注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。
よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
夏休みに入って暫く経ったある日、俺は電車に揺られてとある場所に向かっていた。
「どうしたんですか、相沢さん?」
俺の隣に座っていた京香が、ボーっとしている俺に話し掛けてきた。
「ただボーっとしてただけだ。」
「そうですか。相沢さんらしいですね。」
俺と京香の正面に座っていた秋子さんと秋子さんの夫の和孝さんは、通路をはさんだ席でトランプをして遊んでいる自分の娘達
とその友人を微笑みながら見つめていた。
SCAPEGOAT
第十二話
さて、何故俺達が一緒の電車に乗っているのかというと、期末試験が終わった日に皆で水瀬家に遊びに行ったのがきっかけだった。
なんでも秋子さんの同級生だった人がとある温泉旅館の女将をやっていて、夏休みに一度遊びに来ないかと誘われたらしい。
その旅館は結構有名で普段はなかなか予約が取れないのだが、特別にいくらか枠を取ってくれてしかも格安で泊めてくれるとの事で、
せっかくだから友人の家族も連れてくるといいと言ってきたらしく、皆がそれぞれの家族と相談した結果、全員の家族の都合のつく
日に家族ぐるみで行こうという事になったのだった。
それにしても、よく皆の家族の分まで枠が取れたな・・・。まあ深くは考えないでおこう。
ちなみに、電車の切符は奇跡的に同じ便で全員分とれた。まあこれについても深く考えるのはよそう・・・。なんか怖いから・・・。
そういうわけで、俺達は温泉旅館に向かって電車に揺られているというわけだった。
今回この旅行に参加しているのは、いつも屋上で一緒に昼食を食べているメンバーとその家族と真琴姉さんと師匠だ。
その人数はかなりのものになるから、移動の時なんかはものすごく目立つんだよな。
ちなみに、皆の親御さん達は別の車両で話に花を咲かせているようだった。
ちなみに、俺の家族は海外に行ってしまっているので当然来ていない。京香の家族は天界にいるのでこっちも当然来ていない。
俺達は電車で二時間ほど揺られて、温泉旅館のある街までついた。
俺達は秋子さんの案内で旅館まで歩いていった。
そして旅館に入ると、
「あら、秋子。やっと来たのね。待ってたわよ。」
「久しぶりね、恵子。」
「まあ話は後でしましょ。皆さんを待たせちゃ悪いし。」
「そうね、じゃあ案内お願いするわね。」
秋子さんがそう言うと、恵子さんは俺達の方を向き、
「本日はようこそ当旅館においでくださいました。どうぞごゆるりとおくつろぎください。」
そう言って俺達に向かってお辞儀をした。
そして俺達は旅館の人達の案内でそれぞれの部屋に連れられていった。
人数が多いのでいつものメンバーと水瀬家夫婦の部屋割りだけ言うと、俺は久瀬、北川、一弥、和孝さんと一緒の部屋になった。
残りのメンバーは名雪、あゆ、香里、栞、秋子さん、真琴姉さん、師匠と舞、佐祐理さん、美汐、真琴、命、京香というグループに別れた。
荷物を置いた俺達は、他の連中の部屋に遊びに行った。
途中で秋子さんとすれちがったが、おそらく和孝さんのいる俺達の部屋に行ったのだろう。
まず名雪たちの部屋をのぞくとそこに皆集まっており、俺達も入ったのだがさすがに人数が多すぎて部屋が窮屈になってしまった。
しかし俺達はそんな事を気にすることもなく雑談に花を咲かせた。
それにしても、この時女の子連中は皆やたら俺にくっつこうとしてきたんだよな。
なんか皆お互い視線でけん制しあってるし、俺が誰かとくっつくと京香はやたら不機嫌になるし、俺が京香の機嫌をとろうとすると
他の娘達は不機嫌になるし・・・。
俺がいったい何をしたって言うんだ・・・?
ちなみに半分無視に近い状態になっていた男連中は、俺の事をなぜか哀れんだ目で見ていた。なんかこのところあいつらの女の子達
からの扱いが悪くなっているような気がするのは気のせいだろう。うん、気のせいと言う事にしておこう・・・。そうしておけと俺
の第六感がささやいているからな。
ついでに言うと俺が京香とキスをした事と、京香が毎晩俺の所に夕食を作りに来てくれている事は皆には言っていない。
これまた絶対言わない方がいいと俺の第六感がささやいているからな。
特に真琴姉さんや師匠に知られたらどんな目にあう事やら・・・。
と、ここで俺がふと顔を上げると皆がなぜか俺の方を見ていた。京香はなぜか顔を赤くして、男連中はよりいっそう俺を哀れんだ目で。
ここまではまあ問題ない。問題なのは京香以外の女の子連中だった。
皆なぜか無表情で無言のプレッシャーを発していて凄く怖かった。俺なんか変なこと言ったか?
「相沢君、今の話、もっと詳しく聞かせてもらえないかしら?」
皆を代表して師匠がそう言った。
俺は意味がわからず、京香の方を向くと、
「あの、相沢さん。声に出てましたよ・・・。」
「・・・どこから?」
「・・・私が相沢さんとキスをしたというところからです。」
・・・よりによって一番やばい部分を口に出していたらしい。この癖は本当に困りものだな・・・。
しかし今の俺にはそんな事を悠長に考えている余裕はなかった。
ああ・・・。なんか古傷が余計に痛んできた・・・。全部俺のせい・・・なんだろうな、多分・・・。
結局この後、京香とキスした事については何とか釈明できたが、京香が夕食を作りに来てくれている事についてははっきり言って
俺からは大した釈明が出来ず、これからは皆が交代で俺の夕食を作りに来るという事でなんとか収まった。
にしても京香の奴このことが決まるとやたら不機嫌になったんだよな・・・。俺にいったいどうしろと・・・。
まあこんなかんじで多少の波乱を含みつつも(俺にとっては多少じゃないが)皆で過ごす時間は問題なく過ぎていった。今のところは・・・。
この時俺はこの後待ち受ける俺にとっての最大の試練の事に気づくはずもなかった・・・。
第十三話へ続く
あとがき
どうもこんにちは。SCAPEGOATの作者のZARDです。
本当に長い間お待たせしてどうもすいませんでした。
それにしても長い間待たせたわりには出来がよくない・・・。しかもノリが大分変わってるし・・・。ついでに短い・・・。
さて、今回祐一がもてもてになっていますが、本当の奇跡が起こってからこの日までの間に皆祐一の持つ魅力の虜になったということに
しておいてください。
もう少し具体的に言うと、偽りの奇跡の代償が消えて謝罪の意味も含めて皆が祐一と一緒にいるうちに、祐一の持っている魅力の虜に
なったという事です。
なんかこじつけがましいような気がしますがそういうことにしておいてください。
ああ・・・、なんか読者様の期待を思いっきり裏切ったような気が・・・。
まあさすがにこの先ずっとこの調子で行くわけではないですけどね。
とりあえず、今回は嵐の前に静けさということで。
さて、出来れば感想などを送ってくれたりすると嬉しいです。感想が来るとやる気がでるし。
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なお、いたずら、誹謗、中傷のメールは止めてください。お願いします。
感想が来たら返事はよほどの事が無い限り書きます。
とりあえず今回はこれで。
それではまた。
あとがき 終わり