。

なのに、こんなにも自然に――――


(あ・・・・・・)


 メイアはカイが適任だと言っていたのを思い出す。

マグノにすら持ち合わせていない、ディータだけが持つ武器があるのだと。

それは力や地位といった明確なモノではない。

欠点ばかりが目立つ外面を見ているだけでは決して分からないだろう。

そして、そんな外面だけを見ていたのが自分達。

ディータを馬鹿にして、嘲んで―――





カイだけが価値を見出した。





 結局クルーとして、そしてパイロットとしてのディータしか皆見ていなかった。

自分も同じ―――

そしてカイだけが、人間としてディータを見つめていたのだ・・・・・

メイアは眩しいものを見るように、目を細めた。


(・・・・私より、カイのほうがずっとリ−ダーらしいな)


 最早何も言う事も無い。

ディータの頑張りを、メイアはただ黙ってみていた。














『・・・・そこまでは順調だったんだ、本当に。
お前の推薦は正しかった』

『そうだろう、そうだろう?うんうんうん。
さすが俺が見込んだ女』

『・・・何故、お前が得意げに―――っと、そんな場合じゃない。
問題なのはここからだ』


 通信機を片手に、カイは問題の現場へと向かう。

エレベーターが使えれば早いのだが、使う為の権限がない。

結局、走るしかなかった。


『奴はその後保管されていたペークシスを見て――――目の色を変えた』

「ペークシスを見て?」

『ああ―――確かにこう言った。














自我が目覚めている、と』













「自我?」


 話は続く―――































































































<to be continues>

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