「でっかいな〜。アレと戦うのか」
「はぁ、何で俺がこんな常識外れのと戦わないといけないんだ……」
「文句言わない。ほら、行くぞ二人とも」
「よっしゃ、いっちょ暴れてやるか!」
「程々にな。後始末が面倒だから」
「ハハハ。じゃあそろそろ――――CRBチーム発進!!」
「…………」
郊外の高台にて空を見上げる白髪の青年。
悲しそうな瞳の先には空がある。
空は青かった。
だが、その実は赤い色に染まっている。
そう、人の血によって。
青いのは見せかけだけで本当は赤いのだ、空の色は。
そのことを知っている青年はため息を吐く。
いつ、気付いてしまったのだろう?
小さい頃は純粋に綺麗だと思えた空の青さが、今は幻の青さに見える。
虚しいと感じる空の青さ。
見せかけの青に鳥が羽ばたいている。
儚いと感じる。
少しでもその翼が傷ついてしまえば、二度と飛ぶことは叶わないのだから。
青年は頭を振り、今の考えを振り払う。
此処でこうしていても始まらない、少しでも前へ進もう。
そうする為に此処へ考えに来たんだから。
「そろそろ時間か」
そう呟くと立ち上がり、その場を後にした。
「失礼します。アキト・アイザワ中尉、入ります」
「遅い! 今、何時だと思ってんだ!!」
ブリーフィングルームに訊ねたところ、カイは開口一番に雷を落とした。
青年――アキト――は予め予測していたので涼しい顔でそれを聞き流す。
その態度にカイの怒りはさらに高まる。
「今日は遅れるなと言った筈だったよな! 何故遅れた!」
「寝ていました」
「おまっ……もういい! 早く座れ!」
何を言っても無駄だと判断したカイは頭を押さえながら席へと促す。
アキトは「了解」と、少し茶化すように言うと席へと向かう。
そこでは少し苦笑いをしている青年と、含み笑いをしている少年が居た。
「何だ、先に来ていたのか」
「最後はお前。まぁ、いつものことだけどさ」
「アキトさ〜ん、少しは早く来た方がいいですよ。その所為で俺達にまで罰則が来るんですから」
ケイスケはそう言っているが、どこか楽しそうだった。
『シック=クローツェル』准尉。
アキトがこの基地に配属になり一番最初に友となった青年。
『ケイスケ・マツダ』軍曹。
最近この基地に配属となった新兵だ。
性格も何もかも正反対の三人だが、何故か仲が良かった。
暫くそうして喋っていると、カイがジト眼で睨んでいるのに気付く。
シックは態とらしく咳払いをし、ケイスケは関係ないとばかりにそっぽを向く。
全くコイツ等は、とアキトは苦笑しながら席に着いた。
全員が着席したのを見ると、カイはドアに向かい話しかけた。
「もういいぞ。入ってこい」
「し、失礼します!」
「失礼します」
自動ドアが開かれると、そこから出てきたのはオレンジ色の髪をした少しきつめの目をした少女と、青い髪をした健康そうな体躯を持った緊張気味の少女だった。
その青髪の少女を見た瞬間、ケイスケは立ち上がった。
何事かと皆がケイスケを見るが、ケイスケは気付かないようだ。
わなわなと震える唇。
青髪の少女はケイスケを見るなり「あっ!」と声を漏らした。
「スバル……? スバルだよな!?」
「ケイスケ、だよね? 久しぶり!」
そう言うなり少女はケイスケに抱きつく。
周りの視線などお構いなしだ。
少し困った表情をするケイスケだが、少し嬉しそうだった。
アキトは苦笑するとケイスケ達に向かい話しかけた。
「で? お前らはどういう関係だ? 愛しい恋人か?」
その言葉にシックは忍び笑いを禁じ得なかった。
笑いを必死に堪えているが、瞳の端からは涙が滲んでいる。
ケイスケは頬が熱くなるのを覚える。
少女も同じようで顔を真っ赤にし俯いてしまった。
と、今まで黙っていた釣り目の少女だが、アキトたちに近づき一言。
「失礼しました。私の連れがとんだ迷惑をおかけしました」
そう言うなり、少女は青髪の少女の耳を掴み、カイの隣へ引っ張りながら戻る。
少し呆気にとられたが、成程仲がいいらしい。
釣り目の少女はスバルと呼ばれた少女に向かい小声で叱り付けている。
思わず笑みが浮かぶ。
態とらしい咳払いが飛ぶ。
カイだ。
「そろそろいいか?」と貫録のある瞳で少女たちに向かい視線を飛ばす。
少女達は「失礼しました」と敬礼で答える。
「あー、知ってる者もいるようだが本日付けで当基地に配属となるスバル・ナカジマ軍曹とティアナ・ランスター軍曹だ」
紹介された少女達は敬礼をし、自己紹介をする。
「スバル・ナカジマ。階級は軍曹です。よろしくお願いします!」
「ティアナ・ランスター軍曹です。所属はPT警備隊です。なにとぞよろしくお願いします」
仮にも男が多い極東基地。
少女とはいえ美女が増えることは喜ばしいのか拍手喝采が巻き起こる。
対照的に沈んでいるのはケイスケだ。
「何でスバルがここに?」等と呟いていた。
シックが小声で囁く。
「あの子とどういう関係だ?」
「幼馴染……俺と同じ経緯で軍にスカウトされた……」
「ああ、バーニングPTか」
バーニングPT。
巷で人気のロボットシュミレーションゲームである。
互いのロボットを戦わせるというゲーム内容だが、実は軍が適正を持った人物をスカウトする為に開発したものだった。
「ということは、あのキツめの娘も幼馴染?」
シックはティアナを指差す。
だが、ケイスケは首を横に振った。
「いや、知らない娘です。スバルの訓練校時代の友達じゃないですかね?」
二人がこそこそと話している間に少女二人の紹介も終わり、次に所属の発表となる。
「暫くはフェイト・T・ハラオウン少尉の下で動いてもらう」
教育係に任命されたフェイトは立ち上がり、二人に向かい敬礼をする。
実に見事な敬礼だ。
軍の教科書に掲載されているとしても疑わないほどに綺麗な敬礼だった。
思わず見とれる二人の少女。
だが、慌てて敬礼をし返す。
その初々しさにフェイトから笑みが零れた。
その場に居た男性軍人から自然とため息が漏れる。
三馬鹿を覗いて。
「あんなのがいいのか? 打たれ弱そうな女だぞ?」
「いいんじゃないの? 女性は儚い方が」
「綺麗だけど、なんか違うんですよねぇ。フェイト少尉って」
やれ女性はこういう方がいい等と談議を交わす三人。
その時、背後からとてつもないオーラを感じた。
恐る恐る振り返ると――――カイが仁王の表情で立っていた。
目を逸らす三人。
しかし、それは叶わない。
ガシッと肩を掴まれ、顔を寄せられたからだ。
正直に言おう。
怖い。
「お前らは仲がいいな」
アキトは肩をすくめ冗談っぽく言う。
「ご冗談を。どこが仲がいいというんです?」
シックは心外だと言わんばかりに頷く。
「そうですよ。俺達は仲は良くありません。むしろ最悪です」
ケイスケはそっぽを向き口笛を吹いている。
動揺の為かメロディーが滅茶苦茶だが。
「そうか。なら、仲良くしないとなぁ。お前ら格納庫の掃除してこい!」
三人による見事なブーイングのハーモニー。
しかし、カイの一喝により吹き飛ばされる。
三人は渋々頷き、席を立った。
部屋を出て行く間際、ケイスケはそっとスバルに視線をやる。
スバルは何やら嬉しそうにティアナと話しこんでいたが、視線に気付くとニコッと笑みを見せた。
太陽のような笑みだ。
思わず頬が赤くなるのを覚えた。
前を見て頭を振り、今浮かんだ考えを振り消す。
(スバルが可愛いって、何考えてんだ俺は! ……いや、そりゃ可愛いけどさ……なんか違うだろ?)
独り自問自答しながらその場を後にする。
フェイトは三馬鹿を見送ると苦笑しながら言った。
「じゃあ、とりあえず基地の見学に行こうか?」
頷く二人。
フェイト達もその場を後にした。
だが、フェイトがしきりに腕時計を気にしているのがカイの胸に、言いようのない不安を落としていた。
「あー、かったりぃ」
そう言ったのは誰だろうか?
三人は広い格納庫内をデッキブラシで擦っていた。
ゴシゴシと力を入れ擦るが、油で汚れに汚れた床は一向に綺麗にならない。
その手を止め、アキトは格納庫に収容されている愛機を眺めた。
白と黒、そして紅で塗装された機体。
量産型ゲシュペンストMk−U。
人類史上初のパーソナルトルーパーであるゲシュペンストの二代目であるゲシュペンストMK−U・タイプRを元に量産されている機体。
この機体は搭乗者の技量や癖がダイレクトに反映されるため、乗り手次第では悪魔にもなる機体である。
その性能は量産機とはいえ高く、量産元のゲシュペンストMK−U・タイプRとほぼ同じ性能をしている。
だがしかし、センサー類は強化されており、プラズマカッターの代わりに試作機にはない格闘用武器、
自ら
あの凄惨にして驚嘆するしかない過去を。
特殊鎮圧強襲部隊『
その部隊では強襲作戦を主としていた。
避難も完了していない街に攻め入り、無差別に攻撃する。
ビルが倒壊すると子供が潰される。
爆発が起きると、悲鳴があちこちから上がる。
何が正しいのかすら分からず、ただ命令に従い無抵抗な人々を殺した。
そんな戦場にアキトはいた。
だが、明らかにやり過ぎだという声が軍上層部から上がり部隊は解体解散となる。
軍以外に居場所のないアキトは軍の決定に従いここ、佐世保基地へとやってきた。
あの戦場との違いに驚き戸惑ったが、シックとの出会いによって救われた。
戸惑う上官に向かいシックは気さくに話しかけ、上下関係を超えた友人になってくれた。
さらにケイスケの登場により、アキトの身辺は劇的に変わった。
ケイスケが恍けたことを言い、シックが笑う。
そしてアキトがいさめる、というおかしな関係が生まれたのだ。
「俺たちは変わったよな。なぁ、Mk−U?」
――――
「あっ、居た!」
先程聞いた元気な声が格納庫内に響いた。
声のした方に視線をやるとスバル達が居た。
見学は終わったのだろうか?
フェイトに近づき話しかける。
「見学は終わったんですか、フェイト少尉?」
フェイトは驚いた表情をしてアキトを見やる。
話しかけられたことが意外なのだろう。
フェイトはその表情のまま愛想笑いのようなものを浮かべ頷く。
「ええ、一通り見て回りました。最後にここだけは見せておこうかと思いまして」
そう言うと腕時計を確認する。
何か約束でもあるのだろうか?
その瞬間に響き渡る警報音。
アキトたちとフェイトの四人はすぐさま自分の愛機に乗り出撃態勢を取る。
エンジンが掛かり、温まる乗機。
拡声器でスバル達を退避させ、外へと出る。
おかしい。
出撃している数が明らかに少ない。
警備の為の機体しか出ていないのだ。
そしてレーダーには自軍の輸送機――タウゼントフェスラー――のマーカーしか出ていない。
秋人が思案していると通信越しにカイの顔が浮かんだ。
『お前ら何をやっているんだ?』
呆れ顔でそう言われてしまった。
だが、こちらはあの警報音を聞いて出撃したのだ。
そのことを言うと、
『アレは新型が届いたことを知らせる音だ。そんなことよりお前らは待機命令が出ている。サッサと戻れ』
「新型?」
そこまで言うとカイはしまった、という表情になる。
すかさずシックは言及する。
「新型って何です? 今朝のブリーフィングでは輸送物資が来るとしか聞いていませんが」
「おいおい、俺は聞いていないぞ?」
「当たり前ですよ。アキトさん居なかったんですから」
「ふむ、成程」
「これからはもっと早く来ような?」
「ああ、考えておく」
苦笑するシック。
談笑はそこいらにし、アキトはカイに向き直った。
「それで? 新型とは何です?」
渋っていたカイだが、諦めたのかため息を吐き話し始めた。
『まぁ、お前らならいいか。それにまたハッキングでもされたら堪らんからな』
「アレはシックの独断だろ?」
「俺じゃないよ。ケイスケがやったんだ」
「はぁ!? 俺にやれっていったのはアキトさんでしょ!?」
「知らん」
お前がやった、俺じゃないと言い訳する三馬鹿。
それを聞いている通信越しのカイはフルフルと震えている。
『お前らいい加減にしろ! どちらにしてもお前ら全員が悪いんだ!!』
ブーブーと文句を言う三人。
それを無視し、カイは本題を話し始めた。
『あの輸送機にはな、ゲシュペンストの新型が積んであるんだ』
「ゲシュペンストの新型? 開発が噂されているMk−Vか?」
ゲシュペンストMk−V。
元マオ社のエンジニアであり、現ATX計画の開発責任者がである、『マリオン・ラドム』氏が開発中の機体である。
『いや、そいつじゃない。お前ら念動力者って知っているか?』
「念動力者?」
「ああ、それなら聞いたことあるよ。独特の脳波を応用して火器管制とかを制御出来る者のことだろう?」
「俺がハッキングして調べたんですよね」
念動力者。
その言葉を聞いた瞬間、アキトの中で何かがざわめいた。
自分に何か関係があるのだろうか?
「それで? その念動力者が何か関係あるのか?」
『その新型はな、念動力者専用の機体なんだ。何て言ったか? そうそう、T−LINKシステムを搭載しているらしい』
「T−LINKシステム……」
「何だか大そうな名前だよね」
「ええ。でも念動力者ってどんな人なんです?」
『さぁな。俺も詳しいことは知らん。ミッドに居るSRX計画の責任者が要請したらしいがな』
「あ、あの……!」
それまで黙っていたフェイトが急に話に割り込んできた。
顔を見てみると、何か焦っているらしい表情をしている。
「どうした、フェイト少尉?」
「あと、えと……そろそろ演習の時間では?」
アキトははてなマークを浮かべる。
「演習? そんな予定あったか?」
「ああ、そういえば今日のブリーフィングで急に決まったらしいよ」
「アキトさん本当に早く来て下さいよ。二度手間になるから」
「……うるさい」
三人はそのまま談笑を始める。
それを見ているフェイトの焦りはさらに高まる。
その焦りようは異常で、カイはフェイトに聞いてみた。
『フェイト少尉。何かあるのか?』
「え!? い、いえ……」
『だったら何故、何度も時計を確認しているのだ?』
「あ、あぅ……」
それっきり黙ってしまうフェイト。
その時、タウゼントフェスラーが着陸態勢に入った。
ゆっくりと減速し高度を落とすタウゼントフェスラー。
だが――――
「なっ!? 爆発!?」
「レーダーに反応、数二十! 識別コードが出ていない、敵だ!」
「何で行き成り……?」
突如として現れた正体不明の敵機。
それは自律飛行をしており、明らかに連邦軍の機体ではない。
敵機は無差別に基地を攻撃し、破壊活動を続けている。
警備の機体が迎撃に出るが、熟練の差かはたまた飛行タイプの敵に慣れていないのか一向に攻撃が当たらない。
『――――っ! 何やってんだお前ら! 迎撃に出ろ!』
いち早く正気に戻ったカイは四人に攻撃命令を出す。
アキトたち人はすぐさま動いたが、フェイトだけは微塵も動かなかった。
『どうした、フェイト少尉!』
声をかけられたフェイトは何かブツブツと呟いているだけで、声を返そうとはしなかった。
「そんな、早すぎる。まだ避難が完了していないのに……!」
『何を、言っている……?』
だがしかし、フェイトは一向に答えようとはしなかった。
その間にも敵機の攻撃は止まない。
アキトの機体による援護射撃により、多少攻撃が和らぐが、根本的な解決にはなっていない。
敵が怯んだすきを見てシック機が撃墜する。
ケイスケ機は動きが少しぎこちなかった。
「何やっている! もっと敵をよく見ろ!」
「だって、実践と演習じゃ違い過ぎ――――うはっ!?」
「ケイスケ!? ちぃ、アキトこのままじゃジリ貧だ、隊長機を落とそう!」
アキトは頷き、レーダーと視認による検索を開始する。
一番攻撃回数が少なく、もっとも被弾していない機体。
だが、そのような機体などヒットしない。
今度は一番攻撃回数が多く、もっとも被弾していない機体を検索して見る。
「――――コイツだ!」
その機体は黄色いカラーリングをされていた。
その機体に国際チャンネルで通信を入れてみる。
「こちら連邦軍中尉、アキト・アイザワ。貴様の所属を言え」
『所属ぅ? 何だ知らねえのかよ!? じゃあリオンを見るのも初めてってか!?』
聞こえてきたのはこの状況を楽しんでいるかのような声色をした男だった。
癇に障る。
不愉快な声だ。
「貴様の目的を言え」
『目的なんか決まってんだろう? お前らを殺すことだよ!』
それっきり通信が途絶える。
リオンと呼ばれた機体は加速し、アキトたちに向かい攻撃を開始する。
マシンキャノン、ホーミングミサイルの散弾。
少し掠ったが、大丈夫問題はない。
しかし、上手く身動きのとれないケイスケは格好の的だ。
舌打ちをしケイスケの元へ駆ける。
M950マシンガンでミサイルを撃ち落とし、マシンキャノンの盾となる。
「何やってんだ! サッサと態勢を立て直せ!」
「す、すいません!」
「――――っ! ちぃ!」
ケイスケ機に体当たりをし、レールガンの射線から強引に外す。
地面に叩きつけられるケイスケ機。
だが、構っている余裕はない。
ケイスケをそのままにし、リオンへと向かいマシンガンで牽制。
リオンがアキト機に構っている内にシック、ケイスケへと通信を入れる。
「シック、ケイスケ! 俺が敵を引きつける。その内に落とせ!」
「了解。落ちるなよ?」
「はっ、誰にもの言ってんだ。行くぞ!」
しかし、ケイスケは未だに倒れたままだ。
脚がイカれてしまったらしい。
このままでは格好の的だ。
だが、アキトとシックはケイスケを無視し、攻撃を始める。
ケイスケはコクピットの中で悔しさに歯噛みした。
「俺って……足手まといだ。……くそっ!」
計器を殴りつける。
紫電が舞い、黒煙が上がる。
コクピットの中には、ケイスケの泣き声だけが響いていた。
「ケイスケは……やはり駄目か」
「これが初陣だからね。当然だろ」
リオンの攻撃をかいくぐり、接近する。
シックのスプリットミサイルで牽制。
だが、かわされる。
状況は圧倒的に不利。
しかしそんな中で、二人はほくそ笑んでいた。
そうだ、お前はやれる。
信じている。
と、背後に居る仲間に向かい笑顔を見せる。
『どうしたぁ? この程度なのかぁ!?』
リオンのパイロットの哄笑。
だが、その笑い声は驚愕に変わる。
「俺だって……俺だって!!」
ケイスケは倒れながらM950マシンガンを構えていた。
照準をリオンへ。
敵はアキトたちに夢中で気付いていない。
今だ!
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
引き金を引き発射。
マズルフラッシュが走る。
その弾丸は、真っ直ぐリオンへ向かい駆け抜ける。
直撃。
リオンの頭部へ当たり、黒煙が噴く。
ケイスケは笑う。
嬉しそうに。
「ハハハ……やったぞ。俺がやったんだ……!」
「ケイスケ油断するな、気を付けろ!」
「え……? ――――!?」
敵機はまだ健在だった。
マシンキャノンによる攻撃。
ケイスケ機が無残に破壊される。
腕がもげ、頭部が吹き飛ぶ。
アキトの叫び。
シックの慟哭。
もう駄目かと思われた、その時――――
『そこまでだ。テンザン』
『てめぇは……色男じゃねぇか。どうしたよ、こんな時間に?』
新たなリオン。
その機体は濃紺にしたカラーリングだった。
あの機体色には見覚えがある。
そうあの機体は……。
「何で……アイツが? 宇宙に居る筈だろ!?」
「アキト! ケイスケが!」
「……ちぃ!」
攻撃がやんだ今を好機に、シックはケイスケ機の傍にまで来ていた。
コクピットを開きケイスケを救助。
シック機の手の中に居るケイスケは血だらけだった。
息はしているようだが、今の状態が長引けば命はない。
とりあえず生きていることに、ホッとため息を吐く。
だが、事態は好転してはいない。
むしろ悪化してしまった。
あの濃紺色のリオンが現れたことで。
「アキトどうする? このままじゃ」
「黙れ……。今考えている」
アキトは思案する。
どうすればアイツを倒せる?
あの歴戦の勇士を。
『
と、その時、通信がアキトの機体に入った。
『こちらはディバイン・クルセイダーズ所属。ラストバタリオンのクレイル=ウィンチェスターだ。こたびの襲撃は我々の手違いだ。
本来は貴官等の撤収を図ってから行うつもりだった。謝ろう、すまない』
「何を、言っている……?」
『ん? この声は……貴様か』
アキトは通信越しにクレイルを睨みつける。
「『
『フンッ、貴様か『
「黙れ! 貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか!?」
『理解している。とんだ偽善だ。だがな、これが条件だったのだ』
条件?
では、今回の襲撃は内通者が居るということか?
クレイルは続ける。
『今回の襲撃は失敗、ということにしておこう。帰るぞ、フェイト』
「フェイト少尉……? 何を言っている!」
フェイトに視線を向ける。
だが、フェイトは身じろぎもしなかった。
ただ、一言。
『私は……連邦軍の人間ではありません。ディバイン・クルセイダーズ所属。ラストバタリオンのフェイト・T・ハラオウンです……』
その言葉にアキトは目を瞑り、静かに話しかける。
「いつからだ?」
『最初から……です。タイプTの奪取の為に身分を偽りここへやってきました』
「そうか、ならば――――死ね」
M950マシンガンをフェイトに向ける。
しかし、フェイトは動かない。
引き金を引こうとするが、引けなかった。
マシンガンを下ろし、背中を向ける。
「サッサと行け。二度と俺の前に現れるな。いや、俺たちのな」
『フェイト、行くぞ』
そう言うと、クレイルはテンザンを牽引しながら去っていった。
フェイトもその後を追う。
だが、最後に一言。
『――――』
「…………」
コクピットシートを殴りつける。
歯を食いしばり、拳を固く握る。
握りしめすぎた為か、拳からは血が滴っていた。
「ごめんなさい、だと? ふざけるな……!」
氏 名:アキト・アイザワ
C V:今井 由香
B G M:流星、夜を切り裂いて
性 格:冷静
年 齢:25歳
身 長:170cm
体 重:51kg
髪 色:白髪
眼 色:暗い紅
成 長:射撃系格闘重視型
エ ー ス:射撃攻撃+10% 回避率+10%
精 神:集中、ひらめき、狙撃、熱血、気迫、覚醒
ツ イ ン:戦慄
特殊能力:念動力
――――:指揮官
――――:援後攻撃
――――:ヒット&アウェイ
――――:アタッカー
――――:見切り
P R:
連邦軍佐世保基地に所属する兵士。過去に、 特殊鎮圧強襲部隊『
パイロットとしての腕は過去に培われた技術により高い。PT乗りとしてはエース級だが、人間的にどこか欠損している。
性格は一見、無愛想に見えるが心を許した相手にはお茶目なイタズラをすることもある。
昔は暗い性格で他人を寄せ付けないようにしていたが、シックやケイスケのお陰もあり、現在の性格に至る。
また、クレイル=ウィンチェスターとは因縁めいたものがあり、互いに敵視している。
氏 名:シック=クローツェル
C V:草尾 毅
B G M:紅の修羅神
性 格:強気
年 齢:20歳
身 長:178cm
体 重:77kg
髪 色:やや黄色がかった金髪。
眼 色:水色
成 長:格闘系万能型
エ ー ス:格闘武器攻撃力+10%、命中率+10%
精 神:努力、ひらめき、必中、熱血、愛
ツ イ ン:魂
特殊能力:援護攻撃
――――:援護防御
――――:インファイト
――――:ガンファイト
――――:ガード
――――:集中力
P R:
連邦軍に所属するパイロットであり、味方の援護・支援に回る事が多いが、地味にコツコツと敵を迎撃する事で有名。
実戦訓練の際も味方の援護だけをしているかと思えば、ちゃっかりメインとなるターゲットは自分で撃破していたり、
ここぞと言う場合は自ら突貫してターゲットを破壊して撃墜スコアを稼いだりと、地味でありながら曲者っぷりを発揮する事でも有名(※部隊内)であり、
居たら居たで困る、居なかったら居なかったらで困ると言う『曲者』なパイロット。
支援等に回ることが多いが、前線で戦えないのか――と言われればそうでなく、前線での戦闘要員に欠員(※損傷等の理由によって)
が生じた際に素早く前線へと向かい、欠員の穴埋めを行いつつ戦線の維持・敵の撃破を行う等、実際はオールラウンダー系パイロットなのだが、
とりあえずは味方と一緒に行動し、味方の援護を行いつつ、地味ながら敵を落すという事に従事し続けている。
氏 名:ケイスケ・マツダ
C V:小西 克幸
B G M:ANOTHER TIMEDIVER(後期:THE GUN OF DIS)
性 格:強気
年 齢:17歳
身 長:175cm
体 重:65kg
髪 色:黒 ク時白
眼 色:茶 ク時金
成 長:格闘系大器晩成型
エ ー ス:最終CL率+20%
精 神:必中、気合、集中、熱血、激励(クォヴレー:集中、必中、ひらめき、熱血、偵察、突撃)
ツ イ ン:ケ:魂 ク:かく乱
特殊能力:アタッカー
――――:援護防御
――――:支援攻撃
――――:
――――:
――――:
P R:
バーニングPTのプレイヤーだったが幼馴染のナカジマ姉妹と共にスカウト、しかしナカジマ姉妹よりも適正に劣り、予備パイロットとして登録。
訓練施設で教習を受けたときも二人よりもスコアが低い。
後に戦場に立ったとき、ピンチになった部隊を援護するべく出撃するが死にかける。
その時突然現れたアストラナガンにゲシュペンストごと取り込まれる。
唐突にパワーアップを果たし部隊を救うがコクピットから現れたのは彼であって彼ではなかった。
髪が変わり、変質した機体で戦うがその精神はクォヴレーの物であり、ケイスケの精神はその中で眠ってしまった。
氏 名:クレイル=ウィンチェスター
C V:緑川 光
B G M:Shooting Black
性 格:超強気
年 齢:22歳
身 長:181cm
体 重:78kg
髪 色:金髪
眼 色:やや暗い蒼
成 長:格闘系射撃重視型
エ ー ス:格闘攻撃+10%、CT率+15%
精 神:必中、ひらめき、不屈、熱血、直撃、覚醒
ツ イ ン:魂
特殊能力:援護攻撃
――――:インファイト
――――:ガンファイト
――――:アタッカー
――――:E−セーブ
――――:B−セーブ
P R:
エルザム=V=ブランシュタインが指揮するDC親衛隊・ラストバタリオンに所属している兵士であり、
エルザムの命によりテンペスト=ホーカー少佐やコロニー統合軍等、様々な場所を転々としながら連邦軍と戦い、
数々の作戦に参加してきた腕利きのパイロットとしてエルザムを始め、テンペスト等の名だたるDCの指揮官クラスの人間からの評価も高く、重宝されている。
此度、エルザムの召集に応じて地球へと降りてきた際に連邦軍から拿捕した突撃型の試作機・アルトアイゼンの二番機
(俗に言うR型であり、キョウスケ=ナンブが駆る物はL型に当たる)を譲り受け、フェイト=テスタロッサとチームを組む事になる。
戦場で敵を殺すと言う事を割り切っている物の、必要以上の殺傷(※民間人の虐殺や投降に応じた者の殺傷等)を好まない為に、
ゲーム感覚で容易く人間を殺していくテンザン=ナカジマを忌み嫌っており、自らの手で抹消してやろうと思っているらしい。
テンザンとの関係は劣悪という言葉を軽く超越している位に悪いが、フェイトとの関係は良好であり、一緒に居る姿が良く見られる
(※部隊の人間にはその事で良くからかわれ、その度にクレイルが激怒してその人間を追い回す姿も見受けられる。)
あとがき
SRW大好き、どうもシエンです。
今回から新連載です、SRWです!(興奮気味)
キャラクターはユウさん、鬼丸さんの協力により登場しました。
オリジナル機体、武装についてはユウさん主導の元、製作が行われています。
物語としては、今はDC戦争開始前ですね。
これからビアン総帥やシュウが登場します(いつになることやら)
それではまた次回お会いしましょう。