とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第八十四話




 リヴィエラ様はありがたくも、惑星エルトリアへ向けて商船を出航させてくれた。

以前ポルポ議員やリヴィエラ様が乗船された船は旅客を護送する目的で使用される船舶だったが、こちらは貨物などを運搬する目的で使用される商船だった。

乗り心地は当然旅客用とは比べ物にならないが、速さと安全第一でこちらの方がありがたい。聡明な彼女はこちらの事情を察して、手配してくれたのだ。気遣いの出来る女性で、縁談が殺到するのも頷ける。


運搬目的の船なので当然――頑丈に、出来ている。


「!? 剣士さん、攻撃が来ます!」

「何だと――」


「固有武装、シルバーケープ」


 月村すずかが護衛の立場としてまず俺に警告し、その意図を察したクアットロが即座に戦闘機人が装備する固有武装を発動させる。この程度の連携プレーはもはや阿吽の呼吸で彼女達は行える

。 クアットロが普段羽織っているケープは固有武装で、高いステルス性能と魔法攻撃に対する耐性を持っている。固有武装は本人を守るための装備で、船を守るようには出来ていない。

ただしジェイル・スカリエッティとクアットロが改良したシルバーケープは、本人を基軸に幅広い範囲でステルスを発揮することが出来る。船の中心部に居た彼女を基軸に、商船は覆い隠された。


次の瞬間宇宙を切り裂く反響音が響き渡り、商船は大きく揺さぶられた。


「真空の宇宙で爆発音が響くってのは、何だか変な感覚だな」

「シルバーケープで船体を隠すことは出来ますが、生憎とシールド機能はございませんので、目標を回避することくらいが関の山ですわ」

「船体の"声"を聞いた限りでは支障が出ていません」


 商船を襲った攻撃は射撃であると、妹さんやクアットロは断じる。惑星エルトリアへ向かうこの船を襲った目的と、惑星エルトリアとの連絡が途絶えた原因は同一であろう。

妹さんに確認したところ敵目標は不明、クアットロに確認したところ敵影は不明。両者の見解は超遠距離攻撃で、接近しなければ敵を確認することは困難であると説明。

商船内の人員を確認したところ、船員達は皆一様に今後の動向を引き続き行ってくれると快諾。船の安全が脅かされようと、大切な荷物を運ぶことが自分達の仕事だと笑ってくれた。


荷物扱いは彼らなりの冗談なのだろう。リヴィエラ様が選出してくれた船員達は、本当に頼もしかった。


「参謀としては速やかに撤退を指示しますけれど」

「相変わらず自分が不利だと弱腰だな」

「臆病なくらいがちょうどいいのですわ。無謀な正義なんて早死するだけですわよ」


 これでも正確はかなり丸くなっているのだと、ジェイルやウーノが苦笑していたクアットロの進言。正義心なんて欠片もない彼女は、保身に満ちた気遣いで俺に撤退を促した。

自分を守るついでに、仲間や家族を守る。彼女のスタンスはいっそのこと清々しいまでに徹底しており、ここまで来ると庶民としては共感どころか好感が持てるほどだった。

商船は軍船ではなく、攻撃を目的とした兵装は積んでいない。正確に言うと全く無くはないのだが、あくまで連邦政府が定める運搬法に則ったものである。超遠距離攻撃に対応していない。


俺だって自分の命は惜しい。よって俺は責任をもつだけで、判断は他者に委ねた。


「どうする、アミティエ。ユーリ達になにかあったのかはほぼ確実で、俺たちに向けて遠慮のない殺意が向けられている。連邦政府に通報する手段もあるぞ」

「……あたしは政治には詳しくなくて剣士さんに任せっきりでしたが、それでもこれだけは分かります。
採決の日に通報なんてしたら、剣士さんの今日までの苦労が水の泡になってしまう。どういうことになっているか分かりませんけど、政府の力を借りれば今後の主権が勝ち取れない。

無理を言っているのは分かっていますが、自分達でキリエ達を助けたいです。きっとあの子達は今も無事で、あたし達の助けを待って戦い続けてくれています!」


 エルトリアの責任者代理で連邦政府主星に訪れていた彼女は、クアットロとは逆の見解を述べる。敵と戦うことで自分達を守るという狩猟の掟だ。

フローリアン一家は未開拓の危険な惑星で自給自足の生活を行い、モンスターが蔓延る荒野を駆け抜けて自分達を守って戦っていた。彼女達の強さはそうした誇りによって育まれた。

だからこそ政治に弱く外交で追い詰められていたのだが、そちらは俺達がカバーしていた。これからの戦いはむしろ、彼女達の土俵と言える。


アミティエの決断にクアットロは一円も得にならないと呆れていたが、別に反対はしなかった。


「わたくし、戦わずして勝つことを基本戦術としていますの。シルバーカーテンの方が効果的ですけれど、疲れるから嫌ですわよ」

「固有武装の常時展開でかまわない、とにかく敵を翻弄しろ。妹さんはクアットロと連携して、船を守ってくれ」

「お任せ下さい、剣士さん」


 まさか異世界に来て、SFめいた宇宙戦争に巻き込まれるとは思わなかった。自分が本当に映画の中に飛び込んでしまったかのような錯覚を覚える。

その後も敵からの超遠距離射撃は続き、妹さんとクアットロは連携して備える。アミティエは船員達に協力して、船の警戒にあたっている。

優れた乗船者達のチームワークで今のところ船に損害は出ていないが、生きた心地がしないのも事実だった。何しろ一方的に撃ちまくられている上に、船は危険な回避と防御で揺さぶられ続けているのだ。


それでも何とか惑星エルトリアへ距離を縮めることが出来て――



俺達は、真実を知る。



「剣士さん、判明いたしました――”イリス群体”です」

「何だと!?」


 ――増殖機能を持つテラフォーミングユニット、イリス群体。どんな環境にも適応する性質を持ち、無尽蔵に個体を増やして敵地を制圧する増殖兵器である。

無機物や金属を自在に操る厄介な機能を持っており、ミッドチルダではユーリ憎しで自分の分身を作り上げて軍隊化してテロ事件を起こした。量産型に固有型と、厄介な機能を宿した兵器達に大層苦しめられた。

そのイリス群体が再び、俺達を襲っていると妹さんが断じる。


「イリスが俺達を襲っている張本人だというのか、そんな馬鹿な」

「これも見ても同じことが言えますの、陛下」


 クアットロの奴、散々出し惜しみをしていたシルバーカーテンを使用。

彼女の先天固有技能は幻影を操り、対象の知覚を騙すことを旨とする。そのは人のみならず、レーダーや電子システムにも及ぶ。

攻撃や防御の能力をほとんど持たないが電子機能をフルスペック化することには長けており、惑星エルトリアの宙域に飛空する敵影を如実に描写することに成功した。


シルバーカーテンによる映像を見た瞬間、自分の目を疑った。


「衛星砲……」

「あらあら、ずいぶんと見覚えのある兵器ですわね。
確か陛下と懇意にする商会からの依頼で開発した、陛下の娘を名乗るどこぞの元犯罪者が作ったものではありませんでしたっけ」


 正確にいうと、全く同じではない。だが少なくとも、ポルトフィーノ商会より依頼された衛星機の開発コンセプトが確実に流用されている。

イリスが自信満々で開発した衛星は確か連邦政府と主要各国を繋ぐべく、最新の通信技術を用いた画期的な発明で、射程距離は既存とは一線を画すものだった。

エルトリアに連絡がつながらないのも、イリスが妨害していたのであれば頷ける。イリスは惑星エルトリアの遺跡を掌握しており、惑星規模の環境改善に協力していたのだから。


イリスが裏切り者だと楽しげに笑うクアットロを、俺は睥睨する。


「あいつがこんな事をする理由は何なんだ」

「ユーリさんが今もイリスさんの記憶を失ったままですわよね。事件は解決しましたが、事情は何一つ改善されていないのでは?」

「いや、そもそもその記憶が黒幕によって改変されたものではあることは明らかになったじゃないか」

「ですからそれは、事件に対するものですわよね。もう一度言いますけれど、ユーリさんは今もイリスさんの記憶をなくしたままです。
それはつまりイリスさんの事なんて大事に思っていなかった証拠であって、本人達の間には溝があるままではありませんか」


 こいつ、本当に性格が悪いな……クアットロの理屈は分からんでもないが、こいつの目的はあくまで俺を揺さぶって楽しむことでしかない。俺がこんな馬鹿な理屈を信じるなんて、夢にも思っていないだろう。

イリス本人の裏切りはありえない。多分もう無いはずだが、黒幕がイリスに何かを仕込んでいた可能性のほうがずっと戦い。事件の首謀者はもう捕まっているが、あいつはイリスを一時的に操っていたのだから。

ただ裏切りの可能性がゼロではない以上、信じようとしたって疑念は残る。クアットロの狙いはそこにあるのだろう。


本当にユーリとの関係を疎んで、何かを起こした可能性だってあるのだから。


「一応言っておきますけれど、殺人事件なんて大抵個人の私欲や私怨によるものですわよ」

「……」













<続く>








小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。


<*のみ必須項目です>

名前(HN)

メールアドレス

HomePage

*読んで頂いた作品

*総合評価

A(とてもよかった)B(よかった) C(ふつう)D(あまりよくなかった) E(よくなかった)F(わからない)

よろしければ感想をお願いします











[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ]





Powered by FormMailer.