こたらの作品は『ギンガエンド〜似顔絵』を最後までご覧になってから、覚悟を決めた方だけお読み下さい。

ギンガには監視がついていた。 

監視と言っても、ギンガの状態を心配したゲンヤが、部下に頼んで秘密裏に護衛していただけのことだった。 

ゆえに、宮本良介生存の報せが、すぐさまゲンヤに報告された。

その朗報にゲンヤは驚喜した。

気落ちしている、二人の娘はもとより、機動六課の自分の娘と思っている、隊長達も元気になる。
あの事件以降、顔には出さないが、随分と気落ちしているのは、手に取るように分かっていた。
解決策が見あたらず、自分の無力さに歯噛みもした。

しかし、もうそんなことに悩む必要は無くなった。

全てが上手くいく。そう確信した。

しかし、その喜びは長くは続かなかった。 

続く報告にゲンヤは固まった。

「ゲンヤ隊長、大変です。公園に誰も居ないのを良いことに宮本の野郎とギンガの姐さんが濃厚過ぎるキスをしています。
接吻です！ベーゼです！ありゃ乳くり合う五秒前ですぜ！
宮本の野郎、生き返るだけじゃ飽き足らず新たな生命を誕生させるつもりですぜ」

彼の事は認めている。彼になら娘を任せても良いと思っている。

ギンガも彼の事を好きみたいだ。 

俺も年だし、娘の子供……孫の顔が見たかった。

きっと可愛い孫だろう。

……さあ、現実逃避はもう良いだろう。

現在、108部隊には隊員の指導強化を目的に機動六課から出向してきている人物がいた。

そっと横を見る。

無表情だった。

それはもう、恐ろしいくらい無表情だった。

しかし内面は、通り名のように烈火の如く怒っているだろう。

「すまないが」

冷徹な、それでいて怒気を孕んだ静かな声。 

「なっなんだね」

あまりの恐さに足が震え、どもってしまった。

「緊急の用事が出来ました。今日はこれで失礼させて頂きます」

そう言うと、彼の返事も待たずに足早に去っていった。

ゲンヤは恐怖した。

ギンガの安全はもとより、機動六課の自分の娘と思っている、隊長達が元気になり過ぎてしまう。
今度こそ、塵も残さず宮本は消え去るだろう……
救済策が見あたらず、自分の無力さに歯噛みした。

全てが滅茶苦茶になる。と言うかなった。そう確信した。

烈火の騎士からの報告により機動六課のドンは怒っていた。

宮本良介生存の報告はドンを大いに喜ばせたが、続く乳くりベーゼの報告はドンを激怒させるには十分だった。

ドンは、部下の怒れる騎士三名を引き連れ出撃した。

烈火の騎士が帰ってから数分後、やっとフリーズから解けたゲンヤはまず、監視に連絡した。

「もしもし、聞こえるか、への28！応答しろ、への28！応答しろ」

「もしもし、こちら、への28。どうしました」

「そこは危険だ。至急避難しろ。至急避難だ」

「危険！？ある意味危険ではありますが、避難するほどのことではありません。むしろ、気合いを入れて監視します」

「その危険じゃない！というか、アホな事言ってないで、至急避難するんだ！」

「待ってください隊長。高速で飛行する物体をキャッチしました。数は四つです。凄い速さです」

「それが危険なんだ！ってか早すぎだろあいつら！？いや、それより早く逃げるんだ！への28、早く逃げるんだ！」

「なっなんだ、あの魔法は！隊長！あっあんな魔法は見たことありません！隊長！助けてください！隊長ぉぉぉー！」

ブツンと音を立てて、音声が途切れた。

「大丈夫か！への28！大丈夫か！応答しろ！への28！……くっすまん、への28……」

隊長室に悲しい声が木霊した。

同時刻公園にて。

いきなり空から降り注いだ超魔法の数々によって公園は焼け野原になっていた。

近くの草むらから「タイチョォォォー」と謎の叫び声が聞こえたが、それはスルーした。

少し前まで、ギンガと良い感じになっていた筈なのに、そんな甘い空気は全て吹っ飛んだ。 

なんだこの地獄絵図は……

あまりの出来事に腰が抜けてしまった。 
ギンガも、俺に抱きついて離れない。

空から鬼達が降ってきました。

顔を真っ赤にして般若みたいな形相で降りてくる、巨大なハンマーを振り回す親分ことヴィータ。
まさに鬼に金棒状態。

にっこり笑っているが、腹の中では何を考えているか分からない、鬼達の知恵袋、シャマル。
笑っていない笑顔が素敵に恐いです。

恐ろしいほど無表情な顔をしている、剣の師匠であるシグナム。でも俺には分かる。彼女が激怒していることに。
だってレヴァンテインを全力で握っている為か、刀身がカタカタ震えているんだもん。
頼むから無表情でレヴァンテインを突き付けないでください。刀身がカタカタ震えてマジで怖いです。

そして、そんな鬼達のボスであり、鬼ヶ島……じゃなくて機動六課のドンこと、八神はやて。
昏い瞳でガン見しないで下さい。
昔、闇の中に沈められたトラウマからか分かりませんが、体の震えが止まりません。

「良介〜生きてたんか〜ほんまうれしいわ〜」

声と表情の違いがありすぎて、滅茶苦茶恐い。

逃げようと思っても腰が抜けてて動けない。 

「どうしたん？口パクパクさせてから……さてはうちらに会えて嬉しいんやろ。そやな、うちら、家族やもんな。
死に別れたと思っとった家族が生きてるなんて、そら嬉しいわ。
なにはなくとも、一番始めに家族に連絡するよな。ま・さ・か！家族に連絡怠って、公園で、ち・ち・く・り・あ・う！
なんてことないよな」

クイントすまん、またお前の所に逝きそうだ。 

「この馬鹿子分！生きてんならすぐ親分に連絡するのが筋だろう！
それを、それを、公園でギンガと、ちっ乳くり合うだと！二度とそんな事、出来ないように、たっぷりとお灸を据えてやる」

グラーフアイゼンをビュンビュンと振り回すヴィータ。

そんな気合いの入ったお灸は貰いたくないです。

「良介さん、安心して下さい。これは愛の鞭です。ただ私も、ちょーと頭にきてますから、鞭と言うより拷問ななるかもしれません」

鞭と拷問じゃ差があり過ぎなんだが……というか、なんでそんなに笑顔なんですか……

「宮本……私は弟子の教育の仕方を間違えたのかもしれん。今から手取り足取り一から指導してやる。
なに安心しろ……泣いたり笑ったり出来なくしてやるぐらいだから」

ぐらいの使い方が激しく間違えていると思うのですが……

四面楚歌・絶対絶命。

そんな単語が頭をよぎる。

四人の視線……というか、メンチビームの域に達した視線は直視するのがキツ過ぎるので、視線を外して空を見た。 

人これを現実逃避と呼ぶ。 

お空見たら、なぜかクイントが笑顔で親指をグッと挙げていました。 

意味わかんねぇよ！ 

包囲の輪は縮まってきた。 

先ほどから震えて抱きついているギンガがもっと抱きついてきた。 

ギュ 

むにゅ 

ああ……ギンガのメロンが…… 

この状況下において、いやこの状況下だからこそ、鼻の下を伸ばしてしまう宮本良介。  

ブチ 、ブチ、ブチ、ブチ。

何かが四つ切れる音がした。

彼女達が各々の得物を振り上げた時、岩陰から一人の男が乱入してきた。 

不意を突かれた形になり、一瞬だが皆、硬直してしまった。 

その隙に、男はギンガを抱え上げ、惚れ惚れするような速度で逃げていった。 

「あっクソ！待て！ギンガを返しやがれ！」

「まぁまぁ、落ち着いて、それにまだ本命がいるじゃないですか」

「確かにそうだな。まぁ私としては、本命さえ居れば後は構わない」

「そやな、確かにシグナムの言うとおりやな。私も本命が居れば後はどうでもええわな。なぁ、本命君……」

ぽんっと良介の肩を叩く。

同時刻ゲンヤの隊長室にて。

マイクから音声が聞こえてきた。 

「への28か！？無事なのか！？応答しろ！への28！」

「こちら、への28。なんとか無事です」

「無事だったか！よし、現在の状況を説明しろ」

「現在ルート72で北に向かって逃走中。姐さんは無事に確保しました」

「ギンガは無事か！ところで……」

「……宮本の確保は不可能です」     

「そうか、まぁ良い。あいつらだって馬鹿じゃない。ちゃんと限度を持って宮本にお灸を据え……」

ドカーン！！！ 

マイク越しに爆発音が聞こえてきた。 

「どうした、状況を報告しろ」

「いや、わっわかりません。
一瞬、世界が真っ白になったと思ったら、凄まじい爆発音がして、振り返ったら公園から大きなキノコ雲が立ち上がっています」

「……わかった。そのまま帰投しろ」

「了解しました」

外を見る。 

確かに山の向こう側から立派なキノコ雲が見えた。 

彼が、宮本良介が戻って来たんだな〜としみじみと実感した。

あの慌ただしくも、面白い日々が戻ってきた。

まぁ、生きていたらギンガを傷物にした責任を取らせねぇとな。

さて、取り敢えず、始末書の準備でもするか。

すいません、はっちゃけ過ぎたのは分かっていたのですが、筆が止まらないこと止まらないこと。 
シリアスな話しを書いた反動でしょうか。
しかし、こんな愚作を許可して頂いた、アヌビスさんと、最後まで読んでいただいた、読者の皆様には深く感謝します