『〜リセット&NEWスタート〜 プロローグ』



--------------------------------------------------------------------------------------------




「うぅ〜ん・・・・・ハッ!?オレは一体・・・・」

   (ここは………何所だ。…………俺は一体…………)
 

ヒビキは霧がかかっているような頭と、重く感じる体で、精一杯、

状況確認を試みるのだが………記憶が曖昧だ。

……思い出せる事が少なく、いまいち繋がらない。

 とりあえず、今は布団で寝ているらしい。

その状態で目に入るのは、低い天井と薄暗く汚い壁………

まるで監視小屋のようだ・・・・・

視線を上から横に移し、色々と室内を確認する

どこかで見たことあるような感じがする・・・・・・


どうやら壁から光が見えたり、風が入って来たりと………あまり、上等な建物とは言えない……


 「・・・・・・!?ってここは昔のオレん家じゃねーか!!!!」
 

ヒビキの驚いた声が響き渡る。


 「・・・・ったく。わけわかんねーよ・・・・。クソッタレ・・・・・。
 一体どうすりゃ・・・・。」


途方にくれるヒビキのテンションがドンドン下がっていく。

半分泣き顔になったヒビキの顔がさらにがっくりと下がり

それを抱え込むように突き出した両腕がワナワナと震えだした・・・・・・。
 

 「・・・・・ぐっ、ぐ・・・・・・チ、チクショオッ!!!!!!」


次の瞬間バッっとヒビキの顔が上がると、先ほどまでの弱気が消え失せ、

開き直りの表情に変っていた。大きな瞳も据わっている。


 「クソッ!!こうなったらオレも男だ詳しいことはよくわかんねーけど、


多分ペークシスの暴走で過去に飛ばされちまったらしいな。」

ヒビキは落ち着くとフッと何かを考え始めた・・・・


 「・・・・・・過去に戻ったのはわかったけど、


俺はこれからどうしたらいいんだ・・・・」

ヒビキは過去の自分を思い出して見る。


 「ハッハ・・・・あの頃はホントにクソ餓鬼だったぜぇ。

 しっかし今思い出してみるとオレってよく生き残れたよなぁ〜

 いくら相棒の性能が高くてもオレはただの機械工、操縦技術はまるっきりのド素人だもんなぁ・・・・・

 もし、もう1度地球の刈り取り部隊と戦ったら勝てるか・・・・・・

 勝てる!今のオレと相棒、そしてアイツ等がいれば!!」


そして俺はある計画を考えた・・・・・

 
 「よし、そうと決まれ実行あるのみ!まずはオレの身分を何とかしないとな。
 
 さすがに三等民じゃ表立った行動ができないからな。

 ま、軍のホストコンピュータに入り込んで戸籍を書き換えないとな。

 まずはパイロットにならないとな。あと資金を用意してオレの相棒を造らないとな!」


 「くぅぅぅぅぅっ、何だかワクワクしてきたぜぇ!」


 「一丁やってやるか!」


ヒビキは勢いよくベットから飛び起きた。

そして自分の身体の異変に気付いた・・・・・・


 「何だーーーーーーこれ!! 昔のオレじゃねぇか!

 丁度14歳ぐらいか、てっきり身体はそのまだと思ってたぜ。 
 
 ま、オレの精神または記憶だけが戻ったってことか。

 チクショォー!こりゃぁ身体も一から作り直さないとな・・・・・・」


 「ハァ〜〜〜〜〜ッ・・・・・」


薄暗い監視小屋にヒビキの深い溜め息が響き渡る。


   (まぁ、『イカズチ』出航まであと2年もあるんだ。大丈夫だろ。)


ヒビキはそう結論を出すと、急に睡魔が襲ってきた・・・・・

計画は明日からにするか・・・・・寝よ・・・・・。















      オレは軍のホストコンピュータのデータを書き換えた。

    これからはタラ―ク軍のアタッカーヒビキ・トカイだ!

    まずは軍で活躍して正式に『イカズチ』に乗り込む。
 
  まぁ、今のオレなら旧蛮型でもタラーク最強アタッカーだぜ! 
  
    『イカズチ』出航までにオレの相棒造らないとな。

    軍の部品とメジェ―ル軍の部品を勝手に使えばいいか。

      あっ!?後、身体も作り直さないとなぁ〜・・・・・  
  
    おっといけね!今日から新造戦艦の出航だったぜ。    
        オレはアタッカーとして乗り込むんだ!

        もしかしたらあいつ等と会えるかもな・・・・・・

      後2年かぁ・・・・・・長いような短いような・・・・・・

        寂しい・・・・・か・・・。オレの柄じゃないぜ。















             しかし、再会は以外と早かった・・・・・。















           ドッコーン!!!















  出航してから3日ほどたった頃、

今まで順調な航海を続けていた戦艦に大きな衝撃がおこった。


ウオォォォォォォォォォォォォンッ!!  ウオォォォォォォォォォォォォンッ!!

緊急事態を示すサイレンなり。

赤色灯が忙しく明滅を始めた・・・・・。

 「敵襲か!」

ヒビキはそう叫ぶと一目散に格納庫に走っていた。

 「敵襲!敵襲!総員、第1種戦闘配置に付け!」

           「繰り返す」     

 「敵襲!敵襲!総員、第1種戦闘配置に付け!」

発令が終わらぬうちに、ヒビキはもう発射準備に入っていた。

 「よし!やってやるぜぇ!!」

が、ヒビキは自分の蛮型を勝手にカスタムアップしていたので、

出番は時間が掛かりそうだ・・・・・。

「クソォーーー!こんなことなら昨日の内に終わらしとくんだったぜ!」

1機だけ黒色に輝くボディーのコクピットの中で、ヒビキは叫んでいた。















  〜その頃、敵ブリッチでは・・・・・〜















  タラ―ク軍の戦艦をメジュール戦闘艇『ドレッド』が襲い掛かっていた。

ドレッドのスピードはとても速かった。

正に獣に襲い掛かる蜂の如き光景である。

そんな交戦のなか後方からゆっくりと来る母艦があった。

「お頭、どうやら大物がかかったようです。」

戦闘のため、証明の落ちた母艦のブリッチで、

副官、ブザム・A・カレッサがもう一人に声をかけた。

「おかしいねぇ?今日は私のバットデイなんだけどねぇ・・・・・」

目を細めて答えたのが、この1団のリーダー、マグノ・ビダンである。


戦況は明らかにメジュールの女海賊団に有利であった。

しかし、1機の蛮型で戦況が逆転するなど、誰も予想していなかっただろう。















                             そう・・・・・誰も・・・・・・・・・















  母艦を襲うドレッドにタラ―クの蛮型が交戦する。

しかし、蛮型では、ドレッドのスピードには着いて行けず、

途中で、撃墜されてしまう。

もともと蛮型は地上強襲用なので、仕方ないといえば仕方ないが・・・・・

いよいよ、女海賊が乗り込んでくるという瞬間に・・・・・・・・


 「へへ・・・・・そうはいかねえぜ!」


やっと起動したヒビキが間一髪間に合った。

 
 「主役は、いつもギリギリで登場するって決まってんだよぉ!!!」


ヒビキは叫びながら、高速で接近してくるドレッドを、

ハンドガンで打ち落とそうとした。


 「く、しまった!」


急に現れた蛮型と、その正確無比な射撃でメイアはかろうじて避けるのが、精一杯だった。


「メイア!」


慌てたジュラが通信を開いて叫んだ。


  「大丈夫だ!各機、黒色のヴァンガードに注意しろ!

  他の雑魚とはレベルがちがう!」


        ラ・・・・・・・ラジャー!! 




「きゃぁぁ!!」


「右翼やられました!」


「エンジン停止〜!?」


「ブースターが切られちゃったよぉ…デリお願いできますか〜?」


「何よ、あれ!?あんなの反則じゃない!?」

悲鳴に近い声でジェラが叫ぶ。

ジェラのドレッドをヒビキは、

ホーミングミサイルの如く追尾しダメージを与えていった。


「キャーーーーッ!どこまでもついて来るゥッ!」

パイロット達の報告が絶叫へと変っていく。

攻撃をしてもかすりもしない、まるで全方位に目がついているかの如く

攻撃をかわし。

まるで、動かない獲物を撃つかの如く、正確に攻撃を仕掛けてくる。

しかも黒の機体は攻撃をわざとドレッドのコックピットから外し、

戦闘不能にしはじめた。


「くっ…化け物か!?」


メイアがそうぼやくのも無理はない。

本来、戦いは相手を殺す方が楽なのだ、

しかし、守りながら戦ったり、

あえて撃破しないようにするとその難易度は倍増する、















  黒いヴァンドレッドの攻撃の衝撃はナビゲーション席だけでなく、

艦内各所に広がっていた。



  『ドレッド・ジェラ戦闘離脱!』

  『ドレッド・メイア右翼、ブースター破損!』

  『ドレッド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・破損!』

  『ドレッド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・破損!』
  


ブリッジに次次に被害報告が飛び込んでくる。

マグノは皺だらけの目元を歪まして言った。


 「なんだい、これじゃ、向こうにとっちゃまるで練習試合じゃないか・・・・・

 男の中にこれほどのアタッカーがいたとわねェ・・・・」















  圧倒的な強さのヴァンガードに対し、

ドレッド隊も果敢な攻撃を繰り返していた。

しかし、あらゆる攻撃をしてもダメージを与えられず。

逆にダメージを受ける機体が相次いだ。

メイア機に次々と不利な状況報告が飛び込んでくる。

受けるメイアも得策が思い浮かばず、歯痒い思いをしていた。

すると、ブリッジに突然黒いヴァンガード(ヒビキ)から通信が入った。


 「おい、こちら蛮型のパイロットだ。聞こえてるか?」


 「ああ、聞こえてるよ。何か用かい?」


  (ほほ〜、どんなパイロットかと思ったらまだ子供じゃないかい。)


 「これ以上の戦闘は無意味だ!ここは、引いてくれないか。」


 「・・・・・・あんた、何言ってんだい?本来、男と女は敵同士。

 あんたは何でわざわざ敵を見逃すんだい?」

ブザムは何かを探るかの様に聞いた。




 「・・・・・男と女、どうしてみんな殺し合っているんだろうな?男はバイキン、

 女は男の肝を食うからかな?男も女も言葉が分かる。

 意思が通じ合う。なのにお互い憎み、そして殺し合っている。

 なぁ、あんたはどう思う?」


ヒビキはブザムに悲しい声でゆっくりと話し掛けていった。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ブリッジは静寂に包まれ、誰も言葉は発しられない。

その静寂を破る様に、ブザムはゆっくりと重たい口を開いた。


 「・・・・・あんた、何を知っているんだい?」


ブザムはカマを掛けずストレートに聞いた。


 「別に何も知らないぜ!ただオレは思ったことを言っているだけだ!」


ヒビキは堂々と胸を張り、迷いもなくキッパリと言い切った。



 「ふふ、そうかい。あんたは珍しい男だねェ。その発言は軍法処罰もんだよ。

 それじゃ、これ以上争っても悪戯に被害を増やすだけだし、
 
 引かしてもらうよ。」


そう言うとブザムはドレッドチームのリーダであるメイアに通信を入れた。


 「メイア、戻っておいで、作戦はしっぱいだよ。」


 「なぜですお頭!男の言うことなど聞く必要ありません。」


どうやら、ヒビキの言ったことは、全員に聞こえていた様だ。


 「それじゃメイア、あんたならあの坊やに

  勝てる方法あるとでも言うのかい。」


ブザムはキッパリと言い張った。


 「それは・・・・・・・・・・・・・・・」


実際、メイアも勝てる方法など出でこない。レベルが違いすぎるのだ。

自分たちは1流のパイロットだが、相手は1枚も2枚も上手だ。

多分、自分たちを素人みたいにあしらっているだけだろう。

その証拠に、圧倒的な実力差にもかかわらず死者は1人も出ていない。

しかし、メイアは男に助けられるなど考えたくもなかった。

自分は強くなった・・・・・・そう思っていたのに

男一人に傷ひとつ付けられない。

そしてメイアは先程の通信で、自分でもよくわからない暖かい感じがした。

メイアはどうしていいか分からない不思議な感情を抱き、

これは男に対する憎しみだ!と、決め付けヒビキに突っ込んでいった。


 「お前なんかに、負けるものかぁぁぁぁぁ!!」


メイアは一人で突っ込んでいった。

しかし、ドレッドは損傷が激しく本来のスピードがまるで出ていない。

ヒビキは避けもせず、腕を前に突き出しドレッドをとめた。


 「くそぉ!殺せ!男などに情けなど掛けられたくない!」


どうやら捕まったときにとうとうブースターがいかれてしまったらしい。


 「なぁメイア、人間は一人では生きていけないんだ。だって寂しいだろ。

  それにお前には心配してくれる仲間がたくさんいるじゃないか。」


 「お前になにがわかるんだ!お前に私の何が!」


こいつどうして私の名前を知っているんだ?っと思ったが、

今メイアはそこまで頭が回らなかった。

メイアは知らず知らずの内に、涙を流していた。


    (なぜだ!?今まで人前で涙など見せたことなかったのに。)


メイアは自分の気持ちがよくわからなかった。

この男も声を聞くのは嫌じゃない。むしろ心地いい。

心の中ではそう思っているが、そんな気持ちを自分が理解できるはずがない。

しかし、なぜか涙が止まらなかった。


 「お、おい泣くなよ。そんなに泣くとかわいい顔がだいなしだぜ!」


ヒビキは泣いたメイアを慰めようとからかった。

 
 「な!?何を言っている!お前は!」

メイアは頬をうっすらと赤く染め怒っている。

その姿を見てヒビキは 


   (う、結構カワイイじゃねえか・・・・・・)


ってなことを思ってたりする・・・・・・


 
 「お〜い、ばあさん。ここに1機置いとくから回収しといてやれよ!」


 「おや?ここまで届けてくれないのかい?」


ブザムはさも意外そうにいった。


 「冗談言うなよ!届けた瞬間袋叩きにするつもりだろ。」

ヒビキが当たり前だ!と答えた。

 「よく分かってるねえ。」

意外と私のことわかってるじゃないか。っと思いながら答えた。


 (げえ!ばあさんマジでそんなこと考えてたのかよ。)


「坊や、名前はなんて言うんだい。」


「おれの名前はヒビキ、ヒビキ・トカイだ。」


   (ヒビキ・トカイか、出来ればもうあんまり会いたくないねえ

    商売上がったりだよ。)


ヒビキは名を名乗ると母艦に戻っていった。















  そして、『イカヅチ』出航日















   この時、タラ―ク、メジュールでヒビキ・トカイの名を知らない者はいなかった。

             タラ―ク軍 撃墜率トップ。

            作戦参加時の成功率98.8%

         タラ―クでは味方が危機に陥った時、

  何処からともなく現れて敵を屠っていけば天使や神様にも見えてくる

      彼の乗る蛮型は宇宙空間に溶け込む漆黒で統一されていて、

       そこから付けられ”黒衣の天使”と呼ばれていた。


      

      しかしメジュールでは逆で”黒い悪魔”と恐れられていた。















           そして、これから本当の戦いが始まる・・・・・・・・・















                                       --------------------------------------------------------------------------------






作者さんへの感想、指摘等ありましたらお気軽にこちらまでどうぞ














戻る