前回 ……戦闘を始めた。
ズタボロだった、当たり前だが
当たり前のことも見逃していた。
見つけた、そう、これからだ。
ケイスケの機動六課の日々 その28
呼吸が荒れる、息が厳しい、だがまだだ、まだやれる。
目の前にはディードが倒れて、立っているのは俺。
そう、俺の勝ちだ。
「ま、魔法は使えないはずです!!」
あ? こんなもん魔法の内にも入らねえよ。
俺がやったのは魔力放出だ、しかも極めてカスみたいな量の
こんなもん、Fランクがやっても俺の三倍はできる。
俺の魔力量、制御、どちらも、カスだ。
だから、密着してだす。
ただこれだけしか出来ない。
これだけだ……
本来なら魔法陣を作って流す方がいい。
効率も威力もだ。
だがそんなものを作る余裕は俺にはない。
隊長達やスバルなら丸一日できるようなことだけど。
俺じゃあ、数秒でガス欠だ……
「いちいち、解説する、筋合い、ねえだろ」
そしてその数秒、それが終ればガス欠の気絶が待ってる。
そんな弱点を語るような真似、誰がするか。
「はあはあはあはあはあ」
ブレードをディードにあて、
「悪いがトドメだ……」
青ざめていく、俺にはバインドなんか使えねえ。
ここでやっとかねえと、後ろからバッサリなんかゴメンだぜ……
後ろに引き、一気に!!
「!! オットー!!」
ち!!
つき立つブレード……剣先は……
「……ぐ、ぐ」
腕……ちくしょう……
「こ、殺さないのですか?」
「うるせぇ、そのつもりだったよちくしょう!!」
ギリギリずらしちまった……
くそ、反則だぜクソ
「腕の腱だけは切らせてもらうぜ……」
確か交換が利くはずだ。
そのくらい我慢してもらう。
ブレードを突き立てて
「しばらく、おとなしく、してろ……」
「はい」
「適当に、人呼んどくからよ……」
「はい」
……やけに素直だなコイツ……
「放置プレイと言うのですねご主人様」
ゴチンと頭部が壁にめり込んだ。
……まてや
「なんやそれ、なんなん!? とういうか前回までのシリアス展開はどうした!!」
この、俺がいつかギャグに戻ろうかがんばってるのにいきなりそれかい!!
「クアットロ姉様が、もしも負けたら相手をご主人様と呼んでメイド服で奉仕すると」
誰だよ……あああの眼鏡猿?
「よーし殺す、問答無用で殺す、なんと言おうとあのアマ殺す」
「行ってらっしゃいませご主人様」
……放置しよう、放置、放置だ主に俺の精神安定のために……
ティアナ視点
あは、あはははは、本当に勝っちゃった……
こっちは二対一で隠れてるっていうのに……全く……
「オラ!! さっさと出て来い!!」
焦ってきてる、これは、チャンスかもしれない。
負けらんない、こんなところで……
第一、あの馬鹿が勝って私が負けるなんてありえないし、あっちゃダメだ!!
私は、何でもできるエースにはなれない、でも、それは
「見つけたっすよ」
アイツも同じなんだから、
「負けてらんないのよ!! こっちもね!!」
エリオ視点
……すごいやケイスケ。
勝った、誰が言おうとアレは勝ちだ、ずっと強い相手に、自分よりもずっと強い人に。
何時かの、強さの問答、その答えの一つがきっと……
「殺して……殺してよーーーーーー!!」
だから
「エリオ君」
うん、キャロ、分かってる。
勝つ、僕はケイスケの弟分で、フェイトさんの家族で、機動六課のエリオ・モンディアルだから
正気を失っているルーテシア。
帰してあげる、きっと、君がいたはずの、手に入れたはずの、あったかい場所を
はやて視点
……あかんわもー。
全く、悪さばっかするんやな……
ほんま……
あーもー、
こんな事されたら機動六課作った意味ないやん。
エースにストライカーの溜り場みたいな部隊。
このくらいの戦力やないと無理やと、予言を覆せんと。
せやけど……
「八神二佐? なにか?」
おっといかん、口が笑っとったわ。
そか……そうやったんか……
何時でも、真直ぐ、しがらみなんか無く、助けられる。
はは、組織カブレって言うんかな? これ……
私が求めたもんに必要だったのは……
せやけど今は
「そら!! 南天が崩れてるよ!! そっちから取り付いて」
目の前のゆりかごを、全力で止める。
全てはそれからや。
フェイト視点
「……はははは、なあウーノ、トーレ、クアットロ……これは……なんだい?」
ケイスケ……勝った?
た、確かにフォーン副校長になのはと二人掛かりで負けた事あったけど……
でも、副校長はAAクラスで、
ケイスケはランクにも引っ掛からなくて。
「有り得ん!! いくら油断したとて」
「瞬間魔力値は増大してもFにも掛かって無い、なのに」
そう、スカリエッティ達の評価は正しい。
動きも、速さも、力も、
今の映像からの判断をしても、 最低の評価は動かない……
動かないのに……
「……バルデイッシュ、ライオット!!」
「!?」
そうだよね、なのはにこの間言ったのは私。
「……ほう、いいのかい? その切り札」
「構いません、あなた達はここで、確実に、私が、逮捕します」
そうだよね、私達が頑張れば何とかなる何て事は無い。
きっと……
なのはやはやて、ヴィータ達。
私達が、いくら頑張っても、 エリオの楽しい笑い顔は見れなかったと思う……
でも、ケイスケは見せてくれた。
ティアナは戦いながら指揮ができるし、
幻術と併用した集団戦は、 もう私達より上だと思う。
スバルの力強さは、
キャロの召喚は、
エリオの瞬発力は、
みんながみんな、できる事があって、
そして、
「私には、みんながいますから」
クアットロ視点
ちぃ、計算外にも程がありますわ。
ディードちゃん……あの子はもうちょっと使えると思っていたのに!!
あんな男に固執して、余計な感情が入ってから嫌な予感はしたけど……
タダのカスにやられる!?
有り得ない、有ってはダメなのよ!!
いつもかけているメガネすら煩わしい!!
第一、猿?
イライラする!! メガネは伊達よ!!
床にパリンとメガネの破片が散らばる。
あの男は全部が終わったら……
ふふふ、そう思うと少し落ち着いてきたわ……
何より、肝心のこちらは
血塗れのおちびちゃんと 腕が曲がっている悪魔さん。
ふふふ、あはは、これを見せればさぞ良い顔を。
さあ、え?
あの男の周辺にモニターがつかない?
なぜ? ジャミング!? さっきまで無かったのに!!
何より、こちらのコードだけを潰す、そんな事……一体誰が……
スバル視点
あぐ、が、 喉締められて……息…… ギンねえ……
駄目だよ、勝てないよ……
ギンねえ……
千切れた腕はまるで別物になっていた。
リボルバーナックルに合わせて回転するドリル。
ギンねえの動きそのままで、強くて、速くて。
何一つ勝てる所が無い。
なのはさん……何一つ勝てない人にはどうしたらいいんですか……
ティア、母さん……ギ、ンねえ……ケイスケ……
助けなきゃ、ティアもケイスケも
まだ動ける、油断してる今なら投げられるはず
体を回して内股を
ガクって、止まって
あ、終わった……
襟首から力ずくで持ち上げられて。
投げられて、地面に当たったら多分もう。
投げ出されて、柔らかいものに……え?
「このアホ!! 諦めてんじゃねえ!!」
ケイスケ……
ケイスケ視点
ハイウェイに梯子で戻る。
上ではまだ爆裂音が響いている。
まだ、ギン姉さんは……
アホスバル!! あのやろう、なにタラタラやってやがる!!
上りきった俺の目に移ったのは、
スバルを持ち上げた姉さんと、昔の目をしたスバル。
割り込んで、受け止めて
「このアホ!! 諦めてんじゃねえ!!」
怒鳴った。
パッと見て、姉さんに有効打はまだ入って無い……
スバル、お前。
「ケイスケ、なんで?」
何でって、まさか……
「見る余裕も無かったのか……」
「?」
……凹んだ、地味に凹んだ。
せっかく珍しく決ったのに見て無いとか。
くそ、まあいい、それより……
「スバル、お前がやらないなら俺がやるぞ」
「え?」
「お前が姉さん殴れないなら俺がやる」
多分コイツ、声で戻せるとか考えてた、でなきゃ、魔力ダメージだけで……
無理だ、格上相手に加減してなんて、さっきの俺みたいに押しつぶされる。
「スバル、姉さんは腕の一、二本飛んでもいいんだよな?」
それくらいは覚悟してやる!!
負ける訳にはいかねえ!!
「な、何考えて!!」
「姉さんを取り戻すのは俺の勝利条件だ!!妥協はねぇ、手段もえらばねぇ!!」
スバルを下ろして前に……
何より……今の姉さんは見てらんねえ!!
「ケイスケ!!」
来る!!
ローラーダッシュで突っ込んで、右?
順手でナイフを握り、ナイフ格闘の親指の延長と認識する。
ナックルガードをナイフで弾く、姉さんなら……次は膝!!
来た、正面にこいつの打点をみぞおちに食らえば間違ない無くKO。
だけど、
タイミング予測、関節稼動範囲予測、自身とのスピード予測。
それらを勘という名前で高速計算をすれば、一気にゴーサインが出る。
打ち抜こうとする膝を左手で抱え込み、タックル!!
組合いなら姉さんにだって!!
片足で踏ん張れば踏ん張る程、梃子の理屈で倒しやすい。
次の姉さんの手は受け身から勢いを味方に付けた蹴り上げのはず。
ゴっと頭が揺れた。
姿勢が不自然だが、後ろに離脱する。
姉さんも後ろ飛びで姿勢を直す。
こめかみからの傷みでジンジンしやがる。
つくづく今日は防具に救われるな。
フック……姉さんらしくない攻撃だ。
まるで打てたから打ったみたいな……
ひょっとして……
「はい、そこまで」
空気に割り込む高い声が響いた。
聖王教会のシスター服。
そんな格好は廃棄都市のハイウェイ戦場には不釣り合いだ。
だっていうのに、堂々と真ん中を歩いてくる。
そんな人は、一人しか知らない。
「……シスター」
「え? あの人が?」
施設入りした俺を色々振り回した人、
長い髪をした、可愛いというより美人と言うべき人だ。
「何しに来た……」
「うーん、こうすれば分かるでしょ?」
パッとシスターの服が変わる。
今の姉さんと同じ、胸の番号が違うだけの
つまり
「そういう事か……」
「そういう事よ」
一番に思ったのは、何より納得だ。
あんな人が騎士資格無しのシスターですなんてのよりな……
「ケイスケ……」
スバル、心配はいらない……
「で、何しに来たんだよ」
「何って、アンタがあんまりにもダサいことしてたからね、一発やってやろうと、仕事前にちょっとだけね」
「あっそう、で」
「その前に立ち直っちゃったじゃない」
「じゃあ帰れ」
とはいかないよな。
「あー、それも考えてたけど……妹のカタキも取らないといけないでしょ?」
そうか、やるって事か……
「スバル、悪いが姉さん頼んだ、俺の相手が来たからな」
「ちょ、ちょっと、駄目だよ、シスターさんはケイスケの」
「黙ってなメスガキ!!」
おお、こええ……
「あたしゃあそのガキをこんな事で迷うような育て方はしてないよ」
ああ、全くそのとおり。
だから……
「姉さん頼んだ、スバルお前は勝てる!!」
「な、無理だよ、さっきだって」
「勝てる、誰が言おうがお前が勝つ!! 俺が確信してる!!」
細かい説明はできなかった。
いや、する余裕を貰えなかった。
一気に飛び込んで来たシスターはそんなものをくれる人じゃない。
「くそ、本気でやなタイミングできたなアンタ!!」
左手に逆持ちで構えたナイフを盾にする。
「だって、タイプゼロの、気がついちゃてるでしょう?」
シスターの右手に光る突起物。
爪、普通なら手首保持されるはずが普通に指に装着されている。
当然、重心が代わり遠心力で指関節に負担が掛かる、が
「うお!!」
掠った、血がラインみたいに引いた。
指を開く、閉じる。
これだけで攻撃範囲面積が変わり防御が困難になる……
落ち着け、よく見るんだ。
タイプ、刃物 切り方、重量より刃の薄さで
こういう武装相手なら有効なのは盾だ。
肉を裂いたり貫く武装は当然細く、かつ摩擦が低い。
要するに、魚切り包丁みたいなもんだ。
逆に摩擦が強くて面積が広い盾に当たれば折れやすい。
で、そんなもん用意してる訳がねえ。
間合いを読んで、ナイフを振り抜いて止める。
「あらあら、必死ね……いい顔よ」
ち、そっちこそ余裕見せてるくせに。
「初見は勝負を決める、覚えてる?」
ああ、しっかりな。
「だから俺の相手をアンタがするんだろ」
「正解!!」
一旦互いに離れた。
実のところ、ミッドに置いて、魔導師戦では俺の魔力値はマイナスだけではない。
魔導師の初見はほとんどが魔力で測られる。
だから低い魔力の俺に対して油断して。
だけど……
「ふ!!」
シスターの左手!? やば!!
姿勢が崩れるのを承知で横飛び。
飛んだ後には不可視の衝撃波が走った。
「魔導師なら抜かないと使えないけど、貴方なら」
遠距離からでも揺らされる……しかも俺よりワイドレンジ。
「そして貴方の最大の弱点は」
ぐっ、ヤバイ!!
シスターの左手が俺を狙って、ダッシュで外す。
連続で打ち続けるシスター。
そうだ、レンジを取って連続攻撃、これが俺の攻略法。
必死で手のひらを見て回避を続けるがいずれ捕まる。
空を見ればウイングロードが交差していた。
まだかスバル。
勝てるのだ、スバルは。
今の姉さんに読み合いはない。
盛った犬みたいに目の前の敵に噛み付くだけだ。
後の先を取れば勝てる……
こっちの方がよほどヤバイ。
「良い事教えてあげるわ、私の強化レベルはA、ディードよりも低いの」
「嫌味かこのヤロウ」
ふざけんなよ、その分アンタは経験豊富じゃねえか!!
「まあ、あの子は遠距離攻撃が無かったそうだから、貴方との相性は悪いわね」
だから俺の負けってか?
ざけんな、チャンスは必ずくる、アンタへの借りは
今日ここで返してやる!!
ドゥーエ視点
聞こえるかしらね。
ナンバーズにだけ伝わる近距離音声通信をタイプゼロの姉の方に。
(やめて、やめて、やめて……)
あらあら、全くドクターもクアットロも悪趣味なんだから。
目の前のケイスケは回避に必死、ちょっとくらいいいかしらね。
(はあい、タイプゼロのお姉さん)
(……)
返事が無いわね、あの二人の事だから絶対声が伝わると思ったのに。
(……誰ですか?)
(いけないわね、無視は)
ふーん、こんな声してたのギンガちゃんは。
(私はナンバーズの二番目)
(ドゥーエって事ですか)
(そう、後ケイスケから聞いてる?施設のシスターの話)
(……あなたが、そうだと?)
ふーん、この状況でまだ思考力が残ってるか。
(何故?)
(何故って、あの子からよく話が出たからね、今の内に挨拶よ)
(……悪趣味ですね)
あらありがとう、嬉しいわ。
(それで、何なんですか)
あら……何かしらこの子、ちょっとイラっとくるわね……
戦闘の硬直は続いてる、だけどこれなら。
(この戦闘はこっちの勝ちになるからね、余裕よ、余裕)
ケイスケの回避スペースは徐々に狭まってる。
タイプゼロの妹の方。
スバルちゃんだっけ?
あっちも全然流れが掴めて無い。
このままだと逆転は無いわね。
(ああ、スバル、ケイスケ……逃げて、逃げて……)
あ、ブチッときた。
(アンタ!! 何へたれてんのよ!!)
通信越しでも震えたのが分かる。
(逃げろ? は!! あの子ら見て逃げろ? あの子が楽しそうに話すから期待したら、がっかりだわ)
(な、何を……)
見て見れば分かる、あの子らは全然諦めていない。
「まだだ、来るチャンスは!!」
次第に避けるのがギリギリに、余裕を失いはじめたケイスケ。
「勝つよ、言ったもん、ケイスケが勝てるって、だから……」
既にボロボロで、怪我だらけなスバルちゃん。
「「絶対勝つ!!」」
(アンタねえ、あの子らの姉だろ、こんな女っぷりが悪い事してんじゃねぇ!!)
ああ、やっちゃった……なーに敵焚き付けてんの私……
まあいいか、どうせ終わる時は終わるんだから。
さあ、全力で来なさいあなた達!!
あなた達の全力、それを上回って打ちのめしてあげる!!
ケイスケ視点
「ギア、エクセリオン!!」
スバル、やっとかよ馬鹿野郎。
スバルに意識が行ったのは一瞬、だけど
直ぐに場所を変える、ヤバイヤバイ。
今いた処には衝撃波が走った。
どっちにしても不利には変わらない。
多分スバルが勝つには後4〜6手いる。
だけどこっちはこのままだと3〜5手で詰まれる。
クソが!!
シスターの左手が照準を合わせて、
回避!!
着地と同時に移動を、できない!? 足が動かねえ!!
足には薄い色の光の輪
「しまった!!」
バインド、このタイミングまで使わなかった!?
なら、シスターは、突っ込んできた。
爪での突き、ナイフで防いでも、次の手で負ける。
このままだと……
「ちぃぃぃぃ!!」
防御する……左で!!
グズリと肉が裂かれる感触……
「あはぁ」
左手……ヤバイのには違いないが命には変えられない、そして!!
「おおお!!」
腰のブレードに持替えて、狙うは手首!!
当然抜こうとするシスター。
「!? 抜けない?」
筋肉を固めれば少しはな!!
それでも少ししか爪は止められない。
そして振り抜くのは単分子コーティングのブレード!!
切れたのは、爪だけか……
「はあはあはあはあはあ」
「……ふふふ、いいわ、そういう貪欲な姿勢……いいわよ」
根元まで切れた爪に付いた血を舐めとるシスター
相変わらずドSだなあんた……
どうするどうする、まだバインドは消えて無い。
このままだと負ける!!
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。
もうスバルの援護を期待するのは無理だ。
シスターの性格からして本気で殺しに来る。
あの人は施設の俺達を本気で愛してくれていた。
だからこそ、本気で相手する。そういう人だ……
左足のバインドの解除は無理だ。俺にはそんな事は出来ない。
「ハッハッハッハハッハッハッハハッハッハッハハッハッハッハ」
クソ、息がうるさい、考えがまとまらないだろが!!
シスターの戦力、爪が折れた、他は五体満足。
勿論バインドに衝撃波は撃てる。
俺、左手に刺さった爪で左が死んでる。
魔力は始めから無い、例の波動も撃てて一発、しかも有効射程距離は三十センチ。
傷、全身に打撲裂傷、今のスーツじゃなかったら死んでる。
体力、かなりカツカツ。
ヤバイ、マジヤバい……
「さてと」
ビクッと来た、駄目だ、ここで主導権を渡したら。
考えろ、シスターの戦力だけじゃない、趣味趣向、性格、思い出、思い出せる全てを思い出せ。
思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ
一つだけ……一つだけある……やるしかねぇ。
「あら?」
右足を後ろに引く、右手は腰に。
左手は、垂らすしかない、脇が開かなければそれでいい……
左足は、無理だな、踏めるだけマシか。
「……何考えてるの?」
そうだよな、普通そう思うよ……だけど。
「見りゃ分かるだろ、アンタをぶん殴るんだよ」
そうだ、この姿勢、殴るしかない姿勢だ。
「……私が衝撃波を撃てば終わりよ、それ」
「撃てば良いだろ、簡単だぜ……」
撃てない筈だ……簡単だから……
シスター、アンタはドSだ、だから、後はいたぶるだけの人間に……簡単な方法では満足出来ないはず……
これ以上は挑発出来ない、というより、シスターにこっちの意図はばれている。
確実性とシスターの矜持、それを揺さぶるにはこれが限界だ……
「アンタ、それで私が乗ったとしても勝てるつもり?」
乗った!! 落ち着け、下手を撃てば外からので負ける……
「勝つさ、コイツは俺が初めて習ったものなんだぜ……」
そう、おばさんに、クイントおばさんに姉さん達と一緒に習った、最初の……
「……まさか、気持ちで勝てるなんてなまっちょろいこと……」
んなわけねえだろ。
「気持ち何かで勝てる訳がねえ……」
「そうね……」
「気持ちが作った力で勝つんだ!!」
「そうよ」
「だからシスター、アンタに勝つ!!」
「上等だよボウヤ!!」
来た!! 乗った!!
どう足掻いてもこれが最後の攻防だ。
このチャンスを逃したら俺の負けだ……
だけど……仕込みが……無い!!
文字通り一か八か、リーチは流石に俺が勝ってる。
爪を潰したから、後は……接近しての打撃衝撃波……
これの撃ち合い。
もう俺にもそれしかない。
事実上これが最後、この次は俺の意識が飛ぶ。
なら、3:7で勝機があるはず、後は呼び込む。
「シスター、俺はアンタが好きだよ」
「……」
「アンタの迷わない生き方が格好いいと思う」
「……」
答えが無くてもいい……
「だから、そんなアンタだから」
振りかぶるシスター。
「ぶちのめして押し通る!!」
「やってみな!!」
シスターが来た。
その動きが次第にスローに見えてくる。
よし、勝った。
最大級のこの集中が来た。
やたらとゆっくりとした体感時間の中後ろ足に重心を傾ける。
この感覚の中なら多少のフェイントや変化も対応できる。
さあ、きやがれ……
って、え!?
シスターの爪が、伸びた!?
あ、殺られる……
駄目だ詰まれた、まだ隠し種あったのかよ……
唯一の勝機のリーチが消えた。
手首を殴って、右足で……駄目だ、左手が動かないと蹴りに体重が。
手首を取ってサブミッション、駄目か、密着なら何処でも、どんな姿勢でも打撃衝撃波は撃てる……
(……たく……)
あ、あはは、これで終わりか……
(……し……たく……)
ちくしょう……
(……負け……ねえ)
うるせぇ、分かってるよ。
(死に……え!!)
どうすんだよ、何すればいいんだよ……
こうしてる間にも凶器は迫る。
加速してる脳味噌はリアルに喉を抉られるイメージを作り出す。
(負けたくねぇ!!)
俺だってそうだ!!
(死にたくねえ!!)
当たり前だ!!
だったら。
動けえぇ!!
爪が、喉の肉に刺さり始める。
「な、なんで!?」
俺の゛左手”でそれを跳ねあげた。
「ーーーーーー!!」
もうどんな声を出してるのか分からない。
とにかく肺からありったけの空気を吐き出して
腰に左手を戻し、腰の回転に添える。
右手はその回転に乗せて……
意識がフラフラする、当たったのか外れたのかも分からない。
当たったなら……
今、ナイフ……か、つ……
スバル視点
勝った、勝てた……ギンねえに。
エクセリオンのブーストとごり押しの力技だったけど、
感慨ふける時間はない。
フルパワーのディバインバスターでレリックみたいなのが壊れた。
安心は出来ないけど、多分大丈夫。
「ごめん、ギンねえ、少しだけ待ってて」
すぐにケイスケのところに行かないと。
いくら焦ってもマッハキャリバーの速さが変わらない。
もっと近くで戦えばよかった……
近付くにつれてまるで箒で掃いたみたいにゴミが固っている。
そこにいたのは……
倒れた……ケイスケと……立った二番の……
「……あ……うわあああああ」
こっちに気がついたのか離れた、ケイスケ!!
酷い……傷だらけで、喉の包帯からも血が滲んで……って
「包帯!?」
「あなた、通信簿に人の話を聞きましょうって書かれなかった?」
へ?
……ええっと……
「あーあ、そっちも負けちゃったんだ」
あ、あ、あそれって……
「そうそう、スバルちゃん、ギンガちゃん連れてきて、
それから反対の方の道路脇にケイスケと私の荷物あるから取ってきて」
「え? え? え?」
何でそんな話になるの?
いやギンねえ連れて来るのは良いけど、荷物二人?
この人はナンバーズでケイスケの保護者で、え?え?
「……サッサとおし!! グズは嫌いだよ!!」
「は、はいー」
ああ、分かった事が一つ、この人、おっかない人だ……
ケイスケ視点
む、眩しい……布団硬い……野宿しちゃったんだっけ……
むう、何か汗だくで気持ち悪い……
帰って、シャワー浴びて、着替えて、時間は……
「お、起きたわね」
「本当!? ケイスケ!!」
ん? スバルと……シスター!!
「はい!! 起きます!! って、あれ?」
はて?……えっと、何してたんだっけ?
ええっと、昨日は確か、クレさんとこで……
!? 身体は? 手足、ある。指も……喉は……
「……ケイスケ〜」
っておい、こら!!
胸元で泣き出すなよ……ハズいわ……
首には包帯が巻かれて、どうなったんだ?
「私にナイフ突き立ててぶっ倒れたのよ」
とはシスター、そか。
「まあ、ギリギリ私の負けって事にしてあげる」
そか。
スバルを見ればさっきよりボロボロで、トレードマークの鉢巻きがない。
「……お前さ、スバル、姉さんの動きちゃんと見たか?」
「……見たよ、見たけど、何時もより早くて……」
力技か……ああ、全くよ。
「……ケイスケ?」
「いや、お前が試験馬鹿だって忘れてた」
「な、何それ!!」
そのまんまだ馬鹿。
はああ、思い通りにいかないね俺は。
頬を膨らませるのを見ると、怒らせてるのに安心するって矛盾した感じが
ふう、やっぱな、いいよな、こんな時間……
「……いーなー青春だなーおねーさん羨ましいなー」
うお、いたなシスター!!
パッと離れるスバル。
俺動けません。
「はー、私がさー、てめぇら坊主だろってエロオヤジや脳髄ジジイの相手してる時に、アンタは甘酢っぱい青春か……」
「ち、違いますよ、違うんですよ!!」
スバル反応するな、もっと弄られるから……
「ケイスケー、ゴムはしなよ」
「ゴ、ゴゴゴー!?」
親指握るな、この人はもー。
さて、状況確認だ。
ランスターが入ったビルは?
結界が解けている。
勝ったのか、ランスター
エリオ達は……なんだあれ……
黒と白の怪獣大決戦……
まだっぽいが……無理だね!! プチっと潰れるね!!
となると……
空には小さくなった戦艦。
あそこにヴィヴィオがいる筈だ。
「行く?」
ああ。
「……何言ってもいくよね……」
ワリィなスバル、心配かける。
「ライディングボード、乗れるわね、私のあげるよ」
本当は私の合流用何だけどねーとシスター
「助かる」
かばんを開けて装備を整えよう。
ナイフを交換、銃器は空中戦を見据えてショットガン、アームガードはボロボロだから捨てよう。
ブレードは、駄目か。
単分子層が剥離してるみたいだ、廃棄。
怪我の確認、打撲は数えるのが嫌になる。
左手は……テーピング、シスターかスバルがしてくれたのか。
何とか動く。
首も血管は無事みたいだ。
結論、何とかなる。
後は俺自身の補給を……あれ?
「ああ、中のハンバーガー貰ったから」
「おい!!」
よく見るとその辺に包んでた紙屑が……
「あ、あはは、ご馳走さま〜」
く、スバルお前まで……
もういいよ……
「シスターはどーすんだ?」
ふと気になった。
「ふふ、ISライアーズマスク」
で? 普段に戻って?
「いやねー教会のシスターはこの事件に無関係よ」
ってまてー!!
「えー!!」
「いや、もう本来の任務に戻る体力無いし、このISは局の設備じゃ暴けないし、何か問題?」
「あの、あたし達としては、逮捕したいんですが」
「どうして?」
あ……そっか……
「ど、どうしてって!!」
「私、ケイスケと戦っただけよ」
そーね、そーですね!! 他に何かしてても証拠残さないよねこの人!!
「まさか、ドクターに作られただけで罪!? 酷いわ、子は親を選べないのよ!!」
スバルはもー混乱しちゃって……
あ、あはは……はー。
いーやもー、行こ。
ボードに乗っかり起動させると浮き始めた。
「ねえ」
「スバルよ、事件終わって、後片付け終ったら、みんなでメシ食おうぜ」
簡単には終わらない。
俺は許可無しの実弾使ったし……それは記録されてるし……
それでも。
「うん、約束、あたしも直ぐ行くから」
うん、こいつはこうでなくちゃ。
シスターは何も言わない、ただ、分かる。
後悔するような事はするなだ。
機首を空に上げて、
このイカれた祭りの終わりに殴りこもう。
空に上がって直に二人が見えなくなる。
後は何とかガジェットを避けて……
不意にヘッドギアに仕込んだ通信機に着信が入る。
クレさん? 何のようだ?
「あーやっと捕まったー」
あれ? 画面に映ったのは、眼鏡をかけた……
「シャーリーさん!?」
後書き
ということで、VS2番戦です。
ドゥーエさんは
1番さんがクールビューティー、3番がシグナム系、4腹黒、5ロリ
となると、4に慕われるくらいの完璧姉を考えて、姉御になりましたw
後ディードのこの展開は予想できなかったでしょう。
拍手レス
>鬼丸さんへ >>あ、天井削っちゃった、いけないいけない
>グーです。
意外なところが好評ですね。
これにくるとは流石に予想外でした。
>作者よ!一言申す!!ご都合主義万歳!(ぁ
ハッピーエンドのためなら良いのです、作り物の神様が認めていますw
>鬼丸さんへ
>今回も面白かったですw
>今回勝つことによってディードにフラグ立ててるような気がするんですが気のせいでしょうかww
よって4番に対する殺意が生まれていますw
>シリアスが苦手らしいですが焦らず頑張ってください!
ありがとうございます。
今回も3週間近く空いてしまいました、申し訳ない。
>ああ、やっぱり鬼丸さんちのフェイトさんはかわいいなぁ
すっかりポンコツ定着ですな、ポンコツの件で「フェイトは俺の嫁」を自称する友人と冷戦に(え〜
>ケイスケはMSでいうとフラットですね。
民間用ですが戦闘も出来ると、いい選択です。
>質量兵器と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、トライガンのパニッシャーだったり。
ウルフウッドLOVE
今でも泣いてしまいます……
アニメもいいですが、漫画版は涙無しには……
>対物使ってこれかよ。魔道士ってどんだけチートだって話だ。
>というか、どうやってゆりかごに行くんだーーー!
ドゥーエさんから貰いました。
ウェンディがティアナに貸そうとした所からある程度数があると判断しました。
このくらい戦力差が無いと質量兵器排斥は難しいかなと。
>鬼丸さんへ 間違ってるのはケイスケじゃない世界の方だ。
おお、そもそもリリなの世界で戦闘力が低いのが間違っている?
>いやぁ〜面白く見させていただきました次回が楽しみです(^^)
お待たせしました。
熱血展開です。
>なのは「天の砲王は落ちぬ!!!
>南斗砲王拳奥義『星光十字崩(スターライトクロスブレイカー)』!!!!!」
>クアットロ「きゃぁああああああ!!??」
>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みんな「なんというフルボッコ。 (汗」
>のりでなのはさんをサウザー風に仕立て上げました (\\)b
おっ師さんーーーーー!!
せめてぬくもりの中で……
>鬼丸さんへ 以外とマトモな武装でしたね、
>てっきりトムキャットあたりでゆりかごに突撃かますと思ったw
ヘリは難しいかもしれませんね。
なにせガジェットが沢山いるので、ARMSの無敵母さんのセリフからして。
>鬼丸さんへ おお!ウィンチワイヤー付のアームガードにオリハルコンブレード(違)ですか!!
>スプリガン最高っす!
>惜しむらくはA・Mスーツがあってもこのチート世界では大して役に立たないことですか、
>あ、サイコブローは効くかな?。
>でもケイスケなら十分スプリガンやれそうな気もw次回も楽しみにしてます。
>がんばってください
実は大変参考にしました(バレバレというツッコミは無視)
あっちのティアさんは素晴らしくリリなの魔導師に強いかも。
>何故だろう…ケイスケがどんどんヒロインに見えてきた…がんばれケイスケ、
>ヒーロー(ヴィヴィオ)を取り戻すその時まで
え? これはいわゆる、デモンベイン瑠璃ルートだったのか!!
>アレ?意外と真っ向勝負?これが若さか…
>もっと卑怯番長的な戦い方かと思ったけど…
アジトとかが分かってませんでしたから無理でした。
卑怯番長はやる前に大変努力されてると思います。
>…これはまた、いろんな意味で凶悪な…だがこれでこそケイスケといったところか…。
意地と気合と根性が無ければこの世界で埋没します。
>ぜひヴィヴィオ救出時には「悪戯っ子の目を覚まさせに来たぜ」とボロボロの体で言ってほしいですね。
おお、でもそんなにカッコいいセリフは出ないでしょう。
結構ギリギリなんです。
>ケイスケのイメージCVって決めてあるんですか?
小西さんが良いと言われたことが。
カミナアニキですね。
>そーいやさ、ケイスケの作ったカートリッジってさ、うまくすりゃリープレールガンの
>弾みたいなの作れないかねぇ?
>…リープレールガンのネタわかるかな?
ロストユニバース!! 分かりますよ、ヤシガニ。
でもアルカンシェルに近いですし。
何よりソードブレイカー内部でしか生成できないようなのが量産は
>ケイスケへ 俺のお古で悪いが、かしてやろう チェーンソー、ガラスの剣、かくばくだん だ。
>かみをもバラバラに出来る概念が篭ってるぜ
SAGA1ですか……懐かしい、何度もチェーンソーに逃げてしまったのもいい思い出。
>鬼丸さんへ、魔力もなく才能もなく武装しても高見には決して届かない不器用な男・・・。
>けれど一度決めた信念と意地で戦い抜く彼に共感と憧れを持ちました。やべぇ、
>ちょっと泣いた・・・。
そこまで……ありがとうございます、他に言葉が出てきません。
>いやーケイスケの戦い方は見てて気持ちがいいですわww
>魔法使えないのが更にミソですしwwww
完全に0って訳でもないのですけどね。
ほとんど無いに等しいですが。
>そのうちディードも「理想を抱いて溺死しろ」とか言うようになるんでしょうか。
>なったらヤバいでしょうけど
……教会の有望シスターはそんなこといいませんよね?ね!!
>鬼丸さんへ 三年後にはスバルとの階級差が広がったなケイスケ
そうですねwこのままでいれば確実に。
>ケイスケの機動六課の日々 その26 感想
>ケイスケが使う質量兵器の密輸品、
>他の次元世界の技術レベルの設定次第でえらいことにならないだろうか
全くです、よってこのくらいのレベルに。
マップスレベルだと色々終わります。
>今日でケイスケの年齢を追い越してしまった・・・
>どこか寂しいなぁ・・・
誰もが通る道ですな〜私は幽助の時に感じました。
>鬼丸さんへ
>ケイスケの機動六課の日々その26感想 2番さんはどーなるのでしょうか?
>まさかケイスケと・・・
こうなりました、ガチの殺し合いです。
追記 拍手は出来るだけあて先を書いて送ってください。
拍手はリョウさんの手で切り分けられています。
私だけでなく、ケイさんやシエンさん、ツルギさん達の物も誰宛か分かるようにお願いします。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、