特別技術開発部隊―特技―の実戦データ収集室(兼訓練室)に少年と、その父親がいた。
少年―ナイト―は赤いバリアジャケットを纏い、魔力スフィアが飛び交う中、回避訓練をしていた。
スフィア自体はあまり高速ではなかったが、それでも数があった。
よって回避があまり得意ではないナイトはしだいに苦しくなってくる。
「回避モーションが大きすぎるからだ!もっと無駄なく素早く!!」
少年の父―バート―は腕を組み、そんな息子に檄を飛ばす。
ナイトは父の言葉を実行しようと努力する。
が、理解していても体が思うように動いてくれずに被弾。
この訓練を始めて5分後のことだった。
「・・・まぁ及第点か。これならいつでもいけそうだな。」
「僕らまたどこかへ任務しにいくの?」
「任務ではないが・・・まぁいろいろ、な。」
「??」
父の意図が理解できず首をかしげるナイト。
そんなナイトを置いてけぼりにするようなタイミングで呼び出しがかかる。
『バート・レイノルズ2等空尉、至急部隊長室へ出頭してください。繰り返します・・・』
「漸くか。」
「???」
ナイトはさらに分からなくなり混乱する。
しかし、バートはそんなナイトをよそに部屋を出て行くのであった。
これは特別技術開発部隊―特技―の午前の一幕。
Connection
序章その3
AMFでのデータ収集任務から1ヶ月
人によっては長かったり短かったりな期間であるが、バートにとっては長かった。
「やっほーバート。例の件、申請が通ったよ」
「随分と時間をくったな。」
「それは仕方ないね。何せむこうはJ.S.事件の終結の立役者。むしろこの期間でできたことを感謝してほしいぐらいだよ。」
そういってウォルスは肩をすくめる。
実際苦労したのだろう。こころなしかやつれた感がある。
「そうだったな。感謝している。」
「はぁ〜。感謝は形にしてほしいね。例えばコレとか。」
ウォルスはにやけながら人差し指と親指で円を作った。
俗に言うゼニである。
「また下らんことを。・・・ナイトにしても通じんぞ。」
「ジェネレーションギャップってやつかな。」
そうして2人は笑い合った。
◇ ◇
ナイトは新技術のテスト告知をされるのだろうだろうと予想していた。
なぜなら父一人で呼び出された時は大抵そうだったからだ。
しかし、その予想はいろいろな意味で裏切られる。
「ナイト訓練生は明日からから古代遺失物管理部機動六課に2ヶ月出向するように。」
「・・・父さん、もう一度言ってくれない? あと訓練生じゃなくて・・・まぁいいかな。」
「つまりお前は2ヶ月機動六課で訓練しろと言うことだ。ちなみに命令だ。」
信じられず聞き返しても答えは同じ、というかおまけもついてきた。
予想していたことのさらに斜め上を行く答え。
誰でもいきなり慣れ親しんだ部隊と別の部隊に出向しろと言われれば困惑する。
例えその部隊に友人がいたとしてもだ。
「一応俺も出向するが1週間程度で戻る。うまくやることだな。」
「うまくやれってそんな適当な・・・」
「いい加減親にべったりと言う年頃でもあるまい。」
「・・・りょーかい。」
いきなり通知されて文句の一つでも言いたいところではあるがそこは我慢。
多少の分別はしているつもりであった。
「あと午後の訓練は中止だ。その時間で荷物をまとめておけ。何か質問はあるか?」
「デバイスはクラウンでいいの? 機密扱いの技術のオンパレードだけど。」
「問題ないらしい。向こうにウォルスのお気に入りがいるとか。」
「そういう問題かなぁ。」
「データ関係の情報はあいつに一任されているからな。あいつがシロと言えばシロだ。」
ナイトは「いい加減だなぁ」と思いはしたが、彼にとって機密情報などどうでも良かった。
彼はが気にしていたのは愛用しているデバイスが使えるか否かと言うことだけであった。
騎士であろうと魔導師であろうデバイスは自分の半身。
気になるのは当然のことだった。
「他には無いか?」
「今朝の呼び出しってこれのことだったの?」
「そうだが。」
「じゃあ何で隠してたの?」
もっともな疑問である。
普通に考えてわざわざ隠す必要など無いはず。
「自分が立てた誓いを思い出せ。それで分からんようならもう一度基礎の基礎からやり直しだ。」
――どんな状況でも冷静さを失わない。
忘れるはずが無い。忘れられるはずが無い。
そのせいで父親が第一線から引かざるをえなくなってしまったのだから。
「いきなりの通知も訓練のうちということ?」
それを聞いてバートは少しだけ笑みを浮かべる。
それが答えだった。
「他に何か質問は?」
「今ので終わり。」
「そうか。なら明日からの準備を整え、ゆっくり休め。では解散。」
「はい!」
そして、バートは息子の強い意思のこもった目を見て満足しながら部屋を後にした。
◇ ◇
時刻は午後8時。
明日からの準備を終えたナイトは手持ち無沙汰になっていた。
自主トレするには少々時間が半端であったしシャワーも浴びた後だった。
仕方なしに布団に入るも時間が早すぎたためか眠気が一向に襲ってこない。
どうしようかと考えている頭にビリっと電気が走る。
――――スバルに通信してみよう。
思い立ったが吉日。早速自分の机に向かい、空間ウインドウを起動。
そして、スバルの回線を呼び出す。
そういえば最近お互い通信してなかったなと思いながら。
◇ ◇
青髪で髪の短いボーイッシュな少女はベッドの上に寝転がって雑誌を読みながらうだうだしていた。
オレンジ色の髪で髪が長い少女は机の上で拳銃型のデバイスの分解整備を行っていた。
そこへピーピーという電子音が部屋に鳴り響く。
自分の相方のスバルはベッドの上に寝転がって雑誌を読みながらうだうだしていた。
「う゛〜てぃ〜あ〜通信機とって〜。」
「………」
「てぃ〜あ〜。」
「………っ」
短髪の少女が何か言っているが長髪の少女はそれを黙殺。
こちらは今手が離せないとばかりに。
「ねぇ〜とってってば〜てぃ〜あ〜。」
「もーうっさいわねぇスバル!!」
ティアと呼ばれた長髪の少女が短髪の少女―スバル―を黙殺しきれず、大声を出す。
そして溜息をしてから通信機をつかみスバルへ放り投げる。
いい加減音もうるさかったしと思いながら。
「ありがとーティア!!」
「わかったからさっさと出ないさい。うるさいったりゃありゃしない。」
「うん。」
スバルは多少衣服を整えてから通信機を使い、空間ウインドウを起動させる。
そして空間ウインドウには予想だにしない人物が映っていた。
『久しぶりースバル。』
「久しぶりナイト!!2ヶ月ぶりぐらい?」
『そうだね。そういや聞いたよ。1等陸士になったんだってね。』
「うんそうだよー。だからナイトはアタシにむかって敬語を使うようにね。」
『本当に使ってほしい?』
「ううん。全然。」
こんなたわい無い会話を続けているうちに時間は過ぎる。
通信を始めてから1時間ほどが経っていた。
そろそろ2人とも会話のタネがつき始めて会話の流れがお開きの方向へ向かう。
『そろそろいい時間になってきたし寝るよ。』
「そだね。」
『それじゃ明日からよろしく。おやすみー。』
「うん、おやすみ。ところで明日からよろしくってどういう・・・」
スバルが質問を言う前に通信を切断するナイト。
消化不良気味な最後だったがもう一度通信するのもアレだったので諦めて寝る準備をする。
そういえばなのはさんが明日から別部隊から人がくるって言ってたけど、まさかナイトのわけないよなぁとか思いながら。
Connection 序章―了―
あとがき
どうもS22です。
テンポをどうやったらよくできるかと試行錯誤中です。
しばらくは文体が不安定になりますがご了承のほどを。
何かアドバイスを頂ければ飛んで喜びます。
しかし筆の進まないこと進まないこと。
その上学校行事とも重なってPCに触れられずげんなり。
でもとりあえずこれにて序章が終了。
次回から六課編に突入です。
でもテスト近いんで執筆速度激減の可能性大でございます。
いつもならSS補足をと言うところなのですが今回から廃止します。
あくまであとがきであると言うことに気がついたので。
その代わり、各章終了時に確定設定の公開をしていまのでそちらにて。
ではこの辺にて失礼します。
最後に読者様とリョウさんに感謝を。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、