とらいあんぐるハート3 To a you side 第三楽章 御神の兄妹 第六話
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とにかく、これで全員らしい。
喫茶店にフィリス達を通し、それぞれ顔を合わせての挨拶。
普通初対面だと気後れするか警戒するものだが、こいつらは群を抜いた平和集団らしい。
あっという間に仲良くなって、談笑しているのには驚いた。
事件との関わり合いもあったからこそかもしれないが、とにかく紹介は終わった。
店内は貸切で料理と飲み物がふんだんに振舞われて、全身がそれぞれのテーブル席に座る。
―――って、こら。
「何故、貴様が俺の前に座る」
四人テーブルをくっ付けて、全員が座れるようにしてくれている。
ソファー席と、デザインの良いテーブル席。
お客さんへの配慮のいい椅子に並んで座るのはいいとして、問題は周りの面々だ。
「フィリス、なのはちゃん。リョウスケがお前らは目障りだって」
「目障りなのはお前だ!」
ちょっこりと俺の隣に座るフィリスとなのは。
他にも席は空いているのに、俺が座ったのと同時にこの二人は当たり前のように座った。
その対面にはリスティとフィアッセ―――
肩が凝りそうなメンバーばかりじゃねえか。
「あのー、なのはお邪魔でしょうかー?」
「そんな事無いわ、なのはちゃん。
私もお兄ちゃんもとっても喜んでいるから」
「俺を加えるな!」
俺の返事を待たずに代弁するフィリスに、同じく怒鳴る。
・・・こいつは何が何でも俺を優しい男にしたいらしい。
「ご、ごめんなさい。どうしてもおにいちゃんとお話したく、その・・・」
そこで泣きそうな顔をするな、ちびっ子!?
周りを見る。
注目する一同―――
ここで冷たく突き飛ばしたら、場は一気に盛り下がるだろう。
それはそれで愉快痛快だが、パーティが取り止めになるのは避けたかった。
こいつ等に嫌われるのは別にどうでもいいが、この豪勢な飯が撤去されるのは心の底から嫌だった。
俺は目をそらして、小声で呟く。
「・・・好きなようにしろよ」
「あ・・・・っ!ありがとうございます!」
たく、何がそんなに嬉しいのやら・・・・
隣の席でにこにこ顔になっているなのはに、俺は疲れたように額を覆う。
―――おっと。
「ほらね、おにいちゃんはこんなに・・・・きゃっ!」
「はいはい、お前は黙っていようね」
なのはの頭を撫でて、余計な事を言おうとするフィリスの口を塞ぐ。
そう何度も同じ事を言わせてたまるか。
その後レン(何でこいつ?)が厨房からグラスを運び、飲み物を注ぐ。
ん―――?
「あれ・・・・?
おーい、レン。俺の飲み物、間違えてるぞ」
「え・・・・?何言うてるん。
ちゃんとしたオレンジジュースやんか」
「オレンジジュースだから間違えてるんだよ。
こんな甘い物、飲めるか。酒あっただろう?」
昼間から一升瓶はきついが、乾杯くらいはいいだろう。
鬼殺しのネーミングは相変わらず気になるが、快気祝いには強い酒もいい。
しかしながら、俺は忘れていた。
隣に座っているのは俺の主治医だったと言う事に―――
「何を言ってるんですか、良介さん!
良介さんはまだ未成年じゃないですか!
さっき注意したでしょう」
「いいじゃねえか、別に。俺の退院祝いなんだぜ。
お前も一緒にどうだ?」
「お断りします。なのはちゃんだっているんですよ!
良介さんのお酒は私が預かります」
「あ、ちょっと待て!?」
俺の制止など聞く耳持たないとばかりに、離れのテーブルに置いていた瓶を掴む。
そのまま椅子に戻ると、俺に渡すまいと床に置いて足に絡める。
ち、折角取り返した物を・・・
「いいじゃねえか、祝いの席くらい。
今日の主役たる俺が飲まなくてどうする」
「飲んではいけません。私が預かります」
「ぬう、この女め。どうしてこう頑固なのやら」
「良介さんが聞き分けないからです」
取り付く間もない言葉だった。
強引に奪うのは出来るが、足元の奥までもぐらないといけない。
となるとスカートに潜り込む訳で・・・こいつが泣く訳で―――
ああ、もう!諦めればいいんだろ、諦めれば。
ふふん、今は調子に乗っているがいい。
こいつは医者で忙しい身。
途中で帰った後で、かっぱらって飲み干してくれるわ。
「ふーん・・・仲いいんだ、二人とも」
様子を一部始終見ていたフィアッセがそう言う。
俺はきっぱり言ってやる。
「全然、全く、これっぽっちも仲良くない。赤の他人」
手をひらひらして宣言すると、
「ひどいですよ、良介さん!?
病院にいた時はあんなに仲良しだったじゃないですか」
「いつそんな関係が出来上がったんだ、お前と!」
「いいですよ、いいですよ・・・・
良介さんが意地悪なのは分かってますから」
スカートの端をニギニギするな、年上。
馬鹿らしくなったので放置しておく。
下手に相手したら、余計に巻き込まれていく。
「もうこの飯、食っていいか?腹減ったんだが」
「そうね・・・・じゃあ乾杯しましょうか。
良介君の快気祝いに」
別にいらねーっての。
でも飯が食えないのは困るので、桃子に合わせて俺は渋々ジュースの入ったグラスを掲げる。
他の皆もにこやかに応じ、手持ちのグラスを手に取った。
「じゃあ、リョウスケ。音頭取って」
「オッケー。じゃあ俺様元気になってよかったなって事で、カンパーイー!
・・・って、何で俺だこら!!」
リスティを追い回す俺を尻目に、パーティは始まった。
料理は桃子とレン、晶が作ったらしい。
この喫茶店も手伝っているらしく、二人は料理の達人との恭也の太鼓判。
美味そうな匂いに刺激され、食してみて―――完敗した。
「美味しいです!この料理」
「ほらほら、狐もどうや」
口元を抑えて感嘆の声を上げる那美と、レンに薦められる久遠。
あんな子狐にはもったいないぞ、この料理。
喫茶店には無い献立は、全部レンと晶が作ったようだ。
俺は料理には詳しくないが、それでも洗練された見た目と素材の良さを引き出している旨味には感心出来る。
「こっちの日本風なのが晶か」
「中華料理はあいつの得意分野なんで。
俺の料理も一杯食べてくださいね」
「うむ、任せろ」
病院では消化のいい物とか抜かして、美味い物が全く食えなかったからな。
俺は食欲に身を任せて、モグモグと頬を膨らませて味わう。
「うふふ、リョウスケってすごく美味しそうに食べるね」
「食欲魔人だからね、彼は。
知ってる、フィアッセ?
看護婦さんもその大いなる欲望で毒牙にかけたんだよ」
「ええっ!?リョ、リョウスケが・・・?」
「うん。そしてその性欲はフィリスにも―――
彼女のしなやかな肢体に・・・・痛っ!?」
問答無用でフォークを投げて黙らせる。
・・・・お前も赤くなるんじゃない、フィリス!
あほ外人三人に睨みを利かせつつ、俺は食事を平らげていく。
と―――
カラン、カラン―――
扉が開く音――
「あ、ごめんなさいお客さん。今日は店は臨時休業でして―――」
「そ、そうなんですか。すいませ―――え!?
もしかして、侍君・・・?」
その声に、俺は喉を詰まらせた。
<第七話へ続く>
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