ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action68 −不衣−
「マグノ・ビバンを呼び出せ。私が直接話をつける」
「な、何をなさるつもりなのですか!?」
「奴らの目的は反逆ではなく、改革だ。国を改善し、人を改める事を目的としている。
危険ではないが、放置できない。国が奴らを持て余す理由もよく分かる。
連れてこい」
「ラジャー!」
メジェールに無条件降伏したマグノ海賊団は流刑の地へ送られて、終身刑。
先立つ未来は全て奪われて、鳥籠というのはあまりにも過酷な牢獄に閉ざされてしまった。
幸福を初めから信じていなかった政府側は追い詰めることで馬脚を見せると分だが、真実は全くの真逆であった。
マグノ海賊団は更生の道を選んだ。
「どういうことか、説明してもらおうか」
「おやおや、突然呼び出したかと思えば、随分な言い様だね」
監獄には拷問も含めたあらゆる治外法権な施設が用意されているが、頭目のマグノが呼び出されたのは取調室だった。
勿論刑務官が待機しているが、取調室で刑務長とマグノが向かい合って座っている。
刑務長は憤懣やる方ない顔をしているが、マグノは涼しい顔だった。刑務長にとっては腹立たしい限りではあるが、自重はしている。
マグノ・ビバンは罪人ではあるが、少なくともこの監獄では模範囚ともいえる姿勢だったからだ。
「怒られるような真似は何もしていないはずだけどね。規則だってきちんと守っているじゃないか」
「だが少なくとも大人しくはしていない。
規則にだって逸脱こそしていないが、踏み込もうとはしていたはずだ」
マグノ海賊団は流刑地の環境を改善し、監獄を改革しようとしている。
更生という意味では真っ当であり、行動的とさえ言える。反抗的な流刑囚達もマグノ海賊団が来てから大人しくさえなった。
しかし、改革という目線で見れば極めて危険なやり方だ。監獄が根底から覆されてしまえば、在り方だって変えられてしまう。
少なくとも"メジェール政府が望む"監獄では無くなってしまうだろう。
「けれどお前さんは話し合いを望んだ。
それはアタシらの行動を評価してくれたからじゃないのかい」
「違う、危険だと思ったからだ。これ以上野放しには出来ない」
「目的を探りたいのであれば、アタシを拷問なり尋問なりすればいい。
何故お前さん自ら、アタシの話を聞きにきたんだい」
「……たとえ海賊であろうとも、"あなた"はグラン・マと同じ世代の人間だ。
追い込むような真似はできない」
そもそも流刑地は重犯罪者が収容される施設である。
危険な犯罪者を拘束し、投獄する施設に生温い環境などありはしなかった。
人権など無視して尋問や拷問を行う施設は確かにある。情け容赦なく追い込める事だって容易く出来る。
そうしないのはマグノが高齢であり、第一世代の人間だからだ。犯罪者であれど、斯様な真似をすれば下手をすれば死んでしまう。
「アタシのような人間を立ててくれるあんたを尊重し、本音で話そう。
お前さんのプライドに誓って、アタシらは本当に何も企んでいない。ああ、こういう言い方をするのはよくないね。
確かに目的はあるが、それはお前さんがこれまで見てきた通りさね。
アタシはこの場所を、そしてここで生きる人達を更生してやりたいのさ」
「私が追求しているのはその先だ」
「そうさね、そういった意味で言えば――
メジェールという国そのものを、改革してやろうってのさ」
「――っ、やはり!」
日頃携帯しているレーザーガンを、マグノ・ビバンに突きつける。
刑務官の目に揺るぎはない、相手が第一世代であろうとも容赦はしない。
この人間は、危険だ。
「ここから出られはしない。何をしようとしても無駄だ」
「違うね、ここから始めるのさ」
「いいや、あなたはここで終わるのだ」
メジェールにとって危険な存在であれば、禍根を断つのが彼女の仕事である。
ここで殺せば、マグノの目的は潰える。マグノ海賊団はここで終わる。
そうすればこれまでと変わらず、平和が続くだろう。
これまでと、何も変わらない。何も――
<to be continued>
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