「はやてちゃん。お風呂はいりましたよ」
「はーい」
言葉通り、風呂の準備を終えたシャマルがリビングに戻ってきた。
主――八神はやて――は今、(本人は知らないが)闇の書の呪いで両足が動かない。
なので風呂にはいるときは必ず誰かが同伴してはいるのだが、いつも共にいるヴィータは先の戦闘でのダメージが酷く現在は眠って
いる。
私も先の戦闘で傷を負っているために共に入れない。主にいらぬ心配を掛けるわけにはいかないからな。
ザフィーラなど論外だ。
となると、共に入るのは消去法でシャマルとなる。
「シグナムはどうします?」
「今日はやめておく。明日の朝に入るよ」
「お風呂好きが珍しいなあ」
「たまには、そういう日もあります」
私、いや私たちがこのように穏やかな時間を過ごせるとは思ってもみなかった―――
今まで道具や手段としてしか扱われなかった私たちを暖かく、家族として迎えてくれた人―――今の主、八神はやて。
主に対する感謝の念は、とても言葉で語り尽くせるものではない。
「ほなお先に」
「はい」
がちゃり、という音と共に扉が閉まる。
新聞の続きでも読もうかと手を動かすと、不意にザフィーラが口を開いた。
「先の戦闘か」
「―――聡いな。その通りだ」
ヴィータのこともある。ばれてはいないと思っていたのだがな。
服をめくり、実際に負った傷を見せる。
傷自体はたいしたことはなく、かすり傷程度だった。
「お前の鎧を打ち抜いたか―――」
「済んだ太刀筋だった。良き師に学んだのだろう―――」
実際、ミッドチルダの魔導師であそこまでの腕の者はそうはいない。
こんな事がなければ腕を競い合ってみたいものを―――
「だが、それでもお前は負けないだろう」
「ああ」
席を立つ。
窓から空を見上げれば、そこには爛々と輝く星々が見えた。
胸に去来するのは恐らく初めてであろう強い願い。
その願いを実現するためにも―――
「負けはしないさ。我らヴォルケンリッター、騎士の誇りに賭けて。必ず」
だが、一つだけ、私は懸念していることがある―――
あの少年。
ヴィータをあそこまで追いつめ、シャマルを恐るべき早さで見つけ出し退けた少年。
聞き及んだだけだが、それだけでもその異常性ははっきりと分かった。
当のヴィータによれば巻き込んだ民間人らしいが、私の本能が違うと告げている。
あれは敵だ。何よりも優先して倒すべき者だと―――
だが、こちらも下手に動けない以上どうすることも出来ない。
もし相見えることがあれば倒す―――それだけだ。
だが、ただただ興味本位で思う。
ここまで危機感を抱かせるその少年は、いったいどんな者なのかと。
魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜
第四章「日常と非日常」
「うわ〜、凄い凄〜い! ホントに私ん家の近所だ〜!」
「ホント?」
「うん。ほらあそこが―――」
ただいま廊下ではしゃいでいるのは高町とフェイトだ。
ヴィータ達の事件がフェイト達の担当になったのでこちらに引っ越してきたとのこと。
高町の保護もかねて高町家の近所に引っ越してきたらしい。
―――まさか翌日に越してくるとは思わなかったけどな。
俺は暇だったので手伝いに来た。
とりあえず荷物を持って奥に運ぶ。
「エイミィさん。これはどこに?」
「ああ、そこに置いてくれるかな」
「了解です」
エイミィさんに言われたとおりの場所に荷物を置く。
なにやら現代ではあり得ない近未来的なスクリーンが展開しているのはどうかと思う。
―――エイミィ・リミエッタさん。
クロノの旧友で良き相棒。クロノの仕事である執務官という仕事のサポートする執務官補佐をやっているらしい。
よくクロノをおちょくっている人だ。
それについてクロノが頭を悩ませているのはご愛敬だろう。
「ありがとう。これで最後だから後は好きにしていいよ」
「わかりました」
さて、何をするかね。
せっかくだしクロノと話でも―――
「あら、陣耶君」
「リンディさん」
廊下を歩いているとリンディさんが声をかけてきた。
時空管理局に居たときとは違って温厚な母親というイメージの服を着ている。
「今日はありがとうね。わざわざ手伝いに来てもらって」
「いいですよ。こちとら訓練を受けさせてもらうんですから」
俺の訓練についてはかなりあっさりと承諾してくれた。
あまりにもあっさりすぎたので良いのかと聞いたところ、
“優秀な人材を今のうちから管理局に引き込んでおきたいのよ”
とのこと。
まあこっちはやってもらっている側なのでそれ以上は聞かなかったが。
自分から言い出したことだし、訓練を受けさせてくれるのだから別に良いかと考えていたり。
「こんにちはー」
「来たよー」
おや、高町があらかじめ誘っておいたらしい二人が来たかな。
玄関にリンディさんと向かえば案の定、そこには我がクラスメイトにして高町の親友、月村すずかとアリサ・バニングスがそこに居
た。
「こんにちは。アリサちゃんに、すずかちゃんね」
「あっ、はい。こんにちは」
「こんにちは。・・・あれ?」
と、アリサがこちらに気づいたのか目を向けてきた。
月村も気づいたようで同じように目を向けてきた。
「・・・何でここに陣耶が居るの?」
「居ちゃ悪いのか、居ちゃ」
まあ、ついこの前まで何の接点のなかった俺がここにいたらふつう不思議がるわな。
さて、どうしたものか・・・・
高町やフェイトの友達・・・いやそこまで仲が良いわけではないので却下だ。失礼だし。
近所に越してきたので挨拶に・・・距離的に却下。
古い親戚・・・どんな関係かつっこまれたらアウトだな。
どうしようか―――ならいっそ―――
「友達だよね、陣耶君」
「へっ? あ、ああ。そうだな」
って、思わず頷いてしまったがいいのだろうか?
本人は別に気にしてない様子だし―――まあいいか。
ん? 待てよ。何か、違和感が―――
「なあ、高町」
「何かな、陣耶君」
―――これだ。
何故急に名前を?
「あっ、友達なんだからちゃんと名前で呼んでね」
「はい?」
いや、だからなにさその急展開。
いったいどうしたというんだ―――
「高町?」
訳を聞こうとしたらプイッ、とそっぽを向かれた。
とりあえず回り込んでもう一度。
「高町?」
プイッ
「おーい、高町」
プイッ
「たーかーまーちー?」
プイッ
これを繰り返すこと約10回・・・・・
「ゼィ・・、ゼィ・・、ゼィ・・」
つ、疲れる。
肉体的でなく精神的に疲れる!
なにゆえこんな仕打ちを受けなければならないのか!?
とりあえず周の人たちに答えを求めてみる。そこには―――
ニヤニヤしたアリサの顔に含み笑いをしている月村。イイ笑顔で笑っているリンディさんにキョトンとしたフェイト。
―――ああそうですかい。
最後の一人は置いておくとして他の三人の言い分が分かった。
―――いやだからそのおもしろいモノを見る目はやめて。俺沈むから。
とりあえず意を決して口を開いてみる。
「―――なのは」
「何かな、陣耶君」
今までの反応が嘘のように笑顔で返しやがった―――
それを見た俺は豪快に沈んだとさ・・・・
◇ ◇ ◇
「久しぶりだねー、ユーノ君」
「キュ、キュウ」
「あんたのことどっかで見た気がするんだけど・・・気のせいかしら」
「クゥ〜ン・・・」
そこまであらかさまに反応すると気づかれるかもだぞ、アルフや。
そしてユーノよ、お前がそんな犯罪っぽいことをしていたとは。いや、十分犯罪か。
にしても、アルフが子犬になったのは獣耳とか生えてるからまだ納得できるとして、ユーノまで小動物になるとは思わなかった。
魔法って凄いね。
現在俺たちは翠屋で昼食を取っている。
リンディさんが“せっかくだからどこかでお茶でもしてきたら”と言ったので、なのはが“それなら家のお店で”と提案したためで
ある。
お昼時の今は常連客でにぎわっているこの店。俺も密かにその一人だったりする。
あと、リンディさんはついでなので顔を出しておこうと中で高町夫妻と会話中である。
ご近所付き合いは大変だからな。不興を買うようなら近所のおばさん方の陰口アタックが待ちかまえている。
まあこの周囲だけはまかり間違ってもそんなことにはならないだろうが。
と、なにやら小包を持った男性が俺たちに近づいてきた。
俺やなのは達には見覚えがないがフェイトだけは見覚えがあったようで小包を受け取っていた。
「ねえ、あれ誰?」
「えっと、リンディさんの仕事の仲間で・・・」
ということは時空管理局員か。
渡された小包―――いったい何が入っているんだろうか?
自然とみんなの視線がそこへ行く。
「え・・・と」
「何が入っているんだろうね」
「開けてみようよ、フェイトちゃん」
みんな興味津々の様子で小包に目が行っている。
かくいう俺も中身が気になっていたりするんだが。
とりあえずみんなの言わんとしていることが分かったのか小包を開けるフェイト。
入っていたのは―――
「これって―――」
「うん」
「うちの学校の―――」
「制服だな」
そう。入っていたのは俺たちが通う聖祥小学校の制服だった。
ということは―――
「フェイトはうちの学校に通うことになるのか」
「ホント!?」
いや、目を輝かせて聞いてくるのがフェイトじゃなくてなのはってどうよ。
やたらとテンションが上がって文字通り飛び跳ねているし。
「わ、私・・・ちょっと聞いてくる―――」
未だ状況が掴めてないのかおろおろした様子で中に入っていくフェイト。
俺たちもついそれに習ってついて行く。
中では高町夫妻とリンディさんがにこやかに談笑していた。
「リンディて、・・・リンディさん」
「はい。何かしら? フェイトさん」
フェイト、もうちっと落ち着こうな? 今うっかり“リンディ提督”って言いかけただろ。
「あの、これ―――」
「ええ。入学手続き、取っといたから。週明けから、なのはさん達のクラスメイトね」
俺たちのクラスメイトって―――そこまで手が回っているのか。
時空管理局って何でもありだなと改めて実感する。
もしかしたらリンディさんがはっちゃけてるだけかもしれないが・・・
「聖祥小学校ですか! あそこは良いところですよ。なっ、なのは!」
「うん!」
なのはよ、嬉しそうに返事をするのはかまわないがそのにやけきった顔をどうにかしような?
ちょっと引くかもしれないから。
「よかったわね、フェイトちゃん」
「えと、その、あの・・・はい。ありがとう―――ございます」
よっぽど嬉しいのか顔を真っ赤にして小包をギュウッ、と抱きかかえるフェイト。
それを見て、思う。
ああ、これが俺の日常なんだ―――
あまりにも非常識なことから俺はやっと帰って来たんだと、実感した。
◇ ◇ ◇
「ねえクロノ君。よかったの?」
「何がだ? エイミィ」
「陣耶君のこと―――ろくに検査もしていないんでしょ? それにあの暴走。明らかに魔力暴走だけじゃないし」
「そうだな―――」
そう、陣耶のあの暴走はただの魔力暴走じゃない。あれはそれ以外の何かが確実に絡んで起きた全く別のモノだ。
本来なら精密な検査をした後に対処するんだが―――
「どういったことか、検査や調査についてはグレアム提督が全て免除したんだ」
「グレアム提督が―――!?」
「ああ」
あの人は温厚だが厳格な性格をしている。いくら故郷の世界の人間だからといってそう簡単に調査を怠るわけがない。
「その事を、なのはちゃん達には―――」
「言ってないよ。あれ以上追いつめるわけにもいかないだろう」
「確かにね」
それっきり沈黙が続く。
ロストロギア闇の書に、陣耶のあの異常。それが記憶のどこかに引っかかる。
―――何だ? 僕は何か大切なピースを忘れている―――?
いくら考えてもそれは出てこなくて―――
「グレアム提督。あなたは何を知って、何を考えているんですか―――?」
問いかけに、返ってくる返事はない。
◇ ◇ ◇
「じゃあね〜」
「また月曜日に会いましょう」
「うん。それじゃあ―――」
「またね、みんな」
「ああ。また学校で」
とは言っても、なのはとはまた明日会うけどな。
とりあえず俺は家、というかマンションの一室に帰ろうとしているんだが―――
「・・・何で付いてくるんですか?」
「陣耶君のお家も、いざという時のためにどこか確認しておきたくって」
「さいですか」
そう。リンディさんにフェイト、そしてアルフが俺に付いてきている。
理由が理由なので文句もないが別段特別な物もないのであまりもてなしが出来ないのである。
「あまりもてなしは出来ませんよ」
「いいわよそんなの。ただお茶を用意してくれたらなー、って」
「って最初っからたかる気ですか!!」
ぬ、抜け目のない。
この人はこれから先様々な意味での強敵になりそうな予感がする・・・
「ジンヤって確か一人暮らしなんだよね。寂しくない?」
「・・・まあな」
確かに、寂しくないと言えば嘘になる。
俺にはもう居ない両親。得ることが出来なかった兄弟。それに憧れてもいる。
けど、毎日が充実しているし学校も楽しい。
それに―――
「けど、今はフェイトやなのはっていう友達がいるからな。大丈夫さ」
「―――ありがとう」
「っと、見えたぞ」
目の前には20階建てのマンションがそびえ立っていた。
そのマンションこそ俺が住むベオパレス20。全20階建て、家具を完備し駅も非常に近く、会社に通勤している人に人気のマンション
だ。
その15階に俺の部屋はあり、夜の眺めは中々の物である。
ガラス張りのドアをくぐり、暗証番号を入力して自動ドアを開ける。
ちょうどエレベーターが止まっていたのでそれに乗り込んだ。
「中々いいところに住んでるんだね、アンタ」
「まあ、親と一緒に住んでいたところだしな。お、着いた」
チーンという音と共にドアが開く。
ドアを出た先のすぐ目の前の部屋が俺の部屋だ。
鍵を開けて玄関に入る―――と
「ん? 靴?」
「ジンヤって確か一人暮らし―――だよね?」
靴が三セット・・・
ちょっと待て、まさか・・・・
猛烈にイヤな予感がして冷や汗が背中をダラダラと流れる。
こんなに唐突に訪れる三人組なんてあの人達しか思い浮かばない・・・
「こ、こんな時に・・・」
「知り合い?」
「ああ。たぶんあの人達だろう・・・」
フェイト達のことをどう説明するか・・・
とりあえずリビングに行くと―――
「お〜う。遅かったじゃないかジンやん」
「久しぶりね。お邪魔させて貰ってるわ」
「突然すまないね陣耶君。お邪魔させて貰ってるよ」
暢気に茶をすする姉妹とご老人が居た。
ていうか、やっぱり予想通りの人物達だったわけで―――
「久しぶり。ロッテ、アリア、グレアムさん」
「元気してたか〜?」
暢気に返してくるのは俺の格闘技の師匠であるロッテ。
「聞いたわよ、魔力暴走ですってね。大丈夫?」
落ち着いた感じで返してくるのは俺の姉代わりでもあるアリ―――
「って、ちょっと待て」
アリア、今何と?
「グレアム提督!?」
なんかお客さんはグレアムさん見てビックリしているし・・・
ああ、今度は何なんだろう・・・・・
◇ ◇ ◇
「・・・マジすか」
「至ってマジです」
ロッテ、アリア、グレアムさんの口から語られた“自分たちも管理局員だ”という事実。
あまり信じたくはないんだがロッテとアリアの獣耳と尻尾を見れば信じるしかない。
何で俺の周りってこんな人たちばっかなんだろう・・・
「一つ確認ついでの質問を。グレアムさん達は俺のことは・・・」
「知っていたよ」
やっぱりか。
「何で黙っていたんですか」
「君をこちら側に巻き込みたくなかったからだ」
「まったく・・・」
そうやってこっちの事を考えてくれるのはありがたいが急に直面するような事態も困るんですけど?
「今まで黙ってすまない。謝罪させて貰うよ」
「いいですよ。こちとら仕送りして貰っているんですからあまり大きく物を言えませんしね」
俺の方はこれでいい。
問題は・・・
「いったいこれは・・・どういう事なんでしょうか?」
「さっぱりだ・・・」
後ろでぼーぜんとしている奴らだな。
とりあえず俺とグレアムさん達との関係の説明かな。
「簡単に言うとだな、グレアムさん達は俺に仕送りをしてくれているんだ」
「・・・確かに簡単だね」
だってそれ以上言いようがないし。
俺はグレアムさんがそっちのお偉いさんだという事に驚いたがな。
「えっと、いつからでしょうか・・・?」
「ふむ、四年ほど前からだね。休みが出来たらちょくちょく顔を出していたよ」
「そ、そうですか・・・」
なんかリンディさんも苦笑いだな。
具体的には“そんな事していたなんて・・・”みたいな。
その気持ちすっごくわかる! 立場が逆だけど。
「それで、今日は何のようで?」
「勿論! カワイイ弟子が心配で―――」
「お前は茶菓子をたかりに来ただけだろう」
なにやらブーブー言っているが無視。
話が出来そうなアリアとグレアムさんに尋ねてみる。
「それで、何のようで来たんですか?」
「うむ。聞けば陣耶君は奴らと戦うそうだね。そのために魔導師としての訓練を受けさせてほしいと」
「はい」
あいつらと出会う事で動き出した俺の中のナニか。
それを確かめるために俺は戦いに身を投じる。
何よりも、自分自身のために。
「だが、急な付け焼き刃の訓練ではまともに戦える筈がない」
「・・・」
やっぱり、そう簡単にはいかないか。
それでも―――
「なので、こちらはそれをある程度補う物を用意してきた」
「は?」
ちょ、グレアムさん?
そこまでしてくれるなんて・・・素晴らしく予想外なんですが?
グレアムさんはなにやら懐をゴソゴソと探ると琥珀色をした菱形の宝石を取り出した。
それは、なのはやフェイトの持つ物と同種の物のように感じられた。
「これは―――」
「グレアム提督。まさかこれは―――」
「―――デバイス」
―――デバイス。
俺の知る限りでは魔法発動の補助となる物。
様々な奇跡を呼び起こす事が出来る魔導師の、唯一無二の武器。
「探したところ、余っているのがこれしか無くてね。最近管理局ではミッド式を織り込む事でベルカ式を使いやすくした近代ベルカ式
を研究していて、これはその試作機だ」
「これが―――」
というか良いのだろうか。そんなに簡単にデバイス渡して・・・
「いいんですか? そんなに簡単にデバイスを渡して」
「君の質問はもっともだ。だが私は君ならこの力を正しく使ってくれると信じている。だからこそ君に渡すのだよ」
「―――」
正しく使う―――か。
何が正しいか何て分からないが、それなら俺は俺なりの“正しさ”ってやつを貫くためにこの力を振るおう。
「―――ありがとうございます」
「これはアームドデバイスだがデータ収集も兼ねていてデータ収集用のAIが積んである。まあこれは分類上インテリジェントデバイス
ということになるね」
「インテリ・・・?」
ぬぬ、またしても聞き慣れない単語が・・・
「私のバルディッシュやなのはのレイジングハートの様に自分の意志を持っているデバイスのことだよ」
「てことは、デバイスって全部が全部喋ったりするんじゃないんだ?」
「そうなるね」
また一つ勉強になりましたフェイトさん。俺もまだまだ勉強不足だな。
お。そういえば、こいつの名前って何だろう。
「あの、グレアムさん。こいつの名前って・・・?」
「名はまだ無い。なので君が付けてやってくれないか。ちなみに形状は剣だ」
俺が?
剣の名前か・・・
「良いと思うよ。これから一緒にいる相棒なんだから、大切にしてあげないと」
「ふむ・・・」
となると重要だな。
どうせだったらかっこいい名前を付けてやりたいしな。どんな名前が良いだろう・・・
頭をひねって考えてみる・・・
「ぬ〜〜〜〜〜」
「ジンヤ? 何か体から湯気のような物が出てるけど・・・?」
そんなの無視だ無視。
今俺は相棒の名前を考えるのに忙しいの!
「ああ! 更に出る量が増えた!?」
「ちょ、何さこれ!?」
ぬぬぬ・・・・おお、そうだ!! 良いのが一つ!!
「よし! クラウソラスでどうだ!!」
「クラウソラス?」
「ああ。ケルト神話に出てくる聖剣でな、曰く不敗の剣だそうだ」
「そんなのがあるんだ」
よくラノベで伝説とか出てくるから調べている内に伝記に関するそれなりの知識を蓄えた。
ラノベ読者をなめるな。
とりあえず手のひらにある俺のデバイス――クラウソラスに語りかける。
「ということだ。これからよろしく頼むな、クラウソラス」
応えはないが、代わりに宝石がきらめいたような気がした。
こうして、俺は非日常への第一歩を踏み出した。
その先にある未来は―――まだ見えない。
Next「起動」
新たな力をその手に―――ドライブ・イグニッション!
後書き
皆さんこんにちは。現在色々とピンチなツルギです。
いきなりパソコンがバグって今までのデータが全てパア。一からOSを入れ直しています・・・orz
更に現在個人的な事情で執筆速度が落ちていて投稿が遅くなりそうです。お話を待っていてくれてる方々、本当に申し訳ありません。
それでも一週〜二週の間には話を投稿したいと思っております!!
それでは、とうとう陣耶君のデバイス登場。名前は「クラウソラス」で。
形状はFateに出てくるエクスカリバーの鍔なしVer。柄にそのまま刀身が引っ付いているような代物です。
あと陣耶君の魔力暴走、あれはやっぱり「アレ」の仕業な訳で・・・それについてクロノは何か知っている?
それと「ラノベ読者をなめるな」というセリフ。とあるゲームに出てくるセリフなんですが・・・分かる人居たかな?
そして次回はいよいよパワーアップしたレイジングハートとバルディッシュが登場!!
戦闘がうまく書けるかどうかおっかなびっくりしています・・・
それではまた次回の投稿で―――