とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第九十四話




 電波法の成立とテレビジョン放送の正式発表。通信技術開発はCW社とポルトフィーノ商会提携により、惑星エルトリアで行われる事で話がついた。

議会による可決なので所々の手続きはまだ残されているが、大勢は決したと言える。惑星エルトリアの退去命令もテレビジョン発表の後では世論が味方となり、連邦政府も強行できなくなる。

惑星エルトリアも開発と復興がめざましく進んでいるので、強制退去という暴挙も早々は行えなくなる。そもそもの話強制退去も強引ではあったので、これ以上の強行は不可能だろう。


電波法可決の朗報はリヴィエラ・ポルトフィーノにより発表され、テレビジョン方法による通信革命はマスメディアに大いに喧伝された。


『お話は分かりました。出来ればリョウスケ様と共同で革命を邁進したいところではありますが、今のお祭り騒ぎを考えれば姿をお見せしない方がむしろ効果的かも知れません。
しかしながら私の方で事を推し進めますと、どうしても商会への宣言効果に繋がりますがよろしいのですか』

「かまいません。後押しをお願いすることへの依頼料とでも思ってください」

『莫大な収益が見込めますので過剰な報酬ではございますが、了承いたしました』


 こうして地球への帰還について、パートナーであるリヴィエラ・ポルトフィーノとは話がついた。

世界中が大いに沸き立っている中、お祭り騒ぎの中心に居座ればただそれだけで顔が売れる。経済界のみならず、連邦政府中枢に向けた政財界への進出にも繋がるだろう。

連邦政府の有力議員や主要各国の代表者達、それらへの人脈が構築できれば一生安泰と言える。政争に勝利するという意味合いはそれほどまでに大きい。


その権利を俺はリヴィエラに献上することで、一時的な自由を許された。ポルトフィーノ商会と契約できただけでCW社としても十分な旨味があるし、スポンサーのカリーナお嬢様に叱責されることもないだろう。


『ご友人への脅迫と伺いましたが、此度の件に関連しているのでしょうか』

「ご安心ください――と言うのも変ですが、全くの別件です。ただ友人に明白な危害が出る可能性も考慮し、私が話をつけに行く事になりました。
そういった意味でも連邦政府とは少し距離を置いた方がよろしいでしょう。ポルトフィーノ商会にもご迷惑をおかけする事はなくなります」

『お気遣い頂けるのはありがたいのですが、ご迷惑になると思い込まないでくださいね。
私とリョウスケ様との関係は脅迫に屈することなどございません。困った事がありましたら、いつでも仰ってください』

「ありがとうございます、今後ともよろしくお願い致します」

『はい、どうぞ末永く良縁を築けますように』


 快く見送られて通信を終える。気を使ったつもりだが、逆に気を使われてしまった。相手に尽くすタイプでとても魅力的な女性であった。

俺が留守にすることで迷惑をかけるかと思ったが、俺の不在という事実も手札とするつもりらしい。この状況を見据えた戦略を着々と打っていて、肝を冷やす思いだった。

俺はあくまでエルトリアの主権を勝ち取ることが目的だったが、結果を見ればポルトフィーノ商会が一躍経済界のトップに躍り出た。


通信という情報分野の必須領域を勝ち取れた彼女がこの先、時の人となるだろう。天下を取る人間というのは本当に天に愛されている。


「話もついたし、地球へ帰る準備をするか」


 地球からエルトリアへの出発は大層な準備と時間が必要だったが、エルトリアから地球に帰るだけであればそれほどの準備は必要ない。

まず第一として大半の人材は残しておく事になった。エルトリアの開発は半ばであり、復興にはまだまだ時間がかかる。町や村なんて単位ではない、惑星一つ丸ごと作り直さなければならない。

当然だが、ユーリとイリスはめでたく居残り組である。イリスなんぞミッドチルダでテロ事件を起こしたばかりなのだ、国外追放された身で帰る訳にはいかない。


まあ地球へ行く分には時空管理局も見咎めないだろうが、開拓途中で投げ出す訳にはいかなかった。


「お父さん、帰っちゃうんですか……」

「ふふん、残念だったわね。大好きなお父さんから離れて、あんたはアタシと労働生活なのよ!」

「謎のマウントを取っているマスターは私が見ておきますので、お父様はどうぞお気をつけて」

「あんた本当に図々しくなったわね、イクス!?」


 ものすごくガッカリして肩を落とすユーリに、してやったりと言わんばかりの笑みを浮かべるイリス。そんな二人を横目に、イクスヴェリアが苦笑して見送ってくれた。

そういえばなんだかんだでユーリと離れるのは、聖地で合流して以来初めてかもしれない。いつもこの子は人見知りながらも、常に俺の力になってくれた。

ミッドチルダという魔導世界でもトップクラスを誇るユーリの強さには、本当に随分と助けられた。この子がいなければ、悲劇の幾つかは回避できなかっただろう。


そんな我が子を気にかけてくれるのは、やはり同じく我が子だった。


「おとーさん、抱っこ」

「ナハトヴァール、お前はお父さんと一緒に行くか」

「ううん、ユーリといっしょ!」

「ナハト、お姉ちゃんと一緒にいてくれるの!?」

「おー!」


 ああ、なるほど、抱っこというのはしばらくお別れの抱擁ということか。強くギュッとしてやると、ムフーとご満悦に笑っている。

ナハトヴァールは本能で危機を察する。この先危ないことがあるのは地球へ帰る俺より、エルトリアへ残るユーリ達ということだろうか。

モンスターの暴走などもあったし、まだまだエルトリアは不安定な状況だ。この子が居たほうが、ユーリとしても安心できるかもしれない。


エルトリアをしばらく留守にする以上、ナハトヴァールが居てくれたほうが安心だった。


「うーん、ボクはどうしようかな……シュテルは向こうにいるんだよね」

「ああ、俺の留守役で連邦政府や商会との交渉や調整にあたってくれる事になった」


 ――シュテル本人は俺と一緒に帰りたかったようだが、さすがに連邦政府主星に誰も居ないのはまずいので残ってもらった。

アリサは地球へ帰還し、リーゼアリアはエルトリアのトップ代役を任されており、連邦政府側の交渉役としてシュテルが担当するしかなかったのだ。

本人は気落ちしていたが、それでも俺の留守役という事で奮い立たせて何とか頑張ってもらう事となった。


議会でもあいつやアリサのカンペで乗り切っていたので、実は俺より余程政治屋にむいていたりする。


「レヴィ、お前は残って家族を守れ。我が、父と一緒に帰る」

「えー、ずるいよディアーチェ! なんでボクが留守番なのさ!」

「一言でいうと、疲れた。帰りたい」

「うわっ……珍しく弱音吐いてる。何かしたのパパ」

「何かしたというか、させたというべきか」


 天空から降り注ぐ衛星兵器の爆撃を全部防げというミッションを何とか達成したディアーチェは、灰色の髪より濃い疲労を滲ませて帰還を要請した。人間疲れると、故郷が恋しくなるものなのだろうか。

レヴィもふくれっ面をしていたが、自信家なディアーチェが気落ちしているのを見て同情したらしい。レヴィは基本我儘だが、優しい子でもあるので留守番を引き受けてくれた。

ディアーチェも無責任に放り出すのではなく、むしろ聖地で留守を任せているヴィヴィオも気にしているようだ。ヴィヴィオは頭はいいが、聖王代理を務めるのは幼いので様子を見に行くとの事だった。


ヴィヴィオの話が出たところで、戦闘機人チームからも手が挙がった。


「お父様。こちらも皆で話し合いまして、私とオットーがお父様と同行させて頂くことになりました」

「おや、珍しい。セッテ団長が留守番なのか」

「父さんが酷使したクアットロが過労で入院することになって、流石に気の毒になったんだって」

「うーん、ちょっと働かせすぎたか……」


 俺の遺伝子を元に製造された戦闘機人であるディードとオットーが地球へ同行する事になった。許可したセッテ団長はチンク達を連れて、クアットロのお見舞いに行ってくれている。

チンク達は最初から留守番を申し出ている。戦闘面は勿論だが、工作といった裏方作業にも適した能力を持つ彼女達はエルトリアの復興を手伝ってくれるらしい。

俺の護衛との両立に苦悩したそうだが、地球への帰還はあくまでフィアッセの脅迫状絡みだ。戦闘機人達が出張る話でもないと説明して、納得してもらった。


フェイト達は以前話した通り、留守番――という事で、帰還する面々はこれで決まった。


「お姉ちゃんやエルトリアの事は、あたしに任せてください。代わりと言ってはなんですが、ミッドチルダで集中治療中のお父さん達のことよろしくお願いします!」

「ああ、分かった。ジェイルの奴は一度決めたことに手を抜く真似はしないだろうが、様子を見に行ってくるよ」


 ――これで一旦、エルトリアの事は終わりとなる。

ここへ当初来た時は一面の荒野で、肝心の住民は瀕死の病。惑星の主権は奪われて、キリエやアミティエはただ泣くしかなかった。

俺も安請け合いをしてしまいどうなることかと思ったが、意外とどうにかなった。法術なんぞという奇跡に頼らず、皆の力で乗り越えられた。


英雄談なんてものはなかったけれど、思い出話としてはなかなか良かったのではないだろうか。














<エピローグへ続く>








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