注意>このSSは、読者がkanonをALLクリアしている事を前提に書いています。
よって、出来ればkanonをオールクリアしてから読まれることをお勧めします。
次の日、俺が一階の廊下を歩いていると、意外な人物を見かけることとなった。
その人物とは沢渡真琴。真琴のモデルとなった人物で、俺の憧れだった女性だ。
「真琴姉さん・・・、こっちに来てたんだな・・・。」
真琴姉さんは俺に気づくことなく、一緒にいた数人の女子生徒と話しながら俺とすれ違ってどこかに行ってしまった。
もっとも、俺に気がついたところで俺のことを覚えているわけがないので、気づかれない方がよかったけど。
「最後に会ったのは・・・、四年前だったな・・・。」
俺と真琴姉さんは四年前、真琴姉さんが大学に進学するために俺の住んでいた街を離れることになった時以来会っていない。
俺にとっての真琴姉さんは、憧れであると同時に頼れる姉のような存在だった。
真琴姉さんも、俺のことを実の弟のようにかわいがってくれたっけ。
真琴姉さんは俺が前に住んでいた街でも人気者だったからな。きっとこっちでも人気者になれるだろうな。
成績優秀で人に勉強を教えるのも上手だしな。
真琴姉さんにとって教師は天職と言えるかもしれないな。
俺はそんなことを考えながら、その後の授業を受けた。
この時俺は、この後更に意外な人物と再会することになるとは夢にも思っていなかった。
SCAPEGOAT
第五話
放課後、俺が廊下を歩いていると、突然発作的な苦痛が俺を襲ってきた。
普段なら、俺が苦しんでいても近づく者などいるはずもないのだが、この日は違った。
「大丈夫ですか、相沢さん?」
俺が苦痛に耐えながら声のした方を向くと、そこには天野が立っていた。
そして、天野の後ろには真琴が、更に真琴の後ろには命が立っていた。
「真琴、肩を貸してください。相沢さんを保健室まで連れて行きますから。」
「美汐、そんな奴のことなんかほっとこうよ。」
「そういうわけにはいきませんよ。人が苦しんでいるのを見て放っておくのは人として不出来ですから。」
「あうー、美汐がそう言うのなら・・・。」
「・・・別に保健室に行く必要は、ぐっ・・・。」
俺は別に保健室に行く必要はないと言おうとしたが、更なる苦痛が俺を襲ってきて最後の方は言葉にならなかった。
「相沢さん、しっかりしてください。今保健室に連れて行きますから。」
「あうー。美汐のお願いじゃなきゃあんたなんかに肩を貸したりしないんだからねっ!」
こうして俺は保健室に連れて行かれた。
保健室に入ると、保健の先生が声をかけてきた。
「どうしたの?どこか怪我でもしてるの、その子?」
「苦しそうにしていたので連れてきたんです。」
「わかったわ。それならそこに座らせておいて、今診てあげるから。」
そして俺はソファーに座らせられた。
その頃になってようやっと苦痛がおさまってきたので、俺は顔をあげた。
「し、師匠・・・?」
なんと、保健の先生は俺の師匠にそっくりだった。
「何か言いましたか、相沢さん?」
「いや、なんでもない。」
俺の呟きに反応した美汐を適当にごまかして、俺は改めて師匠をじっと見た。
保健の先生は間違いなく俺の師匠だった。
まさか真琴姉さんだけじゃなくて師匠までこっちにきてるとはな・・・。
それにしても師匠が保健の先生とは・・・。
俺がそんなことを考えているうちに、師匠が俺の方に歩いてきた。
「いったいどうしたの?苦しそうにしていたとのことだけど。」
「ただの発作みたいなものですから。もう大丈夫です。」
「・・・確かにもう大丈夫そうね。念のためにちょっと休んでいく?」
「いえ、結構です。もう帰りますから。」
「そう、なら今日は真っ直ぐ家に帰ってしっかり休養をとるのよ。くれぐれも遊びまわったりしないように。」
「はあ・・・、わかりました。」
俺はそう言うと、ソファーから立ち上がり保健室をあとにした。
さて、祐一が保健室を出て行ったあと、
「えっと、あなた達の名前を聞かせてもらえないかしら?」
「天野美汐です。」
「水瀬真琴よっ。」
「・・・天野命です。」
「美汐ちゃんに真琴ちゃんに命ちゃんね。それじゃ美汐ちゃんに聞きたいんだけど、彼って何者なの?」
「何者と言われても・・・。」
「あいつはすっごく嫌な感じがする奴!それだけよ!」
「・・・あの人はなんか怖いです。」
「相沢さんは・・・、近づきがたい雰囲気をもっている人ですけど・・・、どこか悲しそうな顔をしている人です。」
「だから放っておけなかったと言うわけね?」
「はい。」
「確かに彼からは何か嫌な感じがするんだけど・・・、どこか懐かしい感じがするのよね、彼からは。まるで昔会ったことがあるみたいに・・・。」
「いったい相沢さんは何者なんでしょうか・・・?」
美汐の呟きに答える者は誰もいなかった・・・。
一方、祐一は商店街をぶらぶらしていた。
今日の晩飯は何にするかな。昨日みたいに京香が作ってくれるとありがたいんだけどな。
「それなら今日も作ってあげましょうか?」
俺が声のした方を振り向くと、京香が立っていた。
「もしかして、声に出てたか?」
「はい、しっかり出てましたよ。」
まあいいか。聞かれて困るようなことでもないし。
「それじゃ頼む。自分で作るより京香に作ってもらった方が美味いからな。」
「どういたしまして。」
「それにしても、どうして京香は俺に晩飯作ってくれるんだ?」
「ただの気まぐれです。それでは私は買い物がありますのでこれで。」
「ああ、また後でな。」
俺は京香と別れると、特にすることもなかったのでアパートに戻った。
二人での夕食が終わった後、
「なあ、一つ聞いていいか?」
「なんですか?」
「何で京香はそんな顔をしてるんだ?」
「どういうことですか?」
「俺には、今の京香は俺に対してどこか申し訳ないような顔をしてるようにしか見えないんでな。」
「・・・気のせいです。」
「・・・何かあるのか?あいつらに、あるいは俺にとって何か重大なことが。」
「・・・相沢さんがそれを知っても、どうすることもできないですよ。」
「それは聞いてみないとわからないと思うけどな。」
「とにかく、相沢さんは知る必要がないことです。」
結局、この日は京香はそれっきり何も話してはくれなかった。
京香が帰った後、俺はトレーニングをしてから床についたのだが、何か嫌な予感が拭えなかった。
何か嫌な予感がするな・・・。あいつらの身に何かあるというのか・・・?
もしあいつらの身になにかあった時、俺はあいつらの力になってやれるのか?あいつらを助けてやれるのか?
もう七年前の、そしてあの冬の二の舞だけは御免だぞ・・・。
あの悪夢はもう繰り返したくない・・・。あの絶望はもう味わいたくない・・・。
あいつらには幸せな暮らしを送って欲しい・・・・。そのためなら俺は・・・。
俺は湧き上がる不安を抑えることが出来なかったが、いつしか眠りに落ちていった。
第六話へ続く
あとがき
どうもこんにちは。第五話はいかがだったでしょうか?
今回も相変わらず話の出来がいまいちだなあ・・・。
まだまだ修行が足らない・・・。とほほ・・・。
今回はあまり話が進みませんでしたが次回は・・・、どうなるんでしょうね。
一応ラストをどうするかはある程度決めてはいるんですけどね・・・。
とりあえず今回はこれで。
それと今回からメールアドレスを公開するのでもしよかったら感想なんかをくれたりすると嬉しいです。
ただし、いたずら、誹謗、中傷のメールは止めてください。お願いします。
アドレスはharuhiko@venus.sannet.ne.jpです。
それではまた次回お会いしましょう。
あとがき 終わり