VANDREAD連載「Eternal Advance」
Chapter 4 −Men-women relations−
Action1 −行き違い−
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元男の船であったイカヅチ旧艦区、元女の船であった海賊母船。
二つの船は旧艦区機関部に長年眠っていた「ペークシスプラズマ」というエネルギー結晶体の暴走によって、
彼方の距離に強制ワープされた後融合化し、一隻の新しい戦艦を誕生させた。
結果互いの艦内に残っていた男三名、百五十名を超える女は半ば強制的に同じ船に残される羽目となる。
男の星タラーク、女の星メジェールの特化したそれぞれの男女差別によって、
同じ船にいながらも牽制しあう状態であり、両者は仲良くする等もっての外であった。
しかしながら暴走を続ける船とペークシスプラズマ、そして突然襲い掛かる未知の敵。
憂慮に対応している場合ではない状況に渋々ながら、男と女は一時的な協力関係を結んだ。
関係は実を結び、暴走した船を何とか制御して未知なる敵を撃破した。
敵からのデータより未知なる敵の目標が『刈り取り』という作戦を持ってした故郷の壊滅だと把握し、
百五十名を束ねる女海賊団お頭のマグノは故郷の危機を救うべく帰郷を決意。
困難な現状を乗り越えるべく、その後も男女の共同生活を行う事を宣言した。
だが一時的な協力をしたとはいえ、互いを蔑視しあう環境に生まれた男女。
差別感、倫理的道徳、価値観の違いは嫌悪と憎悪を生み、男女それぞれに見向きもしなかった。
副長ブザムの調査によりクルー達が冷戦状態にある事を知り、マグノはため息を吐くしかなかった。
今日もまた融合戦艦は果てしない宇宙の海を航海する。
タラークの女蔑視、メジェールの男嫌悪という偏狭な価値観を植え付けられた男と女達には、
このままお互いが憎みあう結果にしかならないのであろうか?
環境による育成か本能による求め合いか。
今、一人の男によって変わり始める・・・・・・・・・・・・・・
「そうなのよ!それでさ、そいつったら憎たらしいのなんのって」
「ど、どんな事されたのよ?」
融合戦艦下位部に位置する元海賊母船側の施設の一つ、化粧室。
女性らしい清潔感のある手洗い場において、クルー二人が華やかに会話をしていた。
一人は緑色の髪をコンパクトにまとめている可愛らしい童顔の女性。
統一感のある白と規律的な黒のラインの制服を着ている所を見ると、警備クルーの一人のようだ。
もう一人はショートの髪をおしゃれなヘアバンドでまとめている女性・ベルヴェデールで、
肌にきめ細かなパウダーで化粧をしていた。
「いきなりブリッジに来たと思ったら、我が物顔で寝転がるのよ。
私が注意したら、
『うるさいな、金髪。俺は疲れてるんだよ』って!
人を髪の色で呼ぶのよ!失礼しちゃうわ!」
「うわ〜、ずうずうしいわね。やっぱり男って嫌な生き物だわ」
ベルヴェデールは手にもっているコンパクトに怒りの表情を映して、傍らの女性に愚痴をこぼした。
彼女達の噂の人物はカイのようだ。
よほど頭に来ているのか、しきりにイライラして身体を揺らした。
普段のベルヴェデールとは違う怒りの態度に逆に興味が出てきたのか、質問を重ねて、話の続きを促した。
「そいつって前にモニターに出ていた奴でしょう?何かくさい事言ってた」
「そうよ!大体図々しいのよ、あの男!
お頭がクルーの一員にするって言ったからって、ブリッジにほいほい来るのよ。
仕事とかならともかく、暇だからって遊びに来てるのよ!
もうただでさえ仕事が忙しいのに、あいつ見ただけでフラストレーションがたまるわ」
やってられないとばかりに、ため息を吐いて首を振るベルヴェデール。
お頭や副長がいるメインブリッジに気軽に足を運んでいると聞いて、警備クルーは目を丸くする。
「副長とか怒ったりしないの?そいつ、勝手に来るんでしょう」
「お頭にちゃんと言ったわよ!でも、
『言う事を素直に聞く奴だったら、監房を自分から抜け出したりしないよ。
しばらくは長い目で見てやっておくれ』って言うのよ」
「お頭、どうして黙認しているのかな・・・・?」
小首を傾げる仕草がより一層の愛らしさを誘う。
そんな警備クルーを見たベルヴェデールはようやく落ち着いたようで、化粧の続きをする。
「さあね。もう私は男の相手には疲れたわ・・・・」
「ふふ・・・
でも珍しいね。ベルがそんなに相手を意識するなんて」
「えっ!?そ、そう?」
「うん。だっていつもはあんまり悪口とか言ったりしないし、嫌いな相手は無視するでしょう。
やっぱり男だからかな・・・・・」
彼女の言う事は本当で、ベルヴェデールは本当は人付き合いのいい優しい女性である。
感情の波は少々不安定ではあるが、喜んだり悲しんだりと感情表現が豊かで、クルーの間でも友人は多い。
そんな彼女が一定の個人相手に愚痴をこぼすのは初めてであった。
意外な指摘にベルヴェデールが戸惑っていると、警備クルーは笑顔でそれ以上触れずにおいた。
代わりに、彼女は別の話題を持ち出した。
「そうそう、ベルは男の構造って知ってる?」
「男の構造?何よ、それ」
興味があるのか、ベルヴェデールはそっと警備クル−の瞳を覗き込んだ。
「男ってね、お股に細長い管みたいなのがついてるんだって」
「管ぁ!?しょ、触覚みたいなものなのかな?」
リアルな想像をしてしまったのか、恐れおののくベルヴェデール。
彼女の反応に気を良くしてか、警備クルーも話を募らせる。
「分からないけど、そんなのがついてたら歩きづらいよね。
男ってどういう生き物なのかしら」
「管か・・・・あいつにも・・・・」
あんなポヤポヤしたような男にもついているのだろうか?
でも普通に歩いているようにしか見えないのだけど・・・・・・
などと考え込みながらも、ベルヴェデールは彼女と会話を続ける。
メジェールの国民への教育システムには男の生態については委細存在しないためか、
男については、デマ交じりのこうした女の子達の興味半分の明るい話題になるようだ。
そんな盛り上がっていく二人であったが、自分の足元には気がついてはいない様子である。
「ふんふん、管か・・・・」
耳に片手をあてて二人の会話をこっそり聞いているその少女は、
赤い髪を揺らして好奇心あふれる瞳を輝かせていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・で?」
「それでね、宇宙人さんのを見せてほしいなって♪」
「ははは、なるほど。だから押しかけてきたのか」
「そうなの!あはは」
「面白いやつだな、お前って。ははははははははははは」
「そうかな?あはははははははは」
「ふざけんな、ぼけぇーーーーー!!」
「うえ〜ん、宇宙人さんが怒ったぁ〜」
ペークシス暴走と制御により、長年使われていなかった旧システムまで稼動可能となり、
イカヅチ旧艦区は実質上新しい戦艦の要となり、海賊達の首脳部として使われていた。
同時に男女共同生活をする上で男に必要な施設も搭載されているがゆえに、
マグノ達は艦内全てを掌握べく、カイ・バート・ドゥエロの三人を先の監房を居室として与えた。
これから先長い旅路になるので、三人は捕虜からクルーの一員として扱われる事となったからだ。
ドゥエロは医療室の全権を委ねられドクターに、バートはナビゲーション席使用の権限により操舵手に。
カイはアタッカーとしての手腕が認められ、出撃の自由と格納庫の一画の保有を許された。
身柄も拘束される事もなくなり、一転して自由な立場となった三人。
バートは海賊達の冷遇による改善を幾度か訴えてはいるものの、他の二人は特に異存はなかった。
今日も今日とてカイは元監房の自分の居室にじっとしている事もなく、歩き回っている。
そんな彼が元旧艦区イカヅチの施設の一つである水洗トイレ場において、さっそく騒ぎを起こしていた。
正確には彼を訪ねてきた一人の女の子が、だったが。
「どうしてそんなに怒るの、宇宙人さん」
「お前ね、一度世間の常識ってのを100人ほど聞いてまわって来い」
「ええっ!?ディータ、何かいけないことしたかな?」
少ししょんぼりして肩を落とす女の子・ディータに、どう言えばいいのかとカイは思案する。
用を足そうとトイレに駆け込んだ際に、突然ディータが入ってきたのだ。
ズボンを下ろそうとした瞬間だったので恥ずかしいやら何やらで、カイは即座に怒鳴り散らした。
だがディータもディータで、カイに悪意があったわけではない。
そもそもカイ達三名のクルー入りを歓迎したメジェール人としては奇特な女の子の一人なのだ、ディータは。
カイが自分達の仲間になった事にとても喜び、あの時の放送後カイに歓迎の言葉を送った。
その後の生活でもディータは時間があれば旧艦区へと出向き、カイの元へ遊びに行っている。
彼への興味と好奇心、そして純粋な親しみをこめて。
トイレに駆け込んだのもベルヴェデール達の話を聞いての知的探求に過ぎなかった。
「あのなあ・・・・トイレする瞬間を人に見られて喜ぶ奴がどこにいるんだ?」
「あ、そうか。ごめんね、宇宙人さん」
「その宇宙人ってのもやめろよ、いい加減。俺にはカイっていう男らしい名前があるんだ」
「ディータにもディータ=リーベライっていう名前があるよ」
どうやら名前を呼んでほしいのか、キラキラした目でカイを見つめるディータ。
愛らしいその仕草にたじろぎながらも頬を高潮させて、カイはディータの襟首を掴んで外へと出した。
「俺は今からトイレ。お前と遊んでいる程暇じゃないんだよ、赤髪」
「え〜〜!?名前で呼んでよ〜」
「気が向いたらな。ほんじゃ」
照れ隠しか、そのまま視線を合わせる事無くカイはトイレのシャッターをスライドさせた。
照明が点る通路にポツリと残されたディータは、『男専用』と書かれたドアを見上げて呟いた。
「宇宙人さんの事、もっと知りたいな・・・・」
ディータの好奇心が満たされる様になるまでは、まだまだ時間が必要となるようだ。
「ぴょろ〜、ぴょろ〜、イベントだぴょろ〜〜!皆、集合だぴょろ!」
自由を満喫しているのは何もカイだけではなかった。
どちらかといえば男側に属していた比式六号も、今では自由そのものの身となっている。
本来なら機械に過ぎない六号はそのまま旧艦区のシステムに組み込まれるか、
ナビゲーションロボットとしてプログラミングされた行動のみに制限され、
本当の意味での機械としての役割のまま終わっていただろう。
だが幸か不幸かペークシスに取り込まれ人格を持ってしまった六号は、
今後の扱いとして上記のどちらの役割も人間扱いされていないとして反対の意見が出た。
反対した主な人間は初起動から行動を共にしたカイ。
そしてもう一人、女性側からの一人痛烈な反対意見があった。
現在六号はその女性と通路を一緒に歩きながら、ご機嫌な様子であちこち跳ね回っていた。
「はーい、皆さん。機関部リーダー、パルフェです!
この度イカヅチなんていう男が考えたダサい名前を一新し、この船に新しく名前をつけたいと思います!」
仕事外の活動であるにもかかわらず、いつも通りの作業服を着込んでいる所がパルフェらしい。
六号を助手にしてメガホン片手に艦内に盛んにそう呼びかけていると、二人の女性が対向側から歩いてきた。
「パルフェじゃない。何をしてるのよ?」
「傍らにいるのは男のロボットよね?パルフェらしい組み合わせね」
何気なく声をかけて来たのは、ジュラとバーネットであった。
どうやら出撃もなく暇を持て余しているのか、二人はパルフェの声に誘われるようにやって来たらしい。
「ジュラにバーネット、ちょうどよかったわ!
今、この船の名前を募集しているのよ。
ほら、男の船と合体して新しくなったでしょう?だから名前も私達の船に相応しいのにしたいと思ったの。
何かいい名前とかあったら、ピョロ君に入力よろしく!」
「ぴょろ・・君?」
聞き慣れない名前にバーネットが首を傾げると、パルフェはにこやかに六号を指差した。
「この子の名前。いつまでも番号じゃ可哀想だから」
「パルフェさんがピョロのために付けてくれたんだぴょろ。すごく気に入っているぴょろ」
カイとの接触もあってか、六号を身近に感じたパルフェがつけた名前であった。
六号改めピョロもそんなパルフェの気持ちが嬉しいのか、先ほどから始終ご機嫌だった。
モニターに表示されている瞳をなだらかに丸くして、喜びの表現とばかりに跳ね回っていた。
「ちなみにいい名付け親になった方にはもれなく『トラベザ』の食券一年分をプレゼントしまーす!」
「トラベザの食券一年分!?ずいぶん豪華じゃない・・・」
ナイフとフォークのイラストが表示されている食券の束を掲げたパルフェを、驚愕の瞳で見つめるジュラ。
『トラベザ』とは海賊母船側に開店されているカフェテラスで、唯一の食事場所であった。
バイキング形式で食事ができて、メニューも一つ一つがカロリー計算しており、
体重を気にする女性に優しい対応がされている人気のあるお店であった。
当然無料ではなく、自分の仕事量や手柄に応じたポイントにより支払われるシステムとなっている。
よって、食券一年分はトラベザを利用クルーによってかなり嬉しい商品であった。
ジュラの反応にさらに気を良くしてか、入力お願いとピョロをバーネット達の前に持ってくる。
バーネットはさっそくピョロのモニターを操作して、立候補者の名前を検索する。
操作の数秒後ピョロの画面より数々の名前が表示され、一覧化された。
「へえ、結構色々な名前がもう提案されているのね」
感心しているバーネットの隣で、ジュラも優雅な金髪をかき上げて覗き込む。
「ふんふん・・・何よ、大した名前はないじゃない。
この『ニル・ヴァーナ』なんて、ちょっと入力した人のセンスを疑っちゃうわよね」
ジュラが揶揄するような微笑でそう言うと、慌ててパルフェは周囲を気にしながら小声で進言する。
「それ、副長が考えたのよ」
「えっ!?そ、そうなの・・・・・?」
パルフェが頷くと、ジュラは頬に一筋汗を流して黙り込んだ。
どうやら冷静沈着で毅然とした態度を崩さないブザムを苦手としているようだ。
これ以上続ける話題ではないと雰囲気で察したバーネットは、ピョロの入力画面を見ながら言った。
「ほ、ほら、ジュラも何か名前考えてよ。
私はこういうのセンスがないから、ジュラなら船にぴったりな名前つけられるでしょう」
話題転換としては微妙だったが親友のバーネットにそう言われ、ジュラは少し照れたように微笑んだ。
「もう、バーネットたらしょうがないわね。それじゃあ・・・・・
『ラクジュアリー・ナイト』で。入力よろしくね」
「了解!さささのさ、と。パルフェ、結果が出たら報告頼むわね」
素早く入力を行うと、バーネットとジュラはそのまま軽い足取りで去っていった。
パルフェはオッケーと二人の背中に片手を振り、ジュラが考えた名前を見る。
「さすがジュラ。すごい名前を付けるよね・・・・」
「女性の下着の呼称だぴょろね・・・・」
互いに汗混じりにこうコメントして、空虚な笑いを浮かべる二人であった。
ピピピ、と細かな電子音が暗闇に響く。
旧艦区蛮型格納庫管制室にて、モニターからの光のみで手元のコンソールを手早く扱っている。
手慣れた操作と巧みな技術を髣髴させる手並みは、操作する本人の有能性を示していた。
ジュラ達の話題の人物・ブザムであった。
端整な顔立ちに緊張感を漂わせて、作業が止まる事なく進む。
胸元からすっと取り出した一枚のデータディスクを手早に準備されたポットの一つに挿入する。
小さなディスクに過ぎないそれは、マグノ達の目を盗んで手に入れたデータであった。
長距離間の連絡を主な目的とする通信ポットに目的地を入力しつつも、ブザムは厳しい表情を崩さない。
そこへ管制室の中央に通信モニターが開かれる。
『BC、ここにいたのかい』
モニターの中央に満ち溢れる佇まいを持って見つめるマグノに、ブザムははっと驚愕の表情を見せる。
だがそれも一瞬の事ですぐに落ち着きを取り戻し、普段の副長の顔に戻る。
「メジェールへと送る通信ポットの射出準備をしておりました。
すぐに発射可能です」
きびきびと報告するブザムには、何の疑いも見られない自然の状態であった。
だがさすがにマグノの目は誤魔化せず、先程ディスクを挿入したポットに視線を注ぐ。
『どうして二つのポットがあるんだい?
メジェールに送るだけなら、一つで充分じゃないか』
マグノの指摘通り、用意された通信ポットは全部で二つあった。
一つはメジェールへ敵への脅威と警告を促すポットであるとすると、もう一つが不自然だった。
疑いのこもった強い視線をぶつけるマグノにブザムは無表情で数秒黙り、やがて口を開いた。
「これは・・タラークの分です。
彼らにも敵の危機を伝えなければ、飛び火がメジェールに回る可能性がありますので」
『ふ〜ん、そうかい・・・』
それはたった数秒でもあり、数時間にも感じられる緊張の一時であった。
さまざまな思惑と腹の内を探る両者がじっと視線を絡めあい、互いの心理状態をはかっている。
やがて沈黙を破ったのはマグノの方だった。
『まあいい。準備が完了したんなら、直ぐにでも発射しておくれ』
「了解。射出します」
手元の発射ボタンをオンにすると二つの通信ポットは格納され、勢いよく宇宙へと飛び出す。
真空上を一直線に駆け抜ける二つのポットは高速で走り抜け、やがて彼方へと消えていった。
これで無事に発射された・・・・と安心したのもつかの間。
肉眼では確認できない距離にまで飛びだったその先より、二つの閃光が闇に舞った。
「ポットが!?」
広がっていく茜色の光が、二つのポットの消滅を意味していた。
同時に閃光より融合戦艦へ突撃をかけてくる数体の機影を確認して、マグノは緊張と戦慄に強張らせる。
「全艦、緊急戦闘配備!」
ポットを破壊した数体の機体はマグノの号令より早く接近を試み、融合戦艦に奇襲を掛ける。
船のあちこちに遠慮のない爆撃をかける機体は、数体のキューブ型であった。
相変わらず宣戦布告もない敵に、マグノは静かな怒りを瞳に称えていた・・・・・・・・
「何だ!?敵襲か!?」
カフェテラスで一時の休息をとっていたメイアは、船の急激な振動に立ち上がる。
落ち着いた態度で窓の外を見やると、瞬発間のあるレーザーの間隙を縫って、キューブの姿が見えた。
いち早くチームリーダーの顔になり、メイアはそのままカフェテラスを飛び出す。
素早い動作で呼吸を乱す事無く、ドレッドが格納されている区域へと辿り着いた。
そこには慌てた様子で肩を乱すジュラに、どこか余裕のある態度のディータがいた。
二人が出撃の準備をしようとしていない事に疑問を感じ、メイアは足取りを乱さず二人に駆け寄る。
「何をしてるんだ、二人とも。敵が襲撃をかけてきている。
すぐにドレッドに乗り込め!」
戦場ではためらいや油断、そして鈍足さが勝敗を左右する場合がある。
ましてや、現在自分達が戦っている敵は全ての壊滅を目論んでいるのだ。
一早く出撃をして、戦闘体勢を整えなければならない筈であった。
「う〜ん、そうしたいのは山々なんだけど・・・」
どこかやる気の感じられないジュラに、メイアは訝しげに問いつめる。
「どうした。ドレッドに不備にでも生じたのか?」
以前船が暴走した折、海賊側の全ドレッドが使用不能となった時があった。
今でこそ復旧が完了し全てが元通りに整備されたとはいえ、ペークシスからの影響がなくなった訳ではない。
メイアの質問にジュラは力なく首を振り、傍にいたディータに顎をしゃくった。
ディータに聞けという事だと察したメイアは、疑問に顔を曇らせて尋ねる。
「ディータ、一体何があった?」
メイアが尋ねると、ディータは明るい表情で答えた。
「えーとですね、もう宇宙人さんがさっき飛び出していったんですよ!
すごいんですよ〜、ディータ達がここへ来た時にもう発進しちゃったんですから!」
カイの活躍を期待してか体を弾ませるディータとは対照的に、ジュラは冷め切っていた。
「男に好き勝手やられると、こっちが迷惑するのよね。何とかならないの、リーダー」
ジュラの言葉に限界が来たかのように拳を震わせて、怒りに身を奮わせるメイア。
「・・・・あの男、どこまで好き勝手に・・・・」
一人の男と一人の女とのすれ違い。
悲しいまでの互いのズレは、やがてぶつかりあう運命にあった・・・・・
<続く>
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