「うーん」
「どうしたの? 陣耶」
「あのね、どうしてこの本はまっ白なんだろうなって」
「うーん・・・どうしてかしらね」
「おーう、ただいまー」
「お帰りなさい、あなた」
「父さんお帰りー!」
これは、遠い景色。いつかの風景。
願って止まない―――夢。
二度と見ることが無い―――夢。
距離ではなく、時間として遠すぎる―――夢。
儚く、優しく、そして残酷な―――夢。
そのころの俺は無邪気で、物知らずで、無鉄砲で、底抜けに明るい甘えん坊だった。
そして、今の俺はそんな昔の自分が―――本当に大嫌いだった。
魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜
第七章「それぞれの想い」
学校の中間休み。
昨日はヴィータちゃん達と戦って大変だったけど、今日は別の意味で大変です。
その―――元気がないのです。陣耶君が。
昨日別れた時はまだ元気だったのですが、今朝から様子が変なのです。
表情はどことなく暗いし授業中によくため息を吐くし、何より―――寂しそうな目をしている。
私もそれが気になるんで、ただいま教室を出て行った陣耶君を捜索中です。
とは言ってもこの学校で中間休みに行く所なんて数ヶ所しかないので楽に見つかりました。
屋上―――
一人フェンスに寄りかかって街を眺めながら、陣耶君はそこにいた。
◇ ◇ ◇
「ふう」
ダメだ。どーにも気分が暗くなる。
あんな夢は久々に見たから、結構くる物があった。
頭ではこんな気分はダメだと分かっているんだが気持ちがそれに追いつかない。
どーしたもんかね。
本日何度目か分からないため息を吐く。
そこに―――
「陣耶君」
後ろから、最近友達になった女の子が声をかけてきた。
振り向くと、予想通りの人物がそこに居た。
「なのは、どうした?」
「え、えっと、その・・・陣耶君、今朝から元気ないから・・・」
・・・しまった、こいつにまで心配をかけてしまったか。
この様子だとたぶん他の奴らも心配しているかもしれん。良い奴らばっかだし。
「それは・・・すまん。ありがとうな、心配してくれて」
「それは別に良いんだけど・・・何か、悩み事?」
「悩み事・・・か」
どうなんだろうな・・・
これは悩みというよりも未練がましく引きずっているだけ。
何時まで経ってもうじうじとしているバカな話なんだけどな。
「別に、悩みって程の話でもないさ」
「嘘。だって陣耶君、とても辛そうな顔している」
「・・・そこまで露骨に顔に出てたか?」
そうだとしたら相当キテるな。
マズイ。本気でここまでくるとは思わなかった。
「あの・・・もし良かったら話してくれないかな。陣耶君の悩み事」
「は?」
「何か力になれるかもしれないし―――陣耶君がそんな顔しているの、嫌だもん」
「いや、けど・・・」
いいのか? そんなこと。
たった数日間の付き合いしかまだ無いっていうのに・・・
「私は、陣耶君の友達だよ。友達が笑顔になる手伝いをするのはおかしい?」
「そんなことは―――ないけど」
実際その気持ちはありがたい。
けど、俺は―――
「他人に聞かせるような物じゃ、無い―――」
「他人じゃないよ! この数日で、たくさんお話しするようになったよね。私と、フェイトちゃんと、みんなと・・・
それは全部・・・嘘だったの?」
「違う! ただ、俺は・・・」
恐い、だけ。
もし話をして、その後の反応が。
「私、どんなことでもちゃんと聞くよ。陣耶君が辛いと、私も辛いから・・・二人できっちり半分こ。
私は陣耶君に笑って欲しいんだ」
「なのは・・・」
ははは・・・
馬鹿だな、俺は。
こいつがそんなことする人間じゃないって、とっくに分かっただけじゃないか。
こいつは強い。力ではなく、心が。
だから、その強さに俺も応えよう。
ほんの些細なこと。だが、それで俺の人生は変わった。
その時の出来事から、俺は未だに抜け出せない。
一人負い目を感じて背負ってきた重い事実。
皆許してくれた。けど、俺が許せないだけ。
だからこそ、情けない。
そんな情けない話で失望されたくなかっただけの、弱い俺。
けど―――
「分かった、話すよ」
その恐さを振り切って。
一歩を、踏み出してみよう。
◇ ◇ ◇
その日、俺はいつものようにその本を見ていた。
辞書より分厚そうなのに中身には何も書いてありはしない、不思議な本。
全くの白。
表紙から中身まで、全てが白の本。
それがとても不思議で、何時しかそれを見ていることが日常になっていた。
そんないつもと変わらない日常の中、それは起こった。
両親と共に人気のデパートへと出かけた。勿論その本も持って。
「あらあら、またあの本を見ているわ」
「それほど気に入ったのだろう。俺たちにとっても不思議な本だしな」
そんな両親の会話を耳にしながらデパート三階のおもちゃのエリアまで足を運んだ。
その頃の俺はおもちゃが大層好きで両親と一緒に行っては大はしゃぎしていた。
勿論、その日もいつものようにはしゃいでいた。両親を引っ張り回してあちこち周っていた。
それが起こったのは、ちょうどその時―――
「ねえねえ、次はあっち!!」
「はいはい。まったく仕方ないな」
「ふふふ、楽しそうね」
次のおもちゃを見に行こうとした時―――
凄まじい、爆音が轟いた。
それは近くの電子機器のエリアから。
そこから爆発が次々と起こり朦々と黒煙が立ち籠めた。
結果、デパート内の客はパニックに陥り我先にと下の階目掛けて走り出した。
その人の波に呑まれ、俺は両親とはぐれた。
その後、俺はただひたすらデパートを彷徨っていた。
そこが何階なのか、何処なのか分からずただ泣きわめきながら必死に両親を捜していた。
その時の俺は両親とはぐれた心細さ、一人命の危機に陥っている恐怖から正常な判断が出来なくなっていた。
俺はただ熱く、熱い場所から逃げたかった俺は少しでも涼しい場所へ行こうと物陰に隠れていた。
それでも熱さは変わらず、更に息も苦しくなってきた。
もう訳が分からないままわめき散らしてひたすら走り回って、やっとの思いで、向こう側から走ってきた両親を見つけた。
そこで無事に助かればハッピーエンドだっただろう。
けど、そう巧くはいかなかった。
突如、俺の上の天井が崩れたのである。
本当に突然のことだった。
当然その頃の俺に反応できるはずが無く、恐さに目を瞑った。
だが―――何時まで経っても衝撃はやって来ない。
恐る恐る目を開けると、俺を庇って瓦礫を背負っている両親がいた。
俺を守るために、その身を犠牲にして俺を瓦礫から救ってくれた。
その顔が語っていた。“絶対に守る”、と―――
痛い筈なのに、体中の色んな所から血を流して痛い筈がないのに。
それでも―――笑っていたんだ。
俺は、両親が近くにいる安心感から、意識を失った―――
◇ ◇ ◇
「翌朝俺はレスキュー隊に瓦礫の下から発見された。両親の遺体と共に」
「そん、な・・・」
「聞いた話によるとな、両親は一度デパートを出ていたそうだ。
他の人に聞いて周って俺が居ないと知るや、戸惑いもなく火の海に飛び込んだそうだよ」
そう、俺はあの時訳が分からなくてただ泣きわめいて走り回っていた。
もし、もしもあの時、出口を目指していれば両親も死なずに済んだはずだ。
“まだ子供だから”、“君に生きていて欲しかったから”、と他の人は慰めてくれた。
それでも、思わずにはいられなかった。
俺が―――もし俺が、と。
「あの時、何でああしなかったのか。何でそうしなかったのか。それが後から後から沸いてきてさ。
俺はあの時の自分が、未だに割り切れない今の俺が許せないんだ―――」
「陣耶君―――」
顔を背ける。
どんな顔をしているか自分でも分からない。
たぶん、とても情けない顔をしているだろうが。
そんな顔を見られたくない。
「情けないよな、何時までも過去をずるずると引きずって。俺は未だに自分が許せないでいる―――」
ホント、情けない話だ。
不甲斐なさに笑いがこみ上げてくる。
―――不意に、背中に温もりが生まれた。
「大丈夫だよ、陣耶君」
「え?」
優しい声が、聞こえる。
声の主は、背中からおぶさる様に抱きついている? なのは。
どちらかというと母が子供を抱きしめている感じに近いが―――
「私は、陣耶君じゃないから陣耶君の気持ちは分からない。けど、独りぼっちの寂しさなら知っている。だから―――」
一旦言葉が句切られる。
なのはは、その精一杯の気持ちを伝える様に―――
「これからは、独りぼっちにならない様に私が一緒にいる。
フェイトちゃんも、アリサちゃんも、すずかちゃんも、ユーノ君も、クロノ君もみんな、陣耶君と一緒にいてくれるから」
もう、独りじゃないんだよ。
そうなのはは言った。
「私たちは陣耶君と友達になってからまだ短いけど、辛いことがあったら話してくれて良いんだよ。友達って、そういうもの
だと思う」
「なのは―――」
「それに―――陣耶君は何も悪くないよ。私だって、そう言う」
「けど―――」
やっぱり、俺を許すことは―――
「陣耶君が自分を許せないなら、私が陣耶君を許すよ。陣耶君が自分を許せる様になるまで―――」
「・・・」
―――出来るんだろうか、俺に。
この過去の自責の念から、解き放たれる事なんて。
「私が手伝うから―――自分を許せる様に、少しずつ努力しよう?」
「―――」
・・・なあ、なのは。
「出来るのかな。俺に」
「出来るよ。陣耶君だけじゃなくて、私やみんなも居るんだから」
「―――そうか。―――そうだよな」
そこまでしてくれるのに、俺が何もしないっていうのは格好悪いよな。
「ありがとう、なのは。俺も―――少しずつ頑張ってみるよ」
「うん! 私も手伝ってあげるから!」
こいつは優しい。
こんな俺を手伝ってくれると言った。許してくれると言った。
もう独りじゃないと、傍にいてくれると言った。
暖かな日差しのように、俺の心の雪をこいつは溶かしてくれるだろう。
その暖かさに恥じないよう、俺も生きなきゃならない。
こいつの言うように、自分を許せるように。
「なあ、なのは。俺ばっかりじゃずるいからさ、何か要望とかないか? 出来る限りで応えるぞ」
「うーん・・・陣耶君の思ったことでいいよ」
「ぬう?」
その切り返しは予想外だな。
そうだな・・・
「それじゃあ、お前が俺を許してくれるなら、俺はお前を支えるよ。辛くなった時、挫けそうな時、俺が支えてやる。お前の相
棒と一緒にな」
それが、今の俺に出来る精一杯の恩返し。
きっかけをくれたことに対しての礼は、また改めてちゃんとお礼をしないとな。
「うん。ありがとう」
そう言って微笑むなのはは、いつか見た母のように暖かな笑みを浮かべていた。
そういえば―――あれ以来あの本は見なくなった。
あの火事で燃えたんだろうか・・・
◇ ◇ ◇
「あ、そういえばごめんね」
「何がだ?」
「その、陣耶君の昔のこと無理矢理聞いちゃって。あれじゃあ、話したくないのは当然だよね・・・」
と言ってうつむくなのは。
って、うおい!? いつかのようなネガティブな展開はごめんだぞ!?
「だー、気にすんな!! 俺は嫌だったらちゃんと嫌だって言うから!! 別に無理矢理言わされたわけでもないから!!」
「・・・ホントに?」
「ああ。分かったらほら、教室に戻るぞ。そろそろ時間だ」
時計を見れば、授業が始まる5分前を指している。
そろそろ戻らなければマズイ時間だ。
「ホントだ。あ、そういえば陣耶君」
「何だ?」
「フェイトちゃんも心配してたよ。昨日のことでやっぱり距離を置かれたんじゃあ、なんて考えてたりするんだよ」
「それは、まずいな・・・」
昨日のフェイトはそれはそれはマズかった。色んな意味で・・・
そう、あれは昨日の戦闘後になのは達と合流してハラウオン宅に赴いた時のこと・・・
◇ ◇ ◇
「カートリッジシステムは扱いが難しいんだ。本来ならその子達のような繊細なインテリジェントデバイスに組み込むような物
じゃないんだけど・・・」
二人は譲らなかった。
それだけ、自身の主人を思っているのだと。そう言った。
俺たちは今ハラウオン宅にいる。
あの戦闘の後合流したなのは達と今日の報告に赴いたのだ。
あと、あの時緊急事態で聞き損ねた二機の説明も聞きに来た。
「モードはそれぞれ三つずつ。
レイジングハートは中距離のアクセルに砲撃のバスター。フルドライブのエクセリオンモード。
バルディッシュは汎用のアサルトに鎌のハーケン。フルドライブはザンバーフォーム。
フルドライブは破損の危険があるから使わないように。特に・・・」
・・・なのは達には色々形態があるみたいだが、俺のクラウソラスにもあるんだろうか?
そこんとこを聞いてみる。
「ああ、ごめんごめん。そういえばそっちの説明もまだだったね。何せ資料を取り寄せるのに時間がかかって」
「おつかれです」
「それじゃあ話を戻して、陣耶君のクラウソラスのモードも二人と同じく三つ。
基本は剣のカリバー、大剣のエッジ。フルドライブはレイジングハートと同じエクセリオンフォーム」
「ふむふむ。具体的にエクセリオンって何ですか?」
なのはにはフレーム強化が済むまで禁止と言っていたがどういった物なのか?
「うーん、肉体の限界を超えた身体強化とか出力アップとか・・・そんなとこ」
「なるほど。負担が大きすぎるのか」
となると本当に奥の手だな。
俺もフレームの見直しが済むまではエクセリオンは禁止されたが。
「問題は守護騎士達の動きだ。どうにも腑に落ちない」
「何でだい? 闇の書ってのは、要するにジュエルシードみたいにすっごい力を持った物なんだろ? そいつを欲しがってる奴
のためにあいつらが頑張るって別におかしくないじゃないの?」
好き好んで力を欲しがる奴なんてろくな奴がいないけどな。
しかし腑に落ちないとはいった・・・?
「・・・元々闇の書っていうのはジュエルシードのように自由に力の制御が出来る訳じゃないんだ」
「破壊といった方向にしか使えないの。少なくとも、それ以外の用途に使われた経歴はないわ」
「・・・しつもーん」
この場に響く場違いな響きの声。発したのは俺だが。
皆の視線が俺に集中する。
「あのさ、さっきから話に出ているジュエルシードって何なんだ?」
「えっと・・・」
むう、何やら微妙な反応。
意見を求めてなのは達に視線を向けるが何やらフェイトが暗い・・・
一気に気まずい空気に・・・・・
「あー、流してくれて結構。とりあえず続きを」
「あ、ああ。話を戻すが、腑に落ちない点はそこじゃない。守護騎士達だ」
この雰囲気をどうにかする手段はこれしか思いつかなかった。
これに乗ってくれたクロノには感謝だが、ファイトの顔は依然暗いまま。
これは触れてはいけなかったか・・・
「守護騎士達の何処がおかしいんだ?」
「・・・あの守護騎士達は、人間でも使い魔でもないんだ」
「っていうと・・・?」
人でも使い魔でもない。
となるとあいつらは皆―――
「闇の書の主の命を受けて行動する。ただそれだけのプログラムにすぎない筈なんだ」
「プログラム・・・ ってことは擬似人格―――!?」
あ、あいつらが!?
いくら何でもありえんぞ。それにしては嫌に自身の意志や感情を感じられたし。
「人間でも使い魔でもないって―――私、みたいな?」
不意に、フェイトの言葉が部屋に響いた。
ちょっと待て、今なんて言った。
「フェイトさん!」
「馬鹿なことを言うな! 君は少し生まれ方が違っただけでれっきとした人間だ。検査でもそう出ていただろう」
「・・・はい」
フェイトはおずおずとして俺を見ている。
おそらくはうっかり口にしてしまった“私と同じ”という言葉のせいで。
察するに、フェイトも何かしらの事情を抱えているのだろう。軽々しく人に言えないような。
たぶん、さっきの俺の発言、“ジュエルシード”が関係しているのだろう。
俺の迂闊な一言のせいでフェイトの過去の傷を抉ったらしい。
「フェイト」
「―――!」
いつかのなのはの様に身を縮み込ませるフェイト。
そんな風に怯えるフェイトにやっぱり俺は―――
「馬鹿かお前は」
「あう!?」
拳骨をくれてやった。
涙目になって頭を押さえるのはお約束だ。
ただ俺も拳骨した右手がイタイ・・・
「お前が何を抱えているのかなんて俺は知らない。けどな、これだけは言える」
「―――」
そう、俺はお前の抱えている物なんて知らない。その重さも、辛さも、何も知らない。
だが、だからこそ言える無責任な言葉がある。
「俺はお前がなんだろうと気にすることはない。何故かと言えばお前は俺の友達のフェイト・テスタロッサだからだ」
「あ―――」
友達―――
そう。俺たちは友達だ。
人の善し悪し、正と邪、そういった清濁を全て認められる者同士が友達と呼べるのだと思う。
あくまで俺個人の見解にすぎないが。
「話してくれとは言わない。そもそも、軽々しく聞いてもいけないだろうし。
それでも、もし話しても良いと思ったときがきたら―――その時は、ちゃんと話を聞くよ」
「ジン、ヤ・・・」
「もう一度言うぞ。俺はお前が何だろうと別に気にすることはないからな。胸張って堂々としていれば良いんだ」
「・・・ありが、とう。ジンヤ」
ふう、まったく。なのはだけでなくこいつまでネガティブ思考の持ち主だったとは。
話が盛大に逸れたな。
「さて、収拾がついたところで続きを頼む」
「うん。それじゃあ、分かりやすくモニターで説明しよっか」
エイミィさんが何か操作すると途端に部屋が暗くなり近未来的なスクリーンが展開される。
そこに映し出されているのは闇の書及びその守護騎士達のデータだ。
どうでもいいが、この部屋はどうなっているんだろうな。
こんな仕掛けがあるし、奥にはよく分からない機械類が置いてあるし。
マンションを無断改造して良いのか? コレ。
まあ異世界にまで手を出すような連中だから根回しは出来るのだろうと納得することにした。
話を戻そう。
「これまでに会話や意思疎通の確認はされているんだけど・・・」
「今回のように自身の意志や信念―――感情を持ったことは初めて、か」
何があった、というのは想像に難くない。
これまではそうで無かったのが今回はそう。そこが答えだ。
聞くところによると闇の書にはそれを所持する主が居るらしい。
そして守護騎士達は毎回その主に召喚される。つまりはそういうことだ。
「なら、今回闇の書の主となった人物が守護騎士達に影響を与えた・・・と考えるのが妥当だろうな」
「うん。ヴィータちゃんも私を初めて襲ったとき絶対に成し遂げたいことがあるって言ってたから」
目的は何にしろ良くも悪くも守護騎士達を変えたのはそいつだ。
あそこまで騎士道精神溢れる奴らが必死に頑張っているんだからそうとう人が良いに違いない。
「まあまあ、幸いなことに主はこの海鳴市付近にいることは間違いないんだから。もしかしたら先に主が捕まってくれるかもし
れないし」
「・・・そうだな」
何やらクロノが沈鬱な表情をしているが地雷を踏むのはゴメンなので見ないことにした。
そうして、その日はお開きとなった。
クロノがユーノに何やら頼んでいたが・・・何だろうな?
◇ ◇ ◇
「うーん、今思い出しても俺不用意に突っ込みすぎだよな」
「あ、あはははは」
現在、更に飛んで下校中。
合間はどうしたというツッコミは禁止である。
アリサとすずかとはすでに別れた。
「唐突に質問なんだが・・・フェイトって近接戦闘もやっていたけど、剣術ってやっているのか?」
「え? 少し基礎を教えて貰って後は独学・・・」
やはりそんなモンなのか?
「けどどうしたの? 急に」
「いやさ、俺は体術は少しだけやっていたけど剣術なんてサッパリだし。やっぱり相棒は使いこなせる様にならないと失礼だしな」
「なるほど」
剣術なんてやったこと無いしなあ。
俺の相棒が剣である以上、それに見合った戦い方を身につける必要がある。
それ以上に、俺は相棒をちゃんと使いこなしてやりたいのである。
レイジングハートやバルディッシュの様にインテリジェントとしても使えるが、本来クラウソラスはアームドデバイスだ。
が、武器なぞ扱ったことのないど素人の俺には未だ手に余る感がある。
フェイトに教わればいいのだろうがそれはそれで情けない様な気がする。
しかし知り合いに剣術家なんて居ないし、やっぱりフェイトに基礎だけでも教えて貰って・・・
「そういえば、私のお父さんとお兄ちゃん、あとお姉ちゃんが剣術をやっていてすっごく強かったよ」
「マジか!?」
「うん」
な、なんてこったい! まさかこんな身近に救世主が居たとは!!
「そのうち誰か一人だけで良い。空いている時間とか知っているか?」
「えっと、お兄ちゃんとお姉ちゃんは学校だから夕方からは空いているけど・・・」
「よし! まずは話だけでもしに行くか!!」
「ええ!?」
有言実行! 善は急げ!!
教えてくれるかどうか何て分からないが今頼みの綱はそこのみだー!
今から高町家に急行だーー!! HAHAHAHAHA!!
なのはの手を引っ掴んで引っ張っていく。
「ちょ!? キャラ違うよ陣耶くーん!?」
「ああ!? 待って二人ともーー!!」
こうして、この後俺に降りかかる不幸など知らずに急行した俺たちだった・・・
Next「試練」
自らの誓いと共に―――ドライブ・イグニッション!!
後書き
結構間が空いた第七章の投稿。如何だったでしょうか。
この物語の趣旨は「何らかの形での救い」です。
各々に何らかの救いを与えてあげたい、と私は考えています。
読めば分かるように陣耶君は過去の出来事を未だに引きずっています。
一言で纏めると子供特有のバカな悩み。長く語るとホントに長くなるんで割合させて貰います。
今回の陣耶君は前半ホントネガティブ。人のこと言えなかったりします。
なのはは母性本能全開。フェイトはちょっと、ホントにちょっと子犬属性? かな?
そしてネタバレフラグ。勘のいい人・・・というか殆どの人はこの時点で気づくでしょうね。
この小説、先が読みやすいなあ・・・ ていうかネタバレしすぎだ。
さらにまさかの御神流フラグ。習得するにしろしないにしろキッツイことになるわけで・・・
さて、次回は予告通りに陣耶君に試練が降りかかります。その試練とは一体・・・!?
ふつーに行くかギャグで行くか、悩んでます。まあギャグでも大した物は書けなかったりするんですけどね。
自分、そっちの文才がないんで。
そんなこんなで少しずつ物語は進んでいきます。皆さんをあっと言わせるような展開に出来ればなーと考えていたりします。