VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 8 -Who are you-






Action20 −接触−




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鳴動するミッション――

長年眠りに就いていた植民船時代の遺物は、突然の目覚めにも迅速に対応する。

中央メインシステムは内部に潜む侵入者達に例外なく感応し、敵として再認証した。

取り巻く状況は刻一刻と変わっていく。

平穏だった広大なシステムがにわかに騒がしくなり、活動を再開し始める。

騒動は内部にのみに留まらない。

内部に敵が現れたのなら、当然外部からの侵入となる。

不法なる侵入は断固として許さない。

命令を組み込んだ設計者に忠実に従い,全てを排除するべくミッションは起動する――
















「小惑星郡より、機影確認。次々と射出されています」


 状況を確認し、焦りを露にアマローネが報告する。

アマローネの手元のコンソールに、機体の反応が増えていっている。

それまで静かだったミッションの変動である。

事態に驚く暇もなく、ベルヴェデールが報告を重ねる。


「ミッションを取り囲む小惑星より高出力エネルギーを確認。
一つ一つが防衛施設のようです。
セキュリティメカが射出されています」


 穏やかならざる報告を受けて、副長のブザムは臍を噛んだ。

予想もしなかった敵の登場である。


「何と言う事だ・・・・
メイア達とはまだ連絡を取れないのか!」

「駄目です、今だ繋がりません。
こちらのシステムには何の異常もないので、恐らくは・・・・」

「・・・・ミッションで何かあったか・・・・」


 オペレーター担当のエズラの悲痛な声に、ブザムも黙り込むしかなかった。

ミッション突入までは何の問題もなかった。

探索開始前は念入りに事前調査を行い、宇宙ステーションの隅々に至るまで警戒を怠らなかった。

物資供給とカイ=ピュアウインドの救助。

二つの重要な目的があるとはいえ、安全を確認されない限りクルー達を向かわせる訳にはいかない。

検討し、安全確認を行い、最善の準備を整えた上で決行したのである。

全てが順調に進むと安易に考えてはいないが、ここまでの事態になるとは予想外だった。

あらゆる観点とデータからの分析による予想だったが、事態はブザムを嘲笑うかのように変異を遂げた。

突入完了後のミッション内の異常。

内部に侵入したメイア達からの連絡が途絶え、こちらからのアクセスが突如不能となった。

カイの行方は不明、物資を手に入れた様子もない。

探索チームの危険を感じたブザムは応援部隊編成を考えたが、マグノに止められた。

何が起きているのか分からない状態で向かわせるのは被害を増やすだけ、という意見からであった。

総指揮の立場である自分が冷静を欠いてはならない。

過ちを犯す所だったブザムはマグノに感謝し、事実関係を洗い直す。

危機に瀕しているメイア達を援護する為にも、現況を正確に把握する必要がある。

そう考えて頼みとしているブリッジクルー総勢に調査させていた時に、新たな危機に見舞われる羽目になってしまった。

メイア達が、ではない。

標的にされつつあるニル・ヴァーナ。

つまりブザム達当人に、だった――


「敵機、こちらを補足しました。攻撃を仕掛けてくるものと思われます。
ご指示をお願いします」


ブザムに振り向くアマローネの目に期待と不安の色が宿っている。

完全に敵対している相手がいるのでは、これ以上の自立的な行動は取れない。

戦闘を行える決定権を有しているのは、頭目のマグノとブザムのみだった。

本格的に不穏な気配が漂い始めた宙域で、ブザムは副長としての本分を全うする。


「話し合いが通じる相手ではない。セル、現状で戦える機体は何機だ?」


 尋ねられ、慌てたのがセルティックだった。

外部の状況把握に専念しており、ニル・ヴァーナ内部の現状にまで手が行き渡ってはいなかった。


「・・す、すぐに調べますぅ!」


 厳格なブザムを相手に、恐縮しつつも仕事への手を止めなかったのは立派だった。

申し訳なさを感じながらも、ブリッジクルーとしてきちんと取り掛かる。

命運すら左右される緊急時において、必要となるポテンシャルである。

そんなセルティックを信頼するブザムは、それ以上口を挟まずに中央モニターを見る。

次々と射出される敵の姿。

彼らに敵味方の論議は通じない。

断りもなくミッションに近づいた者全てが排除すべき敵。

彼らにとってそれが全てであり、絶対的正義だった。

理屈も倫理もない。

厄介な敵ではあるが、対処法としてはいたってシンプルでいい。

頭脳明晰なブザムも気づいている。

やられる前にやる――

話し合いも何も通じないなら、倒される前に倒すしかない。

対処の仕方は非常に単純である。

ただここで問題ととなるのは――


「Aチーム、Bチーム、Cチーム共にチームリーダーがいません。
パイロット数も半数以下です」

「・・・サブリーダー、もしくはリーダー候補はどうだ?」


 苦々しい顔をするブザムに、セルティックは言い辛そうな顔をして答える。


「二人います。ですが、パイロット数がその・・・」

「・・・発進準備を。
ガスコーニュとパルフェに全面的なバックアップをさせる」

「ラ、ラジャ−!」


 現在、ニル・ヴァーナには戦力が不足していた。

チームを指揮するメイアが不在。

メイアの補助を担当するジュラ・バーネットも同じく不在。

フォーメーションを構成する主要メンバーの大半がおらず、パイロットの半数以上がいなかった。

呼び戻そうにも時間はなく、また連絡も取れない。

このままでは戦力の半分以上を削がれた状態で戦わなければいけない。

不幸中の幸いなのは、敵が刈り取りではない事だろう。

もし以前の鳥型を先頭とした大規模艦隊が攻めて来ていれば、全滅の憂き目にあっていた。

今の敵の実力がどの程度なのかは判明していないが、刈り取り程ではない。

初手から厳しい現況ではあるが、自分が総指揮を取り、ガスコーニュとパルフェがサポートすれば持ちこたえられる。

否、何としても勝つ。

勝たなければ、生き残れない。

目的を、果たす事が出来ない。

そう――目的を遂げるまでは。


「全艦戦闘配備!」


 
ブザムは鋭く目を光らせた。
















「どうした、息が切れてるぞ。なんだ、そのへっぴり腰は」

「はあ・・はあ・・ぜい・・ぜい・・・
人に重い物運ばせておいて何抜かしてやがる!」


 変わらず警報が響き渡るミッション内を、カイとラバットは必死で動き回っていた。

無事作業が完了したのは数分前の事――

侵入者達を閉じ込めて、二人は無事に目的を果たす事が出来た。

ラバットが選別した物資を、カイがまとめて袋に入れる。

流れ作業だったが、時間も限られており淡々と二人は作業をこなした。

目的も達成した以上、ミッションに留まる理由もない。

原因不明の異常も起きている以上、長居は無用だった。


「心外だな。俺だってちゃんと持ってるじゃねえか」

「袋一個だろうが!しかも、一番軽いのを持ちやがって・・・」


 悠々と通路を歩いているラバットの背中に白い袋が一個。

背中に加えて、両手に首、胴回りにまで結び付けてカイは何個もの袋を担いでいた。

傍目から見れば袋に埋もれている滑稽な様子だが、本人は必死だった。

全身にかかる重量が半端ではない。

居住区に放置されていた食料から衣料品まで、使えそうな物は全て持ってきたのである。

成果は上々だが、運ぶだけでもかなりの疲労であった。


「お前は若いんだから、それぐらい大丈夫だろう。
年寄りは労わるべきだぜ」

「あれだけおっさん呼ばわりするのを嫌がったくせに、何言ってやがる!?」

「ウータンもちゃんと運んでいるぜ」

「ぐ・・・・」


 カイと同じく身体中に荷物を下げている状態で、ウータンは楽々に歩いていた。

様子は普段と全く変わらず、むしろ鼻歌でも歌いそうな様子だった。

別に差別意識はないが、ウータンが頑張っているのにめげるのはかっこ悪かった。

カイは口をつぐんで、荷物運びを再開した。

横目で面白そうにカイを見て、ラバットはおもむろに小型装置をチェックする。


「・・・・少し急いだ方がいいかもしれねえな」

「?何だ、急に」


 疑問符を浮かべるカイに、難しい顔をしてラバットが言った。


「セキュリティが本格的に起動してる。
ミッションの外に旧式の戦闘機がうじゃうじゃ出て来てるぜ」


 船が観測する外の状況を聞いて、カイは顔を強張らせた。


「ひょっとして・・・取り囲まれているのか、ここ?」

「正確には誰も寄せ付けないようにしている、だな。
どっちにしても時間が経てば経つ程逃げるのが難しくなる」


 外からの侵略を防ぐメカ群が、内部からの脱出を簡単に許してくれるとは考えにくい。

まして、カイもラバットも不法に侵入した事に変わりはない。

正規に入港したならともかく、警戒を勤めている現状でセキュリティの突破は難しい。

苦渋の表情を見せるカイに、ラバットがさらに言う。


「それに問題は外だけじゃねえ」

「どういう事だ?」


 担いでいる荷物を背負いなおして、カイはラバットを見上げる。

説明する本人は言い辛そうに続きを話す。


「セキュリティってのは、そもそも人間様を守るシステムだ。
特にこんなステーションレベルの建物だと、警備も厳重になる」

「な、何かやばいのか・・・?」


 重々しく語るラバットに不吉な気配を感じ、カイは神妙な顔で尋ねると、


「ここが封鎖される」

「・・・・へ?」

「異常事態が起きれば、ミッションは内部の人間を守ろうとする。
その為に外のあらゆる障害から身を守ろうとするんだよ」

「ぐ、具体的に言うと・・・?」


 ラバットは困ったような顔をして小声で呟く。


「全隔壁が降りる。一切合財全部だ。
通路も全部通行禁止になり、外部への脱出路は完全に閉ざされる」


 ミッションにとって一番大切なのは中にいる人間である。

植民船が航行していた時代では、ミッションは宇宙の休憩所でもあった。

滞在する人間が心地良くいられるように、ミッションは安全が第一でなければならなかった。

宇宙では何が起きるか分からない。

ミッションにとって侵略者のみではなく、自然的災害も脅威なのだ。

その為のセキュリティであり、完全なる防衛システムなのである。

外から完全に身を守る為に、全フロアをシャットアウトするのだ。

ラバットから説明を聞かされて、カイは顔色を変えた。


「早く出ないと駄目じゃねえか!?
俺達まで閉じ込められるぞ!」

「だーかーら、さっきからそう言ってるじゃねえか」

「もっと早く言えよ!
ちんたらのんびりしている暇はねえ、とっとと行こうぜ。
んしょ!・・・だだだだだっ!?」

「腕、怪我しているんだろう。無理すんなよ」

「う・・・うっせえ・・・」


 包帯の巻いている腕を抑えて、カイは激痛で悶絶する。

それでも荷物を落とさない辺りが、カイなりの見栄と維持だった。

元気にはなったものの、傷ついた腕は応急処置のままだった。

負担をかければ、当然痛みも発生する。

カイは急ぎ足で、尚且つ慎重に歩みを進める。

あくまで自力で頑張ろうとするカイに、ラバットは苦笑気味だった。

そのまま通路を平走する二人。

やがて曲がり角に差し掛かった辺りで、カイは汗を拭いながら独り言のように言った。


「そういや、俺船がなかったんだよな。
どうするかな・・・・」


 カイが乗ってきた予備ドレッドは大破している。

修理すれば何とかなるかもしれないが、カイには知識も道具もない。


「なんだ、俺の船に乗ればいいじゃねえか」

 気軽に言うラバットに、カイはかえって驚いてしまった。


「乗っていいのかよ!?」

「乗っていいのかってお前・・・・
じゃあどうやってここから出る気だったんだ?」

「う・・・・」


 そもそもミッションに辿り着いたのも偶然である。

もしもここに到着しなければ、宇宙で餓死して彷徨っていただろう。

ラバットの申し出は、カイには非常に魅力的だった。


「う〜ん・・・・」


 ラバットの申し出は確かに嬉しい。

宇宙船がなければ故郷に帰る事はおろか、ここに出る事も出来なくなる。

一人でこのままいるよりも、ラバットのような頼りがいのある人間がいる方が心強い。

だが―――


「ん?」

「!?な、何だ!?
今度は何があった?」


 ラバットの漏らす声に考え事を止めて顔を上げるカイ。

そのまま視線を動かすと、ラバットは小型装置を見て面白そうに笑っていた。


「好都合な展開に転がり込んできたな・・・」

「好都合?何が?」

「やっこさん、お前の言う刈り取りの船と戦い始めてる。
どうやらこのやかましい警報は、連中の戦艦に反応したのかもな」

「へえ〜、どれどれ・・・・」


 ミッションのセキュリティと刈り取りがぶつかり合っている――

その事実が本当なら、カイやラバットには都合は良かった。

どちらが勝っても負けても、二人には関係がない。

互いに意識しているのなら、戦い合っている隙にでも脱出すればいいのだ。

カイは喜色満面で、ラバットの手元の装置を覗き込んだ。

小型装置が映し出す外の映像。

応戦しているうセキュリティメカ。

そして――


「・・・・あれ?
どっかで見たような船だな〜って!?
ニル・ヴァーナじゃねえか!?」


 事ここに至って、カイは『刈り取り』の正体を判明した。

























<to be continues>

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