注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。


   よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。


























 
 















 相沢祐一は己の全てをかけて、闇に堕ちた男と闇にとらわれた男の娘の魂を救った。






 それによって相沢祐一に課せられた試練は終焉を迎え、彼にとってのいつもどおりの生活が戻ってくるはずだった。






 少なくとも、相沢祐一を慕う者たちはそれを信じて疑わなかった。






 しかし、夏が終わり秋が過ぎて冬がきても、相沢祐一は己を慕う者達の元に帰ってくることは無かった。






 相沢祐一の帰還を待ち続けていた篠宮京香は、夏休みが終わると同時に失意のうちに天界へと帰ることとなった。






 また、他の者達もその表情から影が消える事がなかった。






 そして、時は流れ3月某日―





















SCAPEGOAT

第十七話

 





 その日、雪国のとある高校で卒業式が行われた。






 卒業式が終わり、卒業生が後輩や教師達と校庭、あるいはどこかの教室などでいろいろな話をしていた。






 その中には、相沢祐一を慕うものたちの姿もあった。






 「卒業おめでとう。」






 「ありがとうございます、沢渡先生。」






 「時間が過ぎるのって早いわね。こないだ知り合ったかと思ったらもう卒業なんだから。」






 「本当にそうですね、獅堂先生。」






 と、ここで佐祐理の隣にいた舞が






 「・・・本当なら祐一も一緒に卒業するはずだった。」






 と呟いた。






 唐突な舞の呟きに四人は押し黙ってしまう。






 5人の間に少しの間沈黙が流れたが、






 「でも、まだ相沢さんが帰ってこないって決まったわけじゃないですよ、舞。」






 「そうですよ、きっと彼のことだから私達が忘れた頃にひょっこり現れますよ。」






 久瀬はこの場の雰囲気を和らげようと佐祐理に続いてそう言ったが、久瀬の言葉に舞は久瀬を睨んで、






 「私は祐一の事を忘れたりなんかしない!!」






 と強い口調でいった。






 舞の剣幕に久瀬は慌てて、





 
 「言葉のあやですよ、川澄さん。」






 と言った。そしてさらに、






 「それにしても、彼は今一体どこで何をしているんでしょうね。」






 久瀬のこの言葉に皆はため息をつき、なんとなく空を見上げた。




























 一方名雪たちは、





 「卒業おめでとう、名雪、あゆ。」






 「卒業おめでとう、お姉ちゃん。」






 「卒業おめでとうございます、皆さん。」






 「皆さん卒業おめでとうございます。ところで、一弥さんは佐祐理先輩の所に行かなくてよろしいのですか?」






 美汐のこの言葉に一弥は、






 「最初は姉さん達の所にいたんだけど・・・、なんだかいづらくてね。」






 と言って苦笑する。






 と、ここで命が、






 「祐一お兄ちゃん・・・、結局帰ってこなかったね・・・。」





 
 と呟いた。






 命のこの呟きに皆は押し黙ってしまうが、






 「・・・たしかに相沢は卒業式には間に合わなかったけれど、この先ずっと俺達の元に還って来ないと決まったわけじゃないぜ。」





 
 「そうね、北川君の言うとおりだわ。相沢君はいつかきっと私達の元に帰って来るわ、いつかきっと・・・。」






 「私は信じてるよ。いつか相沢君が私達の元に帰って来ることを。」


 



 「とりあえず家に帰ろうよ。秋子お母さんがご馳走を用意して待ってるだろうから。」






 「うん、そうだね。」






 「僕は姉さん達を呼んできますね。」






 こうして皆は水瀬家へと向かった。























 皆が水瀬家に着くと、秋子の手によるご馳走が皆を待っていた。





 
 そんなわけで、水瀬家での卒業記念パーティーが始まった。





 
 そしてパーティーが盛り上がってきた頃、






 ピンポーン






 「あら、誰かしら?」






 「私が出ますよ、秋子は他の皆さんとパーティーを楽しんでいてください。」






 「お願いしますね、和孝さん。」






 和孝がインターホンの受話器越しに、






 「どちら様でしょうか?」






 と尋ねると、






 「お久しぶりです、和孝さん。」






 という返事が返ってきた。






 「おや、もしかしてあなたは篠宮さんですか?」






 「はい、今日はお話があって来たのですが。」






 「わかりました。今行きますので待っていて下さい。」






 「はい。」






 和孝が玄関まで行ってドアを開けると、そこには京香だけでなくもう一人女性がいた。






 京香の後ろにいる女性は、190センチを超えているであろう長身で腰まで伸ばした金色の髪と銀色の瞳が印象的だった。






 また、顔立ちも非常に整っていて体つきも文句のつけようが無い、まさに絶世の美女と呼ぶにふさわしい容姿だった。






 その姿に和孝が思わず見惚れていたが、






 「あの、和孝さん、どうかしたんですか?」






 という京香の言葉で正気に戻り、






 「・・・あ、はい、なんでもないですよ。ところでそちらの方は?」






 「それはあとで話します。今日のお話というのはこの方についての事ですので。」






 「そうですか。とりあえずいつまでもこんな所にいるのもあれですから、上がってください。」






 「はい、おじゃましますね。」






 「おじゃまします。」





 そして、京香と京香と一緒にいた美女は水瀬家へと入っていった。






























 京香達が来るまでは水瀬家は騒がしかったのだが、今は静まり返っていた。






 その原因である美女は、ソファーに座って紅茶を飲んでいる。





  
 皆はその一挙一動に見惚れてしまっていた。






 美女は紅茶を飲み終えると、






 「ごちそうさま。秋子さんの紅茶はやっぱりおいしいです。」






 「どういたしまして。ところで私のことは京香さんから?」






 この秋子の問いに美女はくすっと笑い、






 「いえ、違いますよ。私は京香よりずっと前から秋子さんの事を知ってますから。」






 この言葉に、皆は不思議そうな顔で美女の方を見た。






 「それに、秋子さんだけじゃなくてここにいる人たち全員の事を私は知っていますよ。」






 この言葉に皆は更に不思議そうな顔で美女の方を見る。






 「そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前は相沢イリアです。」






 「相沢・・・?もしかして祐一さんの親戚の方ですか?」






 「いいえ、違います。信じられないかもしれませんが私は相沢祐一本人です。まあ厳密な意味ではちょっと違うんですけどね。」






 イリアのこの言葉に皆は一瞬静まり返った後、二通りの反応を示した。






 「「「「「ええ〜?!!」」」」」






 名雪、あゆ、真琴(狐)、栞、、北川、一弥は大声をあげて驚き、他の者達は声をあげることはなかったものの、非常に驚いた様子で


 イリアの方を見た。






 イリアの衝撃的な発言の後少しの間沈黙が続いたが、秋子の言葉によって沈黙は破られた。






 「イリアさん、それはいったいどういう事なんですか?」






 イリアは苦笑して、






 「まあ普通は驚きますよね。見た目どころか性別まで違う人が、実は同一人物だなんて言われたりしたら。とりあえず今からわけを



  説明しますね。今日ここにきた理由の一つは、皆に私がこうなった理由を説明することですから。」






 と言うと、右の手のひらに直径10センチ程の光球を生み出し、






 「今から皆に相沢祐一が夏のあの日に体験した闘いと、その後何があったかを直接見せます。私の口から話すよりも、その方がわかりやすい



  でしょうから。」







 イリアのその言葉とともに、光球から強い光が発せられて皆の意識はイリアの記憶の光の中に溶け込んでいった。

















 







 皆は意識体となって、記憶の光の中で夏のあの日の祐一を見ていた。





 
 皆が見ている前で祐一は闇の世界へと飲み込まれていき、闇の奔流に耐えながら闇の中心まで辿り着き、闇にとらわれた少女から


 
 くちづけを受け、闇の化身と成り果てた男の魂と闘い、最後には自らの心の光で闇の全てを光に還した。






 そして最後の時、自らが生み出した光の奔流に飲み込まれようとしていた祐一は、突如自らが生み出したものとは別の光に包まれ



 その姿を消した。






 祐一は意識を取り戻した時、自分が光の繭のような物に包まれ自分のそばに誰かがいることに気がついた。






 「・・・あなたは一体?」






 祐一のその言葉に祐一のそばにいた誰かは微笑んで、






 「気がつきましたか、間に合って良かったです。」





 
 と言った。





  
 その声は鈴を転がしたように美しい声で、祐一が光の繭越しに自分のそばにいる物の姿を見てみると、その人物は少女であることがわかった。






 その少女は金色の髪を腰まで伸ばしていて、その瞳は銀色だった。






 また、その容姿は誰から見ても文句のつけようが無いほど美しい、まさに非の打ち所の無い美少女だった。






 「自己紹介がまだでしたね。私はイリア・フィーリスといいます。他の神々からは全能なる全ての母と呼ばれていますので、そちら名前の方が



  解りやすいかもしれませんね。」






 「あなたが・・・。」






 「私がいたらないばかりに、あなたには多大な苦しみを背負わせてしまうことになってしまいました・・・。本当にお詫びのしようがありません



  ・・・。」






 「俺は・・・、別に気にしてませんから・・・、いいですよ。俺は皆が助かって、・・・幸せになれれば・・・、それで十分ですから。」






 祐一は苦しそうに言う。






 「あなたは優しいんですね。でもあまり自分のことを軽く見てしまってはだめですよ。あなたがそんなだとあなたの大切な人達が心配する



  でしょうから。」






 「そう・・・、ですね・・・。すいません・・・。」





 
 とここで、イリアが祐一の様子を見て表情を曇らせる。





 
 傷が治っていない・・・。傷があまりにも深すぎるんだわ・・・。このままじゃ・・・。



 


 イリアはうつむいて少し考え込み、やがて何か思いついたのか顔を上げる。その表情にはある種の決意があった。





 
 「相沢さん、あなたの傷は必ず治してさしあげます。だから安心してくださいね。」






 「はあ・・・、わかりました。」






 祐一はイリアの様子が何かおかしいと思いつつも、頷いて返事をする。






 イリアは祐一に向かって両手をかざし、目を閉じて何かの呪文を唱え始めた。






 イリアの呪文の詠唱はすぐに終わり、それと同時にイリアの全身からすさまじい光が発せられた。






 「うううううう・・・。」






 イリアは苦悶の声を上げつつも光を維持しつづけ、その様子を見た祐一は慌てた様子で





 「何をしようとしているんですかっ!?」






 とイリアに向かって叫んだ






 「力の衰えた今の私では、これしかあなたを救う方法が無いんです・・・。私の全てをかけてあなたの傷を治します。



  私があなたにしてあげられることは、これくらいしかありませんから。」





 
 イリアは苦しそうな様子でそう言って微笑む。






 「やめてくださいっ!俺はそんなんで助かってもうれしくはないですっ!大体あなたは神々の頂点に立つ存在なんでしょう!?あなたが



  いなくなったら他の神々はどうなるんですかっ!?」






 「大丈夫ですよ。私がいなくなっても、誰かが新たに全能なる全ての母になるでしょうから。私はどの道、もうすぐ力を全て失って消滅して



  しまう運命なんです。他の神々もその事はわかっています。だから・・・。」






 「だからなんなんですかっ!俺はそんなのは絶対認めませんよっ!何か方法は無いんですかっ!?」






 とその時、祐一の聞き覚えのある声があたりに響いた。






 「方法は無いことはないぞ。」






 その声にイリアは思わず構えをとく。それによって光も収まった。






 「その声は・・・、ラグナスか。」






 ラグナスはイリアの傍まで歩み寄ると






 「許可無くここに入ったことについては、後でいくらでも処罰を受けましょう。ですが今は・・・。」






 「ラグナス・・・、何か方法があるのならその方法を教えてくれ・・・、頼む・・・。」






 祐一は元々手の施しようの無いほどの重傷だった状態で叫んだので、息も絶え絶えの状態になっていたがなんとか力を振り絞って



 ラグナスに話し掛ける。







 「もとよりそのつもりでここまで来た。ただし、この方法はお互いの覚悟が要求される。それを最初に言っておく。」






 「あの方法ですか・・・。私はかまわないのですが相沢さんは・・・。」






 イリアはラグナスの言う方法に心当たりがあったのか、顔を曇らせてそう言った。







 「俺のことは・・・、構わないから・・・、その方法を・・・、早く・・・。」






 「後でどんなことになっても・・・、後悔しないな?」






 「ああ・・・。」





 「そうか・・・。では、イリア様。」






 ラグナスの言葉にイリアは頷き、






 「相沢さん、よく聞いてください。私は今からあなたと融合します。融合するとどうなるかは、私にもわかりません。それでも・・・、



  よろしいですか?」






 「ええ、構いませんよ。このまま俺だけ助かってしまうよりはいい・・・。」






 祐一がそう言うと、イリアは再び構えてさっきとは別の呪文を唱え始めた。






 そして呪文が終わると同時に、さっきと同じようにイリアの全身からすさまじい光が発せられた。






 光が収まると、祐一がいたところには直径1.5メートル程の光球が浮いていて、祐一とイリアの姿が消えていた。






 「この賭けが一体どう出るか・・・。」






 ラグナスは光球を見て、不安そうに呟いた。























 光球の中で二人は意識体となって向き合っていた。





 「なんか不思議な感じですね。」





 
 「そうですね。」






 「さて、これからどうするんですか?」






 「これから二人の意識を融合させます。融合した後どちらの因子が強く残るかはお互いの意思の強さ次第になります。」






 「そうですか。じゃあ始めましょうか。」






 「はい。」






 そして二人の意識は融合し始めた。






 これが融合か・・・。本当に不思議な感じだな・・・。まるで彼女の意識が溶け込んでくるような・・・、っ!?






 ちょっと待てっ!?このままだと彼女の意識は俺に完全に溶け込んでしまうんじゃないのかっ!?






 俺にそんな考えがよぎったのと同時に、






 普通にやると私の因子の方が強くなってしまいますからね。それだと性別や容姿は完全に女性のものになってしまいますし、



 思考も女性的になってしまいます。最悪の場合私の因子が相沢さんの因子を完全に取り込んでしまいかねません。だから・・



 ・。






 だからと言ってあなたの因子が消えてしまったら意味が無いでしょう!俺の事は構いませんからっ!






 しかし・・・。






 大丈夫ですよ。俺の意思の強さはラグナスの折り紙つきですから。






 そうですか。では、後悔しませんね?





 はい!





 そして、二人の意識は完全に融合した。






















 ラグナスの見ている前で光球にひび割れていってそこから光が漏れ出し、やがて光球は内側から消滅していった。





 光球が消滅した後、そこには黄金の6対の天使の翼を背に持った女性が、母親の胎内にいる赤ん坊のような格好で浮かんでいた。






 ラグナスが神妙な面持ちで女性を見ていると、女性の翼が広げられ、女性は音も無く地に足を下ろした。






 「あなたは・・・?」






 「私は・・・、相沢イリア、相沢イリアです。」





  
 「では二人の因子は・・・。」






 「性別と思考こそ女性ですが、他の要素はほぼ均等に合わさりましたね。そして力はたぶん全盛期のイリア・フィーリスより強いと思います。」






 「そうですか。では・・・。」





 「ええ、これからは私が全能なる全ての母となります。」






 ラグナスはそれを聞くとイリアに跪いて






 「新たなる全能なる全ての母、相沢イリア様。我、ラグナス・クレイドルは今よりあなた様がその存在を無に帰する時まで忠誠を誓います。」






 「闇の神ラグナス・クレイドル、あなたの誓い、たしかに受けました。」
























 ここで皆の意識は水瀬家に戻ってきた。






 「これが、私が生まれた経緯です。わかっていただけましたか?」






 イリアの言葉に、皆は半ば放心状態で頷いた。






 「私はこの後しばらくいろいろな雑務があったので、神界を離れられなかったんです。昨日ようやっと雑務が一段落ついたので、



  京香をお供にここに来たんです。」





 
 「そうだったんですか。ところでイリアさんはこれから・・・?」





 
 「もし皆さんがよかったらまたここで暮らそうかと思ってます。100年程休暇をもらってきましたから。でももしだめなら、



  京香と一緒に適当にいろんな世界を旅して回ろうかと思っています。今の私はもはや皆の知っている相沢祐一ではない、いわ



  ば見ず知らずの他人ですから・・・。」





 
 イリアはそう言って苦笑する。






 皆はしばらく黙っていたが、やがて秋子が微笑みながら、






 「だめなわけは無いですよ。どんな姿であろうと、あなたは私達の元に帰ってきてくださったのですから。ですよね、皆さん?」






 と言った。






 皆は秋子の言葉に微笑みながら頷いた。






 その様子を見てイリアは顔をほころばせ、目には涙を浮かべて、






 「ありがとう・・・、ございます・・・。」






 と言った。






 「それでは、今夜はイリアさんと篠宮さんの歓迎パーティーですね。」






 「私も料理手伝うよ〜。」






 「あ、私も手伝わせてください。」





 
 「あはは〜、私も手伝いますよ〜。」






 「私も手伝いますね。」





 「私も・・・、手伝います・・・。」 






 「お世話になりっぱなしも悪いですから私も手伝いますね。」



 


 秋子の言葉に料理が出来る女性達は次々と名乗りをあげる。





 
 料理が出来ない、もしくは得意でない女性達はそれをちょっと悔しそうに見る。 





 
 「私も神界で料理を覚えたので手伝いますね。」





 
 イリアがそう言うと、






 「イリア様は今日は休んでいてください。今夜のパーティーはイリア様の為のパーティーなんですから。」






 「今夜のパーティーは『相沢さんの』、じゃなくて『相沢さんと篠宮さんの』為ですよ。ですから篠宮さんも今日は休んでいてくださいね。」






 京香の言葉に秋子がそう言うと、






 「ですけど・・・、はあ、わかりました。」





 
 京香は何か言いたそうだったが、イリアが自分の方に目配せしているのに気づいて、しぶしぶ秋子の言葉に同意する。







 「とりあえず、一旦ここを片付けて食材を買ってこないとだめね。」






 「そうね。じゃあ料理が出来る人達でここを片付けて残りの人達で食料の買出しってことになるかしら。」






 薫と真琴の言葉に皆は頷き、いざ行動に移ろうとしたが、






 「ただ待ってるのも暇なんで、買い物につき合わせてもらえませんか?」




 

 というイリアの言葉に特に異論は出ず、イリアも買出しについていく事となった。さらに、





 
 「私もただ待っているのも暇ですので、片付けの手伝いだけでもさせてくださいますか?」






 という京香の言葉も特に異論は出なかった。





 
 という訳で、水瀬家の面々は片付け班と買出し班に分かれて行動を開始した。






 片付けの方は特に何事もなく短時間で終わり、買出しのほうは商店街の人々がなぜかこぞっておまけしてくれた為、



 かなり安く買い物できた事だけ述べておく。






 というわけで、この日の夜、水瀬家でこの日二度目のパーティーが催された。






 皆は、意外な形でとはいえ祐一が帰ってきた喜びからか思いっきり羽目を外し、イリアや京香も皆に付き合って思いっきり



 羽目を外し、思う存分パーティーを楽しんだ。






 そんなわけで、この日の水瀬家は夜遅くまで明かりがともっていた。




























 翌日―AM7:00





 「あら、もうこんな時間だったんだ。時間がたつのは早いわね。」






 イリアはそう言ってあたりを見回すと、周りは酔いつぶれてしまった他の皆がぐったりとなっていて惨憺たる情況だった。






 「このままほっといたら間違いなく全員二日酔いね。それはさすがにあまりよろしくないから・・・。」





 
 イリアは独り言のようにそう呟くと、右手から光の結晶を生み出した。






 光の結晶は細かい光の粒子となって皆に降り注いだ。






 すると、今まで唸っていた皆が安らかな寝息を立て始めた。






 「これでよし。あとは・・・。」






 イリアはどこからか毛布を出してきて皆にかけてやると、一人で片付けを始めた。






 皆が目を覚ますと、片付けはすっかり終わっていてイリアのお手製の朝食が人数分出来上がっていた。






 これには皆、特に京香が恐縮してしまったが、イリアはこれくらい別にいいわよとこともなげに言った。






 



















 とまあこんな感じで相沢イリアの帰還という出来事は幕を閉じた。






 無論この後何事も無いわけが無く、イリアを中心としてと騒動が巻き起こったりもしたのだが、それはまた後日述べる事にしよう。





 
 相沢祐一は一人で苦しみを背負う事によって皆の幸せを願い、最終的に女神との融合を果たす事でその苦しみから解放された。







 それが、相沢祐一と女神にとって幸せな事かどうかはまだわからない。しかし、お互いに後悔はしていない。それはゆるぎない事実で



 あろう。







 皆の幸せのためのscapegoatはもう必要ない。相沢祐一のscapegoatとしての役割はイリア・フィーリスとの融合によって終わりを迎えた。







 これから先皆に待っているのは明るい未来。楽しい毎日。






 季節は冬が終り、春が訪れようとしている。






 相沢祐一の、いや相沢イリアの春は今ここから始まる。






 












 














 

 


 
 
 





終わり


あとがき



 どうもこんにちは。SCAPEGOATの最終話はいかがだったでしょうか。


 前回から性懲りも無く間を空けたうえに、出来の悪い文章になってしまってどうもすいません・・・。


 個人的には最後の部分がなんとも・・・。今の私の力ではこれが精一杯なのが悔しいです・・・。


 とりあえずSCAPEGOATはこれで終わりますが、相沢イリアの物語はここから始まります。


 というわけで、そのうち相沢イリアが活躍する話を書こうかと思っています。


 また、SCAPEGOATでは他のキャラがろくに活躍していなかったので、そのあたりも色々何とかしていきたいと思っています。


 いつになるかはわかりませんが、皆さんが忘れた頃には多分書いてると思いますので気長に待っていて下さい。


 とはいってもまだネタが何も無いんですけどね^^;


 さて、出来れば感想などを送ってくれたりすると嬉しいです。感想が来るとやる気がでるし。


 私のメールアドレスはharuhiko@venus.sannet.ne.jpです。


 なお、いたずら、誹謗、中傷のメールは止めてください。お願いします。


 感想が来たら返事はよほどの事が無い限り書きます。


 とりあえず今回はこれで。


 それでは次の作品で会いましょう。


 





あとがき 終わり