VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action41 −暗がり−




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 ゲートと呼ばれる区域がある。

光も何も無い染められた闇の中で、ただ無味無臭な空気のみが漂っている場所。

通常使用されない区域であり、人の立ち寄らない区画。

船を一時保管出来る広さを保有するそのゲートにて、今日この日は一隻の船が繋留していた。

たった一日のみ収容を許された船・ラバット艦――

主のいない船は電気系統の全てが落とされ、束の間の休息に就いていた。





「野暮ったい船ね・・・・センスの欠片も無いわ」

「そう?機能性を重視したいいデザインだと思うけど」





 姿無き闇に埋もれて、ぽつりぽつりと声が漏れる。

細心の注意を払っているのか、声の主の居所は完全に闇に溶け込んでいる。

――と本人達は思っているのだろうが、


「バーネットったら、趣味が悪いわよ」

「ジュラと違って、わたしは地味なのが好きだからいいのよ」


 ジュラにバーネット。

本人達が考えている以上に、二人は暗闇に相反する雰囲気と容姿を持っている。

絹糸のように繊細で眩しい金髪に、手入れの行き届いた黒みがかった髪。

その上容貌も絶品とだけあって、薄暗い区域内でも二人はその存在感を醸し出していた。

二人は船を見上げる―――


「ようするに、この船を調べればいいんでしょ?」

「あの男が何か企んでいるなら、手掛かりの一つや二つある筈よ。
カイとメイアが男の目を引き付けている間に終わらせましょう」


 二人は現在マグノはおろか、仲間にまで黙って隠密行動を行っていた。

誰にも知られずに、皆が買い物に出かけている間に、ここ収容所へと足を向けたのである。

事の起こりは―――















『二人は下調べをしてくれ』


 結成された面々を連ねて、通路を歩きながら指示を出すカイ。

ラバットをブリッジまで案内する傍ら、ジュラとバーネットを傍に引き寄せる。


『おっさんはばあさんと会った後、行動を開始する筈だ。
どんな商売によるかだけど、多分手に入れた品を売り捌くと思う。
俺と青髪でおっさんの監視をするから』

『それはいいけど・・・具体的に何を調べたらいいの?』


 協力を申し出た以上、全力を尽くす。

比較的しっかりしているバーネットが、ジュラに代わって自分達の役割を頭に叩き込んでいた。

カイは思案顔で話を進める。


『商売はあくまで表向きの理由だ。他に何か裏で企んでいると思う。
だけど、今は確証が何もない。
そこで―――』

『ジュラとバーネットがこっそり船を調べたらいいのね。
船内を探し回ったら何か出てくるかもしれないわ』 


 察しのいいジュラに、カイも満足そうに頷いた。


『あいつも疑われているのは承知の上だ。
俺が警戒して迎え入れるのは見透かしていると思う。
だからこそ、今は万全を期したい。
まさかあいつも多人数で行動しているとまでは思わないだろう』


 本当なら自分とメイア、二人だけで望むつもりだった。

頼んでも協力は得られないと思っていたし、何より大勢だと動きも取りづらい。

戦略を知る人間が多ければ多いほど、ばれる可能性だって高くなってしまう。

そう考えての二人行動だったが、見方を変えれば協力者が多いのは戦略の幅が広がる。

しいては、成功する確率も高くなるかも知れない。

普段頭を悩ませるジュラやバーネットだが、二人はそれでも優秀なパイロットである。

いざとなれば心強い女達である事は、大艦隊との戦闘において肌で感じている。

『分かったわ。何かあればすぐ連絡する。
・・・メイアに連絡すればいい?』


 カイとの間に連絡手段がないのを見通しての意見だった。

カイは少し考えて、


『ああ、そうしてくれ。
・・・くれぐれも慎重にな。
奴に少しでも悟られたら終わりだ』


 ラバットは決して侮っていい相手じゃない。

少しでも不振な匂いを嗅いだら、途端にその本性を隠してしまうだろう。

その後は尻尾を出す事も無く、何事も無いまま終わってしまう。

それでも船は平和で済むが、カイはそうはいかなかった。

ラバットは重大な何かを隠している。

それが情報であるか何であるかは分からないが、自分達に関わるモノなら知る必要がある。

ただでさえ、今の旅も順調とはとても言えない状況だ。

ほんの少しでも今後に役立つのなら、全力で手にする必要がある。

ジュラやバーネットも、真剣な顔で頷いた。


『任せて。手を組んだ以上、成果はあげてみせるわ』

『ジュラとバーネットなら大丈夫よ。
あんたこそミスしないようにね』


 二人の頼もしい返事に、カイも安心したように笑った。















 こうして二人はカイの密命のもと、別調査を開始した。
 














「さっきの戦闘による破損はないみたいね。 照明を焚いては、万が一本人が戻ってきたら一瞬で見つかってしまう。

バーネットは口にペンライトを咥えて、船体に手を当てる。


「カイが寸前で攻撃を外したからよ。
あの時やっつけちゃえばこんな苦労しなくて済んだのに、もー」


 調査を引き受けたのはいいが、文句があるのは否めない。

特に長い間使われてなかった空間ゆえに、埃や汚れが床や壁にこびり付いているのだ。

肌の手入れを欠かさない綺麗好きなジュラには、とても我慢出来なかった。

そんな不平不満を口にする彼女を宥めるのは、いつも傍らの親友の役割だった。


「変に甘いところあるからね、あいつは・・・・
ま、だからこそ何度も助けてくれたんだと思うけど。
ジュラだって、そういうあいつが気に入ってこうして協力してあげてるんでしょう?」

「・・・それはそうだけど・・・」


 表立って反論しないところに、ジュラの素直さが出ていた。

ジュラやバーネットも愚鈍ではない。

カイがどれほど命を賭けて何度も自分達を助け出そうとしてくれたのかは、本当は分かっている。

口には一つも出していないが、カイには本当に感謝しているのだ。

こうして協力関係を結べているのも、男云々よりも人柄を優先しての結果だった。


「それより急ぎましょう。あの男が何時帰ってくるか分からないわ」


 そのまま足音を立てずに、バーネットは船の出入り口へと近付く。

ジュラが慌てて後へと続く中、バーネットは足を止めて出入り口をじっと見つめる。


「当たり前だけど、ロックがかかっているわね・・・・」

「中に入れないの?」


 バーネットは静かに頷く。


「チャチなシステムなら何とかなるけど、これは駄目ね・・・・
パスワードに加えて、指紋チェックもある。
手持ちの道具じゃ到底開かないわ」


 一目でシステムを理解出来る辺りに、バーネットの知識量が見え隠れしている。

銃器類にプラスして、機械工学や電子学に流通しているのである。

全て趣味の一環であり、バーネットにとって必要なスキルでもあった。

話を聞いているだけで、ジュラもうんざりした顔になる。

そこまで厳重なセキュリティが整備されているのでは、どうしようもない。

ラバットの真意を調べる物証への手掛かりが、文字通り閉ざされた。

バーネットにどうにか出来ないのなら、ジュラには尚更出来ない。


「カイには悪いけど、引き上げるしかないわ。
無理にシステム類を操作すれば、間違いなくあの男にばれる。
それじゃあ隠密行動の意味が無いわ」


 理性的な判断である。

無理だと判断すれば、引き際を考える。

常に前面に立つジュラに隠れて目立たないが、バーネットもまたマグノ海賊団に必要な人材だった。

ジュラもそんなバーネットの判断に逆らわない。


「あーあ、無駄骨ね・・・・
カイががっかりするのが目に見えるわ」


 確かに、とバーネットは相好を崩す。

でも、決して非難や嫌味を口にしたりはしないだろう。

カイは生来すっきりした気性の持ち主なのは、この二ヶ月余りの共同生活が教えてくれた。

そのまま引き上げようと踵を返して―――





「―――!?
ジュラ、こっち!!」

「ちょっ、何!?きゃっ!」





 バーネットはそのまま強引に、ジュラを船の裏側へ引きずりこむ。

有無を言わさない力任せなやり方に、ジュラは半泣き顔で抗議を訴える。


「ちょっと!いきなり何するの―――むぐぐっ!?」

「静かにして!
・・・・・誰かこっちに来る」

「むぐ・・・?」


 ジュラの綺麗な唇に手を当てて、バーネットは緊張を押し殺す。

気のせいでは断じてない。

姿も見えず、足音も気配も感じないが、バーネットは自分の直感を信じた。

こちらへと誰かがこっそり近付いているのを―――


「いい、ジュラ?何があっても声を出しちゃ駄目。
ここから出ても駄目よ・・・・」


 懐から愛用の短銃を取り出して、バーネットは慎重に事を構える。

身内なら、わざわざこそこそここへ来る事は無い。

そもそもここはラバット船以外何も無い場所である。

仲間の誰かが訪れるとは考えづらい。

カイやメイアの可能性も考えたが、二人はラバットと共にいる筈。

ディータは自分の役割があり、男二人は別行動中である。

となると考えられるのは―――

銃の感触を手に感じながら、バーネットは船の入り口付近に視線をぶつける。

もし帰ってきたのがあの男で見つかれば、言い訳のしようが無い。

その時は問答無用でこの銃を突きつけ、本当の目的を吐かせる。

搦め手から攻めようとしているカイには悪いが、成果を出せば彼も文句は言わないだろう。

重苦しい空気に、バーネットは胸が高鳴るのを感じる。

カイの戦略に素直に従ったのも、こうしたスパイめいた行動が好きだからという理由もある。

話を聞いた時も内心、小躍りしていた。

ごくっと唾を飲んで警戒心を高める事、数分―――

呼吸すら殺して様子を伺っていたバーネットの視界に、薄っすらと人影が浮かび上がる。

動作・姿勢共に微塵の動揺も無く、まるで突然現れたかのような錯覚を抱かせる。

バーネットは隠れながらもぐっと身を乗り出して、正体を確かめる。

と――





(・・・・副長!?)





 突然の来訪者はマグノ海賊団副長・ブザムだった――


































<to be continues>

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