VANDREAD連載「Eternal Advance」
Chapter XX "Combat at Christmas2025 the second stage"
クリスマスイブの日。
男達三人は揃って、一つの部屋でくつろいでいた。
カイやバートはともかく、ドゥエロは勤勉な医師ではあるが、珍しく休暇を取らされていた。
彼らが暇そうにしている理由は一つだった。
「クリスマスイブは、夜が本番なんだな」
「盛大なパーティを企画しているらしいよ」
「おかげで我々は邪魔者扱いということだな」
今年のクリスマスは女性が主導することとなっていた。
いわゆる原点への回帰ということで、メジェールの女性達が企画する事となったのだ。
男女共同生活が始まってから男達も参加するようになっていたのだが、元々クリスマスはメジェールで流行っていた催しである。
パーティが始まるまで、男性は厳禁となった。
「そういえば君たち、サンタクロースって知ってるかい?」
「確か白い髯をはやした老人だろう」
「クリスマス・イヴに子供たちにプレゼントを配って回るらしいな」
暇を持て余したのか、バートが男達に問いかける。
サンタクロースの存在は、軍事国家タラークには伝わっていない。
クリスマスという企画も無縁であり、男達が知ったのは女性達から聞かされたからだ。
カイはもう記憶が戻っているが、元々の出生でもクリスマスは無縁だった。
「シャーリーが喜ぶかと思って調べてみたんだけどさ――
サンタクロースはトナカイとかいう動物がひく空飛ぶそりに乗ってくるらしいんだよ」
「……? 空を飛ぶのはまあいいとして、その乗り物に動物を選ぶのは何故なんだ」
「うむ、個人ジェットでも使用したほうが効率的に思えるな」
ちなみに、タラークにはトナカイも存在しない。
地球人のカイもトナカイを見たことはなかった。
そもそもトナカイを現実で見た人物も、もしかしたら第一世代にまで遡っても存在しないかも知れない。
空想上の存在だった。
「子供たちが寝ている間にプレゼントを配るらしいんだよ。
僕としては堂々と渡して喜ぶ姿が見たいんだけどね」
「俺がガキの頃だったら、夜中寝ている時に謎のジジイからプレゼント置かれたら悲鳴上げるかもしれん」
「セキュリティの高い施設内にいたらどうするつもりなんだろうか」
赤いナイトキャップ姿で白ヒゲを生やした、老人の男。
白い大きな袋にクリスマスプレゼントを入れて、肩に担いでやってくる。
一頭立てのトナカイがそりを引く姿で、真夜中に登場。
カイ達は想像して、ゾッとする。
「それがさドゥエロ君、サンタクロースは煙突から入ってくるらしいんだ」
「……真夜中であれば火は起こしていないのであれば不可能ではない、か……ふむ。
それにしても危険な行為だと思うのだが、そこまでプレゼントを渡したいのか」
「さっきも言ったけど、夜中に煙突から入ってこられたら、子供なら泣くぞ」
――この後。
突如停電を起こされて、老人に扮した海賊サンタ達が部屋に押しかけるサプライズがあったのだが――
男達がどんな悲鳴を上げたのか、想像におまかせする。
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