VANDREAD連載「Eternal Advance」
Chapter XX "Combat at Valentine the second stage"
「ついに、今日という日が来た!」
「また何か言い出したぞ、こいつ」
「毎日退屈しない男だ」
タラークでは階級の差があれど、友情の間に差別など存在しない。
海賊達と旅に出て育まれた絆に上下関係はなく、同じ屋根の下で生活していれば家族の如き気安さがある。
男達は日々苦難を乗り越えつつも、束の間の日常を過ごしていた。
「女達に聞いたんだけど、君達今日は何の日か知っているかい?」
「こいつ、何だかんだで女と仲良いよな」
「女性達も無知なバートに色々教えるのは楽しいようだ」
バート・ガルサスという男は普段はおちゃらけたとこだが、実は意外と真面目で優しい人間であることは女性達も分かっている。
そして何よりシャーリーという病弱だった女の子を家族として迎え入れたことで、好感度も上がっている。
女性にモテるタイプでこそないが、少女を家族に持つ扶養者として、女性達から親身に扱われていた。
――ある種異性として扱われていないという点は、幸せか不幸か。
「今日は何を隠そう、バレンタインという日なんだよ。君達、知っていたか!?」
「去年もそんな事言って、一人で盛り上がっていたじゃねえか」
「他でもない君から、延々と語られたぞ」
カイやドゥエロは呆れた顔でそれぞれ感想を述べるが、別にバートを悪く思っていない。
バレンタイン文化を知ったバートは以前、女性達と友好関係を深めるべく一歩踏み出したのだ。
タラークの男がメジェールの女を相手に踏み込んだ関係を望むのは異端であり――
何よりも勇気のいる行為だと知っている。
「今年も何かやるつもりなのか、お前」
「ところがだね、カイ。今年はなんと、あのシャーリーが僕にプレゼントを用意してくれているみたいなんだ!」
「何だ、惚気自慢か」
「語るに落ちるという表現は、この場合は似つかわしくはないかな」
昨年は自分からシャーリーに贈り物をしていたのだが、今年はシャーリーが準備しているようだ。
バレンタインという風習を考えればむしろその方が自然なのだが、バートは興奮した様子で語っている。
本人は感激しているようだが、カイやドゥエロから言わせれば、バートのシャーリーに対する献身的な態度を見れば当然の結果だった。
実に喜ばしいことではあるが、考えもしなかったという事ではない。
「なんでお前、シャーリーが贈り物をくれると分かったんだ」
「カフェテリアに誘ったら、すごい勢いで立ち入り禁止を言われたからね。家族として、僕はピンときたんだよ」
「家族でなくても普通に分かるだろう、それ」
「ふふ、まあ微笑ましいことではあるがな」
カイやドゥエロはバートのはしゃぎぶりに笑いつつも、最初のような気だるい感じは見せていない。
カイ達は気付いていない。彼らは自分が贈り物をもらえるよりも、友人が贈り物を貰えることに喜んでいる。
女性達に好かれるよりも、友人が家族のような少女に好かれている事が大切なのだと、心の底から思っている。
十代半ばを過ぎた少年たち――彼らのバレンタインは恋愛よりも、青春に輝いていた。
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