悪いことは続けて起こるものだ。
2月14日朝。
チョコレートの匂いが鼻についた夜から数時間後。
緊急の召集が掛けられた。
せっかくの休暇がなくなってしまった。
数時間前の事が頭から離れず憂鬱な気持ちで六課に向かっていた。
エリオが二日酔いでとてもじゃないが出勤出来そうもなく、その言い訳を考えるのも一役買っていた。
そして、玄関をくぐり、ロングアーチに入る。
……でコレなに?
なんか六課の様子がおかしかった。
上は部隊長をから下は二等陸士まで、皆そわそわと落ち着きがなかった。
一体なんだ?
なにが起きたんだ?
俺は空気を読む事にかけては自信はあるが……
今回ばっかは、まったく分からん。
部隊長や隊長達は今まで見たことがないほど上機嫌だった。
ちょっと待て……数時間前まで大泣きしてたよなフェイト隊長……
なんか凄ぇ笑顔なんだけど……
しかし……部隊長達のあの化粧……
以前、アレより気合いが入ってやがる!
誰か注意しろよ!
俺は二度と御免だぞ!
副隊長達は、いつもの取っ付きにくい空気は周りになく、ほんわかとした空気が漂っている。
シグナム、ヴィータ副隊長達のあんな姿なんてレア中のレアだぞ。
ただ……
なんでシャマル先生ドレスを着てるんだよ!?
誰か突っ込めよ!
特に副隊長達!
あんたらの昔からの仲間がテンパったことしてるんだぞ!
って、なんで二人ともシャマル先生の姿を見て、露骨に舌打ちしてるんだよ!
なんだよその、してやられたって顔は!
おかしいだろ!そのリアクション!
こうなったら、ヴォルケンリッター最後の砦、ザフィーラさん。
って、えええええ!
視線を向けたその先には、殺気をみなぎらせて、黒いオーラを全身から立ち昇らせて、顔を俯きながら、なにかをブツブツと言っているザフィーラさん……
あんたなにしての!?
勇気を振り絞って近付いて、聞き取ってみる。
「殺す殺す殺す殺す。今度こそ確実に殺す。あの喉笛を食いちぎる。殺す殺す殺す殺す」
…………今日は天気が良いな〜(現実逃避)
さて、気を取り直して横を見る。
ってランスター!!
なんでそんな単色な瞳でデバイスをいじくりまわしてるんだよ!
しかも彼女もなにかブツブツつぶやいているし……
あんたもなにしての!?
勇気を振り絞ってトライアゲイン!!
「絶対に絶対に絶対に今度こそ勝ってみせる。決着をつけてみせる。絶対に絶対に絶対に今度こそ本気を出させてやる」
……闘争心が豊かなことは良いことだ……よな……?
しかし、一体何が起こったんだ?
俺が思考の海に埋没していると、
「けーさん、おはようございます」
「ん?ああ、おはよう」
「うわ〜皆さん楽しそうですね〜」
「キャロ……あれが楽しそうに見えるのか……?」
「はい。皆さん目をキラキラさせて……よっぽど楽しみなんですね」
「キャ、キャロ、このカオス空間が出来上がった理由を知ってるのか」
良かった。これでカオス空間の突破口が見えてくる
「あのお方様が帰って来られるんですよ」
……あのお方様?
誰のことだ?
ってちょっと待てよ!
今キャロはなんて言った?
「すっすまん、もう一度言ってくれないか。どうも、耳の調子が悪くってな」
「えっと、あのお方様が帰って来られるんですよ」
ジーザス……俺の聞き間違いじゃなかったよ……
お方様ぁ!?
様付けってなによ!?様付けって!?
どこの王様だよ!?
「なっなあ、キャロ……そのお方様っどんな奴だ?」
「あのお方様はですねぇ……」
あのお方様……
しかし、キャロの瞳はキラキラと輝いて、口調は熱を帯びている。
どうやら、そのお方様ってのに相当な思い入れがあるみたいだ……
まぁ、いいか、取り敢えず話を聞くか。
………
……
…
ちょっと、待て……話を聞いて余計に分からなくなってきた。
・管理外世界の支配者。
・難事件の数々を一人で解決。
・守護騎士全員が愛の奴隷。
・ガジェットを一人で山のように叩き壊した。
・ギガントを空手で防いだ。
・シグナム副隊長の剣を素手で受け止めた。
・オ−バーSランクの魔導師相手に素手で勝利。
等々、普通なら信じられないことばかりだが、この話の出所はシグナム副隊長とシャマル先生。ガジェットを山のように叩き壊した現場はキャロ自身が実際に見たと言っている。
信じるしかないだろう。
要約すると、
めちゃくちゃ強くて、物凄くモテて、唸るほど金を持っている権力者になる。
天は二物を与えずって言うけど、中にはいるんだな、そんな完璧超人が……
しかし、シグナム副隊長やシャマル先生は分かるけど、ヴィータ副隊長まで落とすとは……
守備範囲が広いってレベルじゃねぇぞ!
いやそれより、あの三人のフラグをどうやって立てたのかが気になって仕方ねぇよ。
しかも同時攻略とは恐れいった。
俺は、そのお方様ってのに興味を持った。
よし、もう少し頭を回転させて、お方について考えてみるか。
まず、あの三人のテンパってる理由は分かった。
次は部隊長達だ。
これについては想像はつく。
あの三人を落としたと言うことは、部隊長と繋がりがあるはず。
部隊長達は同じ管理外世界、たしか日本という国の出身。
と言うことは、その日本の支配者と言うことか。
日本なら俺も行ったことがある。
と言っても部隊長達の故郷しか見ていないが……
あの時の事をもう一度思い出す。
なにか、なにかヒントがあるはずだ。
………
……
…
!
思い出した!
確かあれは飯を食った後だ。
風呂に入る前に腹ごなしにゴロゴロしていたとき、美由希さんがテレビを見ていたので俺も一緒に見せてもらった。
確か、その番組は、日本の支配者が暴れまわっている番組で……分かった!その支配者が!あのお方様の正体が!
「なぁキャロ、そのお方様って、刀って呼ばれる独特な剣を使うか?」
「はい、使いますよ」
「そのお方って暴れん坊か?」
「あっ暴れん坊と言うか……まぁ色々な騒動の中心にはいつもいますよ」
若干言葉を濁したが、キャロの反応から言って、暴れん坊で間違いない。
暴れん坊で刀を使う、日本の支配者と言えば!
あのお方様しかいない!
そう『暴れん坊将軍』!!
……凄いのと知り合いなんだな部隊長……
これで他の皆のテンパっている理由が分かった。
部隊長達はあの様子からいって将軍に惚れているな。間違いなく正室か側室の座を狙っている。
あの気合いの入れよう、そうとしか説明がつかない。
しかし、フェイト隊長、昨日あれで吹っ切れたんだな……
エリオ……俺が支えんでも、フェイト隊長はたくましく生きているぞ。
たくまし過ぎて涙が出て来そうだ……
次はザフィーラさん。
彼が、ああも殺気立っているのは、いくら将軍だからといって、仲間と主を全員盗られては男としては良い気はすまい……
俺だって周りの女性全員が全員、一人の男に盗られれば、そいつをみっくみくに……じゃなくてフルボッコにしてしまうかもしれん。
でも相手は将軍なんだぜ。
上様なんだぜ。
無理だよ。
諦めるしかないだろザフィーラさん。
……って!なぜ一瞬、将軍にスバルが盗られて俺が立ち向かうイメージが沸いたんだ?
無理だって、切腹させられちまうよ!!
「おはよーケイスケ。今なにか考えていたでしょう」
なぜか、嬉しそうな笑顔で挨拶してくるスバル。
「気のせいだ気のせい、ほらとっとと席に着かんか」
スバルは、わかったよーと機嫌良く答えて自分の席に行った。
いやーびっくりした。
あいつ、時々みょーに感が鋭い時があるんだよな。それにしても機嫌が良いな。朝飯にアイスでも食ったのか?
まぁどうでもいいけどな。
それより……ランスター……
彼女は……自滅したのだ……
彼女も将軍に惚れているのは分かる。
しかし彼女の本質はツンデレ。
そう、彼女と恋愛をするなら、必ずツンの洗練を受けなければならないし、受けさせなくてはいけない。
だが、相手は将軍。
いくらなんでもツンは不味すぎる。
下手したら切腹ものだ。
ランスターもそこら辺りは重々承知をしているみたいだ。
それでも、彼女の心が、魂が、吼えるのだろう……
ツンを捨てればツンデレにあらず。
すなわち、ツンデレではない私に一体なんの価値があるのか!と……
自身のアイデンティティと切腹との板挟み……
その末にランスターは壊れてしまったのだ!!
うんうん……俺はランスターを忘れないよ。
ポンポンと肩を叩かれた。
振り返ると、
「ねえケイスケ、今とっっっても失礼なこと考えてたのかな、かな」
「いや全然。それより、今日は随分と綺麗だな。もしかして、好きな人でも来るのか」
内心の動揺をおくびにも出さず、冷静に切り返す。
「そっそんなことないんだから!あっあいつの為にきっ綺麗にしてきたんじゃないんだからね!」
そう、ツンデレしながらランスターは自分の席に戻って行った。
やれやれ……
それにしても、将軍には興味は尽きないな。
六課だけでも七名を落としている。
あのじゃじゃ馬……じゃなくて、個性的でアグレッシヴな連中のハートをここまでガッチリと鷲掴むとは……
まさに、暴れん坊将軍。
一人の男として、敬意を捧げたい。
しかし……ハーレムか……
うらやましいのぅ、うらやましいのぅ。
俺も一度は味わってみたいのぉ。
「ケイスケ。今なにか考えていたでしょう」
なぜか、目が笑ってない笑顔スバル。
「いっいや全然」
あまりの恐さにどもってしまった。
「ふーん」
不機嫌そうに席に戻っていくスバル。
さっきまで機嫌が良かったはずなのに……なぜ?
まあいいや、そんなことより仕事だ、仕事。
部隊長達にとっては重要なことかもしれんが、同性かつ、事務員の俺にはなんの関わりもないイベントだ。
部隊長達は現在、使い物にならんから、俺達事務員がしっかりしなきゃ不味いな。
そう考えて、机に座り書類作業に取り掛かろうとしたら、
「ケイスケ君〜夕方頃に私達の大切な人が来るんやけど、歓迎パーティーの準備をしてほしいんよ」
とんでもないことを部隊長に言われた。
「え゛っ!?いや、部隊長、俺そういうの苦手でして……」
「なに言ってるんや。海鳴に来たとき率先してやってたやん。私達はまだやることがあるから手伝えへんけど……頼むで〜」
そう言って、部隊長達は足早に去っていった。
ちなみに、去り際に、
「あっそうそう。あの人は、メロンが好物やさかい、たっぷりと用意しといてや……まさか、シャマルがドレスで来るとは……私も用意せんとな」
「ちょっ、おまっ!?」
「ばいばいな〜」
なんて、ふぁっきんな事をほざいて去って行った。
………
……
…
歓迎パーティーの準備はつつがなく進行していったが、一つ問題が生まれ俺は悩んでいた。
『あの人は、メロンが好物やさかい、たっぷりと用意しといてや』
八神部隊長はそう言っていた。
普通に考えれば、メロンを用意すれば良いだけの話であるが……
相手は将軍。
万が一にも粗相があれば、腹を切る羽目になるかもしれない。
考え過ぎだと言うくらい考えなければならない。
もちろん、メロンは山のように用意する。
しかし、『メロンが好物』
これは、隠語としての意味も含んでいるのではないだろうか……
相手は暴れん坊将軍。
稀代のスケコマシ。
六課だけで七名を落とした、あっちも暴れん坊将軍。
と言うことは、やはり女か……
女とメロンを結びつけるものとは一体?
………
……
…
!
ギン姉さんか!
将軍は巨乳がお好きか!
と言うわけで、108部隊に連絡。
しかし、
「あー……ナカジマ陸曹ですか……彼女は現在、奴が帰ってきたとのことで対策課隊長として出向しており108部隊には居ないんですよ」
出世したな〜ギン姉さん。対策課の隊長かよ……って!ギン姉さん居ないのかよ!!
うわ〜どうすんだよ!
他に巨乳な知り合いなんていないぞ!
しかも、たっぷりと用意しなきゃならねぇんだぜ……
どうする、どうすれば良いんだ!
考えろ!考えるんだ!
いままでだって、様々な危機を乗り越えてきたじゃないか!
追い詰められた俺の脳味噌はフル回転。
そして、思いついた。
それは、圧倒的閃き。
これなら、これなら、全ての問題が片付く。
安堵のため息と共に、とある場所へ連絡を入れた。
そんなこんなで、ケイスケは将軍歓迎の準備に奔走する。
ここで物語の、時間を少しさかのぼらせて頂く。
ケイスケが、星見の丘にてフェイトに胸を貸していた時間帯。
もう一人の主人公に視点を移す。
どこまでも続く星の海。
漆黒の闇が辺りを支配する。
その闇の中、ひときわ青く光る美しい星が見える。
見るもの全て魅力する青き星。
一隻の船が闇をの中、その青き星を眺めていた。
数多の戦いを繰り返してきたのだろう、
船体はボロボロ。
満身創痍という言葉が似つかわしい。
その船の中、艦橋に立ち、一人の男が愛おしいそうに青き星を眺めていた。
この男も例外ではなかった。
「地球か……なにもかも……皆懐かしい……」
目を細めて、感慨深げにそう呟く。
「なに浸ってるですかー!」
パカンと頭を叩かれた。
「痛え!なにしやがる。一年振りに地球戻って来れたんだぞ!少しは浸らせろ。それともあれか、『地球は青かった』って答えりゃ良かったのか!?」
「うるせぇ馬鹿!今回ばっかりは、バッテンチビの言うとおりだぜ!お前がそもそもメロンジュースをこぼすからいけないんだろ!どうすんだ!地球が目の前なのに、うんともすんとも言わねーぞ」
「アギトちゃんの言うとおりです。どうするんですか、はやてちゃん楽しみに待ってるんですよ」
「知るかそんなの!……ってなんで、はやてが今日戻って来ること知ってんだよ!?」
「交信可能エリアに入ったから、ミヤがすぐに連絡したです。今日の夕方ぐらいには戻るって伝えておきました」
「だぁぁぁ!なんでお前はそう余計な事しかしないんだ!」
「何が余計な事ですか!そもそも、はやてちゃん達に黙って冥王星に行くこと事態間違いなんです」
「あいつらが知ったら絶対に付いてくるだろうが!仕事どうすんだ!?六課を閉める気か!?第一、報告出来る状況下じゃなかったろうが!それにこれは俺の仕事だ」
そう、これは俺の仕事……
一年前の2月13日。
俺の探偵事務所に一つの依頼が舞い込んだ。
「冥王星で巨大宇宙ミミズが発生したから退治してくれ」
「帰れ」
最初は自分の耳を疑うどころか、依頼主の脳味噌を疑った。
しかし、それが事実であることと(どうでもいい)、それによる被害が人類に多大な影響を及ぼすこと(少し気になる)、そして莫大な報酬金(重要)&メロン一年分(最重要)に俺は動かされた。
それに本音を言うと明日のバレンタインが少しうっとおしいと思っており、まさにこの話は渡りに船だった。
ただ……即日宇宙に飛ばされるとは夢にも思わなかったぜ。
その時、たまたま事務所にいた、ミヤとアギトは無理矢理付いて来たが……おかげで、他の誰にも告げずに冥王星まで行く羽目になった。
まぁ、帰ってきた時のアリサの折檻が怖かったので、大気圏を突破した辺りで、一応連絡は入れておいた。
留守電に……
その後、俺達は様々な出会いと別れと戦いを繰り返し、冥王星にて巨大宇宙ミミズと戦った。
そのあたりの話を語れば一日や二日で済む話ではないので割愛するが……
「なんか考え込んでるとこ悪いけどよ、実際どうすんだよ?宇宙船直せるのか?」
「うーみゅ、それは不可能だ」
「じゃあ、どうすんだよ!どうやって地球に戻るつもりだよ!」
「安心しろ……まだ秘策が残っているわ!」
「うう……なんか嫌な予感がするです」
……
…
宇宙服を身にまとい酸素ボンベを担いで、アギトとミヤのダブルユニゾンをして船外に出る。
「アギト……景気良くこの宇宙船を爆破しろ」
「なっ!?なに言ってるんだ!お前大丈夫か!?」
「動かない宇宙船に用はない。それだったら、こいつを爆破して、その爆風を推進力として地球に進めば良いじゃねぇか」
「でっでも!大気圏の摩擦熱で燃え尽きちゃいますよ」
「そこでミヤ、お前の出番だ。お前の冷凍魔法で俺を冷やせ」
「でも……」
「そりゃあ……」
俺様のナイスアイディアにも難色を示す二人の妖精。
仕方ない……
「ええい!落ち込むな!この作戦は、俺達三人のうち誰か一人が欠けたって失敗するんだ!逆に言えば、俺達三人が力を合わせれば成功する!ミヤ!アギト!俺はミヤのアナザーマスターでアギトのロードだ!少しは信頼してくれ!俺はお前達を誰よりも信頼している」
キラリンと意味もなく歯を光らせて、心にもないことを平気でうそぶく。
しかし、二人の妖精を納得させるのには十分だった。
「しっしかたないですね。ミヤが手伝ってあげます」
「ふっふん!まぁ、そこまで言うなら力を貸してやらないこともないぜ」
ふっふっふ……単純な奴らめ。
二人の妖精の力を使い、計画を実行する。
宇宙船の爆破し、その爆風による推進力を得て、地球の重力圏に入った。
重力圏に入った彼等は否が応にも地球に引っ張っられる。
うむうむ、計画通りだ。
しかし、アギトの奴……
景気良く破壊し過ぎだ!
宇宙船が跡形も無く消しとんでいるぞ……
まぁお陰で、予想以上の推進力を手に入れたから良いが、一歩間違えたら偉い騒ぎだぜ。
アギトの凄まじさを改めて認識する。
そうこう考えているうちにだんだんと周りが赤熱化してきた。
温度が急激に上がる。
しかし、周りには氷点下よりなお低い温度を発する白銀のバリアが張られている。
「凄い……凄いです」
「感心してないで、もっと冷凍魔法の力を強めろ。少しでも緩めれば黒こげになるぞ!」
「でも、本当にすげーよな。これなら大気圏を突入出来るぜ」
「だぁぁ、アギトも無駄口叩いてないでミヤをバックアップしろ!俺だってなけなしの魔力でバックアップしてるんだぞ」
「たっ確かに……アギトちゃんもバックアップに回ってくれると助かるです」
「ちっ、仕方ねぇなー……なぁところでさ」
「なんだ?くだらない事なら後にしろ」
「違う!ちゃんと落下地点、計算してるよな?地球ってほとんどが海だろ?大丈夫なのか」
彼から聞かされた作戦は、大気圏に冷凍魔法を使用して突入するまでであり、それ以降は聞かされていない。
もし、太平洋のど真ん中に目も当てられない。
まぁ、彼の事だ。
悪知恵も働くし、ちゃんと考えているだろう。
だから、アギトとしては何の気なしに言ったことだった。
「あっ……」
その一言は、全てを凍らした。
その一言は、先の質問に対して充分過ぎる程の回答だった。
それはそれは、長い、長い沈黙の後……
「「リョウスケの馬鹿ぁぁー!!」」
「ノォォォォォォォォォ!」
ミヤとアギト、二人の妖精と一人の男……いや、宮本良介の悲鳴が宇宙に響き渡った。
次回予告
役者は揃った。
目指すべきは大団円。
しかし、彼らを襲う悲劇はまだ続く。
曲解と暴走の果てに幼き戦士達が相対す。
NEXT 「三つの力」
あとがき
本当は二部構成にしようと考えていたのですが、尺が長くなったのと、話が若干飛んでしまったので三部作に急遽変更しました。皆さんすいません。バレンタインSSと銘打ち、まだ完結していない体たらくでm(_ _)m
後半は、なんとか早く書き上げます。