とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第五十八話




「エルトリアの主権は何としても俺が勝ち取るとして、開拓の方はどうなっているんだ」

『こちら開拓班。市町村を基礎的な地方公共団体として定めていまーす』


 八神はやての元から離れて随分と経過しているが、開拓班で活動するシャマルの声に悲壮感はない。残してきたヴィータ達を信頼して、後を任せているのだろう。

リーゼアリアはユーリ達の環境改善に貢献し、シャマルは開拓側の分析等を主に行っている。どちらも同じに見えるが、産業的な意味合いでは全然異なるらしい。プロにお任せだった。

市町村は古代より生きる妖怪達が長年の経験を生かして構築し、広域的な地方公共団体として機能する開拓側と対等の関係を作り上げている。


妖怪達の中には神や魔に等しき階級高き者達もいて、人の歴史を知るだけに市町村を作り上げるのに長けている。原始時代より生きている連中もいるしな、土器とかも作れそうだ。


『主たる生業はアリサちゃんの指導通り、農業や手工業、商業のいずれかであるかを問わずに今それぞれ動き出しています。
ただ権利義務を承認された身分階層を示すべきという意見も出ていて、長達の間で論議されているわね』

「身分階層……? 妖怪達の間でそんなのがあるのか」

『勢力がどうしたって差が出てくるもの。自治的共同体の単位である町に相当するかどうか、村か町かの認定についても実質的に都市的な共同体で決める必要性が出てくるから』


 なるほど、妖怪と一括りにしても多様性はどうしたって生じてくる。孤高に生きる存在もいれば、群れを成して生きる種族だって存在する。

極端な話、龍族と天狗一族を平等に扱えというのも無理な話だ。種族的な力の違いもあれば、勢力としての強さだって隔絶する。勢力争いの果ては戦争しかありえない。

それでも現在論戦で済んでいるのは、彼らが移住希望者だからだ。エルトリアを新しき故郷をしたいがゆえに、横暴を行う訳にはいかない。


我を張って国を成そうとするほどの気概はない。彼らは今それほどまでに追われており、居場所を無くしてきた者達なのだから。


『もめてはいるけれど、龍のお姫様や猟兵団の異神ガルダ様が仲介に入っているのが大きいわね。最大勢力が和を成そうとしているのだから、他も従うしかないわ。
聖地での勢力争いで、貴方に敗北したのが大きかったわね』

「ドエライ目に遭ったんだ、それぐらい大人しくしてもらわないよな」

『後はナハトちゃんの存在が大きいわ。あの子、このエルトリアの実質的なボス兼マスコットになっているわよ』

「あいつ、もしかしてその為にエルトリアに残ったのか……」


 ナハトヴァールは無邪気な赤子で何の野心にも縁がない良い子なのだが、動物のような本能で物事を察していたりする。

聖地では龍族や猟兵団に睨みをきかせ、強敵となりそうな相手を牽制していた。イリス事件ではイリス本人やその背後のマクスウェルを警戒して、ユーリをガッチリ守っていたのだ。

自浄を知らなければ後からそうだったのかとしか思えないほどの先読みで、あの子本人も全ての事情を知っていた訳では決してない。


本能で物事を見透かして、常に行動へ出ている。ありがたくはあるが、恐るべき我が子である。普段は、ニコニコ笑っているだけの子供なのだが。


『勢力や理性が拮抗を保っているからこその、調和ね。だからこそこの均衡が崩れ出すと、治安が乱れる危険があるわ』

「その点は狩猟班頼みだな、シグナム」

『ではシャマルに続き、我らが報告させてもらう』


 剣の騎士シグナムは守護騎士達の間では将を務めており、狩猟班でもリーダーとして積極的に活躍している。

狩猟については古代ベルカでも経験があるらしく、近代化していないベルカでは食糧難を狩猟でカバーしていた切実な事情があったらしい。

平和な日本にいるとあまりピンとこないが、異世界や異星では食糧事情が生活を圧迫するのは珍しくない。貧富に関係なく、生きるために必死な場合があるのだ。


エルトリアは環境が劣悪だっただけに、その点は非常にシビアだった。まさに弱肉強食の世界が繰り広げられている。


『ユーリ達による環境改善はリーゼアリア達の計算によって無難に事を進められているが、やはり環境の変化による影響は出ている。
先の事件、商船を襲ったモンスター達がそれだな。あれは人間というより、外から来た侵入者に向けた視覚というべきか』

「自分達の縄張りを荒らされると誤解したのか」

『誤解というのかどうかは、難しいところだ。理性と言うよりも本能的な行動だからな。
環境変化による影響と先程述べたが、自分達の縄張りが目に見えるほどに激変すれば誰だって混乱もする』

「ふむ、道理だな」


 本能で生きている動物であろうとも、縄張りの変化はすぐに気づく。環境が激変してしまえば、暴走の一つも起こしてしまうだろう。

生体環境まで激変させる真似は計算によってされていないが、エルトリアに元より住んでいた生物達の全てに影響を与えないのは事実上不可能だ。

自分達の縄張りが誰かに荒らされていると分かれば、モンスター達も怒って襲撃を仕掛けてくるだろう。エルトリアでは、人間は万物の霊長ではないのだから。


さりとて黙って殺される訳にはいかない、だからこそ狩猟犯の存在がある。


『住民に害を及ぼす生物、敢えてモンスターと称そうか。私とテスタロッサがチームを率いて、速やかに仕留めている』

『あの、本当に私がリーダーでいいのでしょうか……今までずっと単独行動ばかりだったのですが』

『謙遜するな、テスタロッサ。優しくも強いお前は、部下達に対しても面倒見が良い』


 堂々としているシグナムとは違って、フェイトはひたすら恐縮している。彼女のこれまでを思えば、萎縮するのは無理もない。

何しろ今まで母親のプレシアに従うだけの人生で、母に一度見捨てられてからも何とか立ち上がって事件を解決するのに貢献したのだ。

心の傷は完全には治っていないが、姉の仲介による母との和解でようやく立ち直り始めている。そうした中でバイトとして始めたこの事業だ、緊張くらいはするだろう。


それが他者との行動となれば、元来より人見知りがちな女の子には多少敷居が高いかも知れない。


『宮本の娘であるディードやオットーも、お前には従っているじゃないか』

『あ、あの子達……リョウスケの友達だと名乗った途端、態度を変えたんですが』

「あいつら……極端な奴らだな」


 父の友人だと判明した瞬間に態度を変えるのは我が子としてどうかと思うのだが、処世術と考えれば仕方がないかも知れない。

フェイトの話だと姉妹の連携はスムーズで、後を焦らず我を張らずに仕事をこなしているようだ。フェイトも緊張しながらも、きちんと適切な指示は出しているとの事だった。

チーム編成は意外だったが、意外とフェイトやディード達にとっては社会勉強としていいかもしれない。彼らはまず家族以外の人間と交流を深めていく時期だ。


お互いに実力ある面々だ、力をつけていく上で良い刺激になるだろう。


『狩猟は治安の意味のみに留まらず、産業の発展においても積極的に行っている。アリサのいう産業の発展において、狩猟の価値が高いというのも頷ける話だ。
主やお前のサポートもあって日本での平和な生活に慣れつつはあるが、どちらかといえば我らはこうした生活が本場だからな』

「そうか、古代ベルカだと皮革や油脂、牙や羽毛などを得るために狩猟がおこなわれてきた歴史があるんだな」


 そもそも狩猟とは漁労や採集活動と並んで、人間社会の最初期から存在する生業とされている。

狩猟は生活環境にとって不都合な影響を及ぼす動物を排除する駆除の為であり、野生動物の個体数を調整するという自然保全上の大きな役割も担っている。

そうした狩猟の中で得た毛皮等は交易品として売り、また狩猟で培われた騎射の技術が発展してきた。


狩猟は木材生産や製材や鉱山、炭焼きなど山の諸生業の一面も秘められている。


「アリサは商会を通じて特産品として売り出す計画も推奨していたが、実際のところ見込めそうなのか」

『動物資源としての利用だけでなく、産業や民の希求に適応していく必要がある。
今のところは食糧や毛皮の確保だが、人と獣との境界線を作りながら狩猟品の交易を行っていく流れだな。

交易としての価値を高められば産業として発展させられるが、単なる捕獲や殺生になってしまうと密猟などが起きてしまう』

「なるほど、産業としての価値が出る事自体はいいが、生活を超えた価値を生み出してしまうと狙われてしまう訳だな」

『生息数の調整などを我々が管理したいところだが――』

『狩猟者には進んで生息環境の保全や保護増殖への協力が求めないといけないので、悩ましい問題ですね』


 シビアなシグナムの見解と優しいフェイトの指摘が、狩猟における問題点を洗い出してくれる。

両者の見方は正しく、現在の問題と未来の憂慮を示している。産業として発展させられれば御の字だが、乱獲されるのはエルトリアのイメージを悪くする。

主権を勝ち取るということは、どうしたって連邦政府や主要各国の注目を集めてしまうからな。


この前のポルポ代議員のように物見遊山で来られて、狩猟の遊びなんぞ流行らされたら目も当てられない。


『その点も考慮して、お前の今後には期待している』

『動物さん達のためにも頑張って下さいね、リョウスケ』

「そこまで配慮しないといけないのか!?」


 惑星丸ごとの開拓となれば、政治や経済意外にも配慮しないといけない。

天下無双の夢は消えたと言うのに、国造りでもやらされている気がして頭を抱えたくなる。


意外と自分の夢は叶っているのかも知れないが、考えていたのとは違った方向へ進んでいる気がした。














<続く>








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