とらいあんぐるハート3 To a you side 第三楽章 御神の兄妹 第七話
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何でこいつがここに!?、と驚く間もない。
俺は一瞬で目を逸らし、背を向けて隠れる。
「さむらい・・・」
「・・・君?」
リスティとフィアッセの声が重なる。
ぐ、知られたらまずい相手に知られてしまった。
好奇心旺盛なこの二人が黙っている筈がない。
それに―――
「やっぱり侍君だ!?いつ退院したの!?
どうしてきちんと教えてくれなかったの!?」
こっちを向けとばかりに、月村は肩を引っ張るまくる。
ここまでくれば、黙秘も通じないだろう。
渋々俺は顔を向けて、月村を正面から覗き込む。
背後にはノエルが控えていた。
一応何も言わず様子を見守っているが、心なしか俺を見る目に非難の色がある気がする。
他一同は終始無言―――
どうやら、皆リアクションに困っているようだ。
「た、退院したのは今日だよ。早く治ったんで、こいつに退院の許可もらった」
銀色の柔らかい髪を撫でつつ、フィリスを俺の前に押し出す。
?という顔をするフィリスに、事情説明!と目で全力で訴える。
フィリスは月村やノエルを知っている。
何度も見舞いに来て、俺の病室で話だってした。
俺より余程立派に言い訳―――じゃない、説明をしてくれるだろう。
後で波風が立たないように俺の為に頑張ってくれ、フィリス。
無言で非難の目を向けるフィリスには目を背けて対応。
人の良さは天下一品なお医者様は、親切に説明してくれた。
「良介さんのお体の具合はとても良好でしたので、私が許可を出しました。
本当はもう少し静養して欲しかったのですが、本人の希望もありまして・・・」
こほんと、可愛らしく咳払い。
「何でも・・・ずっとお見舞いに来て下さる月村さんに心配かけたくないから、と」
そんな事言ってねえっ!?
大声で反論したいが、ここで言い返せば月村に非難を食らう。
「黙って退院したのも本調子じゃないから、と仰ってました。
元気な姿を月村さんに見せて安心させてやるんだって、笑顔で話す良介さんが眩しかったです」
俺が制止しないのをいい事に、ある事ない事述べやがるフィリス。
ちょっと穿った見方をすれば矛盾だらけだが、月村はそうは思わなかったらしい。
フィリスの話を聞くごとに、表情に明るさが戻る。
話を聞き終えて、月村はにこにこ顔で無遠慮に俺の頭を叩いた。
「もう、そんな心配してくれなくていいのに。
侍君と私の仲に変な遠慮はなしだよ」
だから、お前等はどうしてそう仲良しこよしな関係を俺に求める!?
何でか、フィリスもとても晴れやかな顔で俺を見つめている。
だよな、お前は満足だよな、くそ。
不貞腐れて座り直し、周りが置いてけぼりなのに気付く。
こうなった以上追い出す事も出来ないので、俺が自ら紹介してやった。
「月村忍にノエル。この前の事件で世話になったんだ。
知っている奴もいるけど、一応紹介しとく」
事件の関係で顔を合わせた奴とかもちらほらいるしな。
人間関係・繋がりとか全然知らないので、全員に念の為紹介。
「で、こいつらはこの町で知り合った連中。
フィリス、フィアッセ、なのは、レン、晶、恭也、美由希、桃子、那美。狐は久遠」
適当だが、俺だって名前以外よく知らないのでこれで良し。
誰がどういう奴かなんて、俺には興味ない。
ノエルは丁寧に頭を下げ、月村はぽかんとした顔で皆を見ている。
そこへ―――
「リョウスケー、誰か一人忘れていると思うなー?
リョウスケのあ・い・じ・んが」
「誰だ、それ!?
にこやかに自分を指差すんじゃねえ、リスティ!」
あ、くそう・・・名前を呼んでしまった。
遠回しに存在を認めたことになってしまい、俺は心の底から歯噛みする。
折角意図的にシカトしてやったのに。
そんな俺達を尻目に、月村はとある一人に顔を向ける。
「こんにちは、高町くん。
この前はちゃんと話せなくてごめんね」
「・・・いや、いいさ。
俺もまさかあんな所でクラスメートに会うなんて思わなかったから」
などと、フレンドリーに話す二人。
何だ、顔見知りだったのかこの二人。
そういえば、事件現場でも何か二人話していた気がする。
俺は戦いやら何やらでそれどころじゃなかったので、あえて気にしないでいたのだが・・・
俺の内心の疑問を、那美が聞いてくれた。
「お二人はお知り合いなんですか?」
「・・・ええ、クラスメートなんですよ」
なるほど、こいつらが通う学校の同級生か。
ちょっと考えればすぐ分かる関係だが、それにしたって横の繋がりが多すぎる。
どういう町なんだ、ここは。
「で、話を戻すと、今俺様の退院を祝って皆がパーティしてくれてるとこ。
見ろ、この豪勢な料理の数々!
俺がどれだけ尊ばれているか物語っているだろう」
・・・半分くらいは俺が食らい尽くしてしまったけどな。
「・・・なんかあんたの為に作ったんやと思うと、あほらしくなってきたわ」
「うっさい、コンビニ小僧」
その後レンが色々文句をたれてきたが黙殺。
とりあえず納得してくれたのか、月村はへぇ・・と感心したような声を上げる。
「侍君って友達が多いんだね。
この町に来たの、最近だって言ってたのに」
「ちょっと前だ、ちょっと前。大方入院してたし。
・・・というか、お前が指す友達って誰のことだよ」
該当者0人だぞ。
一番つるんだ久遠だって俺の家来だ。
「誰ってそんなの・・・・」
「あー、気にせんといてやって下さい。
良介って、こういう言い方しか出来へん奴ですから」
・・・な、なかなか言うようになったじゃねえか、コンビニ小僧。
男だったら後頭部に蹴りを入れてるぞ。
「あはは、大丈夫です。
侍君の事、もう分かってますから」
軽く笑ってそう言える月村が何か悔しい。
っと、ここでレンが月村の前に出る。
「よかったら、御一緒しませんか?良介と仲いいみたいですし」
・・・ちょっと待って。
「え、でもそんな・・・私が参加したら迷惑じゃ―――」
「そうそう、別に無理に誘う事はな――――むぐぐっ!?」
「リョウスケのお友達なら大歓迎です♪ノエルさんもどうぞ」
ノエルまで誘うのかよ!?
く・・・意外に力が強いぞ、この歌姫!?
ぐぐぐぐっと俺の口を塞ぎながら、にこやかにフィアッセが提案する。
そんな俺の様子にくすっと笑って、月村は背後に控えるノエルに顔を向ける。
「お邪魔しよっか。折角だし、ノエルも一緒で」
「・・・分かりました。では、お車を移動してまいります」
・・・こうして、結局知り合い全員が集まってパーティが開かれた。
主賓の俺の意思は全くの無視で―――
人が良いのか悪いのか、はっきりしろお前ら。
「・・・たく・・・・」
ま、でも・・・・いいか。
口に含んだオレンジジュースは冷たくて―――甘かった。
<第八話へ続く>
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