「フェイトさんはリンカーコアに酷いダメージを受けているけど、命に別状は無いそうよ」
「私の時と、同じですね」
あの戦闘の後、俺たちは試験航行中のアースラに運良く拾われた。
そのおかげでフェイトの処置も素早く行うことができたので、別段心配することもないだろう。
「アースラが稼働中でよかった。なのはの時以上に救援に駆けつけられたから」
「だね」
「早く救援が来た分、フェイトの治りも早いはずだ」
何だかんだあったがとりあえずは無事に―――とは言い難いが、それでもみんなこうしてここに居る。
それだけでも十分だろう。
「みんなが出発してすぐにこっちのシステムにクラッキングがかけられて・・・殆どのシステムは落ちちゃうし」
「けどおかしいわね。向こうのシステムも管理局と同じ物の筈なのに、それを外部からクラッキングできる人間なんているも
のかしら」
「そうなんですよ。隔壁もセキュリティも、全部素通りしていきなりシステムを落とすなんて・・・」
「全て素通り・・・・?」
それで大丈夫なのか管理局。
いくらなんでもそれは問題があるだろう。
いや、それとも―――
「陣耶くん?」
「ん? ああ、何だなのは」
「いや、何か深刻な顔をしていたものだから・・・」
「何か気付いたのかしら?」
いや、全く答えは出ていないもので。
とりあえずこれから司令部はア−スラになるそうだ。
俺となのはは学校や家の事情があるので帰ることになった。数日もすればフェイトも顔を出すという。
それじゃ、つかの間の日常を満喫しますか。
魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜
第十一章「とある日」
とある日 〜皇陣耶の場合〜
あれから数日、フェイトもまた学校に顔を出すようになって俺たちはすっかりと日常を取り戻していた。
そんなある日のこと―――
「ねえ、一度陣耶くんの家を見てみたいな」
「なぬ?」
言い出したのはなのは。
そこに―――
「ああ、普段こいつがどんな暮らしをしているのかっていうのは興味あるわね」
「陣耶くんとはほとんど遊んだことが無いしね」
と二人が便乗してくるものだから―――
「結構色々あったよ。アニメとかゲームとかパソコンとか本とか―――」
「へー」
「結構遊べそうね」
「というより、二人っきりで遊んだんだ」
「違う違う、リンディさんも居たっての。どんな想像したんだお前」
「ふふふ、秘密」
この前内に来たフェイトがぽろっと洩らしたので皆が俺の家に来ることに。
というよりすずかよ。お前本当に何を想像してたんだ?
そんな訳で今日は訓練もお休み。
俺は部屋をせっせと片づけている。
とはいっても、基本的には散らかさんからちょっとした整理整頓だけで済む。
ちょうど片付けが終わってお茶を飲んでいるとピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
来客を知らせるそれを聞いた俺は腰を上げて玄関まで出迎える。
「よう、来たか」
「こんにちはー」
「おじゃましまーす」
「おじゃまします」
「えと、おじゃまします・・」
なのはとフェイトは何も持ってはいなかったが、アリサとすずかはこのあと塾でもあるのか、手提げ鞄を持っていた。
「まあ、とりあえず上がれ」
とりあえずリビングに客人を通してお茶を出す。
何? ジュースは無いのかって?
俺は基本お茶と牛乳しか買わないのだよ。
「さて、家に来たのは良いが何するんだ?」
「当然、あんたの家にある物で遊ばせて貰うわよ。想像してたよりも色々ありそうだし」
「ま、好きにしろ」
という事で俺の家の物色タイムが始まった。
別に見られて困るものがある訳でもないので俺は気にしてない。
「あー、これお姉ちゃんがたまにやっているものだー」
「えー、どれどれ・・・」
すずかが見ていたのはかの有名なカードゲーム、「遊○王」。
大人から子供まで幅広い世代の人たちが楽しんでいる世界的なカードゲームの一つである。
ちなみに俺は県内大会までなら行った事がある。
ん? そういえばすずかの名字は―――
「ほう、すずか。お前の姉の名前は何ぞや?」
「忍って言うんだよ。なのはちゃんのお兄さん、恭也さんの恋人なんだ」
「へー。やっぱり紫色の髪で長髪?」
「うん」
そうか、たぶんあの人だ。
月村忍。県内大会で俺が戦い負けた相手。あれは結構悔しかった。
まさかこんな身近にいたとは。
というより恭也さん。あんた忍さんと恋人だったとは・・・世の中って狭い。
まだ憶測ですがね。
「何だったらやってみるか?」
「いいの?」
「ああ。ルールは知らなかったら教えてやるしデッキなら貸してやる」
「ありがとー」
ということでなし崩し的にみんなで遊○王をすることになった。
みんな呑み込みが早いんだが・・・特になのはが凄まじかった。
軽くルール説明しただけでもうデッキ組み始めたし。さらに四人の中では負けなしという成績。恐ろしい・・・
続いてテレビゲーム。
お題は「大乱闘」。
最初はフェイトは見学という事になった。俺らの世界のゲームを知る訳ないしな。
ここでもなのはが凄まじかった。巧くフェイントを決めてスマッシュや必殺技で盛大に叩き潰す。
こいつもしや・・・・重度のゲーマーか?
俺は特にやることもなかったのでこれを極めた。しかしそれでも手強い。
最後は大体俺となのはの独壇場になっていた。
一戦目
俺:スネーク なのは:ピカチュウ アリサ:ゼルダ すずか:Mr.ゲームウォッチ
「陣くんの・・・・バカアアアアアアアア!!」
「体格的には似ているが違うぞそれ!?」
必殺をガードされてスマッシュでKO。
二戦目
俺:ドンキーコング なのは:アイスクライマー フェイト:リンク アリサ:サムス
「すでにチェックメイトなんだよ」
「ああ!?」
スマッシュ撃った後にメテオの追撃でKO。
最終戦
俺:ガノンドロフ なのは:キャプテンファルコン アリサ:ルカリオ すずか:ネス
「ディバイーン―――」
「シェルブリット―――」
「バスター!!」「バーストォ!!」
必殺技の相殺。結果は引き分け。
これでは独壇場が過ぎるので他の物に転換。
お次は―――
「何故人生ゲーム?」
「これだと単純に運の勝負になるだろ?」
別に戦略とか考える必要ないのです。
フェイトへの簡単なルール説明も終えて早速スタート。
結果―――
「にゃはははは」
「ざ、惨敗・・・・・」
「50億とか・・・・・ありえん」
「なのは凄いね!」
あんたのその強運スキルはいったいどこから来るんだ・・・・?
それからもうしばらく遊んでもう帰る時間になった。
個人個人で興味のいった物を貸し出したので大変満足している様子。
「おじゃましましたー」
「おーう。じゃ、また学校で」
こんな感じで俺の日常は過ぎていく―――
とある日 〜高町なのはの場合〜
今日は日曜日。ということで、翠屋にはお客様がいっぱいです。
私は特に用事もないので、今日は久しぶりにお店の手伝いをしています。
そんなお客様の中に珍しい人を見つけました。
「あ、陣耶くん」
「ああ、なのはか」
皇陣耶くん。ここ最近できた新しい友達。
ひょんな事から魔法が関わっている事件に巻き込まれて、その経緯で友達になった人。
「珍しいね、陣耶君がお店に来るって」
「結構ここには来ているんだがな・・・なのはは今日は手伝いか?」
「そうだけど・・・陣耶くん、今日はお客様?」
「ああ。ちょっとここのお菓子が恋しくなってな」
ふーん、そうなんだー。お母さんのお菓子はおいしいからね。
それじゃあ店員らしくエスコートしないとね。
「それじゃあ―――いらっしゃいませ。席はあちらが空いていますので、どうぞ」
「ん。ありがと」
席に案内してお冷を渡し、注文を聞く。
うーん、友達相手にこれはちょっと恥ずかしいかも。
「んー、それじゃあこの“翠屋特性シュークリーム”で」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
注文を受け取った私は厨房まで行ってお客様の注文を伝える。
「翠屋特性シュークリームお願いしまーす」
「はーい。そこにあるからお願いねー」
見ればシュークリームが入れてあるバスケットが幾つかあった。
翠屋特性シュークリーム。
その名の通り翠屋の特性シュークリームで製作者はお母さん。
この翠屋の目玉商品でもあって大変な人気があるのです。
連日売り切れが勃発して、娘としてはとても鼻が高いのです。
シュークリームを持って戻ってきたら、そこにはお冷をすすって外を眺めている陣耶くん。
その眼は―――
「―――!」
何か、ひどく無機質なものを感じて。
そんな不安を打ち消すように、私は陣耶くんに話しかけた。
「お待たせしました。ご注文の品です」
「ありがと。それにしても似合ってるなー。さすがは料理屋の娘、と言ったところか」
「にゃはは、買いかぶりだって」
「いやいや、謙遜謙遜」
こうして話していると、さっきの事が何かの幻のようにさえ思えてくる。
けど―――
いや、今はやめておこう。
私が知っている陣耶くんは、こんなに明るい人なんだから。
今は―――それだけで十分。
カランカラン
と、お店のドアが開けられた。
そこにいたのはまたもや意外な人物―――というか、素晴らしい偶然だったわけで。
「わー! みんなどうしたの」
「お昼どこで食べようかなーって思って」
「ここなら文句無しにおいしいし」
「うん。あれ? ジンヤ?」
「そうそう。今日は陣耶くんが来てるの」
そこにみんなが来るんだから凄い偶然だなー。
「へえ。それじゃあ席はあそこで良いわね」
「え、アリサ。それじゃあジンヤに迷惑なんじゃ・・・」
「えっと、私聞いてくるね」
さすがに本人の承諾なしはマズイと思うので陣耶くんのところに戻る。
陣耶くんといえばやっぱりあらぬ方向を眺めている訳で―――
「陣耶くん」
「ん? 何だ?」
普段通りの陣耶くん。けど、それが無理に振る舞っているんじゃないかと心配になる。
「何か悩みがあるなら、遠慮なく言ってね」
「・・・別に、悩みというほどの物でもないさ。ありがとうな」
「・・・ううん。ただ、無理はしないでね」
「ああ。ところで・・・・」
「?」
「その後ろにいるニヤニヤしているそいつをどうにかして貰えないだろうか」
言われて後ろを見れば―――
「あ、アリサちゃん!?」
「ふーん。あんた達いつの間にそんな関係になったの」
「ふぇ? そんな関係って?」
何か壮絶に嫌な予感がするのですが。
止めないといけないと思っているのに体がアリサちゃんから発せられる妙なプレッシャーで動きません。
陣耶くんも同じなのか冷や汗をダラダラと掻いています。
「そりゃあ、陣耶となのはが恋人―――」
「ふぇ?」
「―――終わった」
・・・どこをどう取ったらそんな風に見えるのかな?
あと陣耶くん、何が―――
と振り向いた瞬間、陣耶くんは視界から消えていました。
ふと見ればテーブルには書置きが。
なのはへ
突然だが陣耶くんは今から俺が稽古をつける。
料金の方はツケにしておいてやってくれ。
恭也
『・・・・・・』
何とも言えない沈黙。
とりあえず私にできる事といえば、いつかのように陣耶くんが無事であるよう祈るだけでした・・・・・
とある日 〜フェイト・テスタロッサの場合〜
今日はジンヤの訓練に付き合う事になった。
クロノ曰く、“あいつは実戦の方が覚えが早い。だから手加減は無用だ”とのこと。
実はジンヤと戦うのは初めてなのでちょっと楽しみだったりする。
場所はいつかの様な砂漠。
そこで向かい合って、私たちは立っていた。
「それじゃあ、始めてくれちゃって良いよー」
「いくよ、ジンヤ」
「来い、フェイト」
地を蹴ったのはほぼ同時。互いに戦闘手段は近接戦闘が主。
次の瞬間には、互いに剣をぶつけ合っていた。
「重い―――ね。本当に、ついこの前に剣を始めた素人には思えない」
「それについては俺も驚いているよ。まあ、やっぱり女の子には負けたくないっていうのが男の子だろ?」
『Beast Saber』
「!」
急な爆発で視界が遮られる。
それと同時に、ジンヤの姿も見失った。
「それじゃあいくぞ。バーストセイバーの改良版―――!」
右側からカートリッジをロードする音が聞こえた。
左側にダッシュして回避を試みる。
バーストセイバーは近接型の魔法。距離さえ取れば―――!
『Blast Saber』
だが、そんな考えは甘かった。
届かない、と思っていた私に白銀の刃が飛び出してくる!
だが、それでもジンヤの姿が見えない。刃だけが伸びている様に見える。
「くっ」
かわせないと判断した私は咄嗟にバルディッシュで防御する。
けれど防いだ瞬間―――
ドゴァッ
「うあ!」
く、予想通り爆発した。
今の爆発で視界を遮っていた砂塵は吹き飛ばされた。
そして戻った視界の中には悠然とたたずむジンヤ。
「ビックリしたよ。まさか魔力で刀身を伸ばすなんて」
「ああ。これなら込める魔力量で中距離くらいまでなら攻撃できる。近くで俺が巻き込まれる心配もないしな。
防御用のバースト、攻撃用のブラストといった所だ」
「―――凄いね。戦闘センスは一級品だ」
「こんなんで驚かれちゃ困るな。まだ二つ三つ新型があるんだから」
楽しい―――
シグナムやクロノ、なのはと戦っている時もこんな気持ちになった。
強い―――
本当に、ついこの前に魔法を知ったとは思えない程に。
だから―――
「私も、本気でいかせて貰うよ!!」
「上等。勝負だ、フェイト・テスタロッサ!!」
魔力弾を形成する。
ジンヤも真っ向から立ち向かう気なのか、同じ数だけ魔力弾を形成した。
『Plasma Lancer』
「プラズマランサー・・・」
『Astolor Arrow』
「アストラルアロー・・・」
互いに魔力が高まる。
別段この攻撃には牽制程度の意味しかない。いや、相手が相殺してこようとしている時点でその意味すらない。
ならなぜ打ち合うのか・・・答えはただの意地だ。
負けるのは嫌だ、勝ちたい。それだけの意地。
求める物は勝利。相手を超えての勝利。
だからこそ、私たちは真っ向から戦うのだ。
「ファイア!!」「シュート!!」
打ち出されるのは雷の槍と白銀の矢。
それは互いに衝突しながら一つの例外もなく消滅していく。
その時に舞い散る粒子はいっそ幻想的とも言えた。
その真っ只中を―――駆け抜ける。
『Haken form』
『Edge form』
「はあああ!」
「おおおお!」
鎌と大太刀がぶつかり合う。
もともと打ち合うための形態ではないハーケンフォームでは不利は必至。
当然、いったん距離を取る。
けど、ジンヤはそこで次の手を打ってきた。
風が、ジンヤの手に集まる。
「吹き荒れろ―――!!」
『Storm bind』
ジンヤを中心にして突風が吹き荒れる。
いや、これはまさに嵐と言った方が正しい。
とにかく、これではまともに視界が働かない上に動きづらい。
この嵐から―――!?
「う、動けない!?」
「そうそう。このストームバインドは文字通り、この嵐で相手を拘束する不可視のバインドだ。
気づいた時にはもう動けない。大量の相手を巻き込めるのはいいが持続時間の短さが傷なんだな」
という事で、と言って私の頭上に魔力が収束していくのを感じる。
これは―――ジンヤの持つ大技、ブレイクガスト!
この収束量ならかなりの威力になる。どうにかして―――
「ブレイクガスト!!」
『Brake Gasut』
けれど、拘束を打ち破る前にジンヤの魔法は放たれる。
くっ、かわしきれないなら少しでも防御を―――!!
私の意志に呼応して、カートリッジがロードされる。
『Defensor Plus』
魔力が迫る方向から命中個所を予測、そこに防御を集中させて―――!
「くう!」
く、視界が働かない以上ある程度防御が曖昧になってしまう。
予測と少しずれた位置に降って来た攻撃は、私の薄い防御を容赦なく削っていく。
「ああ!」
防御が破られる。だけどそれは私の左腕を掠める程度に止めることができた。
完全に逸らすことは出来なかったけど、それでも直撃だけはどうにか免れた。
けれど、防御した時の反動で地面へと落下する―――
その最中、視界に映るのは追撃に迫るジンヤの姿。
体の方は―――動く。あの嵐も消えている。
持続時間が短いというのは確かなようだ。
空中で体勢を立て直して迎撃に入る。
「おおおおお!!」
「はああああ!!」
そして、互いの剣が交錯した―――
◇ ◇ ◇
「かーっ、負けかーー。どれだけ奇策を講じてもやっぱ物を言うのは経験か」
「でも凄かったよ。もう私たちのレベルに追い着きそう」
「ホントか?」
「うん」
実際に戦ってみて初めて分かるものだけど、ジンヤの成長速度は凄まじい。
まるで―――半年前のなのはを見ているみたいだ。
なのはも最初は戦う術を持たない、魔力が高いだけの普通の女の子だった。
それが―――僅か一カ月足らずで自分と互角に渡り合えるまでに成長した。
いつかジンヤも、私と互角に戦えるようになるのかな。
「―――ありがとうな、フェイト」
「どうしたの? 急に」
「考えたらお前らに色々と世話になりっぱなしなんだよな、俺は。そのお礼」
確かにそうだけど・・・民間協力者ってそんな物だよ?
自分ばかりがお世話になって申し訳が無い、っていうその気持ちは分かるけど。
「その割には全く恩が返せていないんだよなー」
「恩って・・・・」
何か大げさな気がしないでもないけど。
「んー、じゃあ今度みんなで俺の家にでも来るか? 飯くらいならご馳走できるが」
「そういえば、ジンヤって料理できるんだね」
「伊達に一人暮らしはしていないと言っておく」
「あはははは」
―――楽しいな。
ついこの前までは、こんな風に誰かと話せるなんて思いもしなかった。思っても、なのはだけだった。
それが、今ではこんなに話す事が出来ている。
なのはに出会って、アリサとすずかを知って、そしてジンヤにも出会った。
だからこそ、今の私がいるんだ。
母さんが居なくなったことは辛い―――
けれど、今の私にはこんなにも素敵な友達がいる。
だから、こんなにも笑顔をくれる、あなた達に感謝を―――
「ジンヤ」
「ん?」
「ありがとう」
◇ ◇ ◇
「さて、では今日も行きますか」
『はーい』
学校の下校中、俺の呼びかけに四人の少女は元気に答える。
ここで言う行きますか、とは病院の事だ。
何? 診察にでも行くのかって?
違う違う。今回はお見舞いだ、お見舞い。
数日前にすずかの友達が入院したと言うのでそのお見舞いなのだ。
名前は八神はやて。ちょっとした検査で只今入院中とのこと。ついでに足が動かないらしい。
おっとりとした関西弁を喋る大人しい女の子なんだが・・・・・なんだろう。
後々あいつには振り回されそうな気がする。
初対面でもなんて言うか・・・芸人気質? を感じたし。
そんなこんなで、俺たちは暇さえあればほとんどはやてのお見舞いに行っている。
「さて、こんにちはーっと」
「ああ、こんにちは」
ドアを開ければおっとりとした関西弁交じりの返事が聞こえた。
はやてである。
「こんにちは、みんな」
「えへへ、また来ちゃった」
「今日はね―――」
毎度のごとくトークタイムに入っていく。
会話はごく単純なもので学校での話だ。
病室で一人きりのはやてには、こんな些細な話題でも会話のネタにはもってこいだろう。
けれど―――時折、どうしようもなく嫌な感じがする。
はやてからではない。だが、俺の中の何かが最大警鐘を時折鳴らして、強迫概念にも似た衝動が湧き上がる事がある。
コレハ危険ダ
破壊セヨ―――
なぜ、そんな事を思うのかなんて分らない。
言えることがあるとすれば―――この少女も何らかの形で、それも重要な部分で関わっているのだろうという事。
みんなと変わらない無垢な少女、八神はやて。
予感はある。それも最悪な形での、予感。
だけど、今はこの日常に浸りたい。
日常というものは、失ってから初めて分かるものだから―――
歯車は加速する。
長い長い時間をかけて、二つの歯車は再び噛み合った。
その歯車の行き着く先は―――誰にも分らない。
終局に向けて、さらに歯車は加速する。
クルクルカラカラ、廻り続ける―――
Next「終りの始まり」
終末を告げるのは慟哭の叫びか、憎悪の言葉か。そして、二人は対峙する―――
後書き
やっとここまで来たーーーー!!
次回から物語もラストスパート! 手に汗握・・・らないか。自分の力量じゃ。
とにかく次回でとうとう彼女も登場! 一時期スランプに陥りかけたけどこのまま突っ走ります!!
そんでやっぱりフォントは戻しましたw こっちの方が慣れてるので・・・
あと大乱闘の時のネタ分かった人挙手ーーー(^o^)丿シ
さて、では最後に前回、そして今回出てきた陣耶くんの魔法についての解説を―――
ブレイクエッジ
クラウソラスの第二形態、エッジフォームから繰り出される防御破壊攻撃。基本的にはアルフのバリアブレイクの斬撃版。
ただし、陣耶の場合割り込みの速度が尋常じゃない。大抵の魔導師のバリアなら触れた瞬間に破壊できる。
ブラストセイバー
バーストセイバーの改良版。カートリッジを使用することによって魔力刃の形成と爆発の際の威力向上を図っている。
込める魔力量によって攻撃範囲が変わる。最大攻撃範囲は自身を中心とした半径50m。
なお、魔力刃で攻撃するため必要以上に相手に接近する必要がなく、爆発の巻き添えを受けるという欠点も解消されている。
ストームバインド
魔力による疑似的な嵐を起こし、それをバインドとする拘束魔法。
自身を中心とした半径100mまで嵐をおこす事ができ、さらに敵を引き寄せる効果もあるので一対多数の戦闘ではもってこいの魔法である。
ただし効果持続時間が短いのが欠点。それでも魔力をそれなりに収束させるだけの暇はある。