白いうた 青いうた
                              
                                
	
  
 
  正月はいつもお年玉に悩んでいる。 
 
このお年玉という風習はアジア諸国にはあるが、アメリカやオーストラリアなどのキリスト教圏にはないらしい。 
 
異世界ミッドチルダにも文化はあるが、世界事情が違うとやはり同一にはならない。そもそも暦が違うので狂いはどうしたって生じる。 
 
 
うちの子達も出身が異なるので、これまた悩まされる。 
 
 
「一律千円でどうだ」 
 
「全員喜んで受け取りそうだけど、年齢が違うのに一律はどうかと思うわ」 
 
 
 うちの財布を握るアリサはきわめて建設的に述べる。 
 
アリサが稼ぐ金額は目ん玉飛び出るほどの額面を飾っているが、無駄な出費は許さない家計簿の鬼である。 
 
同時に決してケチではなく、家族など大切な理由があれば惜しみなくお金を出してくれる。お年玉が理由であれば喜んで出費してくれるだろう。 
 
 
だからこそこうして相談に応じてくれている。 
 
 
「お餅をあげるというのはどうだ」 
 
「お年玉文化の由来ではあるけれど……あの子達、多分喜んで他の人達に自慢するわよ。 
つまり大人の人達にアンタが餅をあげたことは伝わるんだけど、それでもいいならどうぞ」 
 
「ぐっ、せこいと思われそうだな」 
 
 
 アリサが説明してくれる。 
 
日本では明治頃からお年玉の風習が始まったそうだが、最初はお金ではなくお餅だったようだ。 
 
 
お餅から代わったのは昭和後半の頃からで、お餅に代わってお金が主流となっていったらしい。 
 
 
「何でお餅からお金になるんだよ、迷惑な」 
 
「多分日本人の大半は迷惑とは思っていないわよ、きっと」 
 
 
 お正月とは、年神様を家に迎える行事。 
 
この年神様が家に入ると、その魂がお餅に宿る。 
 
それが年魂となり、家長が子供たちに御年魂をプレゼントする事で、お年玉として分け与える風習が始まったそうだ。 
 
 
縁起は良いと思うが今のお年玉文化を知ってしまうと、時代に逆行している俺が何か言われそうだ。 
 
 
「そもそも何で悩んでいるのよ。子供達に見合った金額でお年玉をあげればいいじゃない」 
 
「子供達が多すぎて金額の匙加減が難しいんだ」 
 
 
 ユーリにディアーチェ、シュテルにレヴィ、ナハトヴァールの蒼天の書チャイルド。 
 
俺の遺伝子から製造されたヴィヴィオに、オットーやディード。戦闘機人として生まれたナカジマ家の子供達。 
 
なのはやフェイト、はやても家族付き合いがある子達だし、月村すずかこと妹さんも子供であることに違いはない。 
 
 
聖地にいるヴィクトーリアやジークリンデ達も子供だからな、大人としては無碍に出来ない。 
 
 
「なのはやフェイト達にもお年玉をあげるのね」 
 
「? ガキンチョなんだから当然だろう」 
 
「そりゃそうなんだけど、あれぐらい立派な考えを持って行動する子達でも、アンタにとってはガキンチョになるのね」 
 
 
 ?? 何が言いたいのか分からんが、アリサは何だか機嫌良く笑っている。 
 
まあ確かに大人顔負けの行動力と考え方を持っているが、所詮はスネの青いガキンチョよ。 
 
俺のような大人から見ればまだまだであり、俺がきちんと大人の礼儀としてお年玉をくれてたやらねば始まるまい。 
 
 
そうして悩んでいると、アリサがふと聞いてくる。 
 
 
「別にお金が欲しいわけじゃないけど、あたしはどうなのよ」 
 
「お前は俺のメイドだから必要ない」 
 
 
 アリサにお年玉なんぞ必要ない。 
 
こいつは俺のメイドなのだから、なのは達とは違う。 
 
 
いつも俺と一緒なのだから、大人と子供の関係ではない。 
 
 
「ふふーん、分かってるじゃない」 
 
 
 アリサもそれが分かっているから、貰えなくても笑っている。 
 
得心したように頷いて、引き続き相談に乗ってくれた。 
 
 
何年経過しても、この関係が変わることはない。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<終> 
 
  | 
	
  
 
 
  小説を読んでいただいてありがとうございました。 
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。 
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。 
 
 
 
 
 
 
[ INDEX ]  | 
Powered by FormMailer.