VANDREAD連載「Eternal Advance」
Chapter 7 -Confidential relation-
Action5 −資格−
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「・・・お前さん、夜くらい静かに出来ないのかい」
「俺だってあんな騒ぎ起こすつもりはなかったんだよ!」
起床時間ではない夜半過ぎに起こされてなのか、頭目マグノはいつもの法衣姿の下でやや不機嫌な表情を見せている。
対するカイも負けずに不機嫌な態度で、マグノの対面に腰掛けていた。
現在時刻は日が変わって数時間経過と言った所で、本当なら両者共にグッスリ寝ている時刻である。
時折マグノはお頭としての職務で起きている時もあるが、大抵この時間帯は自分の部屋で休んでいた。
誰かと交代が出来ない立場である以上、マグノは毎日が必要不可欠な存在なのである。
その為大切な身体を壊さぬように、休める時には休まなければいけないのだ。
そんなマグノの安らかな時間をカイの騒動で無理に起こされて、機嫌が悪くなるのも当然だった。
「深夜にクルーの住居区に侵入すればどうなるか、少しは考えれば分かるだろう。
事実関係を聞いた時は耳を疑ったぞ」
腰を落ち着けているマグノの傍らで、ブザムは直立して対面のカイを睨んでいる。
重い瞼を必死で起こしているマグノとは違って、ブザムはというと昼間と変わらない様子でいた。
今や数百名にもなるマグノ海賊団のお頭を補佐するという立場上、ブザムはオーバーワークぎみに仕事をこなしている。
艦内全体の把握に職務執行、非常事態の対応に慎重な管理、海賊団を成り立たせるためのあらゆる試行錯誤。
毎日が重労働であり、ブザムは休憩時間も惜しんで働き続けている。
ブザムにとっては、昼も夜もさほどの変わりはないと言える。
何かあれば第一に動かなければならず、仕事に望めるように心がまえをきっちりしておかねばならないからだ。
つまりマグノ海賊団副長は昼夜問わず努力して当然であり、当然と思えばなければ勤まらない仕事なのだ。
その立場に抜擢されたブザムはそれこそ期待以上の働きを見せて、大勢の部下に信頼を寄せられる程日夜働き続けている。
今回の騒動時でもブザムは逸早く起床し対処して、混乱を最小限に勤めたのだ。
そんなブザムの指摘に、カイは渋面になって反論する。
「そもそもだな、カフェで飯も満足に食わせないばあさんが悪いんじゃねえか。
それになんだ、あのセキュリティって?
ちょっと踏み込んだだけで大げさ過ぎるんじゃないのか」
カフェテリアを使用できない待遇に猛然と抗議しに行っての結果がこれである。
無用な騒ぎを起こした張本人として、マグノやブザムの重役が使用するこのブリーフィングルームに連れて来させられたのだ。
この場所は通常メイア等のマグノ海賊団重役のみ入室を許される、言わば権威のある部屋である。
問題が起きた場合はここで話し合われ、対策を練る会議を行うのだ。
外部へ情報を漏らしてはいけないシークレットな議題を取り扱う際に使用されるという意味では、カイが連行される場所にはふさわしい。
保安クルーにここへ連れて来られたカイは、一応取り調べという形を取られていた。
「そもそもお前が踏み込んではいけない場所なんだ。
セキュリティが反応するのは当然だ」
「何で俺が行ってはいけねえんだよ!
ちょいと部屋を覗こうとしただけじゃねえか!」
カイの言葉に、マグノとブザムが二人同時に眉を潜める。
「部屋を・・・・」
「・・・・覗く?」
「あ・・・・・・・」
自分の失言に気がついて、カイは慌てて取り繕った。
これ以上立場を悪くする訳にはいかない。
「だ、だから!
人が飲み物も満足に飲めないで困っている時に、ぐうぐういびきかいている奴の部屋を覗いてやろうと思ったんだよ!」
苦しい言い訳だったが、不幸中の幸いか二人は表面的な意味で言葉を受け取った。
マグノは苦々しい表情を緩めて、カイを見やる。
「へえ、アタシの部屋へ来たかったのかい。お前さんならいつでも歓迎だよ」
本気か嘘か判断出来ないマグノの様子に、カイは過剰反応を示す。
げっと腰を浮かして後すざりしながら、カイは指を突きつけて怒鳴った。
「だ、誰がお前の部屋なんか好き好んで行くか!
俺は文句をいいに行ったんだぞ!!」
「おやおや、つれない子だねぇ〜」
これも本当か嘘か判断は出来ない仕草で、マグノは残念そうにそう言ってお茶をすする。
今夜起こしたカイの騒ぎについて会議室で話し合う前に、ブザムが用意した本格的な緑茶であった。
マグノが愛用している湯飲みにきちんと入れる辺り、几帳面なブザムの一面が出ている。
カイにのんびりとした対応をしているマグノに、ブザムは表情を険しくしてマグノの耳元にて進言した。
「お頭。動機はさておいても、問題行動は問題行動です。
カイにはそれ相応の処罰を・・・」
海賊団という裏家業を成り立たせる意味で、マグノもそうだがブザムは規律を重んじる。
組織行動を行う以上最低限のルールは絶対であり、遵守できない者には勤まらない。
このまま野放しにしてはクルーにも悪影響となる。
そう考えての発言を述べるブザムに、マグノは柔らかい微笑で返した。
「そうは言ってもねえ・・・クルー達の動揺は少なかったんだろう?
ここでカイを重い処分にすれば、逆に騒ぎが広まってしまうよ。
うちの子達は賑やかだからね」
「しかし、規律が・・・!」
「落ち着きな、BC。不問にするとはアタシは一言も言ってないよ」
「と、言いますと?」
怪訝な顔をするブザムを尻目に、マグノは表情を変化させる。
それは悪戯好きな子供が見せる楽しさと内面の無邪気さが混在している顔であった。
マグノの様子を見たカイは背中がむずむずして、落ち着かない気分になる。
「何だ、ばあさん。おかしな顔しやがって・・・・
何か企んでいるじゃないだろうな?」
「企むとは人聞きが悪いね。アタシは今後の事について考えているだけさ」
「今後の事?」
ますます不吉な予感がしてカイは尋ねるが、マグノは悪戯っぽい笑顔のまま語らない。
カイは気になって仕方がなかったが、追及しても無駄な事は悟っている。
どうせ又下らない事でも考えているのだろうと、カイはそっぽを向いて話し掛けずにいた。
マグノはカイの様子を観察しながら、ブザムに小声で尋ねる。
「BC、あの子達はきちんと呼んでくれたかい?」
あくまでゆったりとした態度を崩さないまま、マグノはブザムに振り向いて尋ねる。
突然問われてやや困惑しつつも、ブザムはしっかりと頷いた。
「ええ、先程連絡して来るように伝えました。
しかし完全に就寝していたようなので、若干の時間はかかるかもしれません」
ブザムの報告に満足そうに頷いて、ふと見上げた。
「急かす気はないさね。まだ朝まで時間はあるんだ。
BCも座ったらどうだい?」
時間としては勤務外なのにしっかりと姿勢よく立っているブザムに、マグノは苦笑気味に促した。
職務に忠実なメイアにも同じ忠告はしているのだが、ブザムは常日頃からマグノヘのこの態度は崩さない。
礼節に尊厳を交えての復調としての姿勢である事はマグノにも分かっているが、こうも真面目だとマグノの方が肩を凝ってしまう。
マグノとしてはブザムの並外れた頭脳と才能の持ち主である事は承知しているものの、もう少しファジーでいてもらいたいとは思っている。
そうしたマグノの進めに、ブザムは小さく首を振った。
「いえ、疲れませんのでこのままで結構です。
彼等が来たらすぐにでも説明しなければいけませんから」
「彼ら?」
ブザムの言葉に引っかかるものを感じて、対面側で黙って聞いていたカイが口を挟んだ。
指摘された事について特に動揺も見せず、ブザムは冷静に答える。
「彼らだ。お前と同じく、彼らにも話がある」
「あいつらに話?一体何・・・・・・」
問い掛けようとするカイに合わせるかのように、突如ブリーフィング・ルームの扉にノック音が響く。
ブザムはカイと目で制して、鋭い視線で扉を見つめる。
すると申し合わせたかのように、扉の向こうから二種類の声が中に飛び込んで来た。
「緊急の用との事で来ましたが、何かあったのですか?」
「お頭さ〜ん!副長さ〜ん!お呼びとのことでバート・カルザス、ただいま参上いたしました!」
冷静な声と元気溌剌の声。
姿が見えなくとも分かる二人の突如の訪問に、カイは呆れ気味でコメントした。
「・・・夜中なのに元気な奴らだな」
「それはお前には言われたくはないだろうな、二人とも」
ブザムの冷たい指摘が合図だったように、待ち人だったバートとドゥエロの二人が中に入って来た。
カイ・ドゥエロ・バート、融合戦艦ニル・ヴァーナにいる男三人。
彼らを集結させた当の本人であるマグノは、三人が揃った光景を見て一人静かに微笑んだ。
「・・・・どうでもいいけど着替えてこいよ、お前」
「しょうがないだろう。僕はさっきまで寝てたんだぞ。
ふぁ〜あ・・・・」
パジャマにナイトキャップ付きという寝巻き姿のままのバートが、盛大な欠伸をしてカイの隣に座った。
カイはげんなりとした様子だったが、あえて指摘するまでもないと思ったのかブザムやマグノは何も言わない。
反面きちんとした白衣姿のドゥエロは突然起こされたのにも関わらず、普段通りのままでゆっくりと話し掛けた。
「早速だが、我々をこのような夜分にお呼びした理由を伺いたい。
察する所カイがまた何かしでかしたようですが」
プライベートルームエリアの非常警報は、ドゥエロ達が就寝していた旧艦区までは流れていない。
艦内のトラブルに関しては船全体に支障が出るアクシデント以外は、通常それぞれの持ち場で対処を求められるのが決まりである。
小規模なトラブルに艦内全体が騒げば騒ぐほど、無用な諍いが生まれるからだ。
当然就寝していた二人は、カイが起こしてしまった騒ぎに関しては殆ど何も知らない。
ドゥエロが勘付いたのは、ブザムより起床を促された際にカイが監房内にいなかったというただそれだけの事実からだった。
「またお前何かしたのか!?もう勘弁してくれよ〜
こっちまで被害が及ぶのは嫌だぞ、僕は」
ドゥエロの指摘を疑わないバートもまた、カイを知りつつある人間の一人だと言える。
二人の冷たい視線に晒されたカイは、両者を交互に見つめて上擦った声を上げた。
「ひ、人をトラブルメーカーみたいに言うんじゃねえ!
俺はただクマちゃんにだな・・・・・!」
「クマ・・・」
「・・・・ちゃん?」
「あ・・・・・・」
また自分が余計な事を言いそうになったのに気づいて、カイは慌てて口を閉ざした。
つくづく正直な性分の自分が恨めしい。
疑問符を浮かべる男二人に慌てて咳払いをしながら、言葉を修正する。
「と、とにかく、俺はただ喉が渇いたので飲み物を飲みにいっただけだ!
なのに、この目の前の年寄りが俺に嫌がらせをして飲ませないようにしてたんだぞ!
男としてこれは許せんだろう」
「それで何をしたんだ?」
「ぐ・・・・」
単刀直入に切り出すドゥエロに、カイは言葉に詰まった。
隣のバートは何となく予想がついたのか、やれやれと首を振る。
「お前はちょっと物事に短絡的過ぎるな。
僕のように要領よく生きないと人生疲れてしまうよ」
「やかましい!お前のどこが要領がいいんだ!」
いきり立つカイをからかうバートを目の前に、ドゥエロは冷静な顔に疲れの色を宿して言った。
「それでカイはお頭の部屋に行って揉め事を起こしたようですね」
「正確には部屋のあるエリアに足を踏み入れて、だがな」
ドゥエロの推測に補足して、ブザムが言葉を添える。
何にしてもカイが揉め事を起こして、その関連で自分達が呼ばれたのだとドゥエロが理解した。
一方のバートはカイとの口争いを半ばで終わらせて、目の前のマグノに手の平を合わせる。
「そ、それで僕達まで呼ばれたのは、れ、連帯責任を言うことでしょうか?
あの〜、こいつの行動に関しては僕もドゥエロ君も一切合財関わっていませんから、その、あの・・・」
「て、てめえ!そういうのありか、こら!?」
カイを全く庇う気のないバートに、カイは思わず立ち上がって指をさした。
「あーあー、どうせお前はそういう友達甲斐のない奴だと思ってたよ。
人をあっさり見捨てるなんて、てめえの良心が咎めないのか!」
無茶苦茶な言い様にバートも思わず立ち上がって、カイに指を刺した。
「どうして僕達まで責任を取らないといけないんだよ!
君がやったんだから、君が最後まで責任をとればいいだろう!」
「人でなしか、貴様!!」
「一般論だ!!」
「う〜!!!」
「ふ〜!!!」
牽制し合う二人。
互いに睨み合って唸り声を漏らすその光景は子供の喧嘩と全く変わりはない。
仲介をする気も起こらずに、ドゥエロは二人を好ましい目で見ていた。
良くも悪くも、二人の中は進展しているのだと気づいて。
だが遠巻きに見れば見苦しい事には変わりはなく、呆れ果てたブザムが声を張り上げた。
「止さないか、二人とも!お頭の前だぞ!」
「へん・・・・・・」
「ふん・・・・・・」
互いにそっぽを向いて、二人は渋々といった様子で椅子に座りなおした。
一部始終を黙ってみていたマグノは頃合と見たのか、男三人に視点を向けて口を開く。
「こんな朝早くに呼びつけて済まなかったね。
実は二人を呼んだのは、前々から決めていたお前さんら三人のクルーとしての待遇について話しておこうと思ったんだよ」
「待遇、ですか?」
本格的な話に移行されたのだと、ドゥエロも慎重な表情で聞き返す。
マグノも同様に真剣な表情で頷いて話を続ける。
「数日前の敵襲撃では、お前さん達は本当によくやってくれた。
あの戦い、アタシ等だけでは生き残れたかどうかも怪しかったよ」
「お頭!?」
「BC、アタシは事実を言ってるんだ。
バートは操舵手として、苛烈な攻撃の渦にも逃げずに船を守りきった。
ドクターがいなければ、死傷者が出ても不思議じゃないかったはずさ」
この船に捕虜として扱われての初めての褒め言葉だった。
バートは感激したように瞳を涙で滲ませて、ドゥエロも悪い気はしないのか口元を緩めている。
「特に坊やの活躍は目覚しかったね。
皆を激励しての奇抜な作戦の展開には、さすがのBCも目を白黒させたよ」
カイは驚いたように目を見開いて、傍らのブザムを見る。
普段の冷静沈着なブザムが自分の戦いぶりに驚いていたというのだから無理もない。
ブザムは否定する事もなく、淡々と述べた。
「不確定な要素の高い作戦ではあったが、私も見事だったと思っている。
失敗を恐れてばかりでは駄目なのだと学ばされた。
ふふ、まさかお前に教わるとは思ってなかったがな」
ブザムの賞賛に、カイは照れたように頬を撫でた。
三人の喜ぶ様子を暖かく見つめて、マグノは本題に入った。
「そこで、そろそろお前さんにもきちんとした権限を与えようと思ったのさ。
お前さん達はもう立派なうちのクルーだからね・・・」
そう言ってマグノが懐より忍ばせていた物を取り出して、それぞれ三人の前に差し出した。
カイは神妙に受け取って、マグノより授かった物を見つめる。
「カード?何だこれ」
光沢のある銀色をした四角いカードをひらひらさせて、カイはマグノに尋ねた。
三人が受け取ったのを確認して、マグノは説明する。
「うちの子達がセキュリティカードとか、ポイントカードとか呼んでいる物さね。
ようするに、うちが保有している施設を使用できる許可証だと思ってくれればいい」
マグノの言葉に具体的な用例を交えて、ブザムがカイ達に説明を入れる。
マグノ海賊団では膨大な設備と資源運用を行って大勢のクルー達をまかなっているが、その全てが無尽蔵である訳ではない。
例えば食料は食べれば当然なくなっていく。物資は使い続ければ減り続ける。
機械は使用すればするほどに磨耗して機能後退を余儀なくされる。
クルー一人においてでも、我が物顔で好き勝手をすればその分目減りして他のクルーの生活が圧迫されてしまう事となる。
その為物資類を有効活用する為に登場したのが、このカードシステムである。
クルーとしてどれほど貢献出来たかによってカードにポイントが加算されて、ポイント分だけの活用が出来る。
カフェテラスではポイント分の食事が出来るように、レジではポイント分の武装が施せるように。
施設ではポイントに見合った運用が出来るように、管理体制の一環としてカードが使用できるという事である。
同時にカードは自分の身分証明でもあり、カード内のデータに自分の情報が入力されている。
「プライベートエリアへの進入を許可されるのは、セキュリティ7が必要となる。
カイはその権限を与えられていない為に、侵入者とみなされたのだ」
「なるほどね・・・つまりこのカードがあれば入れるって事か。
めんどくさいやり方がまかり通っているんだな・・・
前からこんなものあったっけ?」
カイはうんざりした様子でカードを弄んだ。
結局何をするにしても、きちんとした対応をしなければいけないという事になる。
以前自分が女の仕事を手伝った際にはなかった事なので、カイは疑問を表した。
「施設類に関しては以前からあった。
カイが以前見習いとして職場を渡り歩いた時は、お頭の一存で許可が出ていたんだ。
もっともセキュリティに関しては存在しなかったがな」
「え?どういう事だ?」
ブザムの言葉の最後にカイが首を傾げていると、ドゥエロが気づいたように指摘する。
「我々がいるからだ」
ドゥエロの一言が正しかったのか、ブザムは小さく頷いて言った。
「男を警戒しているのは今も昔も変わりはない。
カイのように男に好き勝手されては困るとの事で、それぞれの場所にセキュリティを設けたのだ。
・・・まさか本当に出番があるとは思わなかった」
先の一件を言っているのだろう。
ブザムは頭痛がするように、額を抑えている。
案外このシステムが適用されたのは男達がどうこうと言うより、カイが好き勝手ばかりしているからという意味合いが強いのかもしれない。
カイは少々押され気味だったが、気を取り直して言った。
「で、でもこれさえあれば女達の所にもいけるんだろう!
気兼ねなく出来るって事じゃねえか!」
今まで出来なかった事が今日から全て出来る。
女達に混じってカフェで食事をする事も、数々の施設を理由する事も。
そして何より―――女達の部屋へ遊びにも行ける。
すっかり浮かれ顔でいたカイに、マグノはとっておきの切り札とばかりに意地悪い笑みを浮かべた。
「そういえば話してなかったね・・・・
お前さん方のセキュリティレベルはそれぞれ違うよ」
「・・・・・は?」
ピタリと動きを止めて、カイはマグノを見やる。
「セキュリティが何の為にあると思っている。
クルー達の意見を反映して、お前達にはそれぞれの度合いに担ったレベルを与えている」
「え〜と、つまりどれくらいクルーに信頼されているかって事だよな?」
喜びに水をさされた気分カイが恐る恐る聞くと、ブザムは冷静に補足した。
「そうだ。セキュリティは結局の所クル−達の安全を優先しての事だからな」
つまりは、それぞれのエリアによってセキュリティレベルが違うのである。
女性達の私生活があるプライベートエリアのセキュリティレベルが高いのもその為なのだ。
信頼を得なければ近づけない。
古今東西男も女も心理面において揺るぎのない真実である。
「じゃ、じゃあ俺達のセキュリティレベルを教えてくれよ。
それによって行動範囲が変わるだろう」
それに自分がどれほどの信頼を勝ち得ているのかも、カイは気になっていた。
戦いにおける戦いで皆との共有は成し遂げたのだと思えるが、実質どれほどの信頼度があるかはわからない。
自分の心は誰にも分からないように、他人の心は自分には分からない。
カイはちらりとバートやドゥエロを見る。
(ま、まあこいつらよりは上だろう・・・・)
バートやドゥエロはタラークの価値観もあってか、女性達には一歩も二歩も引いた関係となっている。
バートなど露骨に女達に嫌われているのを何度もカイは見ていた。
ドゥエロにしても患者と医者という関係でしかなく、女に対しても知的好奇心でしか見ていない面があった。
それに比べたら、自分は少しずつ仲良くはなれている。
赤髪は無条件に自分に懐いているし、犬猿の仲だった青髪も最近ちょっと変わってきている。
金髪や黒髪とは相変わらずだが嫌われているようには見えないし、アマローネ達とは最近よく話している。
ガスコーニュには何だかんだ頼られて来ているし、パイロット達とはこの前一緒に戦ったのだ。
(こりゃあ、もしかしてかなりのレベルを与えられてるんじゃないか)
うきうきした気分が再度盛り上がっていき、カイはわくわくした様子で返答を待った。
間もなくして、マグノが一人一人に伝えていった。
「それじゃあ言うよ。各自決められた範囲内で行動しておくれ。
バートはレベル3、ドクターレベル5・・・・」
そしてマグノはカイを見つめ、こう言った。
「カイはレベル0だよ」
「・・・・・・・・・へ?」
「あ・ん・たはレベル0だよ」
カイは口をパクパクさせて、
「レベルゼロぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
静かな会議室内に、カイの絶叫が木霊した。
<続く>
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