「主任に通信です。」

 「ん〜誰からだい?」


 先ほど主任と呼ばれた科学者風の男はヨレヨレの白衣を身に纏っており年齢は30代後半に見える。

 体は細く、肌は青白い。見るから不健康体である。


 「聖王教会のカリム様です。」

 「へいへい。繋げておくれ。」


 これはある部隊での昼下がりの出来事。


 


 Connection
序章その1







 「はいはい。え〜こちら特別技術開発部隊研究主任兼部隊長のウォルス=ブラッドレイにございます〜。」


 ウォルスはかなり投げやりな応対をする。 

 その態度に慣れているのかカリムはくすりと笑いさっさと話を進める。


 「ごきげんようDr.ブラッドレイ。あなたは前にAMF状況下での運用データがほしいとおっしゃっていましたね?」


 「・・・あ〜ごきげんよう騎士カリム。たしかにそうですが・・・まさか?」

 「はい、そのまさかです。 旧スカリエッティ本拠地の一部にまだ発生している場所があります。」

 「騎士カリム、是非是非そこに行かせていただけないでしょうか?」


 急にウォルスの態度が変わる。現金な男である。


 「ええ、かまいませんよ。その代わり、そこを調査していただけないでしょうか?」

 「かまいませんよ。具体的にどこを?」

 「最深部です。AMFが非常に強力で危険であるして今まで誰もたどり着いていません。」


 魔導師においてAMFは天敵中の天敵。

 2週間前のJ.S.事件にでも煮え湯を飲まされたばかりで、慎重になるのも当然である。


 「引き受けてくださいますか? Dr.ブラッドレイ」

 「願ってもない。当然引き受けてさせていただきますよ騎士カリム。」

 「そうおっしゃってくださると思っていました。ではごきげんよう、Dr.ブラッドレイ」

 「ええ、ごきげんよう騎士カリム。」 

 その直後にプツンと音を立てて通信が切れ、ウインドウが閉じる。

 そしてその直後にウォルスは狂喜乱舞。まるで「イヤッホォォーーーイ」と叫びださんばかりである。
 カリムの手前、我慢していたのだろう。

 無理もない。かねてから念願のAMF状況下での運用データが取れるのだから。


 「館内放送に回線をつなげておくれ。」


   そう通信で部下に告げる。

 部下の通信士は「館内放送の回線?」と首をかしげながらも手早く回線をまわす。

 数秒後、館内放送にウォルスの回線がつながる。


 「あー緊急ミーティングを開くので実験隊は大至急ミーティングルームに集まれー。繰り返すー実験隊はミーティングルームに大至急集まれー。」


 やはり興奮しているのだろう。

 普通なら通信士に任せることを自分でしてしまうのだから。



 
    ◇    ◇




 特別技術開発部隊―特技―の実戦データ収集室で2人の男が対峙していた。

 男と言うよりは少年と言う感じがしており、ますっすぐな瞳をしている。

 黒い髪を短く切っていて顔には少年としてのあどけなさが残っていた。

 もう一方の男も髪を短く切ってはいるが先ほどの少年とは対照的に年季が感じられる。

 幾度も死線をくぐって来たのだろう。

 その男からは微塵の隙も感じない。

 そして、両者に共通していることは同じ形をした巨大なランス型のデバイスを構えていることである。

「クラウン、ハイブリッド起動。今日こそ勝つよ。」

 少年の声にデバイス―クラウン―が反応し、鈍い金属音が1回鳴って1個の空薬莢が吐き出さる。

 そして、少年の魔力が濃密なものになり、クラウンの鍔の先がゆっくり回転を始め、やがて高速回転になる。


 「ゼロ、カートリッジロード」


 それに対抗して男がデバイス―ゼロ―に命令を簡潔に命じる

 そしてゼロから3回の音が鳴り空薬莢が3個吐き出される。

 一拍置き、男の魔力も濃密なものになる。

 しかし、男に―ゼロにそれ以上の変化は起こらない、回転もしないようだ。

 そして両者の緊張が最大になり、少年から動く。

   踵についているローラーが唸り、少年が男に向かってどんどん加速していく。

 それに対し、男はゼロを構えたまま微動だにしない。

 どうやら少年の突撃を真っ向から受けるつもりのようだ。


 「であああぁっーーー」


   気合の声と共に突撃してくる少年に対して男は短く息を吐いて対応する。

 一瞬の後、甲高い音が立ち、両者が衝突する。


 「なっ!?」


 少年は驚愕した。

 なぜなら少年の突撃を男がゼロの先端をにクラウンに当てて止めていたからだ。

 クラウンが回転しているにもかかわらずだ。

 そしてこの驚愕は少年に隙を作った。

 その隙は一瞬であったが男の勝利を決定的なものにするには十分であった。


 「アクセルムーブ。」


 男がそうつぶやき、ゼロをクラウンの先端からはずすと同時に踵のローラーが高速回転を始める。

 そして、急加速し、刺突を少年に繰り出す。

 少年が慌てて術式を紡ぎプロテクションを起動する。

 しかし、それは男の攻撃にいともたやすく貫かれる

 その勢いのまま少年とすれ違い、再び距離が開く。

 少年の頬に一条の朱い線をつけて。


 「まだまだ未熟だな。」


 そしてその言葉は戦闘の終了を意味していた。


 

    ◇    ◇




 先ほど戦っていた二人が廊下を歩きながら会話していた。


 「まだまだ鍛錬がたらんな。」

 「俺は父さんが非常識すぎると思うんだけどね。」


 少年が半分呆れながらそうさっきの男―父親―に向かって言う。

 どこに回転しているクラウンをあんな方法でとめる人間がいるのか。

 そういう意味合いがその言葉には含まれていた。


 「訓練をしたら誰でもできる。それにもっと化け物が管理局にはゴンマといる。」

 「あ〜噂の機動6課の面々ね。」


 若隊長陣は若くして魔導師ランクがオーバーS、副隊長もニアS。

 そして、その教え子ですら皆Aランクに近い能力を持っているという管理局の若手有望株大集合の部隊。


 「そういうことだ。そういえばお前にも勧誘が来ていなかったか?」

 「ん〜・・・そういやそんなのもあったね。蹴ったけど。」


 少年は魔導師ランクBの試験を受け合格通知を受けたときに勧誘されたのだ。

 所属が特技―所謂新技術のテスト生―であったので引き抜きやすいと考えたのだろう。

   しかし、少年は「ノー」と即答したため、勧誘に来た戦技教導官が苦笑していたという一幕があった。


 「なぜ受けなかったのだ? さらに強くなるチャンスだったろうに。」


 いま教導の評判が高い教官、能力が近いライバル。

 さらにはバックヤード陣のアフターケアまで行き届いている。

 強くなれる理由こそあれ、弱くなる理由などありはしない。


 「だって俺が行ったら父さんが特技に1人でしょ。」

 「このたわけが。お前のような未熟者がいなくとも問題など全く無い。」


 そう憮然として返す父親。


 「それに――」

 「それになんだ?」

 「父さん以上にランスの戦闘を上手に教えられる人なんていないからね。」


 少年は父親の教導を信じて疑わないという口調で断言した。


 「・・・言ってくれる。そこまで信じられているのなら期待にこたえないとないかんな。明日から覚悟しておけ。」


 父親は少し照れながらそう言った。

 それに対し少年は「いらんことを言った」といわんばかりに顔苦くする。 

   そして、2人はどちらともなく笑い合った。



 両者の笑いが収まり、少年が口を開く。


 「しかしいつになったら親父が超えられんのかなぁ。」


 少年が父親の教導を受け始めて早6年。

 そしてその間、父親に勝利したことは1度たりとも無い。

 いい加減勝ちたいという気持ちが起きる。


 「お前の魔力自体は既に私を超えている。あとは戦い方を覚えるだけだ。」


 少年の魔力資質はA+ランク。

 それに対し父親の魔力資質はBランクである。


 「そうなんだけどね。それが果てしなく長いというかなんと言うか・・・」

 「当然だ。高々6年程度で簡単に超えられては私の25年は何だったのだという話になる。」


 少年が「それは・・・」と言葉をつまらせ、苦笑いする。


   「それよりも・・・」

 「それよりもなに?父さん。」

 「勤務中は父さんではなく隊長と呼べと言っているだろう。」

 「了解であります。・・・2人しかいない部隊に隊長もヘチマもあるかと思うけどね。」

 「何か言ったか?ナイト・レイノルズ訓練生。」 

 「いろいろあるのでありますが、まずひとつであります。自分の階級は2等陸士であります。バート・レイノルズ隊長。」

 「お前は俺が認めるまでは訓練生だ。」


 父親―バート―の言葉に少年―ナイト―は不満げな顔をするも何拍かおいて「ぷっ」とふき出す。

   そして、二人が再び笑いだす。


 「やっぱり敬語はやめろ、へたくそで気持ち悪い。お前まさか語尾に『であります』をつけたら敬語になると思っているんじゃないだろうな?」

 「だってよく分からないんだよ。敬語。」

 「やれやれ。ゲンヤの娘・・・なんといったか・・・」

 「スバルね。」

 「そうだ。その娘相手に練習してから使え。」

 「ひどいなぁまったく。」 


 しかし、バートが言う事ももっともである。

 ナイトが使う敬語はあまりにも拙い。

 そのことをナイトは自覚しているのだろう。

 不満げな口調だが顔は笑っている。

 そして、二人の会話がちょうど途切れた時、タイミングよく館内放送がかかる。




    ◇      ◇

   


   バートとナイトがミーティングルームに入った時、中には既にウォルスがいた。

 そのことに二人は驚いた。


 「どうしたウォルス。頭でも打ったか?」

 「どうしよう。俺今日傘持ってきてないよ父さん。」


 ひどい言われようである。

 しかしそれもそのはず。

 ウォルスは今まで呼び出しをかけて先に到着したことがほとんど無いのである。


 「君達が僕のことを普段どう見ているかわかった気がするねぇ。」


 微妙に顔を引きつらせているがそれ以上に彼はうずうずしていた。

 そんな彼を怪訝に思いバートは質問を浴びせる。 


 「ウォルス、何をそんなにうずうずしていのだ?」


 その質問を待っていましたと言わんばかりにウォルスが満面の笑みで答える。


 「聞いて驚くなよ。AMF状況下でのデバイス及びホイールシステムの運用データ収集だぁ!」


 ウォルスの答えにバートたちは一瞬固まった後


 「本当か!?この前は却下されたと言って肩を落として帰ってきていたではないか。」

 「そうだよ!なんでいきなり?」


 AMF条件下での運用データ収集、それは特別技術開発部隊―特技―で開発された新技術の最終運用テストと同義である。

 そしていままではAMF使用は多額の金がかかるとして却下されていたテストでもあった。


 「さっき騎士カリムから通信があってだな、条件付で認可してくれたんだよ。」

 「して、その条件とは?」


 条件付と言う言葉にいやな予感を感じつつそう聞き返すバート。 


 「旧スカリエッティラボの最深部だってさ。」

 「敵戦力は?」

 「アンノウンだってさぁ。まぁ十中八九戦闘はあると考えたほうがいいね。」

 「戦闘があると思ったから引き受けたのだろう?AMF状況下での戦闘データなんて滅多に取れないからな。」 

 「よく分かっていらっしゃるね。バート殿は。」

 「とりあえず戦闘準備だけしておいておくれ。それじゃあ解散。」


 ウォルスはそういって部屋を後にした。



 
 特別技術開発部隊―デバイス技術の研究、開発が本分である。

 













 

to be continued




 


 あとがき

 初めまして、S22と申します。以後よろしくお願いします。

 無謀にも初SS執筆で長編をしてしまうという命知らずっぷり。

 一応プロット自体は最後まで完成していますのでどうにか形にしたいと思っております。

 S22の気力が続く限りですが。(コラ

 ちなみにバリバリの理数系です(死

 さて、ここで少しSSの補足を


   ナイト・レイノルズ(16)


 おそらくこのSSの主人公。現時点で16歳。性格は熱血漢・・・のはず(ぉ

 魔力資質はA+ 魔導師ランクはB+で限定飛行可。スバルと模擬戦したら負けます。

 このSSの初期設定では死亡要員でしかなかったとか(コラ

 多分もう1人ぐらい主人公います。

 
 
 バート・レイノルズ(37)


 ナイトの実父。ナイトが養子とか言う設定とか一切ありませんので悪しからず。

 魔力資質はB 魔導師ランクはA+ 空戦魔導師にございます。 

 魔力が高いだけなら原作キャラ(アニメ)とかぶると思い、ランスを極めに極めたと言う違うベクトルの能力を追加。
 
 性格は当初、温厚のはずだったのにGガンダ○見て師匠に影響されて性格が微妙に歪んでしまったとか。

   そのうちコノ馬鹿弟子がーとかさけ(ry

 最初のプロット段階から一番年を追加されたキャラ。(ぉ


 


 踵のホイール(笑)


 ごちゃごちゃした設定があるのでイメージだけ。

 どんな感じのものかと言うとヒーラーを想像していただければお分かりになるかと。

 あの一時期人気を博したヒーラーでございます。

 バートとナイトの2人ともが装着しております。 

 最初はフロートシステムとかいうトンでも設定だったり。


 


   バートとナイトのデバイス


 彼らのデバイスもごちゃごちゃあるのでイメージだけ。

 コードギア○のグロ○スターのランスでそのまんまでございます。

 ただ色だけ変更。バート隊長は金色、ナイト平隊員は銀色で。

   最初は紅蓮○式の右腕、月下の刀と言う案もあったがプロット考えてる最中に武器に飽きてしまいランスに変更されたと言う。

 もしかすると敵武装として出てくるかも。




   その他の設定はまた今度ということで。

   最後にこのSSを呼んでくださった皆さんと掲載場所を提供してくださったリョウさんに感謝を。




 やたらあとがき長いなぁ(笑







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