『〜リセット&NEWスタート〜 五話 〜新しい仲間〜』



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先程まで壮絶な戦闘が過去のように宇宙空間は静寂を取り戻していた。

しかし戦闘があった証拠として周囲にはピロシキ型の残骸が漂っている

2つの艦が融合してしまいまったく動く気配はない。

まるで全ての時間が停止してしまったかのようだ。



しかし艦内部では対照的に未だ混乱で騒がしかった。

その中で旧艦区の作戦室であった所でマグノはメイアとブザムを呼び、

状況を整理すべく各部署の報告を聞いていた。



「我々の船は完全にペークシスに飲み込まれてしまいました。
 
重要な機関は全て機能停止しています。」


ブザムの説明ごとに映し出されるモニターには、

辺り一面ぺークシスに覆われている。


「しかし、不幸中の幸いかドレッドに関するエリアは無事でした。
 
レジシステム自体にも被害はありません。
 
プラットホームにも侵食がありましたが、
 
清掃作業のみでなんとか使えます。」


「ふう・・・安心していいものかねエ・・・・・」


安心要素が1つもなくマグノはぼやいていた。


「問題は我々の位置ですが・・・・これを見てください。」


パネルのスイッチを押すと中央に立体映像が映し出された。

それを見たマグノとメイアは思わず息を呑んだ。  


「我々はメジェール宙域をはるかに離れた宙域上に存在していることが分かりました。 
 
時間にして約二百七十日の距離です。」


ブザムの固く、驚愕の事実が三人に圧し掛かる

現在地そして、メジェール母星の位置が表示された。

その距離はかなり遠い。


「まったく、何がこんな事になっちまったのかねぇ。 後は例の敵さんのことだね・・・」


「はい、人手が足りないもので、志願者を調査に向かわせました。」


珍しく歯切れの悪い返事をするのを察するにその人物はあまり信用できないのだろう。














  「キャッホ〜〜〜〜〜ッ♪♪、スッゴーイ!!」


上機嫌に跳ねつつ自機に向かうディータ。 もともとUFOマニアで悪い宇宙人であっても興味をそそられるのである

「フフフ・・・きっと凄い物があるんだろうなあ〜♪」


「何を期待してるんだいディータ。」


「ホント・・・・・・・・・・・付き合う者の身にもなって欲しいわよ


妙に盛り上がっているディータを皮肉るようにコクピットから声がした

ハッと見上げると、そこには、ガスコーニュとフリージアの姿があった


「!?・・・・・・・・・ガスコさんにフリージア!!」

意外な人物が自分のドレッドの中にいることにディータは驚く。


「ガスコじゃないよ!ガスコーニュ!!」


「アナタ一人じゃ心配だって!ほら、さっさと行くわよ!!」


ガスコーニュが補助席に座りフリージアはその隣で窮屈そうにしている







作戦室ではマグノが団扇で扇ぎながら考え事をしていた。


「さぁ・・・あとはこいつらをどうするかだが・・・・・」


「この艦のシステムを把握するまでは利用するべきだとは思いますが・・・・・」


ブザムがそう進言するとマグノの団扇を持つ手が止まった。




「・・・ああ・・・確かにあのヴァンガードとドレッドの合体・・・・
 
そしてあの坊やの力・・・」

そう言って目を細めるマグノ。





「……そして、僕は思ったね。死ぬのは簡単だ。」


同じ頃、監房の中では囚われのバートが一人熱弁を振るっていた。


「しかしいつの日かこの艦を女の手から取り戻し、
 
タラークへ帰ることこそ僕らの使命だとね」


そんなバートの台詞を聞きながら、

(なんでこんなウソ、ハッタリが口から出てくるんだ?)

とヒビキは思い耽っていた。


  「……まったく信じらんねぇよなぁ」


「信じられないよなぁ。」



バートの声に重なった。




「あんな蛮型どこで作った。何故女と合体するだ・・・・・。
 
ヒビキならいろいろ知ってるんじゃないか?」


バートとドゥエロとヒビキの三人はいろいろと話し合って 互いに名前で呼び合う事にした。


「知るか。そんなこと。確かにオレはパイロットで蛮型の開発プロジェクトに関わっていたが
 
あんな機能みたことないぜ。多分、ペークシスの影響だろうな・・・・・」


「ええっ!ヒビキお前パイロットだけじゃなくて技術者もやってたのか?
 
ならもっと出世しててもおかしくないのに・・・・・」




バートは腕を組み考え込んだ。

すると何かを思いつきポン!と手を叩いた。



「ああ!そうか確か戦果は抜群だけど、女人を絶対殺さないから
 
 上層部に睨まれてたんだろ。結構有名なんだぜこの噂。

 ま、軍の面子に関わる事だからから正式には発表されてなかったけどね。

 しっかし、お前もバカだね〜

 どうして女を助けるんだい?僕にはまったく理解不能だよ。」


「・・・・・・・・・・」


ヒビキは何も喋らない。

まだバート達には理解できないことは分かっている。

自分も昔は女は敵だと思っていた。

それが分かっているのでヒビキは沈黙で答えた。

そんな空気に耐え切れずバートはドゥエロに話題を振った。


「で、ドゥエロ君。君に一つ相談があるんだがね」


「相談とは?」


「いや、何、僕の饒舌と君の頭脳そしてヒビキの戦闘能力が
  
合わされば、女達の手からこの船を取り返すのは
  
簡単だと思うんだ。その時こそ、女達に……!」


「女達に……、どうなるのかな?」


いきなり監房の外から声がかかる。声の主はブザムだ。

ちょうどクルーを従えたブザムが入ってきたのである。

「え、あ、いやこっちの話でべつに謀反を起こそうなんて思ってないですよ・・・・・ハハハ!」


ブザムは口元には笑みを湛えつつも、瞳は彼を威嚇している。




「ゆっくり聞きたいな。一緒に来てもらおう」


「ハ・・・ハハ・・・お、お話だけなら喜んで」


その頃艦内ではシステム把握の為に機関クルーたちの必死の努力が続いていた。

なにせ冷房すら動いていない状態なのである。


「あぁ、暑い〜〜。ちょっと28度もあるよ、何とかならないの?」


 オペレーターのベルヴェデールが機関クルーに文句を言う。

「贅沢言わないでよ。こっちは30度超えてるのよ」

「はぁ……、こっちは反応無し。パルフェ、そっちは?」


ブリッジから来るクレーム状況の中、 ペークシス機関室では宇宙服を着て作業するパルフェ達がいた。

「かぁ〜、なにこの古いシステム。

 もしかしてプロトタイプなんじゃないの?」

一向に言う事を聞かないペークシスを相手に

パルフェも呆れ気味になって叫んでいた。

その頃、2つの融合部分にマグノの指示によって、

エレベーターの設置が行われていた。

「かくて敵の船を乗っ取りつつも、
 
 マグノ一家はさらなるピンチにさらされたのであ〜る。」

仮設エレベーターの上でパイウェイは自伝の執筆をしていた。

「パイ、遊んでるんだったら手伝ってよ!」 

「遊びじゃないもん!」

気楽に言い返すパイウェイ。

確かに彼女の言うことは間違いではない。

彼女は艦内のクルーのコンディションチェックも一任されているのだ。



「待って!乗る、乗る!!」



そこに、バーネットとジュラが乗り込んできた。

双方とも大荷物を抱えている。

お互いに船が融合した際に部屋をだめにされたのだ。


「『お引越し!お引越し〜』。
 よかったねあたし達の部屋潰されなくて。『ケロケロ』」




カエルのバックで腹話術モドキをやりながら パイウェイが皮肉を言う。

 
 

「ナンかむかつく。」
「まったく余計暑くなるわ、って何よそれ。」

ジュラがつぶやき、 バーネットがパイウェイのしている命綱に気づいた。

「『このエレベーターはまだ仮設ケロ』。
 落っこちても知らないよォ〜。バハハ〜〜〜イ!!」

そう言って腰のスイッチを押して上方へと登っていってしまう。


「ちょ、ちょっと!?」


「嘘でしょ!?」


二人は青くなりながら同時に叫ぶ。

が、時既に遅く哀れなバーネットとジュラはまだ手のつけていない

クリスタルの洞窟の中へと姿を消していった。





『母艦というよりなんかの工場みたいだねぇ』


「で、様子はどうだい?」


団扇を仰ぎながらマグノが問う。

通信相手はガスコーニュである。


『データベースを探してるんだけどね、こうデカイとねェ……』


 溜め息混じりにガスコーニューが言う。

マグノにしてもガスコーニュが手を抜いていないのことは承知している

マグノはニヤリと口元を歪ますと、励ましを込めていった。  


「ま、焦っても仕方がない。コッチは逃げたくても身動き取れないからね」


マグノはそう言って通信を切った。





「これから手分けしてデータベースを探すよ!私はコッチを探すからアンタ達は向こうの方を探してくれ。」


マグノとの通信が終わった後ガスコーニュはデータベースを探すべく

二手に分かれるように指示した。

そしてディータとフリージアがデータベースを探しに行こうとした時

ガスコーニュはソッとフリージアに近づき耳元に呟いた。

「いいかい、ディータは何しでかすかわからないからね。しっかり見張っとくんだよ。」


「判ってますって。」


「おぉ〜〜〜い!フリージア、早く、早くぅ!」


そんな二人の心配を知らずディ―タは楽しそうである。

呼ばれたフリージアも苦笑いをしながらディータの元へと走っていった

ガスコーニュと別れデータベースを探し始めた二人だが全然見つからない

自然と口数が多くなっていき、今はヒビキの話題を話していた。


「そんでね、私がね『助けて〜!』て言ったらね、宇宙人さんがね、『絶対助けてやる』て言ったんだよ!」

ディータが目をキラキラと輝かせ語っている。

その顔は実に嬉々とした表情だ。


「・・・・・・・・・・・いい奴・・・・・・・・・なのかな・・・・・・・・」

(何なの・・・・・・・・・・私のこの気持ちは・・・・・・・・・・)



  「うん、宇宙人さんはとってもいい人だよ♪」


フリージアの呟きにディータは即答した。

それっきりフリージアは何も喋らず何か思いつめた表情をしていた。

その一方、ディータもっとヒビキのことを知ってもらおうとしきりに

フリージアに喋り続けている。

最初は聞き流そうとしていたフリージアだが、

しだいに心の中にもやもやとしたものが溜まっていった。


(何だろう?・・・・・・・・・・・胸が苦しい・・・・・・・・・・・・)


せつない痛みがフリージアの胸を容赦なく襲った。


     (せつない・・・・・・・・・・・・? )


困惑しながらも、フリージアは必死に冷静になろうと努めていた。

男と女は憎しみ合うものそう教化されてきたフリージアは、

今の自分の気持ちが『嫉妬』であることに気付いてはいなかった。


「でね、でね、宇宙人さんはとってもカッコイイんだから♪」


ディータの『カッコイイ』という台詞で、ヒビキの顔を思い浮かべると

カーッと顔が熱くなる。おそらく顔中真っ赤になっているだろう。

「ねえ、フリージア・・・・・・聞いてるの?」



今まで一方的に話していたディータがフリージアの様子がおかしいのに気付いた。

「ン!?どうしたのフリージアお顔真っ赤だよ、おネツおネツ?」


しかし、ディータの呼び掛けにも全然反応しない。

「え!?あ・・・・・・・・ごめん、何か言った?」

結局、データベースの探索ははかどらず、

フリージアは永遠とディータの宇宙人さんの話を聞かなければならなかった。












  ガスコーニュとの通信を終えると今度はブザムから報告が入った。


『ナビゲーターを連れてきました』

「今行く」
マグノは手元のスイッチを押すと、

マグノの座っている艦長席が後方にスライドすると、

ゲートが開き、ブリッジへと移動していった。

「ど、どうも・・・・・・・・・ボクに何か御用でしょうか?」
一体何をされるのかと、恐る、恐る聞いてみた。

「あぁ、あれだよ」
団扇で指した先には、例のナビゲーション席があった。

そこを見てバートの表情が硬化する。


「全然動きゃしない。アンタ、どうやったんだい?」

「……ハハ、無理もないですよ。

なんせこの兵器は我が軍の秘密兵器ですからね。

・・・・・・・・・・・・・・・・いいでしょう、お見せしましょう」


出来る限りもったいつけた態度で言うと、 両手を上げてこれを外せ、と言わんばかりにブザムを見る。 ブザムはそれを察し、渋々開錠する。


「いいですか?これは男の船ですよ。動かせるのは男だけ。

当たり前でしょう。

……つまりこの船にとってこの僕は必要不可欠な存在だという訳です」


ここぞとばかりに自分を売り込み調子に乗ったバートが ナビゲーション席に足を掛けた、その時である。

「それで……ってぬわぁぁ!」
 
足を乗せると、それまでピクリとも動かなかったナビゲーター席は一瞬にしてバートの体を呑み込んでしまった。


「・・・・・・・・・・・・・やっぱ判んないね・・・・・・・・・・・・・このシステム」


ヴン・・・・・・・・・・・・・・・・

バートが中に入るとシステムが起動し、広大な宇宙空間がバートの視界に現れた。

「へへ・・・・・・・・・ざっとこんなもン・・・・・・・・・・・」




ヴワァァァ――――――ッ!!!


それまでピクリとも動かなかったエンジンが起動し、

急激なブーストを発すると、猛スピードで移動を開始した。


「兄ちゃん!!何やったんだい!」


いきなりの揺れにマグノは思わず身を乗り出し問い掛ける。


『お、お待ちください。今すぐに……えっと』


その慌てぶりからマグノにも彼がコントロールしている訳ではないことがわかった。

「まったく、ハッタリだけで世の中渡ってるとこういう時にボロが出るんだよ」


『ハハハ…・・・・・・・・何のことやら・・・・・・・・・・』














  しかし、返答はない。

ガスコーニュの様子を見て、

フリージアも状況の異変に気付いた。

しかし何処からか取り出したカメラで映像を収めることで夢中なディータは気付いていない。


「こっちも通信できません。」


すぐさま通信機を手に取り通信を試みるが一向に繋がらない。

思わず顔を見合わせるガスコーニュとフリージアだった。


「ガスコさん?・・・・・・・・・・・ディータ!?応答してください!」
 

エズラがも必死に呼びかけるが、目の前のコンソールにはノイズ以外なにも映してない。


「マーカーを打て!」


ブザムが現在地に戻るための指示をする。
 
その時、エズラが急にコンソールに倒れ込んだ。

ブザムは慌てて駆け寄るが既にエズラの意識はない。

「エズラ!?どうした?エズラ!?」



反射的に右腕を振り上げると、艦が左後方に大きく進路を変えた。

何の前触れもなしに突然動き出し、マグノは驚きの表情で呟いた。









バートが連れ去られた後、

監房の中でヒビキとドゥエロが座っていると

背後からブザムの声が掛かった。



「・・・・・・・・ドゥエロ君だったかな?……今度は君の番だ。来てもらおう」

ゆっくりと体を起こすとドゥエロは無言でコクリと頷いた。



 
「結晶反応45%にダウン!」


「艦内温度さらに3度上昇!」

「んもう、どれから手付けていいのか分かんないよ……」

ペークシスの検査を終え、機関室に戻ってきたパルフェは、

防護服を脱ぎタンクトップ姿になる。

するとフッと比式六号が眼に入った。

「ん〜、ビョーキ……ク、クルピィ〜ピョロ・・・・・・・・」

体をプルプルと震わしながら言っている。

「病気??・・・・・・・・・・・どういう意味よ・・・・・・・」


ドゥエロが案内されたのは旧艦区も医務室だった。

看護ベットにの一つはエズラが寝かされていた。


「微熱が続いているらしい。診てやってくれ」


「妙だな・・・・・・・・。女の医療技術は進んでいると聞いていたが・・・・・」


「フッ・・・・・・・・・さすがエリート、会話の端々に探りを入れてくる。
 
 いいだろう。この艦は現在90%近くが制御不能で
 
 医療システムもその中に含まれている。
 
 これでどうだ?」

一拍置いてドゥエロは口を歪ませニヤリと笑みを浮かべた 


「……患者を診よう」



   


暴走を続ける戦艦はやがてある星雲に突っ込もうとしていた。


「艦の前方に星雲が見えてきました!」


そして、前方を見つめるバートの目を凝らすと自動的にウインドウが開き、その部分をクローズアップされた。

そこには巨大な氷塊が漂っている。


「な!?あそこに突っ込むのか!?よせ!止まれぇぇぇっ!!」

しかし、抵抗空しく戦艦は星雲の中へと突っ込んでいった。



  エズラの腹部に聴診器状のセンサーを当てていたドゥエロは
何かを発見して身を乗り出した時である。


      ヴゥゥゥンッ


医療室すべての電源が落ちてしまったのである 彼は素早く後方の保安クルーの通信機を奪い取った。


「!?……何すんのよ!?」


「機関室!患者がいるんだ!医療室の動力供給を優先してくれ、」


『誰よ勝手なこと言ってるのは!    男文字読めりゃすぐにやってあげるわよ!』


汗だらけのパルフェが苛立って通信機へ怒鳴りつける。



「・・・・・・・私なら、読めるが……?」


言ってブザムを見るドゥエロ。 ブザムは半ば呆れたように笑みを浮かべると肩をすくめて言った。


「……よかろう」

















   案内された男が一人慌しい機関室に入ってきた。


「わっ!?・・・・・・・・・お、・・・男!」


機関クルーが飛びのくように驚く。


「あっ、こっちよこっち!」


奥でパルフェがドゥエロを呼ぶ。
パルフェだけは男の出現に動じていない。


「ペークシスの状態を知ろうにも、
 
 男文字のデータじゃわかんないのよ」




      台上の比式六号と睨めっこしているのを見てドゥエロが尋ねる。


「なぜ、比式六号を?」




      「理由はわかんないんだけど、

 この子とペークシスの波形がリンクしているのよ。
 
 だからコアのセンサーになると思ったんだけど・・・・・・・・・」




      「……なるほど・・・・・・・・一理あるな・・・・・・・・」




      ドゥエロは比式六号のデータ画面を確認する。


「どう?」




      「・・・・・うむ・・・・・・。どうやら不純物が増殖しているようだ・・・・・・・
 
 急激な変化に伴う反発現象らしいが……」


「元々、通常時に発生するエネルギーを利用した機関なのは
 
 知っていると思うけど、こんな反応は初めてなのよねぇ」




      「二つの艦が融合した影響か?」


「多分ね・・・・・・・・・で、何とかなるの?」




      当たり前の問いかけにドゥエロはキョトンとした表情になった、


「悪いが、私は機関部員ではない」


苦笑いをしながら答えるドゥエロにパルフェは意外な言葉を投げかけた




        「何言ってんの!動くものは全部生き物よ、あたしはそう思ってる。
 
 生き物を治すのが医者の仕事でしょ?違う!?」




       その発言にキョトンとなるドゥエロ。


「君は面白いことを言うな・・・・・・・・」














   星雲内に突入した戦艦は周りの氷塊群によってゴツゴツした装甲が

磨き上げられ、その下から強固で新しい装甲が現れてくる。




      「全艦完全停止しました」


「・・・・・・・・なんだい・・・・・・・・やっと止まったかと思ったらこんなとこかい」




      ブリッジクルーが強張った顔で報告すると、マグノは大きな溜め息を吐いて言った。


「再び艦の一部が変形を始めました!」


「ハイハイ・・・・・・・・・今更驚かないよ・・・・・・・・・」





      マグノは投げやりに答えた。














   「……ム?」


データを見つめていたドゥエロが何かに気づき声を上げた。


「艦の数値が変動を始めた」


それを聞いて、比式六号の画面を見ていたパルフェも、変化に気付いた


「こっちもよ!、どうしたんだろ?急に……」


そう言ってパルフェが比式六号に手を伸ばそうとすると 

いきなり繋がれていたパイプやケーブルを吹き飛ばし、青緑色の蒸気を吹き上げた。


「うぅ〜〜っ……生き返るピョロォ〜〜〜ッ」


気持ち良さそうにしている姿はとても機械には見えない




      「……なんだコイツ」




        機械の味方であるパルフェも思わず呟いた。


「どうやら、この星雲の成分に関係があるようだな……」


それを聞いたパルフェがハッと手を打った。


「そっか!溜まった不純物を排出して中和を図ってるんだ!」


機関部員らしからぬ彼女の発言に、

ドゥエロは再びその顔を緩ませると、嬉しげに言った。


「ふふ……面白い。確かにまるで生き物だ」















   その頃置き去りの身になったことなど知る由もない三人は、必死に戻るべき母艦を探していた。


「あっれ〜おっかしいなぁ」


「何かあったのかしら?」


「ま、そう考えるのが筋だろうね」


そう呟くと、普段余裕を見せているガスコーニュが鋭い口調で言った。


「こりゃ、何かあったね。長居は無用だ。さっさ脱出するよ!」


そう叫んでバー二アを点火しようとした時である。




          ヴ―――――――――ン・・・・・・・・・・・




      ガスコーニュの後ろで微かな起動音がしたかと思うと

突如、刺状の触手がガスコーニュに襲い掛かり声も発する間もなく

触手に呑み込まれてしまった。


「「ガスコさん!?」」


ピロシキ型の残骸の中、ディータとフリージアの叫びが虚しく響き渡った。














   艦が変形を始めたからとはいえ、為す術のないマグノはボンヤリとしていた。

そんあマグノの正面のモニターが開き、ブザムが映し出された。


『お頭、提案があります』


「ん?なんだい?」


『はい。調査の結果、男のヴァンガードなら出撃可能と判りました』


ブザムがいるのは旧艦区の蛮型格納庫管制室である。


「……それで?」


マグノはブザムの意図が判らずに聞いた。


『はい。あの男を三人の救出に使ってはどうかと』


「……いいよ、おやり。ところで、
 
 お前さんそんなところで何やってたんだい?」


『お頭の補佐が役目ですので……では』














   一方その頃、ディータとフリージアは触手に捉えられたガスコーニュを

何とか救い出そうと触手と格闘中であった。

二人とも懸命に指のリングガンを連射して触手切断しようとするが、効果はないようだ。


「ふぅえ〜ん!リングガンじゃ全然聞かないよ!」




      「待ってて、私がドレッドから道具をもってくるわ」




      このままでは切り離すのは無理と考えたフリージアがドレッドから

道具を取ってこようと体の向きを変えるフリージアにガスコーニュは言った




      「その必要はないよ!」




      「忘れたのかい、これは仕事なんだ。
 
 あんたはディータと一緒にデータを持って船に戻りな!」




      「でも、……ガスコさんを置いてはいけないわ」


「そうだよ、皆ドコ行っちゃったか判んないし・・・・・・・・・・・・」




      「誰が、置き去りにしろって言ったよ。

お頭やBCのことだ何か手掛かりを残しているはずだよ。

それに3流ドラマじゃないんだから、助けを呼んで来い、て言ってるんだよ」




      「……ウン分かった・・・・・でもすぐ戻るから!」


「でも、でも、でも!」


駄々っ子のようにその場から動かないディータをフリージアは引きずりながらドレッドに乗り込んだ。


「……ふぅ。!?」

二人を見届けたガスコーニュはやっと安心したのもつかのま、

なんと、機能停止していたはずのシステムが再起動し、

キューブがゆっくりと動き始めた。




      「ちぃ、……なんてしぶとい奴らなんだ!」














   「う〜〜〜、あぢい〜〜〜〜……」


監房の中でヒビキはふんどし一枚で寝そべっていた。




      「おやおや、すごい格好だな」




      そんな時、ビームシールドにブザムが近づいてきた。

暑さのせいで接近に気づかなかったのだ。




      「ナンだ?今度は俺の番か?」


「とんでもない。頼みがあって来たんだ」




      「正直に言おう、仲間を三名置いてきてしまった。
 
 お前達の手を借りたい」





       「ったく、あのドジを調査に行かせるからこんな事になるんだ。」




      ヒビキの何気ない一言をブザムは見逃さなかった。




        「私はディータを調査に向かわせたなど一言も言ってなかったはずだが?」


「え?あ、その・・・・・あれだよ、何となく志願しそうだろアイツ」


「しかし・・・・・まぁいい時間がない。付いて来い。」


ヒビキの言う通りディータの性格を考えればなんとなく予想できるので、深く気にしなかった。















   機関制御室ではドゥエロとパルフェの懸命の作業が続いている。

ガス星雲の成分がクリスタル不純物を中和してくれるところまでは突き止めたものの、

内部の循環をコントロールところまでは出来ずにいたのである。


「いかん……。吸排出の流れにばらつきがありすぎる」

艦内のエネルギー経路図を見ていたドゥエロが口惜しげにつぶやく。




      「リンクルートが少なすぎるせいよ!
 
 機能してない回線を何とかしなきゃ!」




        パルフェもデータと格闘しながら言った。


「しかし、これ以上の負荷は掛けられないだろう?」


「諦めないで!方法はあるはずヨ!」
 

二人は同時にが考え込む。しばし、何かを思いつき、ドゥエロがハッとして声を上げた。


「迂回路だ!渋滞しているなら他の道へ誘導してやればいい!」


  それを効いてパルフェの表情が見る見ると明るくなった。


「バイパスって意味ね!?……それよ!」


嬉々として乗り出したパルフェは喜びの余りからか思わず

ドゥエロのかたをポンと叩くと、




      「アンタ!いいエンジニアになれるわよ!!」

 そういい残してクルーたちの下へと走り出す。




      「さぁ、忙しくなってきた!皆聞いて!!」  




      溌剌としてクルーたちに指示を与え始めるパルフェを、ドゥエロは複雑な表情で見つめている。

ポツンと取り残されたように立ち尽くす彼は、無意識のうちに彼女の叩いた二の腕のあたりをさすった。














        ビ―――ッ・・・・・・・・・ビ――――ッ!!!      














   ブリッジに突如アラートが鳴り響いた!


「何事だい!?」


「接近警報です!……小惑星規模の氷塊が接近中!!」


それを聞いたマグノはバートに向かって怒鳴った。


「兄ちゃん!聞こえたろ、なんとかおし!」
 しかし、


『うわぁ〜〜!!よせ!くるなぁぁぁ!!』


バートの取り乱しでマグノは全て理解した。

溜め息をつくとウンザリした様子で呟いた。




      「・・・腕のいい操舵士だこと・・・・」














   ドレッドの追撃に向かったのはわずか三機で、

残りのキューブはなんとそれぞれが繋がりあい、

大きさは四分の一ぐらいの作業用キューブへと姿を変えていった。




      「驚いたね。……こんな状態から修復できるっていうのかい」




          ヴ―――ン・・・・・・・・・・チキチキチキ・・・・・・・・・・




      ガスコーニュの前方に作業キューブの一体がカメラアイを動かしてガスコーニュを分析している。


「ハ、ハハハ……。あたしも材料ってわけかい?・・・・・」


ガスコーニュもさすがに引き攣った微笑みを浮かべていたが、触手にしっかりと挟まれた状態だった。

このままだと『材料』になるのも時間の問題だろう。




      マーカーからの情報を頼りに宇宙を疾走するディータ達は

三機のキューブの追撃に追い詰められ始めた。


「あ〜〜〜〜ん!・・・・・・・しつこい宇宙人は嫌いよォ〜〜〜〜ッ!!」


追い詰められた彼女達に更なる危機が発生した。

いつの間にか前方からも接近してくる物体が現れたのである。
 

「ちょっと、ディータ!ま、前からも来たわよ!」


「エエ―――ッ!!前からも!?」


その時、直近で至近弾が破裂して、予期せぬ衝撃が襲う。

ディータはその勢いのままトリガーを引いてしまった!




             ズバァァァ―――――――ッ!!!




      攻撃対象のいないビームが宇宙空間を突き抜ける。

が、遥か彼方で火球が発生したのである。 


「……え?」


発射した本人がきょとんとなる。


(もしかしたら偶然当たったんじゃないの?)


とフリージアは目を凝らすと、視界に入るよりも先にスピーカーから罵声が飛び込んできた。





      『くおらぁぁぁ!!』




      そして、次第に見えてきたのはビームが当たってしまったのか

少々焦げている蛮型であった。




      『これが迎えに来た奴に対する仕打ちかぁぁ!!』
 

「宇宙人さん!!?」


「あ、ホントだ・・・・・・・・・・・」


ヒビキの存在を確認したディータが見る見る明るくなる。

言葉は素っ気無いがフリージアも明るくなっているようだ。

ディタは少しでも早くヒビキに接近しようと、急加速をはじめた。





      「おい!?うわ、よせぶつかっちまうだりうが!!」


しかし、嬉しさのあまりディータは一直線にヒビキの蛮型に突っ込んでいく。

何とか回避行動にでようとするが、スピードが乗ったドレッドに為す術がなかった。


「デ、ディータぶつかっちゃうわよ〜〜〜〜!?」


「助けに来てくれたんだ!やっぱり、いい宇宙人さんだ〜〜!!」


「わぁぁ!!いいから離れろーー!!」




      しかし、ヒビキとフリージアの叫びもむなしく、

急接近した二機は強い閃光を放ち今再びクリスタルの巨人『ヴァンドレッド』が姿を現した。





      合体したコクピットの中で三人は意識を失っていた。

ヒビキはまだ意識がハッキリとしない中、何か顔に違和感があるのを感じていた。

その顔の感じる柔らかな『プ二プ二』した感触と何やら甘い匂いがヒビキの鼻を優しく刺激する

そしてその柔らかい感触を確めるかの如くヒビキは無意識のうちに顔を動かしてしまう。





                     …・・・・・・ふにゅ・・・・・・・




      フリージアは自分の胸に顔を埋められているのである。




             「んんっ・・・・・・・・あんっ・…・・・・・・!?」




      胸の中を動く奇妙な感覚に甘ったるい声を発しながら意識を取り戻し始めた。

そして自分の身に起こった異変で意識を取り戻したフリージアは、

自分の状態を確認するのに時間が掛かってしまった。




      「・・・・・・…・・・・・・・・・・・・キ、キ、キャァァァァ――――――ッ!!!!!!」




      狭いコクピットの中でフリージアの悲鳴が響き渡る。

その声で、意識が覚醒したヒビキは自分の状況を理解すると

取り乱しながら必死にフリージアをなだめようとしていた。





      「こ・・・・・・・これは…その決してやましいことをしようと思ったわけじゃねぇんだ!」




      「ちょと、離れなさいよ!」


「無茶苦茶言うなって!!しかも何でお前がココにいるんだ!?]


「何よ!いちゃ悪いわけ!?」


「そんな事言ってねぇだろうが!・…・・・・・・一体どうなってんだ!?」


「うわ〜〜〜ッ!何これスゴォーイ!!」




      コクピットの中で過去とは違う出来事に動揺を隠し切れないヒビキ。

恥ずかしさのあまりパニック状態になるフリージア

いつのまにか意識を取り戻し、目をキラキラ輝かせ操舵レバーを無茶苦茶に動かすディータ。

ディータが操舵レバーを動かせば必然的にヒビキの腕も引っ張られる訳で、それに伴ってヒビキの顔も動いてしまうのだ。

「あんっ・…・・・・・って、離れろって言ってるでしょう!!」

「イテ、イテテ!・・・・・・あッ!?コラ!勝手にいじるな!」




      ヒビキの顔を手で引き剥がしながら文句を言うフリージア 二人が言い争ってるのはお構いなしに自分の世界に入っていくディータ




      「ディータね。信じてたんだ。
 
 宇宙人さんがきっと助けに来てくれるって!」


「私は信じて・・・・・・・・なかったわよ。でも何でアンタ助けに来たの? 」


ディータは嬉しさを満面に現して、フリージアは照れているのか視線を逸らしながら言った。


「う・・・・ま、なんだ・・・・・その、仲間だから・・・・・・…だろ・…・・・・・・」


ヒビキは感謝され嬉しかったのか顔を真っ赤にして答えた。

ディータもフリージアの二人も『仲間』という部分が照れくさかったのか、
ヒビキ同様顔を真っ赤にしながら微笑を浮かべながら静かに言った


「「・・・・・・・・・・・ありがとう」」




      何ともいえない雰囲気が三人を包む。

つまりイイ雰囲気と言う奴である。














   ガスコーニュの周りの触手をキューブは手際良く切り離していく。


「いい手際じゃないか、スカウトしたいくらいだよ」


皮肉を言いつつもさすがに余裕がなくなってきたガスコーニュである。

そして、キューブから精密作業用の小型アームが出てきてガスコーニュに伸ばしていく。


「ふっ、……いよいよあたしの番かい」


目前までアームが迫った、その時!、




         ガシャァァァン!!




      横から飛び込んできた何かがそのキューブを弾き飛ばした。


「!?」


ガスコーニュが反射的に目をやるとそこにはクリスタルの巨人がいた。

するとそれまで流れ落ちるのを忘れていたかのようにドッとあせが噴き出した。


「フン……、ギリギリまで引っ張るたぁ、

 憎い演出してくれるじゃないの」














   巨大な氷塊がゆっくりと迫ってきている。
両者が衝突するのはもはや時間の問題となりつつあった。





      「第8から36、74から108までのバイパスは何とか確保したわ!」


機関室ではパルフェとドゥエロが懸命に作業している。

ドゥエロも比式六号の外殻を開き回路の調整を行っている。


「こっちはこれ以上は無理だな・・・・・・この量でやるしかない」


吹き出る汗を拭いもせずにドゥエロは調整を続ける。


「無茶よ!下手に仕掛けたらバランスを崩すわ!」


背中合わせの叫びあいが続く、

ドゥエロがここでパルフェを振り返り、


「こういう時、医者はどうするか知っているか?」


「エッ!?」
不思議そうにドゥエロを振り返るパルフェ。


「患者を信じるんだ」


「……分かった!やってみよう!」




      大きく頷くとパルフェは起動スイッチにゆっくりと手を伸ばした。




      「氷塊さらに接近!」


「ペークシスプラズマ、反応なし依然コントロール不能のままです!」


ブリッジクルーからもはや悲鳴に近い報告が入る。

しかしマグノにも氷塊を睨みつける以外為す術がなかった。




           ウィ―――――ン・・・・・・・ピ・・・ピピピピッ!




      ブリッジの証明がオンになり、涼しい風が送られてくる。


「・・・・・・・!?・・・・・・・どうしたんだい!?」





       そして、コンソールにも機能回復の表示が現れる。


「アハッ!システム正常値に戻りました!!」


クルーが報告し終わらない内にマグノが叫んだ。


「どうでもいい!急速転舵!!」


しかし、リンクしていたバートは命令を待つまでもなく叫んだ。


『もう遅いっす〜〜!!』
 

恐怖に耐えかねて反射的に顔を覆ったときだ。




             ドゴォォォォン!!




      突如、氷塊が轟音を上げたのである。




      「クウ〜〜〜ッとうとう死んじまっ・・・・・・て、ない・・・・・・?」


口を開けたまま目を凝らすと

氷塊郡流の向こうで仁王立ちした巨人がいた。

頼もしいはずの巨人を見てバートは、


「ちぃ、……またヒビキかよ」


どうやら自分より目立ったアピールをするヒビキが気に入らないようである。





      そんなこととは裏腹に、

コクピットの中ではヒビキが妙に痩せてグッタリと席にもたれた。

その眼の下にはくっきりとクマが浮かんでいる。


「・・・・・う……いろいろな意味でどっと疲れたよな」
 

しかし、反対にディータは必要以上にに元気であった。

体を揺らしながらガスコーニュに嬉々として説明している。


「ネ、ネ!?スンゴイでしょ、コレ!!」


「ちょと!狭いんだからあんまり動かないでよ!」


「判った!判ったから早いところ降ろしとくれ!」


もうウンザリとガスコーニュとフリージアが訴えた。















   その後、バートがかろうじて覚えたオーバードライブに設定された

落ち着いてきた艦内では、各部署で清掃作業が行われていた。

ようやく治療を受けたガスコーニュが部下達を監督していた時、

急に艦内のほとんどのモニターにブザムが映し出されたのである。

それは副長からの公式な連絡ということになる。




      『お頭との協議の結果、我々が置かれた現状をクルー全員に知らせることにした。』




      クルー全員がモニターに釘付けなる。




      『残骸より入手したデータにより、一部だが敵のことが分かった。 

 ・・・・・この映像を見てもらいたい』
 

同時にモニターが切り替わった。


「何・・・・・・これ!?」


全員が騒然となるノイズではっきりと判らないが、星の周りに歯車をいくつも配した惑星が見えてきた。

しかもその周りには自分達を苦しめたいくつものピロシキ型と、巨大な艦隊が周回しているのである。
その光景にクルーたちの表情が一様に硬化した。


「変な星……」


「……ピョロ〜?」


機体の整備をしてたディータもそうつぶやいた。




      『コレが、敵の本星だ。座標も星系も不明だが、

かなりの戦力を有しているらしい。』




       そして、またブザムの顔が映し出される。


その表情はクルー達の身を案じるように辛らつであった。





      『我々は、未知の敵の領域に入り込み、敵として攻撃を受けている。

我々がメジェールに戻る進路上でれからもこの敵との交戦が予想される……

しかし、残念ながら戦いを回避するわけにはいかないのだ。

何故ならば、敵の目的が我々の故郷、メジェールと男の星タラークに“刈り取り”という暗号作戦を展開いるということが分かったからだ』





      「……なんてこった」




      冷静なマグノでさえ息を呑んだ。




      『……つまり少なくとも、彼らは何らかの目的により、我々の星の壊滅を目論んでいる事になる』


それでも落ち着かせ会話を続けた。 


『アタシらは海賊だ。言ってみりゃぁ、メジェールにもタラークにも義理はない。

・・・・・だが、連中にムザムザお得意さんを滅ぼされるってのも面白くない。

そこで母星に戻り、この危機を知らせようと思う。』




      淡々語るマグノだが恐るべき決断を口にした。


『・・・・・・・その為には、少しでも戦力が必要だ。
早い話が捕虜となった男たちもクルーとして取り入れなきゃならなくなったって訳さ』


『エエ〜〜〜〜ッ!?』




      艦内で一斉に絶叫が上がった。

むろん、女と男が暮らすなど考えられない環境で育った両者だ。

協力関係など築けるはずがない




       ブリッジクルーも恐る恐るバートのほうを向く。




      「ははは、……ようやく分かってくれましたか。僕の必要性を」





      『この船といい、あのロボットといい、分かんないことだらけだが、

 クルーの協力に期待する!・・・・・・・以上!』


反論を与えないうちにマグノ有無を言わせず通信を切った。





      後ろのドアからエズラとドゥエロが入ってきた。


「すいませんでした。すぐに持ち場に戻ります」


「微熱の原因は分かったのか?」


ブザムの問いにドゥエロは、


「この患者の体内に別の生体が寄生している」


「エェッ!?」
 

マグノが声を上げるが、エズラがそれを慌てて否定した。


「違います!その、あたし……赤ちゃんが出来たんです」


  言ったとたんブリッジクルーから驚きの声が上がった。


『えぇ〜〜〜!?』


「エズラいつの間にファーマになったのよ!」


「オーマは誰よ!」
 

その喜びようにバート口を挟んだのは、


「子供って工場で作るんじゃないのか?」


『え?』


「女は体内で複製を作るとは聞いていたが……」


「すいませんお頭。今度の仕事が終わったら報告するつもりでした」
 

しかし、マグノは顔に優しい笑みを浮かべ、


「謝ることないよエズラ。いい子を産むんだよ・・・・・おめでとう!」


「もう、エズラったら何にも言わないんだから!」
 

クルーたちが一斉に駆け寄る。


「ねえ、オーマは誰よ?」


「何だ?それは」


好奇心でドゥエロが聞くと、


「オーマは卵子を提供してファーマがそれをお腹で育てるのよ。常識でしょ?」


「いや、初耳だ。」


いつのまにか男と女の会話が発生している。

マグノもそんな様子を静かに見ていた。 


「・・・・・まったく・・・・・。驚かされることばかりじゃないか・・・・・・。」


独り言のように呟きブザムに顔を向ける  




      「あたしらもウカウカしてられないねぇ。

生まれてくる新しい命のためにもさ」




      ブザムはその言葉に微笑で返した。


「はい・・・・・・・。長い旅になりそうです――――」




      そして、融合戦艦は、

宇宙の旅へと出たのであった。














   艦内放送が流れている頃フリージアは植物園に居た。

そして放送が流れ終わった後、静かに呟いた。


「・・・・・・・仲間・・・・・・・・か・・・・・・…」


フリージアが考えにふけっていると後ろから自分を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お前はは驚かないのか?」

声に反応して振り向くとそこにはヒビキが立っていた。


「・・…別に・・・・・・・何となく予想してたわ・・・・・・・」


「そっか・・・・・・・・・」


二人の間に沈黙が走る。

するとフリージアはフッと何かを思い出した。


「あっ!?そう言えばまだ自己紹介してなかったわね。
 私の名前は、フリージア・オレアリアよ。
 えっとアナタは確か・・・・・・・・…・…てへ、何だっけ?」


「オレの名前はヒビキ・トカイだ!ま、ヨロシク頼むぜ。」


「オッケー♪ヒビキじゃ早速コノ艦を探検しましょう!」


何を思いついたのか唐突にフリージアが言い出した。


「え!?・・・・・・・・なんでオレが行かなきゃなんねぇだ?」


驚くヒビキにフリージアは悪戯っ子のように笑うと言い放った。


「だって、私とヒビキは『仲間』なんでしょ?」


「ああ・・・・・・・・そうだったな」


それを聞いたヒビキは嬉しそうに笑った。















   「ねぇ、ジュラ……」

「ん?」

「あたしらいつになったら出られるのかしら……」

「誰か助けて……」

お互いに涙目になって救援を待つ、

エレベーターに閉じ込められた二人であった。















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