VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action23 −促進−




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「何とかなりそうか?実際のところ」

「何言ってんだ。何とかするんだよ」


 不敵な顔で言い切るカイに、ラバットはふっと笑う。

ミッションより飛び出し、ラバット機は周辺を漂う小惑星群の陰に潜んでいる。

現在ミッション宙域はセキュリティメカとドレッド部隊による戦闘状態にあり、一進一退の攻防戦を繰り広げていた。

迂闊に近づけば、両者による攻撃の余波を受けてしまう。

出るに出られない状況下に置かれ、ラバット機は避難していた。

無数に飛び交う小惑星群は都合の良い盾で、ビームやミサイルを遮ってくれていた。

今回幸いだったのは、セキュリティが外から中に入ろうとする者を排除する仕組みになっていた事だった。

セキュリティシステムは不法な侵入への徹底的な警備を敷いている。

ミッション安全を第一とするシステムにとって、外部からのあらゆる干渉が弊害の布石となる。

逆に内から外への脱出に関して、ミッションは何も干渉はしなかった。

宇宙ステーション・ミッションにとって、内部にいる人間は客であり主人。

絶対的に守るべき者で、排除対象にはなりえない。

ラバットやカイのような例外的な侵入を行った人間には、その矛盾ゆえに対処出来ないのだ。

明らかなシステムの不備だが、そこまでの臨機応変さはシステムは持ち合わせていない。

小惑星群に偽装している警備システムも、皮肉にもラバット達を匿っている形になっている。


「今俺の知り合いが、相棒を取りに行ってくれている。
連絡が入ると思るから、来たらその船と合流してくれ」

「おいおい、こんな乱戦の中ドッキングしろってのか?」

「ガスコーニュの船に格納されるんだからしょうがねえだろう。
大丈夫、あいつの船にはシールド機能があるから」


 カイの乗る蛮型はニル・ヴァーナに保管されているままである。

予備ドレッドで飛び出した時は整備中で使用不能だったのだ。

新型兵器開発の為の――

ミッションから脱出し、ガスコーニュのデリ機を見つけたカイはすぐ連絡を取った。

向こう側もカイの意図を察して、今ニル・ヴァーナへと戻っている。

すぐ戻るとの事だったが、それでも十数分はかかるだろう。

少しでも早く出撃したいカイとしては落ち着けない。

今こうしている間にも、ドレッドチームは苦戦しているのだ。

それにもう一つカイには気がかりな事があった。

「・・・・なあ」

「ん?どうした、今更びびったのか?」


 ラバットとしても、今はカイに任せるしかない身である。

脱出しようと思えば出来ない事も無いが、船に確実に被害が出てしまう。

安全性を考えれば、カイにゲタを預けた方が手間もかからなくてすむ。

気軽な姿勢でカイに茶々を入れるラバットだが、カイの表情は晴れなかった。


「その、よ・・・連中、大丈夫か?」

「・・・俺に言われてもな・・・」


 カイが誰を指しているのかを察して、ラバットは気の無い返事をする。

カイはコックピット上を仰ぎ見ながら、独り言のように呟いた。


「・・・様子を見るとかは無理か・・・」

「メインシステムが起動しちまってるからな。
声を拾うのだって精一杯だったんだぜ」


 カイの戦略により閉じ込められた面々――

刈り取りだと信じて疑っていなかった連中がメイア達だと知り、カイの心境は複雑だった。

敵を閉じ込めたのだと思えば、相手はメイア達。

戦略は成功なのか、失敗なのか――

喜ぶべきか、罪悪に思うべきか、カイには図りかねた。

二ヶ月前の自分なら閉じ込めた事を成功に思えていただろう。

女を、海賊の主要メンバーを捕らえたのだ。

タラークなら殊勲章ものである。

カイにとってタラークの価値観はどうでもいいが、メイア達に関しては話は別だった。

男も女も関係ない。

彼女達は人を踏み潰して生きて来た海賊なのだ。

人間的に罰せられるべきであり、罪悪人である筈だ。

共に旅をしても仲間扱いもされず、冷たく扱われて来た。

このまま見捨てても誰も文句は言わないような連中に、自分は――


「・・・・何なんだろうな、俺は・・・・」


 誰にともなく呟く。

今しようとしている事は、自分の為だとは到底言えない。

わざわざ戦う手間もない。

刈り取りなら話は別だが、相手はミッションのセキュリティメカである。

人間に危害を加える敵意もなければ、故郷を脅かす脅威もない。

今襲い掛かってきているのも、ミッションに近づき過ぎた為だろう。

入ろうとしなければ、このような事態は起こりえなかった。

今の事態はある意味で自業自得なのだ。

わざわざ手を出す必要も無いのに、今自分は戦おうとしている。

その理由は分かってはいる。

分かってはいるが、ため息が出るのを抑えられない。

笑いたくなる。

自分の馬鹿さ加減が――


「・・・・複雑みたいだな、色々」

「あん?」

「お前が今気にしている女共だよ。
あのでけえ戦艦の連中なんだろう?」

「・・・・まあな・・・・」


 カイはラバットに何も話していない。

閉じ込めた者達が誰で、どのような関わりがあるのか――

ラバットもカイの素振りや言い渋る様子から、何となくでしか分かってはいなかった。

声を拾ってカイに聞かせたのも、ただならぬ関係のように思えたから。

事実、カイは反応した。

仲間であるなら、別に悩む事も考え込む事もない。

ラバットはカイと女達との関係に少し興味が出てきた。


「喧嘩でもしているのか?」

「うーん・・・喧嘩、喧嘩って言うべきかな・・・」


 そもそも真剣に喧嘩をした事は数える程しかない。

カイはカイで自分のペースで行動し、マグノ海賊団はカイと関わろうともしなかった。

喧嘩をしたと言えばパイロットを辞めた時と、メイアとのもつれ合いのみだった。

互いに意識はしても、触れ合わない関係。

思えば、関係を築こうとした事もなかった気がする――


「煮えきらねえ返事だな・・・・
まさかさっきの声の女と何かあったのか?」

「ないないない、それはない」

「や、やけにきっぱり言うな・・・」


 言い切って首を振るカイに、ラバットは拍子抜けの顔をする。

一声聞いただけで分かるあの声――

間違いなく、声の主はディータだろう。

閉じ込められている状況で、尚も明るさを失わずに自分を信ずるディータ――





『宇宙人さんがきっと来てくれるから』





「・・・・・・」


 ディータと喧嘩をした事は一度も無い。

正確に言えば一度あるが、こちら側から一方的に拒否しただけだ。

ひどい難癖をつけたのに、ディータは自分を恨まなかった。

人を疑わない真っ直ぐな信頼――

メイア達との関係を悩んでばかりの自分とは大違いだ。

カイにはディータのそんなひたむきが眩しく、少し羨ましく思えた。

あいつには人と人との垣根などないのかもしれない。 


「女と揉めるのは止めた方がいいぜ」

「・・・え?」


 突然何を?という顔をするカイに、ラバットは苦笑して言う。


「女は感情の生き物だからな・・・・
こっちが理屈並べても通じねえのよ。
感情任せに責められたら、対処しようがねえ」

「・・・・何か経験があるような言い方だな」

 ジト目でラバットを見つめると、本人は目を逸らす。


「厄介な奴がいてな・・・
俺も俺で色々大変なんだぜ」


 どこか遠い目をして、ラバットは言った。

見るからに豪胆なラバットを厄介と言わしめる女――

カイは想像もつかず、首を捻るしかなかった。

考え込んでいるカイに気づき、ラバットはこれ以上はやばいとばかりに続きを話す。


「ま、人生経験積んでる先輩からの忠告だ。
女ってのは、男が理解しようと思えばそれこそ一生かかる。
近いようで遠い存在だからな」

「近くて遠い、か・・・・」


 ラバットの言っている事はよく分からなかったが、今までを振り返ると何となくは掴める。

傍にいながらも、分かり合えてもいないメイア達――

仲間意識も何もない今の関係は、ラバットの言葉を象徴するようだった。


「お前と女達がどういう関係なのかは知らねえ。
ただ俺が言えるのは・・・」


 知らず知らずの内に、カイはラバットの言葉に静かに耳を傾けていた。

普段の調子のいい様子とは違い、今のラバットには貫禄すらある。

真摯な表情を見せて、ラバットはカイを見て言う。


「いい男ってのは女を背負える器量を持つ奴を言う」

「女を・・・背負う?」


 ラバットは頷く。


「男の価値ってのは、女に認められてなんぼだ。
女の良い所も悪い所もしっかり受け止めて、その上で支えてやる。
心も体も守ってやるんだ。
それが出来て、初めて一人前の男だ」

「・・・・・・・」


 呆然とするしかなかった――

男も女も全てをひっくるめて、ラバットは男についてを語っている。

タラークに住んでいたカイにとって、ラバットの言葉は意味不明にしか聞こえない筈である。

馬鹿馬鹿しくて物も言えない意見だ。

・・・なのだが、カイは胸にずっしりと響く重さを感じていた。

女に、メイア達について今だ悩んでいる自分。

そんな自分に比べて、目の前のこの男ははっきりした主張がある。

悔しい、悔しいが―――かっこいい。

それに比べて自分は・・・・・

カイは自分の未熟さを痛感して、唇を噛み締める。

ラバットはそんなカイを見つめ、目を細めた。

見つめるその瞳には微笑ましさと頼もしさ――

そして深い憧憬の色が浮かんでいる。





『カイ、聞こえるかい?』





「!?お、おう・・・・」


 はっと顔を上げて、カイは通信回線に顔を向けた。

溌剌としたガスコーニュの声がコックピットに飛び込んでくる。


『待たせたね。あんたの蛮型、搭載して来たよ。
すぐこっちにおいで』

「分かった、すぐそっちに行く。おっさん!」

「おう、後はお前次第だ。しっかり頼むぜ」


 にっと笑うラバットに、カイは頷いた。


「任せとけ。あんたの度肝を抜いてやるよ」

「へ、そいつは期待だな・・・
しっかり掴まってろよ」


 潜んでいた小惑星より飛び出して、急加速でデリ機方面へと向かうラバット機。

凄まじい加速力に、カイはシートにしがみ付く。

急激なGに身体を揺らされながら、カイは心の中で反芻する。


(女を支えるか・・・・・)















「・・・・いよいよだね・・・」


 デリ機コックピット内。

大型シートに身を委ね、ガスコーニュは呟く。


「パルフェと二人、不眠不休で苦労させられたんだ。 
しっかり活躍してもらうよ。
ねえ――」


 視線を上げて、見つめる。


「『ホフヌング』・・・」


 保管庫内を映し出すモニター。

映し出される映像には、金色に輝く蛮型の姿がある。

薄暗い中収容されているカイの蛮型――

暗闇の中で、その右腕が仄かに青白く光っていた。
























<to be continues>

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