VANDREAD連載「Eternal Advance」
Chapter 4 −Men-women relations−
Action12 −仲直り−
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渋るカイを連れてガスコーニュが向かった先は、レジシステムの裏に位置である武器庫であった。
扉一枚で別離されている武器庫は広大で、見渡す限りに兵器類が並べられていた 。
コンピューターによる大規模な管理システムにより、兵器は用途用途によって分類され、
稼動コンテナにより、緻密に陳列されている。
「でっけえな・・・・武器ばかり並んでやがる」
煌々と照明が照らされていたレジ内とは違って、武器庫内は最低限の光源しかない。
暗がりの中、案内されるがままに足を踏み入れたカイの第一声がそれだった。
「全ドレッドの兵器類がここで管理されているからね。
前線で戦う奴等の補給源とも言える場所だよ」
長楊枝を揺らして、ガスコーニュは朗々と語る。
カイが今まで見た事がない兵器の数々に目を奪われつつ、口を開いた。
「赤髪達の武器の要である場所か。レジからの注文品の全てがここにある。
簡単に言えば、倉庫だな」
「その通りさ。その代わり管理されているのは、第一級クラスの危険物ばかり。
お頭かアタシの許可がない限り、誰の手も触れる事は許されない。
レジシステムが重要な仕事とされている一因でもあるのさ。
お頭がそう言ってなかったかい?」
笑みを含んだガスコーニュの問いかけに、カイは渋った顔でマグノの言葉を思い出す。
『そこだったらあんたの力も発揮できる筈さ』
(自分の力が発揮できる仕事場、か・・・・・・・・)
カイは言葉を脳裏で反芻して、改めて武器庫内を見渡した。
弾薬類や鋼製物質兵器類が重厚な雰囲気を漂わせながら、整理よく陳列されている。
そんなコンテナの前を華やかなレジの制服に身を包んだ一人のクルーが、電子メモを片手に作業していた。
レジクル−に目が止まったカイは怪訝な顔で質問する。
「あの娘は何をしてるんだ?必死で何かチェックしているみたいだけど」
明るい笑顔を向けていたレジカウンターの女の子達とは違って、その娘はどこか薄汚れていた。
裏側での作業の名残であろう、顔の節々にも金属類特有の汚れが付着している。
「兵器類の在庫確認さ。アタシら海賊は日常の中に戦いがある。
戦いに必要なのは戦う者達、そして武器。
ましてや兵器は貴重な物資だからね、こまめなチェックが必要になってくるんだよ」
「なるほどな・・・・・」
カイ達に気がつかず作業に没頭している女性を、じっと見やるカイ。
傍らに立ち、ガスコ−ニュはどこか試すように言った。
「言ってみれば、アタシらは黒子さ。
どれだけ頑張っても誰かに見てもらえる訳じゃない。褒めてもらえる訳じゃない。
汗まみれに、泥まみれになっても出来て当たり前に見られる」
「黒・・・子?」
聞きなれない単語に、カイは怪訝な表情でガスコーニュを見上げる。
ガスコーニュは以前の独白でカイが記憶喪失だと語っていた事を思い出し、補足する。
「舞台で活躍する主役と周りの役者達を助けるのさ。
決して陽の目に当たる事のない影だね」
ガスコーニュの話を聞きながら、カイの心中は複雑だった。
舞台に決して出る事のない日陰の存在。
どれだけ頑張っても功績を称えられる事のない地味な役回り。
そんな人達を馬鹿にしていたのは、他ならぬ自分だった。
何もやっていないのだと、前線で戦う自分とは違い楽をしているだけだと断定していた。
「嫌かい?こんな地味な仕事は」
立ち尽くすカイを横目で見やり、ガスコーニュは清廉とした口調で聞く。
カイは答える事なく、ただ目の前の光景にのみ見入っていた。
二人の間に沈黙が過ぎり、稼動し続けるコンテナ音のみが広大な武器庫を雑音で満たす。
しばらくそんな状態が続いた後、それまで黙っていたカイが口を開いた。
「・・・・嫌じゃねえよ」
「ほうっ?」
カイは一歩前に出て、声音はそのままに言葉を続ける。
「前線に、大勢の目につく場所で戦っている奴に比べれば、全く取るに足りない。
地味で、単純な作業さえしてればいいだけの役立たず。
俺が持っていた最初の印象はそんな感じだったよ、裏方なんてのは」
「・・・・・・・・・・・・・」
黙って腕を組み、ガスコーニュはカイの言葉に耳を傾ける。
カイの言葉には傲慢はなく、事実として語る健やかさがあった。
視線をじっと前に向けていたカイは言葉を切り、ガスコーニュを振り向く。
その表情に浮かんでいるのは、尊敬に似た賞賛だった。
「でも、それは勘違いだったな。
例え裏方であれ、黒子であれ、あんたらは仕事に誇りを持っている。そうだろう?
でなきゃ・・・・・・・・」
カイは再び前を向き、親指で指し示した。
「あんな顔はできないだろう」
カイが示した所をガスコーニュが目で追うと、その先には先程のレジクルーの姿があった。
丹念に兵器類をチェックし、こつこつメモに入力しながら仕事をこなしていくクルー。
あちこちを汚れてはいるものの、彼女の表情は自分の仕事に誇りを持つがゆえの輝きがあった。
カイは辛い労働に汗を流すその姿に、女がどうこうという価値観を吹っ飛ばす美しさを感じたのだ。
「・・・・ん」
自分達の本質を理解していると知り、ガスコーニュは小さく頷いた。
「アタシらはあんたの言うとおり、仕事には誇りをもっている。
戦場へ向かうパイロット達を笑顔で見送る。
その一方で自分達もまた危険な兵器類を管理し、いつでも支えとなれるように励むんだ」
己の仕事に誇りをもち、己の全身全霊をそそいで必要以上にこなしていく。
堂々としたガスコーニュの態度に、カイはその時初めて彼女が大きな存在に見えた。
逆に、自分に改めて問い掛けてみる。
仕事に誇りを持つ。これまでの仕事類で自分は誇りを持てそうなのか、と・・・・・・
「レジの仕事はおおまかにはこんな所だね。
アンタは接客に向いてそうだから、カウンターの仕事を全般にお願いするよ」
その後細々としたレジ内の仕事についてを説明し、ガスコーニュは言葉を締めくくった。
「接客ね・・・・」
「なんか不満そうだね?」
「この制服でやるんだろう?
普段着ならいいんだけど、この服は恥ずかしいぞ」
可愛らしさ満点の制服のスカートをつまんで、嫌そうにカイは愚痴った。
カイのそんな姿に、ガスコーニュは少し意地悪そうな表情で言った。
「なかなか似合っていると思うけどね・・・・」
「それで誉めているつもりか、お前!?」
たく・・・と、ばりばり髪を掻いてカイは武器庫内をどことなく歩く。
そのまま何をする訳もなく、広大な武器庫に視線送っていたカイだったが、やがて真面目な顔つきになる。
「あんたってさ・・・・」
「うん?」
「自分の仕事に誇りを持っているって言ってたよな」
「ああ、そうさ。それがどうしたんだい?」
問いの意味が分からないとばかりに首を傾げるガスコーニュに、カイは視線を向ける。
その真剣な表情に、ガスコーニュもまた鋭さのこもった顔つきになった。
「それって、海賊に誇りを持っているって事か?」
「・・・・・・・・・・」
返答なくただ見つめるガスコーニュに、カイは静かに尋ねる。
カイの視線には咎めんとする輝きはなく、むしろ痛々しさすら感じさせた。
「お前らは海賊だ。他人の物を奪って、自分達を生かしている。
そのことに関しては、もう文句をいう気はない。
だけど、俺は今も分からない。お前らは本当に他の生き方はできなかったのか?」
カイは船の融合からこれまで、海賊達と接してきた。
ぶつかり合ってばかりで、互いを憎みあう関係。
劣悪とも言える環境の中でカイは女という存在に、そして海賊達の生業について見つめてきた。
まだまだ短期間に過ぎないが、カイは同じ船での生活を続けて行く事によって疑念が生まれていた。
認めたくないが、海賊クルー達はかなりの有能性を内に秘めている。
歴戦練磨の海賊団を見事に統率しているマグノ=ビバン。
マグノの片腕として如何なる状況をも先読みし、的確な判断を示す副長ブザム。
リーダーであるメイアを筆頭としたドレッドチーム。
初めは対峙すらしたカイだからこそ、海賊達がどれほどの力を持っているかが実感できている。
だからこそ、カイはマグノ達が理解できなかった。
「生き抜くだけなら、お前らなら他の道はあったはずだ。
何故海賊という生き方を選んだんだ、お前らは」
記憶喪失もさる事ながら、カイはまだ自分の可能性を追い求めている身である。
だからこそ、マグノのような老練な威厳を持つ者やブザムのような辣腕ぶりを発揮する者、
各仕事場でプロの腕を惜しみなく発揮している者達が、社会を踏み外している事が理解できないのだ。
現実は厳しいと言えばそれまでである。
カイとて、マーカスに拾われてなければ野垂れ死にしていたかもしれない。
社会という仕組みが、全ての人間に優しいとは限らない事は知っている。
しかし人生の選択肢は他にもあったのではないかと、カイは思う。
宇宙という広大な世界を、世の中という厳しい領域へ旅立った者としては、カイはまだ若かった。
探るような視線を向けるカイに、ガスコーニュはふっと肩を落とす。
「以前も同じことを言ってたね、あんたは・・・・」
カイが心の整理をつけて、マグノに独白した言葉。
『今のお前らなら違う生き方だってできるはずだ!
なのに、お前達はこんな行為を繰り返し続けている!俺はそれが許せなかった!!』
カイのあの時と今との心情はまた違う。
女達と対立し、関係を不安定化させている今のカイだからこそ、訴えかけたい問いなのだろう。
ガスコーニュはずいっとカイに肉薄し、優しい笑みを浮かべる。
「いい機会だ、アタシ達の事教えてやるよ。こっちにきな」
重い足取りで進むガスコ−ニュの発する雰囲気に息を飲み、カイは黙ってついて行った。
全身に力が入らない・・・・・・・・・
目元は痙攣するように引きつり、流れていた涙は乾ききっている。
歩く足取りは鉛のように重く、心は今までにない程空虚だった。
どこをどう歩いているか分からないまま、ディータは艦内をふらふらしていた。
「・・・・ディータ、嫌われちゃった・・・・・」
可憐な唇から生まれた声は、まるで他人の声のように聞こえる。
先程まで荒れ狂っていた感情は消えて、今はもう何も感じなかった。
ディータの心に響くのは、冷えきったカイの声のみだった。
『お前さ、何なの?』
「ディ、ディータは・・・・・」
現実にカイが発している声ではない。
心の中で反響する冷たい声の投げかけに、ディータは反応しているだけであった。
何度も何度も聞こえてくる心を引き裂かんばかりのカイの声。
何度も何度も問われながらも、ディータは何も答えられずにいた。
『お前さ、何なの?』
「ディータは・・・ディータはただ・・・・・」
ずっと考えていた・・・・・
宇宙人とはどのような存在なのだろうか?
ずっと悩んでいた・・・・・
いつか出会う事ができるのだろうか?
ずっと想っていた・・・・・
どんなのだろう?素敵かな?かっこいいかな?
知りたかった、会いたかった・・・・
思い続け、憧れ続けてた日々の中で、友達や同僚からは奇異な目で見られた事が何度もある。
信じていた・・・・・・・
思っていれば必ず叶う、想っていれば必ず会えると。
そして夢見る期間は少女を乙女へと成長させ、少女に出会いをプレゼントした。
カイ=ピュアウインド。
空想よりも遥かに劇的で、想像より遥かにかっこいい人。
宇宙一のヒーローを夢見て行動し、時には不器用な優しさを見せるカイ。
ディータは話せば話す程に、接すれば接する程に、カイをもっと知りたいと思う気持ちが強くなっていった。
自分にはできない事をあっさりやり遂げるカイに、ディータは夢中になっていった。
『人の前をいつもちょろちょろちょろちょろまとわりつきやがって。
迷惑だってのがわからねえのか?』
ただ知りたかった・・・・・・・・・・・
『いいか?もう二度と俺の前に姿を見せるな』
ただ見つめていたかった・・・・・・・・
『お前みたいな図々しい奴はな、大っ嫌いなんだよ!』
それだけだった。
それだけだった、のに・・・・・・・・・・
『大っ嫌いなんだよ!』
決定的に、完全にカイから拒絶された。
ディータという存在そのものを、抱いていた憧れや願いそのものを否定されたのだ。
「宇宙人さん、すごく怒ってた。
ディータの何がいけなかったんだろう・・・・・」
悲嘆に鈍っている頭を必死で働かせて、ディータが原因を考える。
あの時はメイアと激しい喧嘩をして飛び出したカイを、何とか引き止めたかっただけだった。
だが結果として、自分も嫌われてしまった。
傍にいるだけで迷惑とまで言われてしまった以上、どうする事もできない。
考えれば考えるほど気持ちはしょげて、陰鬱に身体は重くなる。
とぼとぼとあてもなく、ディータは沈んだ心を抱えて通路内を歩いていった。
そこへ、素っ頓狂な声がディータの耳に飛び込んでくる。
『うわっ!?何よ、これーーー!』
「この声・・・・パルフェ?
パルフェ!?」
一人でいるのが心細くて寂しかったディータに、親友であるパルフェの声は救いの主のように聞こえた。
聞こえてきた驚愕の声にも疑問を持たず喜び勇んで、ディータは声の元へと走った。
通路内を軽快な足音がリズム良く響き、ディータの健康的な肢体が揺れる。
そのまま艦内を進んでいくと、ディータの視界にある一室から通路へ溢れる黒っぽい何かが見えてくる。
「??何やっているのかな・・・・」
ディータが近くまで足を進め、通路に溢れている何かを手で掴む。
こわごわとディータの白い指に触れている物は、一粒のペレットだった。
ペレットが何なのか分からないディータは好奇心を刺激されたのか、暗い部屋の中を覗き込む。
「男の船って何を隠しているのか、想像できないよ〜〜〜
迂闊に入ろうとするんじゃなかったかな・・・・」
部屋の中では、大量にあふれ出たペレットの波に埋もれるようにパルフェが身体を埋まらせている。
隣では胴体部分の半分から下が埋まっているピョロを見ると、どうやら巻き込まれた形であるようだ。
「ここは旧艦区の倉庫だぴょろ。食料を保管しているぴょろよ」
ナビゲートロボの名に恥じない、すんなりした案内を告げるピョロ。
逆に食料と聞かされて、パルフェは驚愕したように周りを見渡した。
「ひょっとして、これ全部食料なの!?」
「そうだぴょろ。
ペレットって言って、タラークの男の食料源だぴょろよ」
腕の役割を果たす左右のアーム部分を動かして、ピョロはペレットの一粒を手にして説明する。
「へえ〜、これって宇宙人さんのご飯なんだ」
「あっ、ディータ・・・・
って、どうしたのその顔!?」
目元が腫れて真っ赤にさせているディータの顔を見て、パルフェはびっくりした様に見つめる。
ディータは自分がさっきまで泣いていた事を思い出し、ゴシゴシ拭きながら必死で弁解する。
「う、うん・・・
ちょっと宇宙人さんと喧嘩しちゃって、はは・・・・・」
ディータの乾いた笑いが、逆にパルフェの胸をうった。
カイ本人から事情は聞いているピョロも心配そうにディータを見上げる。
「大丈夫ぴょろか?随分泣いたみたいだぴょろ」
「だ、大丈夫!
ディータが、ディータが悪いから・・・・・・宇宙人さん、怒ったの。
ディータが宇宙人さんを困らせちゃったから・・・・」
普段は天真爛漫な笑顔が絶えないディータの沈んだ笑顔は、周囲の空気を重くさせる。
パルフェはじっとディータを見つめ、やがて口を開いた。
「大嫌いだって言われたんだって?あいつに」
「えっ!?パルフェ・・・?」
事情を知っているパルフェの口振りに、ディータは困惑した表情を浮かべる。
身体の汚れを払いつつ、パルフェは穏やかな笑顔を見せて頷く。
「カイ本人に聞いたの。ディータと喧嘩したって」
「宇宙人さんが!?あ、あのね、パルフェ。
宇宙人さんディータの事、何か言ってた?」
第三者にカイが自分の事をどう話していたか、ディータは気になって尋ねる。
もしもパルフェにも自分を嫌いだと言っていたのなら・・・・・
考えられる可能性に、ディータは心臓の鼓動が早まるのを抑え切れなかった。
不安が心を支配し、身体を振るわせる。
パルフェはディータの揺れる瞳を見つめ、問い返した。
「あいつの事、気になるの?」
「え・・・・?」
「ディータが宇宙人好きなのは知っているけど、男であるあいつを随分気にしてるみたいだから。
私はどうとは特に思わないけどね・・・・・」
ディータのカイへの憧れは、メジェールの制度に沿うと好奇心を超えた畏敬がある。
敵である筈の男を気にして、追いかけている。
UFО好き云々を超え、ディータの思いはメジェールとしての価値観すら凌駕しつつあった。
だがディータ本人は、自分の気持ちの整理すら満足に出来てはいなかった。
「う〜ん・・・・・・」
「ピョロは別におかしくはないと思うぴょろ。
人が人を好きになるのは当然だぴょろ」
話を聞いていたピョロは、ディータに当然のように指摘する。
好きという単語に、ディータは頬を赤らめた。
「えっ!?好き・・・・・・
ディータが、宇宙人さんを?」
どぎまぎして、ディータはどうすればいいのか分らないように体を両手で抱く。
全身が熱くなり、心の揺れは収まりそうにない程に波紋を呼ぶ。
「それはないよ、ピョロ君。女が男を好きになるなんて」
「そんな事はないぴょろ、普通だぴょろよ」
笑って否定するパルフェに、断固して譲らないピョロ。
どちらが正しくて、どちらが間違っているか、今のディータには分からなかった。
一つの事実としてあるのは、カイとの喧嘩はショックだったという事である。
「宇宙人さん、パルフェにもディータの事嫌いだって言ってたかな?」
心配そうに聞く親友に、パルフェは静かに首を振った。
「あいつとちょっと話をしたけど、反省しているみたいだったよ。
やる事があるって走っていったから、ディータと仲直りに行ったのかと思ったけどね」
「ううん、宇宙人さんはディータの所に来てないよ。
ブリッジのお仕事してるみたいだし・・・・・」
カイの常識はずれな艦内放送を思い出し、パルフェは面白そうに笑って言った。
「さっきの放送でしょう?あいつ、本当に面白いよね!
常識外れっていうか、馬鹿なのかはまだはっきりと分からないけど」
「いいな〜、ベル達。宇宙人さんと一緒にお仕事できて・・・・・」
「大丈夫だって。ちゃんと話せば、分かってくれるよ。
わたしがさっきガツンと言ってあげたからさ」
「パルフェさん、かっこよかったぴょろ。あいつ、たじろいでたぴょろよ」
そうだよねっと互いに話し合う二人に、ディータはおずおずと身を乗り出した。
「宇宙人さん、ディータとまたお話してくれるかな・・・?」
「保証はできないけど、もう一度だけ話してみてもいいと思うよ。
ディータだって、あいつに迷惑をかけた部分もあったんでしょう。
まずはちゃんと謝る。そしたら、あいつだって分かってくれるよ」
パルフェの的確なアドバイスと励ましに、救われたのか、ディータもようやく安心した微笑みを浮かべる。
「ありがとう、パルフェ!それに、え〜と・・・ピョロ君も!」
「ディータが落ち込んでるのは、わたしも嫌だからさ。元気だしなよ」
「そうぴょろ。ディータさん、ファイトだぴょろ!」
二人の言葉に力強く頷いたディータは、ふと足元のペレットを見やる。
「これって宇宙人さんのご飯なんだよね?
ぱく・・・・」
いきなり何の躊躇もなくペレットを口に入れたディータに、パルフェは仰天する。
「そ、そんないきなり!?大丈夫、ディータ!?」
異様な匂いを発し、配色もお世辞にも綺麗とは言えないペレット。
食料と呼ぶにはあまりに異質な物体にしか見えないペレットを口に含んだディータを、パルフェは心配した。
小さな口をもぐもぐさせるディータだったが、数秒後表情を歪める。
「何これ、まずい〜!!」
ペレットはあくまでエネルギーの補給用として作成されている。
タラークでは主食とされているために、摂取する男達には重宝されている食料である。
だが味は二の次とされているために、タラークの労働階級に支給されるペレットはひどく不味いのだ。
パルフェには予想通りだったために、げんなりした様子で訴えかける。
「すぐに口ゆすいだ方がいいよ、ディータ」
「そうするよ・・・・・宇宙人さんってこんなまずいのを食べていたんだね」
同情を禁じえない様子で呟くと、その刹那ディータにある名案が閃いた。
「そうだ!そうしよう!」
「え?え・・・・?どうしたの?」
突然歓喜の表情で立ち上がったディータの様子に、訳が分からずにパルフェが尋ねる。
だがディータはふふっと楽しそうに笑って、人差し指を可愛く振る。
「内緒だよ〜♪」
そのままうきうきと倉庫を出て行こうとするディータを、慌ててパルフェが呼びとめる。
「ちょっとストップ!
今、この船の名前を募集しているの。ディータの、聞かせてよ」
自分が行っているイベントの説明を付け加えると、ディータはふんふんと頷いた。
そしてしばし思案顔を見せ、やがて思いついたように立候補名を出した。
「ロズウェルでお願い!結果聞かせてね、パルフェ!」
余程急いでいるのか、ディータは元気良く倉庫を出て駆け出していく。
「ああいう行動力、カイに似てるね」
「せっかちな所は二人とも一緒だぴょろ」
パルフェとピョロはそうコメントして、彼女の後姿を見つめてため息交じりに苦笑する。
言葉では呆れた様にそう言いながらも、ディータが元気になった事に安堵する二人であった。
流れていく時間はそのままに、事態は変化をもたらしていく・・・・・・・・
<続く>
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