とらいあんぐるハート3 To a you side 第X楽章 主人は冷たい土の中に 第二話
約束もなく――花は風に揺れて、遠い空を想う。
「……ほんまに? ほんまに大丈夫なん、良介は」
「平気、平気。生きてるよ、あの馬鹿は」
「……でも、テロリストの事件に巻き込まれたとニュースで言うてたし……」
「あいつには、シャマルのクラールヴィントが付いてる。何か起きたら、ちゃーんと守ってくれる。
それに、シャマルがミヤに回復魔法を仕込んでる。心配いらないよ」
「……そう? それやったらええんやけど……」
「アタシは、はやての方が心配だ。ここのところ全然食べてねえし、睡眠不足で身体も弱ってるじゃんか。
ほらほら、寝た寝た。ほんと、はやては自分の体を大事にしてくれよ」
「ごめんな、ヴィータ……そうやね。皆がそう言うてくれるなら、わたしも信じる事にする」
「うん――おやすみ、はやて」
「おやすみ、ヴィータ」
「……」
「……」
「……主は?」
「寝たフリしてる。アタシも、気付かないフリして部屋を出てきた」
「はやてちゃん、食事も取っていないのよ。このままでは、病気になっちゃうわ」
「身体の傷を癒す術はあっても、心の疲労までは癒せないか――先生に、診て頂きたいが」
「フィリスせんせーも大変なんだろ、今?」
「……ええ……とてもじゃないけど、はやてちゃんは診せられないわ――まさか、あんな……」
「泣くな、シャマル。今案ずるべきは、我らの主だ」
「――で、あいつは今どうよ?」
「――胸を撃たれた上に、血を大量に抜かれている。このままでは死ぬわね」
「事実が分かれば、主はやての精神状態が危うくなるな」
「分かってるよ。だから、生きてるとしか言ってねえ」
「ミヤちゃんが頑張ってくれているけど、いつまでもつか分からないわ」
「考え込んでいても仕方あるまい。今後、我らがどう動くか決めるべきだろう」
「シグナム、将としての考えは?」
「ミヤと闇の書が救援に出ている。我らが動くべきではない」
「――見捨てるつもりなの?」
「意外だな。お前は真っ先に切り捨てると思っていたが」
「あんな男でも死ねば、はやてちゃんの心身に悪影響が出ると言ってるの」
「アタシも反対だ。あいつが死ねば、ミヤだってどうなるか分からねえ。
突発で生まれたチビスケだけど、ミヤはアタシの妹みたいなもんだ。消滅なんて、ぜってえ嫌だ」
「我はシグナムに賛成だ、今動くべきではない」
「どうしてだよ!? お前だってあいつの事は――」
「今我々が表立って動けば、世界の均衡に触れる危険がある」
「……情報操作がされている、そう見解を述べたのはお前だ。シャマル」
「そ、それは、まだ確かな話じゃないわ!」
「いずれにしても、奴は今世界中に晒されている。迂闊に接触するのはまずい」
「アタシ一人でも何とかなるのに、くそったれ!」
「"旅の鏡"を使えば、時空管理局に発覚する危険がある。
まだ確証は掴めないけれど、この町に局の人間が潜入しているみたいなの。せめてもう少し動きが掴めれば――」
「いずれにしても、今は動けない」
「今動かないと、アイツは死ぬんだぞ!? お前は何とも思わないのかよ!」
「主が、第一だ。行動原理を否定すれば、我らの存在意義はなくなる。
それはきっと――あの男も、同じだ」
「あの男の涙を、お前も見ただろう? 狼だけではない。野良犬にだって、誇りはある」
「あいつは死にかけてるんだぞ。それでも……勝てんのかよ?」
「もしも勝てれば、その時は褒めてやれ。お前の子分だろう、あの男は」
「ちぇっ……お前も変わったよな、ザフィーラ。人間臭い事を言うようになったぜ」
「説教したくもなるさ、あの男を見ていれば」
「というかどうして腕の治療に専念出来ないの、あの人は!?」
「裏社会の人間にも命を狙われているようだな」
「それでいて小娘を追いかけ、追いかけられている」
「……何か……あまりにも馬鹿すぎて、心配する気が失せてきた……あいつって何なのだろうな?」
「よほどの大馬鹿か――」
「――運命すらねじ曲げる大物か」
「生きて帰ってくれば分かるでしょうね、それも。せっかくの準備が無駄にならないといいけど」
「ノリノリで計画立ててたもんな、お前。アイツ、絶対泣くぞ」
「どうせ泣かせるのはお前だろう、ヴィータ。何しろ、お前が監督役だ」
「主を安心させる為にも――あの男を鍛えてやろう、我らで」
「アタシらとの誓い、見事果たしてみせろ――リョウスケ。
生きる道が見出せたのなら、望みを叶える強さをお前にやるよ」
誓いはここに――約束の剣は海鳴の地を刺さり、剣士を待つ。
<続く>
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