とらいあんぐるハート3 To a you side 第三楽章 御神の兄妹 第五話




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 喫茶店の前で盛り上がる三人。

―――盛り下がる俺。

あー、待て。お前等の知り合いなのはよく分かった。

よく分かったから、俺に紹介くらいしやがれ!

フィリスとリスティに囲まれて談笑する外人に目を向けながら、俺は横で置いてけぼりを食らう。

・・・帰ろうかな?

かなり魅力的な案だったが、脳内で決定する前にフィリスが俺に気付いた。


「あ、ごめんなさい良介さん。フィアッセの事はご存知ですか?」

「よく知らねえ。
仲良さそうじゃないか、お前ら三人」


 まじまじと見る。

ふーん・・・・改めて見るとすごい綺麗だな。

月村やこいつらといい、この町ってレベル高い女が多い。

おれも男の中の男だから、美人は当然好きだ。

・・・性格変なのが多いけどな、その分。


「私とリスティとフィアッセは家族・・・と言いますか、家族同然なんですよ。
良介さんにもぜひ紹介したかったんですが、まさかこんな形でとは思いませんでした」


 嬉しい誤算ですとばかりに、フィリスは喜んでいる。

うーん・・・・フィリスの家族みたいなもんか。

外人同士、俺には分からん結び付きがあるんだろうな。


「正式に紹介しようか。
フィアッセ、彼がなのはちゃんを助けた正義のヒーロー宮本 良介君」

「気色の悪い称号をつけるな!」


 俺の抗議は無視―――なんて奴だ。

リスティは俺の番とばかりに、こちらを向いてフィアッセの肩に手を置く。


「この娘はフィアッセ。フィアッセ=クリステラ。
この喫茶店のチーフさんにして、歌姫様だよ」


 歌?


「もう、リスティ!恥ずかしいから言わないで」


 その抗議には物すごく共感できる。

この女もこの警官には苦労させられているのかもしれない。

うわ・・・・・ものすごく仲良く出来そうな共通点だな、おい。

フィアッセと紹介を受けた女は、俺を前に一礼する。


「フィアッセです。なのはちゃんを助けてくれて、本当にありがとう。
桃子からお話は伺ってます」

「あー、あいつの言う事は半分くらいで受け止めておいてくれ。
どうせ、あれこれ言ったんだろう」

「いいえ。桃子、リョウスケの事すごく気に入ったみたい」

「いや、だからそれが違うから」


 桃子が俺の悪口を言う事は無い。

人の陰口を叩く女じゃないのは分かってる。

逆に、俺には誉められる方が困る。

何度も何度も言っているが、助けた覚えは全然無いのだから。

―――って、待った。


「リョウスケ?」

「あ・・・ごめんなさい。駄目?」

「いや、別にいいけどよ・・・」

「よかった!
・・・仲良くしてね、リョウスケ」


 あっ―――という間に、何故か抱き締められる俺。

な・・・何なんだ、この女は!?

図々しい奴やお人好しはこの町で結構見て来たが、こんなフレンドリーな奴はいなかったぞ!?

頭を抱えられているので脱出は不可能。

てか、胸に押し付けるのはどうかと思うぞ。

お、大きくて柔らかい感触がぬおおお・・・・・って、落ち着け俺。


「わ、分かった。
そ、それなりに仲良くしてやるから・・・とにかく離せ」


 もがもが言いながら、抵抗の意思を伝える。

めちゃめちゃ周りにギャラリーいるから!恥かしいから!

フィアッセにもそれが分かったのか、素直に離した。

颯爽と頭を上げて、頬をペチペチ叩く。

温かい感触を振り払うかのように―――


「・・・・で、お前は何故カメラをかまえている?」

「撮る為」

「誰がそんな普通の答えを言えと言った!」

「もー、我が侭だなリョウスケは。高いんだよ、このデジカメ」

「知るか!
お前の方がよっぽど我が侭だろうが!」


 この女公僕、いつの間にカメラなんぞ持ってやがッたのやら。

下手につっこむと、怖い事言いそうだからやめておく。


「あんた・・・喫茶店のチーフって言ってたけど、ここで働いてるのか?」

「フィアッセだよ、リョウスケ。フィ・ア・セ。
呼び難かったら、リョウスケの好きな呼び方で―――」

「何でもいいだろ、んなもん」

「駄目だよ、リョウスケ。
名前を呼び合う事から、お友達は始まるんだよ」


 ・・・・言ってる事は立派だが、こいつのは警戒なさすぎだ。

ダチなんぞ作ろうと思って出来るもんじゃない。

第一馴れ合うつもりはねえのに、名前の呼び合いに意味は無い。


「えー、めんどくさ―――あいたっ!?」

「駄目ですよ、良介さん。そんな顔しては。
ごめんなさい、フィアッセ。
良介さんは本当はすごく優しいのに、いつも相手にこんな態度を取るの。
悪気は無いから、仲良くしてあげてね」


 後ろから人の髪を引っ張っておいて、何を言いやがるこの女医者!?

人様の断りなく、変な誤解を植え付けないでくれ。


「うん、大丈夫。
リョウスケがすっごく優しいのは、目と声で分かったから」


 目と声?

フィリスやリスティも変な事いうが、フィアッセもまた変な事を言うな・・・・

目ってのはありがちだが、声って何だ?

声なんかで何が分かるんだ、一体。

理解不能だったが、リスティが言った「歌姫」ってのに何かあるかもしれない。


「・・・・・」


 周りを見る。

那美やフィリス、リスティまで何かを促す目をしている。

・・・な、名前で呼んでやれと言いたいのか、貴様ら。

お人よしオーラは下手な拷問よりきつい。

このまま言わなかったら、こんなふざけた空気が延々流れる羽目になる。

嫌がらせに近い理不尽さを感じながら、俺は渋々言ってやった。


「はいはい・・フィアッセ。これでいいだろ?」

「うんうん。・・・やっぱり優しいね、リョウスケは」

「・・・本気で言ってそうだからこええよ」


 ―――本気だろうけど。

これ以上居た堪れなくなった俺は、喫茶店の中に入った。

・・・ま、負けた訳じゃないからな!




















<第六話へ続く>

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