VANDREAD連載「Eternal Advance」



Chapter 1 −First encounter−



Action14 −脱出−




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「ピピ、コチラデス。イチレツにオサナイヨウニ」


 取引も無事に済み、主格納庫では男達の解放が行なわれていた。

六号の案内により、旧艦区左方延長に存在する脱出艇の元へ候補生達が歩いていた。

悔しそうに解放されていく男達を睨み、海賊達はなす術もないままじっとたたずんでいる。


「まあ、そんな顔をするなよ。あいつ等が解放されたらお前らも解放するからさ」


 からからと笑うカイに、バーネットは胡散臭そうに見る。


「本当かしら・・・あいつ等を解放したあとにさっさと私達を殺すんじゃないの?」

「ちゃんと話し合って結論は出しているんだ。今さらそんなくだらない真似はしねーよ」


 不服そうにカイが言うと、それまで黙っていたパイウェイがひょっこり顔をのぞかせる。


「あやしいケロ〜、男の言うことなんて当てにならないケロよ〜!」


 一体の可愛いカエルの人形を手にもって。パイウェイはひょこひょこ動かしていた。

どうやら腹話術の真似事らしい。

パイウェイは時折手元のカエルの人形を通して他人と話す癖があった。


「な、何だそのカエル?とにかく、お前らに危害は加えないっての」

「そうよ!宇宙人さんは嘘なんてつかないよ!」


 意外にも女の方から賛同の声があがり、カイは目をまん丸にする。

海賊達の方を見やると彼女達をより分けて、一人の女の子がカイの方へ歩いてくる。

ディータ・リーベライ、先ほど気絶していたカイをつっついていた女の子である。


「お、おい!そのまま固まっていろとか無茶は言わねえけど、それ以上近づくな」


 平気そうな顔をして歩いてくるディータに戸惑いを隠せずに、カイは警告を発した。

ディータの行動には他の仲間も驚いたのか、慌てて止めようとする。

「ディータ、よせ!むやみに相手を刺激するな!そいつは敵だぞ!」


 メイアは身を乗り出して、ディータに鋭い制止をかける。

いつもの彼女ならそこで止まったであろうが、今のディータには目の前にいるカイで頭がいっぱいだった。


「あ、あのー、はじめまして。私ディータ・リーベライって言うの。
さっきはごめんなさい。私のせいで宇宙人さんに迷惑をかけちゃったね」


 少し緊張しながら、ディータはカイに恐る恐る話し掛ける。

カイはこれまで出会った女達の敵意とは全く違う感情を向けてくるディータに、

どう対応すればいいのかまったく分からず、仕方なく曖昧にうなずいた。


「さっきってのが何の事かよく分からんが、とりあえず気にしなくていいぞ。
それよりお前、あいつ等が解放されるまではじっとしてろ」


 持っているガスバーナーを突き出して、カイはディータを睨み付ける。

ディータは慌てて両手を上げながら、それでも浮かべる微笑は消さなかった。


「だ、大丈夫!ディータはピースフルレーサーなの。暴れたりしないよ。
宇宙人さんだってそうだよね?」

「へ・・・・?」

「宇宙人さんはいい人だもんね。私達を燃やそうとしたりとかは絶対にしないよね」

「え、えーと・・・・」


 天然欄真な邪気のない笑顔で見つめられて、カイは何故かまともに答えられなかった。

鬼とタラークで恐れられている異性物「女」。

徹底して教えられた偶像が目の前の少女とどうしても結びつかずに、

そして先程の機関部でのメイアの美しい素顔が思い浮かび、カイは視線を逸らしながら言った。


「わからねえぜ。自分の仲間を解放すればお前らは用なしだ。
とっととここに火を放って俺は逃げるかもよ?」

「ちょ、ちょっと!約束が違うじゃない!」


 カイの言葉が聞き捨てならなかったのか、後ろにいたジュラが悲鳴じみた声をあげる。


「ディータ、相手は男だぞ。信用できる相手じゃない」


 メイアもジュラに続いて、冷静にディータに忠告する。

だが、彼女自身も心のどこかでカイが自分達を攻撃したりはしないだろうと思っていた。

その証拠に先ほど輝きを放っていたリングガンも停止状態にしている。

自分の心の奥底の微かな迷いに、彼女自身が気がついていなかった・・・・・・・・・

ディータはそんな二人に振り向いて、小さく首を振った。


「大丈夫。宇宙人さんは絶対にそんな事はしません!そうだよね、宇宙人さん♪」

「あ、あのなあ・・・・大体その宇宙人って何だよ」

「宇宙人さんは宇宙人さんなんでしょう?
ディータ、ずっとずっと宇宙人さんに会いたかったんだ!ねえねえ、一緒にお話しようよ」

「はあ〜!?」


 敵とは到底思えない信頼のこもったディータの言葉に、カイは驚きを隠せなかった。

他人に信頼される事。それはマーカスを除いて彼自身の初めての体験だったからだ。


「ディータ、宇宙人さんの事もっともっと知りたいの。何もしないからお話ぐらいはいいよね?」


 ディータが初対面とも言えるカイにここまで積極的に接するのには理由がある。

彼女は幼い頃からのUFOマニアで、宇宙の未知的存在との接触に昔から憧れを抱いていた。

事実、彼女が乗るドレッドのコックピットにはUFOグッズが数多く飾られている。

言わば、カイはディータにとって子供時代に誰もが一度は夢を見る白馬の王子に近い存在だった。

そんな彼女の感覚にはまったく気がつかず、カイは困り果てて言った。


「うーん・・・・ま、まあ話ぐらいはいいけどよ。
その代わり、いいか!余計な真似をしようとしたら、取引は一切中止だ」

「うん!ありがとう、宇宙人さん!!」

「その宇宙人さんっていう変な呼び方はやめろ!俺にはカイっていう立派な名前があるんだ」

「ディータはディータでいいよ、宇宙人さん」

「ちっとも分かってねえじゃねーか、お前!」


 それまで漂っていたぴりぴりとした緊迫感はすっかり薄れて、

格納庫内にはどこかほのぼのとした雰囲気が生まれ始める。

メイアもジュラもバーネットもディータの行動には呆然と見つめる他は無かった。

と、そこへ・・・・・・


「ピピ、コマリマス。スグニダッシュツヲ」

「私は後でいい」


 突然発生した二種類の声にカイは視線を向けると、先程まで脱出艇への案内に勤しんでいた六号に、

歩きながら白衣に袖を通しているドゥエロが視線の先にいた。


「あれ?あんた、さっきの・・・・・・」

「先程は世話になったな」


 皮肉とは違う種類の笑みを唇に形作り、ドゥエロはカイを見る。

そしてそのままずかずかと格納庫内に入り、その足で彼は海賊達のところへ向かう。

いきなりなその行動にカイは慌てて呼びかける。


「おいおい!何をするつもりだ、あんた。早く逃げろよ!
せっかく俺がここまでやったのが無駄になるじゃねーか」

「私は後で脱出する。まだ時間はあるだろう」


 襟元を整えて、ドゥエロは白衣から様々な道具を取り出した。

それは緊急時等に使用される応急処置用の医療キットだった。


「後でって・・・・おいおい、そんな道具をどうするつもりだよ。
女達に危害は加えないとさっき約束したんだぞ」


 思わず身を乗り出すカイに、ドゥエロは不気味なまでの笑みを浮かべる。


「私は自分のやりたいことをしにきた」

「やりたい事・・・・・・?」

「女が怪我をしている。私が治療する」


 ドゥエロは視線をバーネットの先程怪我をした腕の部分にそそぐ。

ぎょっと身を引いて、バーネットは恐る恐る尋ねた。


「な、何なのよ、あんた・・・」

「怯える必要はない。私は医者だ」


 長い髪が陰を作り見る者をぞっとさせる笑みを浮かべて、ドゥエロはそのままバーネットに近づいた。
















 旧艦区格納庫で海賊達との奇妙なやり取りが行われている頃、新艦区では着々とある準備がされていた。

旧艦区どころか巨大戦艦をも一撃で破壊できる威力を持つ宙航魚雷「村正」。

本来はメジェール海賊団への切り札だったはずが、今では仲間すら破滅においやる死神となっているのだ。

新艦区のクルー達は何ともやり切れない気持ちで胸を押し潰されそうだった。


「燃料充填30パーセントを突破!」


 エネルギー数値が表示されるモニターを見つめながら、首相は厳しい表情で艦長席にもたれかかる。

そこへ前面のオペレーターより報告が入った。


「旧艦区より脱出艇が射出されました!!」

「何だと!?残された候補生達か!」


 オペレーターの報告に目を輝かせて、アレイクは身を乗り出した。


「はい!未確認ではありますが、どうやら残されたクルー達が乗せられている模様です」

「そうか・・・・」


 アレイクは報告を聞いて、ほっと安堵のため息をついた。

カイが一緒に乗せられているかどうかは五分五分だったが、闇の中に一筋の光明が見えてきたのだ。

他のクルー達も同胞の無事を聞かされて、胸の奥のつかえが和らいだ心地だった。


「皆殺しにされているかと内心穏やかではありませんでしたが、僅かながら救われた気分です」


 実は自分達の階級も年齢も遥か下の一人の少年の活躍だとは夢にも思わず、

艦長は額に浮かんでいた汗を拭った。


「ふん。哀れみでもかけたつもりか、薄汚い海賊どもめ・・・・・・」


 だが、首相はあくまでも女達への怒りを抑えきれず激しい憎悪のこもった声を出す。

アレイクはモニターを見つめながらじっと考えこんでいたが、やがて意を決して首相に進言をする。


「首相。このまま『村正』を発射されればこちら側も甚大な被害が出るでしょう。
いっそ、こちらから海賊達にコンタクトをとり和解を申し出てはどうでしょうか?」

「貴様、誇り高きタラークの軍人が女に尻尾を振れというのか!」


 アレイクの言葉に首相は激しく激昂する。

冷静に考えると、アレイクの案は人命も救われ被害も最小限に抑えられるかもしれない有効な策なのだが、

頭に血が上っている首相にまともな軍事案を出しても馬耳東風だった。

二人の様子に見かねた艦長が首相の説得に試みる。


「首相、どうかお考えをお直しください。物資を提供する事で被害は最小にすむかもしれません。
このままいたずらに破壊しても、後のこちらの被害は甚大に・・・・・」

「村正はまだか!!充填完了次第速やかに発射する!!」

「首相!?」


 艦長すら相手にしない様子で、首相は彼ら二人にはもう目すら合わそうとはしなかった。

アレイクと艦長は互いに顔を見合わせて、深く重く嘆息する。

今更ながら指揮官としての器に欠けている首相に互いに激しい失望を感じていた・・・・・・・・・・















「副長〜、ディータ達は大丈夫ですか?」

 騒がしい新艦区とはうって変わって、旧艦区内のブリッジは静寂に包まれている。

現在ブザムの助けを借りながらではあるが、エズラがコンソールよりイカヅチのデータを引き出していた。

システムサポートをこなす必要がなくなったパルフェは不安に襲われていた。


「大丈夫だ。現在、捕らえた男達の解放を行っている。
脱出艇での作業が済み次第、メイア達も解放されるはずだ」

「で、でもそのカイって奴が嘘をついている可能性も・・・・・・・・」

「その点も心配はない。あの男は嘘がつけるほど器用なタイプではない」


 たった数十分のやりとりの中で、カイの本質を見抜けるブザムは流石としか言いようがない。

パルフェも副長のエリート性を高く評価しているのか、それ以上の追及はしなかった。


「私達はデータと物資を持って撤退ですね」

「ああ、それが約束だ。時間には限りがある。できる限りの情報を引き出しておいてくれ。
次の仕事への大きな助けとなる」

「はい、分かりました〜。ここがデータバンクに外部情報探知網ね・・・・・あら?」


 旧艦区外部警備システムの端末にアクセスすると、レッドランプの警告がモニターに出力される。

ずらずらと警告文が並べられるが、いかんせん男文字が読めないエズラに全ての解析は不可能だった。

だが、それでも警備システムが何を知らせているかを察知する事はできた。


「まあ、大変。ミサイルにロックオンされたみたい・・・・・」


 おっとりしているエズラの報告に、ブザムはブザムは顔色を変える。

「何!?ミサイルだと!?
パルフェ、こちらからのアクセス介入はできないか?」

「無理ですよ〜、こんな古いシステムじゃ解析に時間がかかります!」


 パルフェは機械類や端末操作にかけて海賊団でも群を抜くエンジニアであったが、

彼女の知識を越える程の古いシステムには即座に対処する事はできなかった。

ブザムはすぐに通信機を取り出し、母艦に緊急シグナルを開始する。

程無くして、通信機の向こうから年老いた重みのある声が伝わってくる。


『御頭!敵母艦よりミサイルが発射されました。
どうやら残された男たちごと我々を抹殺するようです』


 遠く離れたブザムの緊急の知らせを受けて、母船の艦長席に座っていたマグノが眉をひそめる。


『ああ、こちらでモニターはしている。だが、妙だね? アタシの大事な娘達を人質に取りながら、さらにこんな暴挙にまだ出るとは・・・』

『恐らく人質をとった人間とこのミサイルを発射した人間とは別なのでしょう。
やり方からすると、恐らくこのカイという少年は単独で行動していると思われます』

『なるほどね・・・・結局、報われない行動だったってわけかい。その坊やも』

『ええ・・・・いかがいたしますか?』


 ブザム自身はすでに結論を出していたが、最終的判断は頭であるマグノが決めるのが掟である。

マグノは一呼吸の間瞳を閉じて瞑想し、手早く状況を判別しての結論を口に出す。


『大物は惜しいが命あっての物種さね。皆、ズラかるよ!』

『ラジャー。あの男には私から連絡いたします』


 ブザムの通信が切れ、再び海賊団の母艦は停止モードが解除される。

機関にみるみるうちにエネルギーが循環し、母船は活動を再開する。

流れるように宇宙の海を泳ぎ続け、混戦しているタラーク母船の迎撃の間合いに入り込んだ。















「これでいいだろう。あまり無理に動かさない事だ」


 黙々とドゥエロはバーネットの困惑をよそに治療を行い、見事な手腕を発揮した。

傍目から珍しそうに見ていたカイも彼の腕前には感心するばかりだった。


「へえ〜、あんた本当に医者だったんだな。すごい鮮やかな手つきだったぞ」

「大した事ではない。医療ではごく基本的な事だ」


 包帯を巻き終えた後も、ドゥエロはしげしげとバーネットの体を眺めていた。

とは言え、瑞々しい肢体を持つバーネットの体を見つめる視線は性的な意味はなく、

どちらかといえば未知なる存在を観察するような視線でドゥエロは見つめていた。

だが、バーネットには男の視線に晒される事は気味が悪いだけであった。


「何をじろじろと見ているのよ!珍しい物でもないでしょう」


 ふんと勝気に言い放つバーネットだったが、ドゥエロは一歩も怯まずに口元を歪める。


「いいや、実に面白い」


 ハッキリと断言するドゥエロにどう返答していいかわからずに、バーネットはそっぽを向いた。


「言っておくけど、感謝なんてしないからね」

「別にかまわんよ。さて、次は君の番だ」


 ドゥエロは立ち上がり、そのままの足取りでカイの元へ近づいてくる。


「な、何だよ!?さっさとお前も脱出しろよ。乗り遅れても知らねえぞ」

「私は後で脱出する。それよりも先に君の怪我を治療しよう」

「俺は別に怪我なんて・・・・・イタタタタタ!?」

「う、宇宙人さん大丈夫!?うわ〜、ひどい傷・・・・・」


 ドゥエロが触診したカイの両手のひらは血で真っ赤に染まっていた。

手の皮は無残にもずたずたに破れ、持っているガスバーナーの柄上には血がこびり付いている。


「どこでこんな怪我をした?相当無理をしたな」


 白衣から包帯とガーゼを取り出して、ドゥエロは簡単な応急処置を始めた。


「いいよ、別に!こんなもん舐めときゃ治る!」

「駄目だよ、宇宙人さん!!ばい菌さんが入って余計にひどくなっちゃうかも・・・」

「その娘の言う通りだ。じっとしておけ、すぐに終わる」


 半分涙目になっているディータに真剣な表情で手当てをしてくれるドゥエロ。

カイは二人の自分への心遣いを悟り、じっと大人しく治療されるままにした。

そうしてしばらく黙々と治療が続いたが、やがてドゥエロが口を開いた。


「どこでこんな怪我をした?随分と酷く手のひらを痛めつけたようだが」

「うん?ああ、えーと・・・・・・」


 蛮型に乗り込んだ事を話していいかどうか迷ったが、結局カイは全てを打ち明けた。


「ああ、ちょっと蛮型の出撃でどじっちまってな。
慣れない操縦に女の船との戦いでこうなっちまった」


 ぼろぼろになった自分の相棒の姿を思い出して、カイは悔しそうに唇を噛んだ。

ドゥエロは軽く目を見張り、重ねて言葉を紡ぐ。 


「処分は覚悟の上か?」

「あん?」


 突然のドゥエロの言葉に、カイは眉をひそめる。


「忠告はした。だが、君は命令を無視してまでここまでの行動に出てしまった。
候補生を救った功績を差し引いてもただでは済まんぞ」


 退却命令違反に規律の乱れ、蛮型の無断出撃に機体の破損。

処刑にされる事はないだろうが、カイのしでかした行動は重罪には値している。

恐らくこのままタラーク軍に合流しても、カイのこれからの未来には決して明るくはないだろう。

だがドゥエロの厳しい言葉に、カイは一切表情を崩さなかった。


「あの時のあんたの言葉、痛かった。すげえ痛かったよ・・・・・・・・」


 カイは視線を虚空にむけ、ぽつぽつと語り続ける・・・・・


「いざとなったら俺なんて役に立たないんじゃないだろうか?
俺が何をしても何も揺るがないんじゃないだろうか?
そう思ってずいぶん悩んだし、考えたさ・・・・・・でもよ・・・・・・・・」


 カイは言葉を続け、ドゥエロを、ディータを、そしてメイア達を見やる。


「人間、未来がどうなるかなんて誰にもわからねえ。
だったら、今てめえが一番やりたい事をやるしかねえだろう。
後でこうすればよかったとか、何でああしなかったんだろうとか、うじうじ後悔するなんて俺はごめんだ。
命令がどうとか、規律がどうとか知った事じゃねえよ」


 カイはそう言ってにっと笑った。

その笑顔は純粋に自分の未来を信じて歩むひたむきな男の瞳だった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 カイの言葉は小さかったが、格納庫全体に染み渡るほどに清涼感が込められていた。

聞いていた女海賊達は奇妙な生き物を見つめる視線でカイを見つめていた。

ばい菌でしかありえないはずの男が語る言葉ではなかったからだ。


「宇宙人さん・・・・・」


 ディータはじっと聞いていて、自分の芯から暖かくなる様な不思議な気持ちに包まれているのを感じた。


「そうか・・・・ならば、これ以上は何も言うまい」


 ドゥエロも小さく口元を緩めて、そのまま治療に専念した。


「へ、柄にもなく変な事を言っちまったな。忘れてくれてかまわねえぜ」


 いろいろな人間に見つめられて、カイは全身がくすぐったい気持ちに覆われていた。

忙しなく視線をあちこちに向けていると、ふとこちらを見つめているメイアと視線がぶつかった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・?何だよ、文句でもあるのか」


 先程まで激しく敵対していた相手に、カイは睨みを利かせる。

だが、メイアは黙ってじっとカイを見つめていた・・・・・・・・・・


「リーダー、どうしたの?」

「・・・・・いや、何でもない。それより男達はお前とそこの医者を除いて解放した。
お前も約束は守ってもらおうか」

「おうよ、じゃあとりあえず・・・・・・」


 カイが皆を解放させようと口を開いたその時に、メイアの腰元から通信機がアクセスされる。

素早く通信機を取り出し、メイアは応答を取る。


『こちら、メイア。男達はすべて解放しました』

『ご苦労。緊急の要件がある。先程のカイという男と代わってくれ』

『緊急?ラジャー』


 メイアはそのまま通信機から顔を離すと、カイに無言で手渡した。

いきなり渡されて訳が分からないカイだったが、とりあえず応答する。


『はいはい、どちらさん?』

『私だ。お前達に緊急に知らせたい事がある』

『何だ、お前かよ。何だよ、緊急ってのは』


 そして全てを聞かされた一分後、カイは仰天した叫び声をあげた・・・・・・・・  

































<First encounter その15に続く>

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