とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第十二話




 変異性遺伝子障害Pケース――"種別XXX"

  Pケースとされる障害を発現した者はHGSの中でも強い力を持ち、健常者を対等の人間とは思えない選民思想を持つ危険性を秘めている。

。 フィアッセ・クリステラこそが、変異性遺伝子障害PケースのHGSであるのだと告げられる。フィリスやリスティの言っていた事とも、整合性は取れている。


半ば愕然とさせられてしまったが、HGSの事自体は事前に聞かされていたので何とか気を取り直せた。


「高機能性遺伝子障害を治療する方法はないのか」

『遺伝子の障害ですわよ、存在そのものを改善でもしない限り根治など夢のまた夢ですわ。
HGSは脳内器官が異常発達する要因でもありますので、まずは脳を弄くるところから始めないといけませんわね。

つまり変異性遺伝子障害Pケースを治療できたとしても、フィアッセ・クリステラたらしめる全てが失われますわ』


 カレンは冷酷に告げる。もとよりこの女は金と権力のことしか頭にないが、その厳しさはむしろ俺への優しさに聞こえた。

夢物語を見るのは本人の勝手だが、現実逃避したところで物事が解決したりはしない。現実は常に残酷であり、奇跡が入り込む余地はない。

一瞬法術のことを考えたが発動条件を含めて不明であり、しかも奇跡を起こしたところでフィアッセ本人の在り方が失われてしまってはどうしようもなかった。


ディアーナはロシアンマフィアのボスでありながら、俺に全てのベクトルを向けている分女としての配慮は行ってくれた。


『遺伝子治療となれば、むしろ貴方様の分野でありましょう。月村すずか様やローゼさんの事もありますし、彼女達の技術者を頼れませんか』

「クローン研究や自動人形技術か、一応当たってみるけど厳しそうだな……」


 ディアーナの言う技術者とはジェイル・スカリエッティの事だ。あいつは確かに生命に関する研究者でもある。

彼女達の前では打ち明けなかったが、戦闘機人達は生命研究の成果だ。遺伝子操作にいたっては、あのクソ野郎は俺の遺伝子を作ってヴィヴィオやディード達を誕生させている。

HGSの事を相談するにはフィアッセ達の事を打ち明けないといけないのだが、あまりあいつに身内のことまで知らせたくない。


世間様に迷惑をかける悪用はしないだろうが、悪用しなければ何してもいいとかいう事後承諾的な悪ノリしやがるからな。


『あの女の子とは諦めろと言いたいが、貴様は腹立たしくも妙な優しさを見せる時があるからな……どうせ何を言っても庇い立てするのであろう。
言い争いしても埒が明かないので、ひとまず話を戻そう。

チャイニーズマフィアである龍は追い詰められて、我々夜の一族に対抗する戦力を求めている。それがHGSであり、フィアッセ・クリステラが関係している点までは話したな』

「あいつに脅迫状が届いたのは、"種別XXX"であるあいつを狙っているのか」

『ただ単純に狙っているのであれば、脅迫状は無意味だろう。本人を狙っているのであれば、いちいち脅迫なぞせずともさっさと攫えばいい。
相当追い詰められているとはいえ、連中はマフィアだ。歌姫一人攫うくらい、造作もないからな』

「フィアッセ本人に脅迫状が渡されたのは妙だと、俺も思ってはいた。脅迫自体にも意味があるということか」


 夜の一族の新しき長であるカーミラは、個人の私情を交えずに事を押し進める。同情論が湧き上がらないだけでも、俺としては救われた思いだった。

助けるか、見捨てるか。この点については徹底的に論じたところで、平行線に終わるからだ。彼女達は世界に名を馳せる人物だけあって、その点は熟知している。

俺も他人ならさっさと切り捨てるだろうが、フィアッセ・クリステラとなればそうはいかない。恋愛感情なんぞみじんもないが、気心知れた相手を見捨てるのは心苦しい。


優しさがどうとかではなく、見捨てて死なせれば恭也達にも恨まれてしまうからだ。人間関係とは、それくらい面倒くさい。


『フィアッセ・クリステラの両親はチャリティーを心掛けているのはご存知ですね。
彼らは収益金と寄付金を元に、開発途上国の子供達が等しく教育を受けることができるよう支援活動を行っています。

特に父親のクリステラ議員は英国の有力議員で各国にも各国にも強いつながりを持っており、パソコン教室や音楽や芸術等の情操教育にも取り組んでおられるのです』

「音楽や芸術――クリステラ・ソングスクールの活動とも連携しているのか」

『母親のフィオレは開発途上国の貧民生まれで、本人が子供の頃から歌などによる芸術的分野で生活していたのです。
自分自身の辛い子供時代の経験あっての活動なのでしょう。一人一人の子どもたちの可能性を引き出すための取り組みを、積極的に行っております。

将来を担う子どもたちが能力を生かして活躍できるよう、チャリティーを通じて質の高い教育の普及活動を支援しているという事です』


 チャリティーコンサートにそれほどの理念があったとは思わなかった。金持ちの道楽や、富豪の偽善ではなく、本人の経験談から始めた奉仕活動だったのか。

正直いって感心はするが、共感は到底できなかった。俺も子供の頃は孤児院育ちで、貧しい生活を送っていた。フィアッセの母親ほどではないにしろ、恵まれた人生を送っていない。

今でこそアリサ達によって不自由しない生活を過ごせているが、だからといって他のガキ共にまで奉仕する精神はない。自分が豊かになったからといって、他人を豊かにしようとは思わなかった。


もう一度いうが、フィアッセの母親は立派だとは思う。ただ自分には絶対できないというだけだ。


『今の話を聞いていてピンとくるものはありませんか、貴方様』

「頭の悪い俺に察しを求められても……チャリティーで教育、芸術に音楽――あ、HGSの!?」


『ご明察です。開発途上国には教育や研究機関と称して、子供達を教育及び洗脳を施す施設が幾つもございます。
その中にはHGSそのものではないにしろ、脳内器官や遺伝子の発達を目指して子供達を処置する機関もありますね』

『ふん、貴様はロシアンマフィアの女だ。下僕に悪印象を与えたくなくて言葉を濁しているようだが、見くびるな。
我の唯一たる下僕はこの程度の現実で狼狽えるような男ではない』

『……失礼いたしました。感謝します、長様。

貴方様。マフィアは組織として幼少期より子供達を教育する機関を抱えており、構成員として取り込むか、優秀な人材を他国へ派遣したりしているのです。
いわゆる人材ビジネス、昔で言う奴隷商人ですね。いつの時代も、裏社会において人は資材として扱われています。

特にチャイニーズマフィアである龍は歴史の長い組織、そうした教育機関は多く抱えていたでしょう』

「……チャリティーコンサートはそうした人材ビジネスの障害になると?」

『単なる個人のチャリティー活動であれば、いちいち目くじらは立てません。ただし"クリステラ"の冠を抱けば訳が違ってくる。
クリステラソングスクール校長と英国の有力議員による活動であれば、開発途上国の教育機関そのものに鋭いメスが入れられる。

途上国を取り込んでいたマフィアの研究機関にも表立った活動はできなくなり、政治的な追求がされる危険性すらあり得るのです』


 チャリティーによる慈善の精神などによって、社会全体の利益のために行われる活動そのものであれば、武装テロ組織も脅迫などしたりはしない。

慈善とはそもそも情けや哀れみをかけ、貧困など恵まれない人々や災害や紛争などの被害にあった人々に経済的な援助をすることを指している。

それだけならともかく、クリステラの慈善活動は時間や労力、金銭、物品などを寄付される事でボランティア活動が広がり、社会貢献や福祉活動などへの関心が高まってしまう。


開発途上を発展させる国作りを促進するといった大きな意義があれば、国際的活動として取り上げられてしまう。


『高機能性遺伝子障害の患者は脳内器官の異常発達、細胞に含まれる珪素等の要素から特別な能力を持つようになります。
つまり超能力者になってしまう病気なのですが、HGSは迫害や差別される危険性を孕んでいるため、世間には公表されていません。

マフィア達はその事実を悪用して、今後HSGによる超能力者を新しき戦力として育成するべく働きかけている。

クリステラのチャリティー活動は、窮地に追い込まれている彼らの打開策を知らずとも台無しにしてしまう危険性があるということです』

『だからクリステラの娘であるフィアッセに脅迫状を送ったのか』


『クリステラへの脅迫と、フィアッセへの警告ですわね――自分達はHSGをよく知っていると』


 思っていたより根の深い問題だった……だから俺が考えていたすべての可能性が思い当たっていると、カレン達は言っていたのか。

クリステラ両親への脅迫、フィアッセ本人を狙う警告、HGS関連の組織的犯行――


チャイニーズマフィアは全て分かっていて、クリステラそのものを破滅させようとしている。


『後はやっぱりうさぎへの宣戦布告かな』

「えっ、俺……!?」

『クリステラと関わりがあるのは当然、バレているよ。そうでなくても、夜の一族との関係は絶対わかってる。
脅迫状をフィアッセ・クリステラに送ったら、"サムライ"が出てくると高を括っているんでしょう。

うさぎもバッチリ狙われてるよ、アハハ』


 なんだと、ついでも俺も殺すつもりなのかあいつら!?

言われてみれば当然の帰結ではあったが、どこか他人事だったのに巻き込まれてしまっている。


うぐぐ、どう転んだって簡単に解決しないだろうコレ。














<続く>








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