俺は高町家の謀略もあって居候させてもらうことになったが、まだ傷が治りきったわけじゃない。

全治一ヶ月の大怪我だったわけだから、それまでの間はフィリス先生のいるこの病院に入院することに必然的になる。

しかし、入院生活も半ばをすぎるとやっぱり退屈になってくるのは否めない。

はぁ・・・、誰か来ないかな・・・。

 

 

 

第二話   入院中

 

 

 

「退屈だ・・・。」

 

治療に専念している今の俺は、完全に暇をもてあましてしまった人間になってしまっていた。

今週の分の雑誌は大体目を通してしまったし、情報収集のために見ていた新聞も読み終わってしまった。

散歩にも出てみようかとも思ったが、それは乗り気がしない。

実は足の骨も痛めてしまっていたようで、片足に簡単に固定するための処置が施されている。

そんなことをすればあのフィリス先生が血相を変えて飛んでくるのは明白だし。

そんなときだった。

 

 

 

――――ガラガラ

 

 

 

俺の病室の扉が開いた。

入ってきたのは高町家の末っ子なのはと長男の恭也だった。

 

「こんにちは。翡翠お兄ちゃん。」

 

「お、なのはちゃんよく来たな。」

 

「・・・俺のことは無視か?」

 

「そんなわけないだろ、恭也。いつお前のことを無視した?」

 

「ふん・・・。」

 

この町にも知り合いももうほとんどいない。

見舞いに来る奴もいなければ話し相手もいなかったため、これはうれしい限りだった。

とはいえ、このお兄ちゃんと呼ばれていいのは俺だけだオーラを放つ俺の友達を何とかしてほしい・・・。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「なんでもない・・・」

 

やはり、まだ子供で純真無垢な女の子にはこの変な憎悪はまだ分からないか。

 

「で、今日は一体何をしに来たんだ?」

 

「その前に、母さんからこれを渡せと言われている。」

 

恭也はそう言うと手に抱えていた紙の箱を俺に手渡す。

その箱を見ると、喫茶翠屋と書いてあった。

 

「中にはシュークリームが入ってる。お前、好きだっただろ?」

 

「おお!!桃子さんのシュークリームか!久しぶりだな。うれしいよ。」

 

「ふっ・・・、お前は本当に母さんのシュークリームが好きだな。」

 

俺がそう言うとあれだけむすっとしていた恭也が笑った。

それだけで俺の顔がどれだけ緩んでいるのかが想像がつく。

本来、俺は甘ったるいものは好きではないのだが、俺にとってこのシュークリームだけは別物だった。

よく高町家に遊びに行ったが、半分これ目当てのときもあった。

 

「へ、ははひっへ?(で、話って?)」

 

「・・・食べながら話すのはやめろ。待っててやるから。」

 

急ぐように口の中にシュークリームを入れながらしゃべる俺に、さすがの恭也もあきれてしまっていた。

それから数分たってやっと話せる状態になった。

 

「ふ〜、うまかった〜。」

 

「それは、よかった。母さんにもそう言っておく。」

 

「お〜、よろしく頼む。・・・で、どうしたんだよ?」

 

「大した事ではないのだがな・・・。」

 

「わたしがお願いしたの。翡翠おにいちゃんとお話したいなって。」

 

「・・・ということだ。」

 

そういうと、引き継ぐようになのはがその言葉に付け足すように言った。

 

 

 

―――というわけで、今なのはの話を聞いてあげることになった。

 

 

 

「今、わたしの家にはレンちゃんと晶ちゃんが住んでるの」

 

「ふーん・・・。」

 

「あ、あとフィアッセさんもいた。

この人はお母さんのお手伝いもしてるの。」

 

「・・・まだほかにもいるのか?」

 

今は高町家の家族構成を聞いていたのだが、当然というべきか、俺がいないうちに高町家も大分変わったようだ。

まさか、3人も増えるとはな〜・・・。

もちろん桃子さんの子供ではなく、ものの例えだろうけど。

それにしても、そのフィアッセって人は大丈夫なのだろうか。

片言の日本語しか話せないのでは接客業では、話にならないからな。

 

「恭也、そのフィアッセって人は大丈夫なのか?名前の限りでは外人のようだが・・・」

 

「ああ、全く問題ない。むしろ母さんとしてもかなり助かっているようだぞ。なにしろ、フロアのチーフを任されているくらいだからな。」

 

「そいつはすごいな。」

 

桃子さんの人を見る目は昔からあったからな。

よほどいい人だろうな。

 

「お兄ちゃん、今は私がお話してるのに〜」

 

「そうだったな。すまないな。」

 

「あははは。」

 

そんな明るいやり取りを兄妹間でする二人をみて、ついつい笑ってしまった。

 

「笑うなよ翡翠。」

 

「あ、いや、笑うつもりはなかったんだが。やはり、家族っていいもんだなって思ってさ。」

 

やはり、家族というものはいいものだ。

仲良くしているのを見ていると、こっちは自然と微笑んでしまってくる。

 

 

―――それから一時間後

 

 

「翡翠お兄ちゃん、また来ます!」

 

「ここは病院だぞ。もうちょっと静かにしなさい。それと・・・、あいつを兄と呼ぶのはやめてくれ。」

 

「ごめんなさい・・・」

 

元気な声で俺に挨拶をするなのはちゃんだったが、それを兄の恭也は戒めた。

恭也・・・、いい加減俺が兄呼ばわりされるのになれたらどうなんだ。

 

「それと・・・、これ。」

 

「これは・・・?」

 

「うん。翡翠お兄ちゃんが早く直りますようにって思いながら折ったの。」

 

なのはの手に抱えられていたのは、千羽鶴だった。

なかにはきれいに折れているものや、うまく折れていないものもある。

苦労しながら家族と作ったのだろう。

 

「そこまで大事に至らない怪我だとは言ったが、なのはが作るといって聞かなくてな。」

 

「お兄ちゃん、それは言わないで〜!」

 

恥ずかしそうにしながら兄に抗議するなのはちゃん。

まさか、まだ知り合ったばかりの俺にこんなものを作ってくれるとは・・・。

なのはちゃんはきっと、桃子さんの影響を誰よりも強く受けて育ったんだろうな。

 

「いや、俺としてもとってもうれしいよ。ありがとう。」

 

「え・・・、あ・・・うん」

 

なのはちゃんは応答がしどろもどろになってしまっていた。

俺に秘密を聞かれたのが恥ずかしかったのだろう。

 

「そ、それじゃ、またね。翡翠お兄ちゃん。」

 

「あ、おい、なのは!・・・ったく。」

 

病室を飛び出すようになのはは出て行き、恭也もそれを追うように病室を出て行ってしまった。

そして、病室に残されたのは高町家お手製の千羽鶴と俺だけだった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

今回はダメダメな作品になってしまったなぁと感じている、るしーどです。

いやー、これを書いているときは本当に苦しかったです。

次からはこうならないよう、よい作品を目指して書いていきますので、読者の皆様(見てる人いるのかな?)よろしくお願いします。

 

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