VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action38 −記録−




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 レストエリアから離れる事、数十分。

店の手伝いとラバットの監視を一旦メイアに任せたカイは、そのままの足で向かう。

基本的に、一度訪れた場所へは案内無しで辿り着けるようになっていた。

ニル・ヴァーナ全施設を統括する部署、機関部――

その扉の前に立ち、カイは歩みを止める。

目的の人物・パルフェが行く場所はここしか考えられない。

何しろ新しいパーツ類を買い終えたばかりなのだ。

パルフェの性格から考えて、すぐにでもその性能を試したいと思う筈――

こと機械係に関して、パルフェは何よりも優先する。


「・・・・・・・」


 カイはそのまましばし立ち止まり、懐から一つの物を取り出す。

デザインも飾り気もない無骨な作り。

機能のみに特化し、携帯型に仕上げられた製品。

それは超小型通信機だった――















『これは・・・・?』


 戦略の全てを説明し終え、ブリッジを出る途中――

カイを呼び止めたメイアが差し出したのがそれだった。


『多種機能を備えた通信機だ。
空間遠距離通信に優れ、何処からでも連絡が取れる。
電脳ネット回線を通じてのメールも可能だ』

『へえ、便利なもんなんだな・・・・・
でも、どうして俺に?』


 メイアから何か物を貰うのはこれが初めてだった。

まさか嫌がらせで渡すとは思えず、さりとて好意とも考えにくい。

疑問を素直に顔に出すカイに、メイアは大袈裟に溜息を吐く。


「・・・少しは自分の行動に自覚を持ったらどうだ」

「何だよ、いきなり!?」


 カイが狼狽したように言うと、メイアは冷たい視線を向ける。


「何度、自分勝手な行動を取ったと思っている?」

「え、えーと・・・・」


 淡々とメイアは語る。


「監房からは勝手に出る。規則は守らない。こちらの指示に従わない。
今回など行方不明になる始末だ」

「うぐぐ・・・・・」


 全く反論出来ない。

正に、その通りだった。

そもそもカイがマグノ海賊団の命令に従った事など一度だってありはしない。

結果的に貢献しているが、それでも自由気ままな行動を取っている事には違いないのだ。


「・・・・もっとも、お前のその行動で我々は何度も助けられたのだがな・・・
そういった意味で、一概に否定はしない。
ただ、せめて何かするなら連絡くらいしろ。一度だけでもいい」


 そのままそっぽを向いて、メイアはぽつりと言う。


「・・・・他の誰かに言い辛いなら、私にせめて・・・・
・・・男だからとか、お前だからとかで、拒否はしない」

「あ、青髪・・・・」


 意外過ぎる言葉だった。

まさかメイアから頼りにして欲しいと言われるとは――

手に持ったまま呆然とするカイにメイアは、


「また行方不明になられても困る。探す身にもなってくれ。
それに連絡が取れれば、ミッションのような事態は防げるだろう」

「・・・・め、面目ない・・・・」


 ミッションの一件では勘違いにより、迷惑まで掛けてしまっていた。

連絡を取り合える事が出来れば、あんな事態は起こらなかっただろう。

げんなりとカイが肩を落とすと、


「その通信機は、ダイレクトに私と連絡が取れる。
何かあればすぐお前に連絡するから覚悟しておけ」


 表情を緩め、メイアはそのままブリッジの出入り口へと歩いて行く。

しばしの間佇み――

渡された通信機を一瞥し、カイは上の空でふと思う。





『何かあればすぐお前に―――』





「・・・頼りに・・・されてるのか・・・?」


 その問いに、答えはなかった―――















 今はまだ一度も使っていない最新の通信機。

先程のやり取りを思い出しながら、カイは通信機をクルクル回す。


「どうやって使うんだ、これ・・・・?
ついでだし、パルフェに聞くか。
しっかりしているようでどこか抜けてるな、あいつも・・・」


 肩を落として、カイはそのまま一歩進む。

程なくして自動扉が開き、新しい来訪者を中へと迎える。


「あれ―――?カイじゃない」

「やっぱりここにいたか・・・・」


 予想通りの行動に、カイは苦笑する。

中は変わらず機材や部品類で散らかっており、控え室にある机の上にも書類が積まれている。

室長のパルフェは奥の巨大ガラスの前で作業をしていた。

手元にあるのはラバットより無料で手に入れたパーツ。

持ち帰って早速試そうとしたのか、工具類が傍に控えている。


「やっぱりって、あたしに話?」

「ちと聞きたい事と頼みがあってな。
お前に直接――――あれ?」


 中へ入って来たカイが、気付いたように視点が止まる。

目をぱちくりさせてパルフェが視線を追うと、その先に―――


「うーん・・・・ペークシスって、あんな色だったっけ?」


 分厚いガラスに隔てられた機関部内にある結晶――

船の心臓であり、全動力を生み出しているペークシス・プラズマが保管されていた。

カイはガラスにへばり付くように凝視する。


「前はもっとこう・・・・青っぽい感じだったよな。
ホフヌング作る時にちゃんと見たし」


 カイとマグノ海賊団が戦い合っていた当時、ペークシスは突如起動した。

長年眠っていたペークシスが突然起動した理由は、今でも不明となっている。

目覚めの喜びを示すかのように、その力を存分に発揮したペークシス――

船は融合し、戦闘機は格段に改良されて、その力を発揮した。

その後ペ−クシスは落ち着いて機関室に保管されたのだが、放つ光は青緑色だった。

新型兵器・ホフヌングを開発された当時も、それは変わらない。

変化も何もなく、ペークシス・プラズマは安定したのだと思われていたのだが――

カイはじっとペークシスを見続ける。

白き光を放つペークシス・プラズマを―――


「それに何か光も弱々しくないか?
前はもっと眩しいくらい輝いてたのに」


 理解出来ないと、首を傾げるカイ。

黙ってカイの疑問に耳を傾けていたパルフェも、同じくペークシスを見て口を開いた。


「それが原因不明なのよ。
多分カイが、というよりホフヌングの影響だと思うんだけど」


 ペークシス・プラズマは無尽蔵のエネルギー源として幅広く利用されているが、原理そのものは謎とされている。

どこから採掘されたのか、発祥地はどこなのか?

何故無限なるエネルギーを供給出来るのか?





ペークシス・プラズマとは―――何か?





考えてみれば滑稽である。

何も知らないのに、便利だと言うだけで使用しているのだから―――


「さっき無茶したからな・・・・
咄嗟の思いつきとはいえ、影響が出るのは当たり前か。
船に支障とか出てたりする?」


 追い詰められていたとはいえ、艦内のペークシスを利用したのは事実である。

膨大な出力を放出し、一瞬で多大に消費してしまった。

前代未聞の使い方を行った為、ペークシス本体に変化が生じるのは自然かもしれない。

申し訳なさそうに頬を掻くカイに、安心させるようにパルフェは笑みを浮かべる。


「大丈夫!その為にあたしがいるんだから。
お陰で船も守れたんだし、気にしなくていいよ」


 あえて船内の変化については伝えないパルフェ。

悪戯に不安を煽っても意味がなく、必要もない。

ホフヌング開発に携わると決めた時から、カイには全面的に協力する覚悟は決めている。

例え仲間の誰が反対しようとも――


「ペークシスに関してはあたしに任せて。
また何かあったらすぐに伝えるから」

「ああ、頼む。やっぱ、気になるからな」


 ガラスの向こうを見つめ、カイは静かにそう述べる。

不思議な結晶体だが、何度も助けられているのは事実。

ホフヌングを作ってからは、よりこの結晶を身近に感じてしまう。

もしかすると・・・・

船内の女達より、この結晶に仲間意識を持っているかもしれない―――

ラバットの店に群がる女達がふと思い浮かび、カイははっとした顔で本題に入る。


「そうそう!お前に言いたい事があったんだ」

「言いたい事?」


 きょとんとして聞き返すパルフェに、カイはじろっと睨む。

パルフェが手に持つ一つのパーツを――


「お前がもらったその部品、確かなもんなのか?」

「・・・このパーツの事?」


 軽く持ち上げると、カイはこくこくと頷く。


「そうだよ!あんな胡散臭いおっさんから、無料で手渡されたんだぞ!
怪しいと思うだろう、普通!?」


 何の疑いもなく平然と受け取っている女達が、カイには信じ難い。

男を警戒していたのではなかったのか、と一人一人に問い質したいくらいだった。

カイの物言いに、パルフェは奇妙な顔をする。


「でもあの人、カイの友達じゃなかったっけ?」

「・・・・どうしてこう、どいつもこいつも俺とあいつをくっつけようとするんだ。
無関係とまでは言わないが、ただの知り合いだ知り合い!」

「そうやって頑なに主張する所が怪しいー」

「何がだ!?っていうか、話逸らすな!
その部品、絶対怪しいぞ」


 びしっと、カイはパーツに指を突きつける。

パルフェは少し考え込んだ様子で、もらったパーツを見つめる。

パーツは丁寧に磨き込まれて新品同様に輝いている。

欠損や破損もなく、使用には何の問題もないだろう。

何千・何万もの部品類を検品し、取り扱って来たパルフェだからこそ分かる。

何度も状態確認を行い、パルフェは首を傾げる。


「気のせいじゃないかな・・・?特に問題もないみたいだけど」


 専門家が言うのだから確かだろう。

少なくとも、カイよりはパルフェの方が機械類に詳しい。

カイにしてもパーツがどんな物かすら分からず、ただラバットを疑っての延長に過ぎない。

疑心暗鬼に陥っているとも考えられる。

ただ――――こう、何かが引っ掛かった。


「うーん・・・・・じゃあよ。
せめてそのパーツ、徹底的に解析してみてくれないか?
動作チェックとか、そういうの」


 それで何もなければそれでいい。

ラバットの疑いは晴れて、心配は杞憂で終わる。

平和である事に越した事はないのだ。

徒労に終われば手伝ってくれているメイア達には悪いが、それでも納得はしてくれるだろう。

カイの頼み事を、パルフェは快諾した。


「いいよ。確かに何も調べないで使うのはちょっと危険だもんね。
ペークシス君につける部品だし」


「ペークシスの部品なのか、それ・・・・・っとっと!?
と、とにかくよろしく頼む」


 パーツについて聞こうとし、慌ててカイは口をつぐむ。

ホフヌング開発の時も、何かにつけては説明と解説であれこれ長時間論議したのだ。

パルフェは機械類に関しては妥協せず、時間がかかって大変だった。

パーツに関して興味がないと言えば嘘になるが、今は色々忙しい身。

時間を割いている余裕はない。

それに何より優先して――――調べたい事がある。


「でさ、お前に頼みたい事ってのはもう一個あって・・・・」

「え、なになに?」


 気軽に尋ねるパルフェに答えず、カイはズボンのポケットを漁る。

ミッションで手に入れたお宝。

ラバットにも言わず、誰にも話さずに肌身離さず持っていた戦利品―― 

カイは取り出して、机の上に置いた。






「ディスク?どうしたの、これ」

「ミッションで手に入れたんだ。
内容を調べられるか?」





 システムルームで眠っていた一枚のディスク―――

見た目は古ぼけた普通のディスクだが、きちんと封入されていたのが気になっていた。


「へえ・・・・・何が入っているんだろう。
ちょっと待って」


 こうなると、パルフェは行動が早い。

テキパキと自前のパソコンを起動し、ディスクを挿入する。

キーボードを手慣れた速さで打ち、ディスクの内容を表示する。


「出た出た・・・・・!」

「どれどれ・・・・・」


 横からカイが覗き込み、ディスクの内容を確認する。

保存されていたのはたった一つのフォルダ――















―フォトン―















「フォトン・・・?」


 カイはぽつりと声を漏らした。 


































<to be continues>

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