とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第八話




 脅迫状事件の捜査一日目。名探偵を気取るつもりはないが、たった一日でかなりの情報が集められた。

愉快犯からテロ組織の可能性と、非常に幅広い犯人像。つまりは何も分かっていないのと変わらないが、とりあえず言えるのは厄介であるという一点のみだった。

人材はこの一年で多く集っているが、主戦力の大半を異世界や異星に残している現状。手持ちの札だけでやるしかないのだが、事件の規模がまだ見えてこないので何とも不明。


ともあれ、待ち合わせ時間となったので病院帰りに出向いていった。


「待たせたな、父よ。務めは概ね果たしてきたので、我も今から正式に父の麾下に加わろうではないか」

「ここがお父様の出発点となった地ですか。娘として帰参できて嬉しいです」

「ボク達の要件は済ませたよ、父さん」


 ここ地球へ帰って来たのは俺とアリサ、すずかとディアーチェ、ディードとオットーの五人である。

事前に厳命していたので、ディアーチェ達は洋服に着替えている。こいつら、頭はいいが日本の常識とか知らないからな……事前に教えておいた。

海鳴は最近外国人も多く受け入れているので、ディアーチェ達の容姿も奇異な目では見られない。まあディアーチェやディード、オットーは日本人よりの容姿なので元より悪目立ちはしていない。


むしろ抜群に可愛い容姿ではあるので、注目を浴びるとすればむしろそっちだろう。


「アリサがマンションの一室を手配した。今日からしばらくそこを拠点にして活動する」

「キッチンはあるか、父よ」

「何でまずキッチンに注目……?」


「今宵はぜひ私達にお任せください、お父様」

「実は前々から料理を勉強していたんだ。父さんに手作りをご馳走するよ」


 ……ディアーチェはともかく、ディードやオットーは俺の遺伝子を無断使用して誕生した少女達。つまりあくまで遺伝子上だが、俺の血縁となる。

自分で言うのも何だが風来坊な俺にどうしてこんな親思いな子供が出来るのか、遺伝子の謎を思い知る。

ジェイル・スカリエッティの悪ふざけで誕生した戦闘機人の神秘に、あの性悪博士はさぞ良い気分だろう。生命の神秘に身震いしているに違いない。くそったれである。


ちなみにディアーチェは我が家でもっとも家事の出来る王様である。料理を振る舞うのも好きで、包丁裁きは達人だった。


『ということで、買い物に寄ってから帰る。マンションの手続きは本当に大丈夫だったのか』

『高級マンションは手続きが早くて助かるわ。フィアッセさんの部屋の両隣、確保しておいたわよ』

『何故二室も取った!?』

『セキュリティの高いマンションでも、隣を確保されたら侵入される危険もあるでしょう。住居用と、警護用に確保しておいたから』


 俺達が住む部屋と、警護チームが住む部屋を用意したらしい。スラッと言ったが警護チームも用意したのか、こいつ。

多分夜の一族が派遣してくれているチームを呼び寄せたのだろう。忍者まで混じっているベテラン部隊で、俺の帰還と合わせて呼び戻された。

つまり、夜の一族に思いっきり俺の帰還がバレているということになる。話は早いのだが、今晩連絡しないと小うるさく言ってくるのは間違いない。


こちらも話があるので別にいいのだが……今日は真夜中まで忙しくなりそうだな。














 茹でもやしの肉巻きにタコじゃが、トマトガーリック炒め。美味しくて栄養バランスも良い、見事な和食の献立だった。

隣室のフィアッセやなのはは食事を済ませていたので、一応声だけかけて家族団らんで食事を摂ることになった。

考えてみれば久しぶりの和食である。エルトリアにいた事の食事も日々手作りで美味かったが、和食を食べると日本に帰っていた実感が生まれる。


食事を取りながら、俺達は報告を行った。


「聖地は概ね平和だ。イリス事件の余波や混乱は収束しており、時空管理局と聖王教会の関係も修復できている。
些か不満ではあるが、我の代理であるヴィヴィオは聖女カリムや関係者各位の協力を得つつ、神輿としての役目を果たせている。

事件で壊滅させられた聖王教会騎士団も復帰しているし、治安の問題もなかろう」

「白旗や特務機動課はどうなっている」

「オルティア隊長代理が取り仕切っている。
傭兵達を取り纏めるあの才媛はイリス事件の立役者となって、出世こそ辞退したが影響力は確実に強くなっている。

時空管理局と聖王教会の関係修復も彼女が仲介になった事が大きいな」

「そのまま組織に戻ってもいいんだがな」

「挨拶はしておいたが、父の安否を確認されたぞ。留守は預かるので、父の成すべき事を果たしてもらいたいそうだ」


 オルティア・イーグレット副隊長は、傭兵師団『マリアージュ』を指揮する元団長。今は特務機動課の副隊長として働いている。

立身出世の道を自ら断ち切って、俺の副官として励んでくれている女性で、レジアス・ゲイズ中将やカリーナお嬢様といった有力者達との関係を取り持ってくれている。

立場を与えられた俺が自由に動けるのも、彼女の働きが大きい。ディアーチェに様子を確認したが、仕事人間の彼女は特に苦もなく毎日精力的に働いているそうだ。


優美な容姿と美しく整えられたプロポーションに恵まれた、青い髪の麗人。宗教権力者達からの評価も高く、猟兵団とは違う高度な人脈と権力を着々と確保している。恐るべき女である。


「フローリアン夫妻は現在も治療中です。お父様より人材と資金、施設の提供を受けて本格的な治療に入りました」

「容態は非常に悪く、通常の治療では延命にしかならないので、スカリエッティ博士とウーノが生命研究による技術を使用しています」

「生命研究……?」


「ここだけの話ですが、例のゆりかごで秘奥されていた技術です」


 聖王のゆりかごとは、古代ベルカの遺産のロストロギア。当時のベルカを支配していた聖王家の居城として使われ、聖王は生まれてから死ぬまでこの艦を中心に生活していた。

聖王家に関する神秘も眠っており、ゆりかごの機能を乱用すると登場車に悪影響を及ぼすが、艦そのものは主を生かす機能が用いられている。

古代ベルカの王を生かす知識や研究も眠っており、ジェイル・スカリエッティという天才が掘り当てている。その中には、現代治療が困難な病気や病状を救う手立てもあるらしい。


確かに俺が許すからあらゆる手段を用いて治療するように言ったのは事実だが――あいつ、本当にやりたい放題やっていやがるな。


「ポットで集中治療を受けている状態も確認いたしましたが、搬送された当初よりは持ち直しています」

「少なくともキリエさんの母君については治療の目処が立ったと言えるでしょう」

「そうか、それは朗報だな!」


 父親は多機能不全で全身ボロボロの状態だが、母親も長く病を患ったまま無茶をしており、身体も悪くしていた。

無理もない話だ。父親は倒れており、娘達は歴戦の戦士とはいえ思春期の女子達。大人として心配かけずに振る舞うしかなかった。

だからこそアミティエやキリエも幼くして自立するしかなく、これまで無理をして気を張って戦い続けてきたのだ。俺には真似のできない苦労だった。


俺だって別に代わりに背負っているわけではない。たまたま人に恵まれて、多くの人達の支援を受けてこうしてやってこれている。


「状況は分かった。それで今後についてだが、やはりしばらく滞在することになりそうだ。
事情を説明したいところではあるが、今晩話し合わなければならない連中がいる。今後については見解を整理してから、明日話そうと思う。

とりあえず今言えることは、隣の部屋にいる女が何者かに脅迫を受けている」

「お父様が今晩大切な話をされるというのであれば、私とオットーが見張りに立ちましょう」

「エルトリアにいるユーリ達への連絡も必要であろう、それらの面倒な手続きは我に任せてくれ」

「頼む、場合によってはお前達の力が必要となりそうな事態だ」


 自分なりに少しは強くなったつもりではあるが、その家臣が一年前の通り魔事件での負傷に繋がっている。

単純に怪我をしただけではなく、立ち回りの悪さによって事態が悪化する状況となってしまった。

結果としてなのはも襲われそうな状況にまで発展しているし、油断は禁物だ。


娘達が作ってくれた手料理で英気を養って、まずは厄介な女達である夜の一族と対面することにしよう。














<続く>








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