VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action21 −理由−




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 全長3キロ強にも及ぶ巨大な外観。

建造後間もないかのような美しい外装と滑らかなフォルム。

母艦級の船が上下に重なり合ったような二つのシルエット。

タラーク軍艦に海賊母船が融合した新型戦艦ニル・ヴァーナ。

その堂々たる姿は映像越しでも眩く、そしてカイには見慣れた光景だった。


「なんでニル・ヴァーナがこんな所に居るんだ!?」


 船から離れて二日余り。

危機を救う為に自ら飛び出し、もう二度と会えないと思っていた船。

それが今、目の前に映し出されている。

信じられない思いで、カイはまじまじと見つめていた。

驚いたのはカイだけではない。


「知っているのか、お前?」


 何か関係があるかもしれないとは勘ぐっていたが、まさか本当に関係があるとは・・・

予想以上のカイの反応に、ラバットもまた驚きを隠せない。


「知っているっつうか、何つうか・・・」


 つい最近まで乗船していた戦艦である。

知っているどころの話ではない。

タラークを飛び出してからは、毎日を過ごして来た船だ。

カイの瞼の裏にマグノ海賊団の女達が映し出される。


「・・・何か訳ありなのか?」


 カイの様子を見て、ラバットは静かな声で聞く。

カイは船の映像をじっと見ながら呟いた。


「ちょっとな・・・・」


 もう二度と帰れないと思っていた船。

もう二度と会う事はないと思っていた人達。

沸き立つ感情がこみ上げてくる。

思い出される船の日々は必ずしも平穏ではなかった。

必ずしも幸せではなかった。

楽しい日々には縁はなく、毎日が苦労の連続だったような気がする。

故郷で敵だとされている女達との共同生活。

相手もまた、自分達男を敵だと思っていた。

冷たい目に晒されて、捕虜としての扱いを受けた。

辛酸を、徹底した差別を受けて、毎日を生きて来た。

加えての正体不明の敵の来襲。

命の危機を見舞われたのは一度ではない。

神経をすり減らし、強敵を相手に最前線で戦い抜いてきた。

いざとなれば頼りにならない女達。

安全も保証されず、戦うしかなかった毎日は疲弊するだけだったように思える。


「・・・・なるほど、複雑な事情があるみてえだな」


 「刈り取り」ではない事は分かっていた。

ただ正体が掴めずにいて、敵か味方かも分からない。

目的の妨げになるのは、とカイには伏せてきたが、予想外に何か掴めそうだった。

傍らで思い悩む男の顔が何より物語っている。

現在も危機的状況にあることは変わりはない。

明確に敵意を示すミッションに、対抗する謎の戦艦。

逃走するにも厄介なこの状況を、何としても離脱しなければならない。

困っていた所に、カイのこの反応である。

ラバットは期待を込めた眼差しで、カイに聞いてみる。


「・・・・詳しくは聞かねえ。一つだけ教えてくれ。
あの船の連中、お前の敵か?味方か?」


ラバットの質問に、カイが露骨に顔を強張らせる。

苦しそうに目元を細め、唇を震わせた。

慎重な物言いで聞いたラバットだったが、内心は切実だった。

もしも戦艦ならば、話は早い。

手元には通信機もあり、脱出する船も健在なのだ。

すぐにでも救援を求め、ミッション退避の援護をしてもらえばいい。

餓死寸前だったカイを救助し、手助けもした自分も救助してもらえるだろう。

カイが自分を決して見捨てない男だという事は、これまでで分かっている。

船の連中が誰であるか、興味がないと言えば嘘になる。

だが今は、利用出来るか出来ないかが重要だった。


「・・・・・・」


 敵か?味方か?

問われ、カイは声が出なかった。

即答出来なかった。

マグノ海賊団――

あの女達は自分にとって敵なのだろうか?

それとも、味方なのだろうか?

今まで考えない事もなかった。

ディータ達が遭難した時―

ウニ型に襲われていた時―

砂の惑星に閉じ込められた時―

敵として葬り去る事は出来た筈だった。

女を見捨てる、その選択をすればいい。

少し、ほんの少しでも目を逸らせばそれで済む話だった。

なのに、そのどれでもが出来ずに終わった。

自分でと分かりながらも、馬鹿げた行動ばかり取ってきた。

命の危険に冒されたのは、むしろ女達を助けたからだ。

危険なのだと理解しながらも、余計な行動に出てしまう。

自分で自分を笑いたくなる馬鹿さ加減だった。

相手側は決して歓迎などしていないと言うのに――

女達が自分を嫌っている事など当の昔に知っている。

冷遇され、罵倒され、見下ろされて来た。

ある意味でタラークに居た頃よりひどい仕打ちを受けたと思う。

そんな女達に何を思う事がある?

何を義理立てる事がある?

叶えたい夢が自分にはある。

夢を叶えるのに、これ以上寄り道をしても意味はない。

これからは自分だけを考えて、夢に向かって邁進していくべきだ――


「・・・味方じゃねえよ」

「ん・・・?」


 ぎょっとした声を上げるラバットに、カイは淡々と答えた。


「あの船の連中にはねぐらを借りただけだ。
恩は返したし、もうつるむ理由もねえ」


 タラーク・メジェールを救う。

その目的は捨てるつもりはない。

だからこその共同生活であり、共に旅する理由でもあった。

故郷は救う――それには変わりはない。


「・・・おっさん、悪いけどタラークまで送ってくれねえか?
もしくは船のある所でもいい。
やる事があるからな」


 自分は自分で目的を遂げる。

女達は女達でやるべき事をする。

それでいい――


「あ、ああ、それはまあかまわねえが・・・・
お、おいっ!」


 カイは荷物を持ち直して歩き始める。

これ以上船の映像を見ていたくはなかった。


「おいおい、いいのかよ?お前の知り合いなんだろう」


 突発的に歩き出したカイを、ラバットは慌てて追う。

完全にあてが外れてしまった。

カイの言う事が本当ならば、向こう側が手助けに来てくれるかは怪しい。

映像を見る限り、攻防戦はほぼ互角。

勝敗の行方が見えない戦況で、カイを助ける事は不利になってしまう。

もしもカイが船の連中にとって大切な存在ならば、助けにも来るだろう。

だが何でもない関係ならば、その可能性は低い。

追うラバットも、平走するウータンも、カイの背を心配げに見る。

声をかけられたカイは足を止めて、背中を向けたまま答えた。


「・・・・早く行こうぜ。巻き込まれるぞ・・・」


 その声に、感情はなかった――















 戦いの産声に、ミッションが震える。

射出され続けるセキュリティメカに、ニル・ヴァーナからもドレッド部隊が出撃する。

激しいビームの応戦が渦が描き、宇宙に激しい火花を散らした。

戦闘の余波が辺りを震わせ、波紋を広げる。

事態が激化する中、カイとラバットはある場所へと辿り着く。

長きに渡って保管されている船が並ぶ区域――

ミッションでは第一スペースエリアと呼ばれるその場所に、見慣れない一つの船が鎮座していた。


「これがおっさんの船か・・・」

「おうよ。
ちと型は古いが、これでも使い勝手はいいんだぜ」


 自慢げに話すラバットだが、確かに実戦的な外見を有していた。

左右に対となる翼があり、大きな噴出口が装備されている。

加速力は相当なものなのだろう。

高速度に耐えられる有機的なメカニズムが外装に目立ち、真っ直ぐに伸びている。


「収容スペースが中にある。荷物は全部そこに置いてくれ。
お前の分も一緒にして、落ち着いた所で分配を決めよう。
今はそれどころじゃねえからな」


 カイも異論はなかった。

外では激しい争いが続いているのだ。

戦う術がない以上、早くここから去った方がいい。


(・・・・・・・)


 そう――

早く、ここから立ち去った方がいい。

ラバットはそのまま中へと足を踏み入れ、カイも何も言わずに後に続く。

個人用の船だが、ラバット船の中はかなりの広さだった。

幾つかの部屋があり、生活スペースがある。

収容庫とラバットが言っていた空間も広く、手に入れた物資を全部そのまま積み上げる事が出来た。

作業も終わり、二人は船にとって肝心要のコックピットへと向かう。


「・・・二人用か」

「俺とウータンだけだからな、乗っているのは。
2シートだけで充分なんだよ」


 戦艦ニル・ヴァーナとは違って、ラバット船は個人用の船である。

コックピットも二人乗りの簡易スタイルで、内部は二つの席とコンピューターのみであった。

それでも最新鋭のシステムで、機能も優れている。

外部からの操作も可能となっており、ラバットが小型装置で船とのやり取りを行う事も可能となっていた。


「お前は隣に座れ。
ウータン、悪いがしばらく我慢してくれ。
怪我人を立たせる訳にはいかねえからな」


 ラバットは慣れた様子でそのまま自分のシートに座り、突立ったままのカイを促す。


「いや、俺は大丈・・・」

「キーキキキッ!!」

「分かった分かった!?押すな押すな!?」


 満面の笑みで押すウータンに苦笑して、カイはそのままシートに座った。

カイが隣に座ったのを確認したラバットは、正面を向いて操作パネルを触る。


「このままミッションを脱出する。
強行突破するから、シートにしっかり掴まってろよ」

「何か手伝える事とかあるか?」

「何にもねえ。何かあったらこっちから伝える」


 カイも納得し、シートに大人しく座った。

ラバットもそのまま無言でパネルを操作し、発信準備を行う。

船内にエネルギーが流れ、情報データが入力される。

メインパネルや稼動システムも起動し、船が活動を開始し始めた。

特に手伝える事もないカイは、じっとそのままでいる。


(・・・・あいつら・・・・)


 轟音は保管庫内にも届いている。

激しい戦いが繰り広げられているのだろう。

見る事は出来ないが、想像はついた。

カイはシートにそのままもたれかかり、目を閉じる。


「ふう・・・・」


 悩む必要はない。

このまま発進し、ミッションから脱出する。

ここから離れれば、今度こそニル・ヴァーナと遭遇する事はないだろう。

今度こそ自由の身になれる。

連中の面倒を見る義理は自分にはない。

戦いに苦戦しようとどうしようと、もう関わる必要はない。


(・・・・・・・)


 そう思いたいのに――

カイはぎゅっと目を閉じて、そのまま眠りに入る。

疲労による眠気もあるが、今はとにかく眠りたい。

起きていれば、また何か変な事を考えてしまいそうだ。

カイは必死で何も考えないようにし、ひたすた眠りに就くのをじっと待った。

ラバットは傍らで、始終パネルを操作し続ける――


「・・・・・・・」














(・・・・・・・・・・・)














『・・・・も大丈夫なの?』




「・・・ん?・・・・」




 何やら聞こえて来た声に、カイは目を開ける。




『外に助けを求めるのはいいけど、この強引なやり方よ』




 ラバットはただ、パネルを操作する。




『警報が鳴ってるんじゃ、敵が何かしてくるかもしれないわよ』




 ミッション中央システムにアクセスさせて――




「この声・・・・まさか、あいつらか!?」




 カイは顔を上げる。




『大丈夫だよ』




 ラバットはにっと笑って、音量を上げる。




『宇宙人さんがきっと来てくれるから』




 赤い髪をした少女――




『絶対の絶対に何とかしてくれるよ!』




   笑い掛けてくれた少女――




『宇宙人さんはすっごく優しくて強いもん!』




 無垢な信頼を向けてくれた少女――




『きっとディータ達には思い付かないすっごいやり方で助けてくれるから』




 いつも、自分を頼ってくれた少女――




―助けてくれるから―




「・・・・あの・・馬鹿・・・・・」




   表情を見せず、カイは小さく呟いた。

























<to be continues>

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