あらゆる意味にでっちあげられた数章
                              
                                
	
  
 
 「良介さん、暇なんでかまって下さい」 
 
 
 何の遠慮もなく、図々しい態度で色褪せたシルバーブロンドの女が訪ねてくる。 
 
無造作に切られた髪は手入れされていないのに滑らかで、化粧っ気もない顔立ちも美しく魅せている。 
 
気だるげな態度は煩わしさよりも色気を感じさせ、無防備な仕草に愛嬌を感じさせる。 
 
 
生きているだけで得をしているような残念美人が、ひょっこり顔を出す。 
 
 
「こいつならどうだ?」 
 
「うーん、魔女よりお化けかな」 
 
「いきなり女から格下げしないでもらえます!?」 
  
 ちょうど今タイミングが良いというか悪いというか、この部屋には他に女が居た。 
 
身内贔屓のように同じく顔が整った女、セルフィ・アルバレット。アメリカで活躍する著名人である。 
 
以前は、というか今も文通でやり取りする関係だったが、とある事件を経てこうして気軽に遊ぶ関係になった。 
 
 
平然とデートとか誘ったりする距離感のヤバさに、定評がある。 
 
 
「一体何の話ですか」 
 
「ハロウィンパーティだよ。あ、悪い。今まで縁がなかったんだよな」 
 
「良介さんだから許し――いやあんまり許さないですけど、他の人間が言ったら超能力で粉々にしますよ! 
クローンとはいう以前に、アタシをポッチで当て擦るのはやめて下さい」 
 
 
 暇さえあれば男の俺の所へ遊びに来る女に言われても、あまり説得力がない。 
 
この女はシルバーレイ、フィリスをオリジナルとしたクローン体。こう見えて稀有な成功例であるらしい。 
 
超能力を安定して発揮できる能力者で、実力もかなりのものである。そこらの男では太刀打ちできないだろう。 
 
 
実際声をかけられることも多いらしいが、余裕であしらっている。彼氏とはいわずとも、ボーイフレンドでも作ればいいのに。 
 
 
「レイってハロウィン知ってたっけ?」 
 
「勝手につけたあだ名で呼ぶのはやめてもらっていいですか。 
当然知っていますよ、宝くじ買いましたしね」 
 
「ハロウィンジャンボを狙うあたり、安い女だな」 
 
 
 一等が当たったら俺を金で買うらしい、アホな女である。 
 
しかし鋼の如き精神を持つ俺でも、1億を積まれたりしたらちょっと悩むかもしれない。 
 
アリサのおかげで日々の生活には困っていないが、小遣い制なので余裕があるとはいえない。 
 
 
高い買い物をする場合アリサに理由を聞かれるので、厄介である。有事は自由に使わせてくれるのだが、日々の生活では厳しい。 
 
 
「お化けとか言ってましたけど、仮装パーティでもするんですか」 
 
「そうそう、フィリスが夜勤の週らしいからな」 
 
「仕事で大変なあの子に、仮想して応援しに行こうという心温まるパーティよ」 
 
 
「……あんたら、鬼畜ですね」 
 
 
 ――フィリス・矢沢は夜勤という業務そのものは大切だと思っているが、苦手でもある。 
 
夜の病院業務が大変だからではなく、夜の病院そのものが怖いらしい。 
 
正直わからんでもない。夜の病院は怪談話のスポットでもある。廃病院の肝試しとかは成人男性でも怖いらしいからな。 
 
 
らしいといっているのは、俺は例外だからだ。何しろ旅をしていた頃、廃墟で野宿とか平気でしていたからな。我ながらどうかと思うが。 
 
 
「そこでお前の出番だ。 カボチャとカブ、どっちをかぶりたい?」 
 
「酷い選択肢!? さっき言ってた魔女にしてくださいよ!」 
 
「あ、それ、リョウスケにやってもらうから無理」 
 
「良介さんが魔女!? くっ、面白すぎるからやってほしい……でもアタシがかぼちゃになる、このジレンマ!」 
 
 
 
 ――後日フィリスに発覚して、滅茶苦茶怒られた。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<終> 
 
  | 
	
  
 
 
  小説を読んでいただいてありがとうございました。 
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。 
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。 
 
 
 
 
 
 
[ INDEX ]  | 
Powered by FormMailer.