「邪魔するなら、一般人でも容赦しねぇぞ」
なんで俺こんな状況に陥ってんの・・・・?
俺の後ろにはいかにも魔法少女な格好をしたクラスメイト。そして眼前には外見に似つかわしくない物騒なハンマーを俺に突きつけている紅い少女。
「何で・・・ここに?」
「色々と質問したいのはこっちなんだが・・・・・」
それにしても、この非現実的な状況がどういったことなのかを俺として説明して欲しいんですがね・・・?
―――これは、一つの可能性の話。
一人の少年とあり得るはずのないモノが紡ぐ可能性のオハナシ。
魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜
始まります―――
魔法少女リリカルなのはA’s 〜もう一つの魔導書〜
プロローグ「遭遇」
「きりーつ。礼ーーー」
『さようならーーーー』
ザワザワとざわめく教室の中、鞄を持って帰路につく。
俺の名前は皇 陣耶(すめらぎ じんや)。私立聖祥大附属小学校に通う三年生だ。
成績中の上、運動神経が良いのが自慢のどこにでもいる男の子・・・なんだが、両親は数年前に他界。
現在は親戚の人に仕送りをして貰って生活している。
一人暮らしの所為か、色々と冷めてたりするのが悩み。
もっとはっちゃけたいのだが家の事情が許してはくれないのだった。
「家に帰ったら洗濯に掃除、夕飯の調理・・・いい加減なれたけど鬱だなぁ」
こぼしても仕方のない溜息を吐く。
さって、今日の晩飯は何にしようかなっと―――
◇ ◇ ◇
「む。もう醤油とタマネギが切れるか・・・」
現在の時刻は午後七時。
この時期はもうすっかり日が落ちている時間だ。
タマネギはともかく、醤油は大切な調味料なので買いに行かねばな。
早速財布と買い物袋を持ち、上着を着てレッツゴー。
俺の家は学校からは結構遠く、よくバス通いしている。
帰りは体を動かすためにランニング。
結構ハードなので嫌でも体力がついた。
スーパーまでの道には喫茶翠屋がある。
クラスでも人気の女の子、高町なのはの家が営業している喫茶店だ。
そこの菓子類がもううまいのなんのって。絶品過ぎてほっぺたが落ちるぐらいだ。
ついでなので何か買って帰ろうと思って―――足を止めた。
「―――人が、居ない?」
この時間帯ならここは結構騒がしい筈なんだが。
明かりはついていても、人はいないし車も通らない。
まさかと思いつつ翠屋を覗くとやはり誰もいない。
すると、近くから桜色の光が天に向かって伸びた。
続いて光が出たところから凄まじい爆音。
「なっ、なんなんだ一体?!」
俺の知らない間に海鳴で催し物でも開かれたのか!?
いや、それにしては騒ぎがなさ過ぎるし・・・・・
とにかく、ビルに入って状況確認を―――
◇ ◇ ◇
なんだろうね、この光景は。
ソレを見ての最初の感想がこれである。
いや、女の子二人が空飛んでるんですよ? 火花撒き散らしてるんですよ?
驚きのあまりフリーズしないだけマシなのである。
白い女の子はバリアみたいな物で紅い女の子の攻撃を防いでいるのか。やや押され気味だが。
あっ。白い女の子が吹っ飛ばされた。
そのままこっちに――――――って、ええええええええええ?!
「ちょっ、マジで!?」
いくら焦っても時間は待ってくれない。
そのまま窓をブチ破って吹っ飛ばされてきた女の子を―――庇って勢いのまま壁にぶつかった。
「!?」
「づぅっ! 〜〜〜〜〜〜ってーな。くそ」
壁にぶつかった衝撃で色々と吐き出しそうになる。
それを押さえて、庇った女の子の無事を確認する。
「大丈夫か、ってお前。まさか高町か?」
「ふぇ? あれ、君は―――」
ビックリだ。何がビックリかって言うとクラスメイトがこんな非現実的なことに関わっていたことが、だ。
とりあえず立ち上がろうとして―――ん?
あれは―――!?
「てりゃああああああああ!!」
「ぬあっ!? 危ね!?」
「きゃあ!?」
先程高町を吹っ飛ばしたと思わしき女の子がハンマーを持ってつっこんで来やがった!
俺は高町を抱えたまま横に転がって攻撃を回避する。
次いで、凄まじい爆音。
紅い女の子がハンマーを叩きおろした場所には少々でかいクレーターが出来上がっていた。
うわっ、危ねえ〜。あのままあそこに居たら俺今頃確実にミンチだな・・・・・
「テメェ、そいつの仲間か」
大いな誤解をして俺にハンマーを突きつけてくる女の子。
とりあえずその物騒なブツを仕舞ってくれるとありがたいんだが。
こっちは何が何だか訳解らん状況なのである。状況説明を求めたい。
「邪魔すんなら、一般人でも容赦しねえぞ」
ワオ。何か素敵な言葉を吐いてくれやがってますよこの子。
俺としては高町連れてとっととトンズラしたいんだが・・・
「何で・・・ここに?」
「色々と質問したいのはこっちなんだが・・・・・」
息も絶え絶えに聞いてくる高町。
そもそも、それは俺が聞きたいくらいだよ。ホント。
それはともかくとして、
「何でこいつを襲う」
「そいつの魔力が欲しいからだ」
魔力って・・・
何やらファンタジックな単語が出て来たね?
ハハハ、この調子なら“実はこの街には魔法使いが何人も住んでいます”なんてオチもありそうだ。
「理由は?」
「言う必要はねえ」
「そうかい」
話し合いは無理、か。どうすっか。
とりあえず戦いだけには持ち込みたくないんだけど、そうも言ってられないしなあ。
「見逃しては?」
「やるとでも?」
交渉失敗。ダメダコリャ。
しかたない。どこまでやれるかは解らないけど―――
「とりあえず、クラスメイトが襲われているのを黙ってみているわけにはいかないし」
「―――やんのか?」
目の前の女の子がハンマーを構える。
俺も、構えを取る。
「! 無茶だよ!!」
後ろで高町が何か言っているが、聞こえない。
「言っとくが、手加減はしねえぞ」
「上等だ。私立聖祥大附属小学校三年、皇陣耶―――」
「ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵、グラーフアイゼン―――」
緊張が高まる。
相手は格上。実力では遠く及ばない。
ならば狙うは、捨て身覚悟の一撃必殺。
集中しろ。
後はない。
負けはそれすなわち死だと思え!!
そして、合図となったのは、不意に地面に落ちたガラスの音。
『参る!!』
そして同時に、俺と紅い女の子――ヴィータ――は、勝負に出た。
―――こうして、偶然の内に少年は魔法と出会った。
だが、この世に偶然などなく、それらは全て必然の物として起こる物である。
歯車は回り始め、少年は決意する。
それが全て運命というモノによって定められたモノなのかは、誰にも解らない。
なればこそ、最初から定められた道だというのならば―――
―――抗え、少年。
この運命に、反逆せよ―――
後書き
はじめまして。初投稿のツルギと申します。
凄い突発的に思い浮かんだネタですが、ちゃんと書いていきたいのでよろしくお願いします。
それではまた次回の投稿で。