注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。
よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。
名雪達の部屋での雑談から暫くして皆は大広間で夕食をとった。
この旅館は海が比較的近いこともあって、海の幸を中心とした料理が並んだのだがどれもおいしかった。
そして、夕食が終わった後皆は温泉に行く事となった。
ただ、皆で一度に行くと混むので、適当に時間をずらして行く事となった。
そういうわけで、まず皆の親御さん達が先に行き俺たちは後から行く事となった。
俺達は温泉に行くまでの間、卓球をして時間をつぶした。
これが皆結構熱中して結局二時間ほどやる事となった。
それにしても栞とあゆはスポーツ関係はだめだということを改めて認識させられた。
はっきり言って最初はまともにサーブを打ててなかったからなあ・・・。
しょうがないので俺が適当に色々教えてやったのだが、俺が二人に教えてる間他の女の子達の視線がやたら痛かった・・・。
そんでもって二人に一通り教え終わると、今度は他の女の子達が俺に色々教えて欲しいと迫ってきた。
ぱっと見あまり上手そうじゃなかった美汐や命や真琴や佐祐理さんはともかく、かなり上手そうだった舞や香里や京香まで教えて欲しいと
言ってきたのは何故だろう・・・?
ちなみに今名前があがらなかった名雪は腕前はまあ普通くらいだった。
とりあえず断る理由はなかったので俺は皆に適当に教えていった。
舞や香里や京香には教える事はほとんどなかったような気もするが・・・。
ちなみに男連中の腕前は皆平均以上だった。
中でも一番上手だったのは意外な事に久瀬だった。
どうやら生まれつき運動神経がいいらしい。
俺達は卓球を楽しんだ後、皆で温泉に行った。
SCAPEGOAT
第十三話
ここの温泉は大浴場と露天風呂があるのだが俺たちは露天風呂のほうに行った。
念のため言っておくと混浴ではない。
「ふー、いい湯だなあ。温泉に入ったのは本当に久しぶりだな。」
俺は肩まで温泉に使ってそう言った。
「今の君はなんだかちょっとじじくさいような気がするのは気のせいか?」
温泉を堪能している俺を見て、久瀬がそんな事を言ってきた。
「言われてみればそんな気もするな・・・。」
久瀬の言葉に俺はそう答えた。
「それにしても実際見てみると凄い傷跡だな・・・、それ。それに他にもかなりたくさん傷跡があるし。」
俺の体に刻まれたラグナスの鎌の洗礼の跡を見て北川はそう言った。
「本当ですね。よくそんな酷い傷を負ってまで闘う事が出来ましたね。」
一弥も俺の傷跡を見てそんな事を言った。
「まああの時は必死だったからな・・・。」
「それだけ君の彼女達に対する思いが深いということですか・・・。それなら彼女達の気持ちに気がついてもよさそうなものですけどね。」
「あいつらの気持ち?どういうことだ?」
「本当に君は鈍感ですね・・・。まあそのうち嫌でも気がつくことになるでしょう。」
久瀬の言葉の意味がわからず俺は頭をひねった。
「それじゃ俺はそろそろあがるぜ」
「もうか?もっとゆっくりつかってったらいいのに。」
「俺はお前みたいにじじくさくはないんでな、そんじゃな。」
北川はそう言うとさっさとあがっていってしまった。
「どうしたんだ、北川の奴?なんか急いでるようにも見えたが。」
「まあ大体想像はつきますがね。」
「・・・僕もそろそろあがりますね。」
一弥はそう言うとこれまたさっさとあがってしまった。
「一弥の奴までいったいどうしたんだ?」
「おそらく北川君を止めにいったんでしょう。ミイラ取りがミイラにならないといいですけどね。」
久瀬の言葉の意味がわからず、俺は再び頭をひねった。
その後少して久瀬もあがり、俺は一人温泉を堪能していたのだが、
「結界・・・?この力は佐祐理さんと美汐と命か・・・?場所は・・・、女湯辺りか・・・?」
俺はおそらく女湯と思われる辺りで突然結界が張られたのを感じ取った。
「まさか、あいつらに何か・・・。」
俺の頭をそんな考えがよぎった。
そして次の瞬間、俺は龍気を纏い女湯の方に向かっていた。
男湯と女湯はそんなに離れておらず、一応柵があるものの龍気を纏った俺の前にそんなものは無意味だった。
俺は軽々と柵を飛び越えると、結界を強引に一部解除して結界の中に入った。
そして俺が結界の中に入った瞬間凄まじい光の奔流が俺を襲った。
「・・・なっ!?」
ぎりぎりかわす事も出来たが、かわしてしまうと俺が空けた結界の穴からエネルギーの一部がもれて確実にかなりの被害が出ることを
察した俺は、龍気を両手に集中させて光の奔流を受け止めると、
「おおおおっ!!」
バシュウッ
龍剄掌を応用して光の奔流を相殺した。
そして光の本流を相殺した余波が消えて視界がはっきりした時俺が見たのは、バスタオルを体に巻いただけの状態の少女達の姿だった。
「・・・・・・。」
「「「「「「「「「「・・・・・・。」」」」」」」」」」
俺たちはお互い固まったまま動けず、なんとも気まずい空気が流れた。
いつまでも見ているのもあれなんで俺が目をそらすと、そこには黒焦げになった北川と一弥が転がっていた。
それを見た時、さすがに俺はさっき久瀬の言っていた事の意味が理解できた。
なるほどな・・・。さっき久瀬が言っていたのはこういうことか・・・。
「あー、なんだ・・・。とりあえず無事みたいだな。それじゃ俺はこれで。」
俺はそう言うと、北川と一弥をすばやく拾い上げ、結界の穴から一目散にその場を去った。
さて、どうしたものかな・・・。
俺は男湯の方に戻って、北川と一弥が目を覚ますまでこの後のことを考えたが、いい考えは特に浮かばなかった。
ちなみに北川と一弥はとりあえず温泉につけておいた。
北川と一弥は目が覚めると体の痛みに思わず悲鳴をあげていたが、まあ自業自得だろう。
俺達は温泉から上がると、名雪達の部屋に行った。
俺達が温泉での1件を謝ると、名雪達は素直に俺のことを許してくれた。
「相沢君は私のことを心配して来てくれたんだよね。だから相沢君は悪くないよ。」
「相沢君が悪いわけじゃないんだし、ボクは別に気にしてないからいいよ。」
「悪いのは祐一じゃないんだから真琴は気にしないわよ。」
「相沢君は今回は情状酌量の余地が十分にあるから、何も言うつもりはないわ。」
「相沢先輩は今回の事では何も悪くないですから別に気にしてませんよ。」
「相沢さんは悪くないんですから別に気にやむ必要はありませんよ。」
「あの、私は別に気にしてませんので・・・。」
「あははー、私は別に気にしてないですから謝る必要はないですよ。」
「・・・祐一は悪くない。」
「相沢さんは別に気にする事はありませんよ。」
とまあ、これが各人のコメントだ。
北川と一弥は、俺の口添えもあって何とか許してもらえた。
まあ、散々いびられたうえに今度彼女達に百花屋で奢る約束をさせられてたが・・・。
俺が旅館の中を歩いていると偶然恵子さんに会い、この旅館の近くの山のふもとに二十四時間何時でもただで入れる温泉があると聞いて、
俺は夜中に部屋を抜け出し温泉に入りに行った。
時間が時間だけに温泉には誰もおらず、俺は一人でゆっくりと温泉を堪能していたのだが、
「誰か来たみたいだな・・・。こんな時間に珍しいな・・・。」
俺は自分のことを棚にあげ、そう呟いた。
俺は新たな入浴者のことを気にすることなく温泉につかっていたのだが、気配がこっちに近づいてくるのを感じて思わず固まってしまった。
なっ・・・、この気配は・・・。あいつ俺がいることに気がついてないのか・・・?
俺がそんな事を考えている間に気配は温泉のすぐ近くまで近づいてきて、
「こんばんは、相沢さん。私もご一緒させてもらって構いませんか?」
「あ、ああ。俺は構わないが・・・。」
俺が顔を伏せてそう言うと、京香は俺のすぐ後ろまで来て俺と背中合わせになるように温泉につかった。
「星空がきれいですね・・・。」
「ああ、そうだな・・・。」
俺と京香は時折他愛のないことを話しながら暫く温泉に使っていたが、
「相沢さん・・・、ごめんなさい・・・。相沢さんはこんなにも傷ついているのに私は何もしてあげられなくて・・・。」
唐突に京香はそんな事を呟いた。
「別に気にすることはない。もう済んだ事だ。」
「済んでなんかいません!相沢さんはあの時ラグナス様の大鎌の洗礼を受けたせいで・・・。」
「気づいていたのか・・・?」
「私が知らないとでも思っていましたか・・・?」
まあ言われてみれば上級天使の京香がこのことを知っていても不思議じゃないか・・・。
あの闘いで俺がラグナスから受けた大鎌の洗礼は、いまだ完全には治ってはいなかった。
そして、この先も完全に治る事はないだろう。
天龍神によるとラグナスの大鎌によってつけられた傷を完全に治せるのは、神々の頂点に立つ存在とされる全能なる全ての母と
呼ばれる存在だけらしい。
完全には治っていないラグナスの大鎌の洗礼は俺に今まで以上の凄まじい苦痛を与えていた。
ラグナスの大鎌は、普通はかすっただけでも人間なら発狂死してしまうほどの苦痛を与えるものらしいので、さすがに俺もかなり
きついのだが皆に心配をかけたくなかったので普段は何事もないかのごとく振舞っていた。
「なあ、京香。この傷の事、皆には黙っておいてもらえないか?皆に余計な心配をかけたくはないからな。」
「・・・確かに皆さんにこの事を言っても心配をかけるだけですからね。わかりました。」
「すまんな。」
俺がそう呟くと、京香は俺の方を向き中腰になって俺の頭を胸に抱え込むようにして俺をそっと抱きしめた。
そしてさらに、京香は自らの純白の翼を広げ、俺の体を優しく包み込んだ。
俺が驚いて何も言えないでいると、
「相沢さんは優しすぎます。もっと自分の事も考えてください。でないと結果的に私たちを苦しめる事になります。」
「・・・そうか、すまない・・・。これからはもう少し自分の事も考える事にする。」
「それと、もう少し名雪さん達の気持ちを察してくださいね。まあ、はっきり言わない名雪さん達にも問題があるのかもしれませんけど
・・・。」
「どういうことだ?」
「名雪さん達は皆相沢さんのことが好きなんですよ。それに獅堂さんや沢渡さんも。」
「そうだったのか?」
「気づいていないのは相沢さんだけですよ。」
「そうか・・・。あいつらには悪い事をしたな。とりあえず、これで今まであいつらの様子がちょっとおかしかった事にも納得がいったよ。」
「これからは名雪さん達の気持ちにももう少しちゃんと答えてあげてくださいね。」
「ああ、そうするよ。」
と、ここで俺はものみの丘でのことを思い出し、
「そういえばいろいろあって忘れてたけど、京香は俺の事・・・。」
「忘れるなんて酷いですね。はい、確かに私も相沢さんのことが好きです。この想いは今でも変わっていませんよ。」
「そうか・・・、すまないな。」
「別に構いませんよ。これから私の、いえ、私達の想いに応えてくれればいいですから。まだまだこれからですよ。」
「そうか・・・、そうだな・・・。俺達はまだこれからなんだよな・・・。」
こうして祐一と京香の二人だけの時間は過ぎていった。
翌日このことが皆にばれて後で皆と一緒に温泉に入りに行くのを約束させられたのはいうまでもないことであったりなかったり・・・。
とりあえず、今のところ祐一達の周りに不穏な空気はまだなかった・・・。
第十四話へ続く
あとがき
どうもこんにちは。SCAPEGOATの作者のZARDです。
なんかむちゃくちゃ間隔があいてしまいましたね・・・。本当にどうもすいません。
とりあえず今回も前回に引き続き祐一達の温泉旅行の様子を書いています。
次回以降どうなるかはまだわかりませんが、そろそろ展開が変わるかな・・・?
それにしても相変わらずの駄文でどうもすいません。もっと精進しないと・・・。
さて、出来れば感想などを送ってくれたりすると嬉しいです。感想が来るとやる気がでるし。
私のメールアドレスはharuhiko@venus.sannet.ne.jpです。
なお、いたずら、誹謗、中傷のメールは止めてください。お願いします。
感想が来たら返事はよほどの事が無い限り書きます。
とりあえず今回はこれで。
それではまた。
あとがき 終わり