※ご都合主義で妄想満載な内容となっており、一部StS本編のネタバレも含まれております。
その辺りをご了承の上、お読みください。


作者は少し疲れているのかもしれません、脳が。

































〜〜〜〜召しませ☆ナンバーズ!〜〜〜〜



   〜戻ってきたよ数子達編〜














ミッドチルダ南西部、閑静な住宅街と適度な森林が広がるこの場所に、一人の青年が立っていた。


「ふ、ふふふふ、ふふふふ……ついに、ついに手に入れた…俺の、俺だけの、城をッ!!」


朝っぱらからとある建物の前で叫ぶのは、我等が主人公、宮本 良介。

自称孤独を愛する剣士、他称ロリに好かれる剣士という不名誉極まりない言葉で呼ばれることも多いのが最近の悩みな青年である。

彼の名誉の為に言うが、彼は決してロリコンではない。

ただ、好意を抱いてくる相手に何故か幼女が多いだけである。

勿論、同年代や少し下程度にも好かれているので、問題ないだろう。

ただ、ことごとく人外レベルな人が多いが。

それはそれで問題な気もしなくもないが、まぁそれは兎も角。

彼が居るのは、住宅街の一角に立つ、4階建の建物。

1階はガレージとなっており、シャッターが下りている。

2階へはガレージ横にある玄関から階段を登り、登った先には事務所として使える階層。

3階・4階はマンションのように3部屋に分かれており、社宅として使用可能。

屋上は見晴らしも良く、洗濯物を干すのに最適。

そして、玄関の上には、でかでかと『宮本探偵事務所』と書かれた看板が。

嫌に達筆だった。


「へへへ、長かった、長かったぜ…海鳴で借家の事務所を構えてから早数年…
来る日も来る日も地味な依頼や変な依頼や危ない依頼で働く毎日…正直メロンが無ければ諦めてたぜ…」


メロン一つで意思が復活する辺り、お手軽な剣士である。


「時空管理局がゴタゴタしている今、ミッドに事務所を構えれば儲かる! 
そうアリサに言われてミッドに移住したが、まさかこんなに立派な事務所兼自宅を持つ事が出来るとは…
一国一城の主、これぞ日本の伝統――――じゃぁないか、別に」


世の中、働くお父さん達にしてみれば強ち違うとは言えないが、男にすれば、自分の家を持つのは夢に違いないだろう。

自分だけの家、自分だけの城、自分だけの空間。

あぁ、なんて素敵な夢だろうか。

ほんのちょっぴり天下が獲れた気がして、良介の機嫌はうなぎ登りだった。

なのは達時空管理局からの誘いを断り、翠屋とかさざなみ寮とか諸々の誘いも断り、自分の事務所を構えた良介。

自分にはなのは達のように全部を救う、多くを救うなんて出来ない。

だから、自分の手が届く範囲の人を、そして世界を救う為に頑張っている妹達の“背中”を、
守ると決めた良介の、答えが探偵という仕事だった。

探偵とは言え、実質は何でも屋に近い。

ペット捜索からストーカー退治、浮気調査にミミズ(推定60m超)退治まで、なんでもござれの宮本探偵事務所。

海鳴時代では、ご近所の依頼から知り合いの依頼、深く関わりを持ってしまった時空管理局の下請けまで、幅広くこなして来た。

まぁ、時たま被害総額が報酬を上回って借金した事もあったが、評判は上々だった。

時折、管理局のSランクやらニアSランクの魔導師とかが手伝ってくれたりしたのもあるのだろう。

そして、晴れて今日この日、宮本 良介は次元世界の中心とも言える土地、ミッドチルダへと降り立った。


「これからはグローバルに、次元世界でも幅広く活躍してやるぜ」


幾つになっても男の子、野望を持つのは男の宿命、燃やせ天下の名探偵!

まぁ、頼りになるメイド、アリサが居なければ迷探偵になってしまうのが彼の彼たる所以と言うか、なんと言うべきか。

以前から他の世界で仕事はしていたものの、管理外世界である地球の海鳴からでは行ける場所、受けられる依頼に限りがあった。

しかしここは各次元世界への玄関口となるミッドチルダの首都クラナガンのお膝元。

ある程度の次元世界なら自由に行き来が可能なのだ。

立地条件に加え、彼のメイド兼秘書である“アリス・バニングス”のコネと人脈、
そして情報ネットワークは今や次元世界で上位に入るほど。

管理局の情報部署が、血眼でアリスをスカウトしようとしていたのは記憶に新しい。

まぁ、アリスには、アリサとしての仕事もあるので、主人である良介が管理局に入らない限り、彼女は話を蹴り続けるだろう。

因みに、良介にも管理局の、陸士やら執務官補佐やら武装隊やらからのスカウトが続いている。

特に執務官補佐へのスカウトは苛烈だ。

最近では保護している子供二人からも、執務官補佐の話をされる。

正直頭が痛い良介だったが、丁寧にお断りを続けている。

最近では、何故か聖王教会からも似たような話が来ているらしいが、割愛。

兎も角、彼は今日から、ここクラナガンを拠点として活動を始めるのだ。

因みに、こちらの世界の知り合いには一言も話していない。

話せば今頃、大挙して押しかけてきた事だろう。

レリック事件から数ヶ月とは言え、まだまだ問題は山積みなのだから、余計な事してないで仕事しろという彼なりの優しさ。

だが、言葉にしないので誤解されて怒られるのが良介クオリティ。


「ちょっと良介ー、不気味に笑ってないで引越し手伝いなさいよねっ」

「そうです、ミヤ達だけにやらせる気ですかー!」

「だぁぁ、分かった分かったよ、今行くっての」


2階の窓から声をかける、小柄な少女と、小さな妖精。

宮本探偵事務所の従業員にして“家族”、アリサ・ローウェルと、ミヤ。

その二人は、頭に頭巾、手にハタキと雑巾片手にお掃除の真っ最中。

この建物、以前までとある会社の会社兼社宅だったが、最近になって倒産。

建物は売りに出されていたのを、アリサが発見、買い取ったのだ。

因みに、お値段日本円で4千万円超。

かなり最新式な装備を備えた高級な建物であった。

そんな建物を、あの良介が!? と、彼を知る人物なら皆驚愕するだろう。

で、次の瞬間、どこの銀行襲ったのと聞いて、彼の拳骨を喰らう事になる。

資金に関しては、実はアリサが9割、残り1割を良介が払った。

つまり、ほぼアリサが自分で稼いだ金で買ったのだ。


「最近株とか先物取引がどうとか言っていたが、まさか現金一括払いが出来るほどとは……」


自分のメイドながら、その才媛な頭脳に軽く恐怖する良介。

最近彼は、アリサなら管理局のお偉いさんにタメ口ができるのではと本気で疑っている。

彼女のお得意様には、レティ提督を始めとして、大物が多いのだ。


「遅いわよ良介、10時には面接希望の子達が来るんだから、それまでに事務所だけでも形にしないと」

「家具は引越し屋さんが運んでくれたですから、細かい物を運んでください」

「へいへい、所長も人手が無ければ肉体労働か……って、面接ってなんだよ!?」


ミヤの指示に従って、書類関係が入ったダンボールを運んでいた良介が、気になる単語に反応した。


「呆れた、忘れたの? “こっち”で活動始めるとなると、人手が足りないって言ったのは良介じゃない」

「いや、言った事は言ったが、来たのか、希望者!?」


宮本探偵事務所は、実際の所良介だけが実働できるので、大きな依頼になるとどうしても人手が足りなくなる。

アリサは情報関係においては戦力になるものの、捕り物関係はNGだし、ミヤは基本良介のサポート。

以前までは、海鳴での仕事ならあの土地の知り合いに、他の世界なら暇な魔導師に頼んで手伝ってもらったものだ。

なお、助っ人率ナンバーワンは、久遠だったりする。

素直でお利口、しかも実は強い上に、報酬は一日遊んであげれば大満足。

元手が要らない上に癒されるので、アリサも上機嫌だ。

だが、久遠を常に借り出す訳にもいかず、魔導師達も常に暇ではない。

故に、そこそこ戦力になって、尚且つ良介について行ける人材を募集したのだ。


「来るわけ無いじゃない」

「来たのは、リョウスケが事前に却下した人たちだけです」

「マジかよ…って言うか、あいつらまた来たのか!?」


良介の言う、あいつらとは、以前(海鳴時代にて)所員を募集した時に来た面々だ。


「来たわ、電話でね。
『兄さんがまた所員を募集していたんだけど、管理局との掛け持ちはダメかなぁ…?』と聞いてきた教導隊の魔導師一人、
『名前だけでも、所属にできないかな…?』と聞いてきた執務官が一人、
『いっそ私の部隊の下請けってことでどないや?』と持ち掛けてきた部隊長が一人――――」

「もういい、ストップ。あいつら、本気で何考えてるんだ……」

「それだけ愛されてるって事でしょ、少しは答えて上げなさいよご主人様?」

「だが断る! 一度甘やかすと調子に乗るからな、ほどほどで良いんだ、ほどほどで。
つーかあいつらに事務所がここだって言って無いだろうな?」

「言って無いですよ、募集した時はまだ海鳴の借り事務所でしたし、はやてちゃん達もそっちに電話してきたです」

「結構。
こっちに来たって知れたら煩いからな、あの事件の後処理だってまだ有るだろうから、余計な騒ぎ起こしてギンガに逮捕されたくない」


胸を張って言い張る良介。

孤独の剣士も、スキル:部長を持つギンガには弱かった。


「……言わない方が余計に大事になるって、なんで想像できないのかしら…(ヒソヒソ」

「仕方ないですよ、リョウスケですから…(ヒソヒソ」

「? 何内緒話してんだよ? で、あいつら以外に希望者居なかったのに、誰の面接すんだよ?」

「面接って言うか、簡単な意思確認ね。これから先、長い付き合いになるだろうし、向こうも色々複雑だろうから」

「はぁ?」


アリサの言葉に首を傾げるしかない良介。

やがてアリサは自分が使うデスク回りを整え、自慢のコンピュータとネットワークを起動させる。


「ん〜、やっぱり空間パネルは便利ねぇ、海鳴じゃ大っぴらに使えなかったから普通のパソコンだったし」


空間に表示された画像や文章を、空間にタッチする事で操作していくアリサ。

その動きに一つの躊躇もなく、見事なものだった。


「お前、アレ出来るか?」

「うぅ、ミヤはあの半分以下です…」

「落ち込むな、俺なんてそれ以下だ」


空間ブラインドタッチ、もはや指の一つ一つが別の生き物に見えてきた良介とミヤは、改めてアリサの適応能力に恐怖した。


「ん〜、そろそろかな…」


コンピュータの立ち上げを終了し、溜まっていた情報を整理していたアリサが、時計を見て呟いた。

書類を整理していたミヤと、事務用品を整理していた良介がそれに釣られて顔を上げる。


「何がそろそろ――――「(バンッ)リョウスケさ〜〜〜んっ!!!」―――ぐほぉっ!?」

「う〜〜〜ん、逢いたかったっすよぉ、リョウスケさ〜〜んっ!!」

「ご、ごほっ、げほっ、お、おま、お前は―――ウェンディっ!?」


突然事務所の扉を開けて…と言うか蹴り破って現れたのは、つい数ヶ月前の事件で知り合い、敵対した少女。

戦闘機人の、ナンバーズ11、ウェンディだった。

そのウェンディに突撃(抱きつき?)されて脇腹をモロに殴打した良介は、目の前の少女に混乱するばかり。


「お前、なんでここに!? 逮捕されて留置場の筈だろう!?」

「えっへへ〜、脱走したっす」

「本気で!?」

「嘘っす」


良介、無言で拳骨(手加減無し)


「いっったぁぁぁぁっ!?グーで、グーで殴ったっす!?」

「喧しいわ! で、なんでお前がここに居るんだよ、確か今裁判中じゃねぇのか?」

「あ、それならチンク姉以下の姉妹達は終わったっす。ドクターやウーノ姉達は流石に無理だったっすけど」

「はぁ?終わったってお前………」

「保護観察処分という奴だ」


首を傾げる良介に、室内に新たに増えた声が答えた。

入り口を見れば、眼帯を付けた小柄な少女と、その後ろには知った顔が数名。


「お前は―――薔薇水晶!?」

「チンクだっ! まったく、なんでお前は私のことをそう呼ぶのだ?」

「ならチンkぉ「呼んだら投げるぞ?」――わかった、わかったから投げナイフは止めろ」


全く…と嘆息してスティンガーを何処かにしまうチンク。

ウェンディもそうだが、全員があの時のスーツではない、普通の服装をしていた。


「私以下の姉妹達は、何故かドクターに“無理矢理洗脳されて戦わされていた被害者”という事に成っていてな、裁判も早々に終了した。
処分は、保護観察処分、ただし、社会的奉仕を含んだものだがな」

「は? どういうことだ?」

「社会更生プログラムって奴よ。然るべき場所で、社会的常識とかの教育を行い、社会復帰を諭すの。
良介がギンガさんに受けてる奴だと思いなさい」

「あれか…そうか、大変だな、頑張れよ。じゃ、俺は忙しいので帰った帰った」

「えぇーーっ、ちょ、酷いっすよ、一番に逢いに来たのにその対応は!?」

「喧しいっ、こっちは引越しだの何だので忙しいっつーの! それに、なんで一番に俺の所にくるんだよ!?」


良介にしてみれば、迷惑かけた謝罪なら先になのは達の所に行けと言いたいのだろう。

謝罪に来たと思っているあたりが、良介クオリティだろうか。


「なんでって、そりゃぁアレっすよ…」

「あんな告白されたら…」

「ボク達じゃなくても惚れるよね」

「……(頷」

「あの言葉を聞いた瞬間、胸の奥が震えました」

「けっ、別にアタシは何とも思ってねぇけど…救われたのは確かだからな…」

「私は眠っていて生で聞けなかったが、あの言葉にはとても救われた…」


上から順に、ウェンディ・ディエチ・オットー・ディード・セッテ・ノーヴェ・チンクである。

全員が、どこか夢見る感じで思い出している内容を、良介も思い出し、顔が盛大に引き攣る。


「よ、止せ、止めろ、折角忘れ始めたのに思い出させるなぁぁぁっ!?」

「なぁに照れてるんっすか、あんな恥ずかしい言葉を素で言い放ったくせに♪」

「『俺があいつらを思う気持ちを、テメェで脚色すんじゃねぇッ!!』…凄く、言い切ったよね」

「他にも素で聞くと恥ずかしい台詞が満載でした」

「やめてぇぇぇぇっ!!!」


良介の頬を指で突付いて笑うウェンディに、声マネまでして再現するオットー。

真顔で言い放つセッテに、良介絶叫。


「あ、アリサ、こいつらを記憶を、いや、あの時の情報を全部消せ、頼むからッ!」

「無理よ、映像や情報を消したって、もうあの時戦ってた人達全員に聞かれちゃってるんだから」


人の口に、戸は立てられぬ。彼の大好きな日本の伝統的格言である。慣用句だが。


「畜生、なんでこんな事に……ッ!!」

「お前がオープンチャンネルで叫んだからだろう、馬鹿…」


床に orz の姿で蹲り、地面を叩く良介に、吐き捨てるように言うノーヴェ。

だがその頬が赤いのは、あの時の光景を思い出してか。

全身ボロボロになり、血塗れになりながら叫んだ、良介の姿と言葉。

その映像や言葉を聞いたナンバーズの一部は戦闘停止、残りはその決意を鈍らせた。

また、管理局側も彼の言葉を聞いて、戦闘機人を敵ではなく、保護対象として見る様になった。

『名も無い英雄の叫び』と称されたそれは、未だに管理局のデータベース、及び無限書庫に記録されている。

で、その当の本人は、冷静になって自分が口走った言葉に深く後悔していた。

主に、恥とかその辺で。


「ぐぅぅぅ、アレ以来ギンガはより一層熱を入れて俺を追いかけるし、最近じゃスバルまでそれを手伝い始末…畜生、俺の馬鹿野朗ッ!」

「まぁまぁ、カッコ良かったっすよ、あの時のリョウスケさん。もう、思わずキュンときちゃったっすよぉ…」


トロトロに蕩けた瞳で擦り寄ってくるウェンディ。

最初の頃から良介に好意的だった彼女は、あの一件以来完全に恋する乙女と化している。


「ていッ」

「(ビシィッ)あいたぁっ!?」


とりあえずウェンディの額にデコピンしてから、立ち上がる良介。

ふと気付けば、ウェンディ同様に好意的で、あの時イの一番に戦闘を止めたナンバーズが居なかった。


「おい、アイツは一緒じゃないのか?」

「アイツ?」

「ほら、モグラだよモグラ。チンク以下が終わったなら、アイツも終わったはずだろ?」


何となく、良介が珍しく友だと思っているエイミィと似た感覚が持てる相手、それが何故かここに居なかった。


「あ〜、セイン姉はっすね…」

「なんだよ…まかさ、アイツだけ有罪ってんじゃねぇだろうなっ!?」

「ちょ、く、苦しいっすよぉ…っ、あぁ、でもリョウスケさんの顔が目の前に―――へぎゅっ!?」

「リョウスケ、そんなにアタシに逢いたかったんだっ、嬉しいよっ!」

「ぶっ、も、もが、もがもがっ!?(な、なんだ、息が、息が!?)」


詰め寄られたウェンディが、突然頭上から押し潰され、詰め寄っていた良介の顔面が何かに包まれた。

頭上、つまり天井からISで現れたセインが、ウェンディを踏み潰して良介に抱きついたのが正解なのだが、
突然視界と呼吸を封じられた良介は混乱の極みだった。


「もが、もがーーーっ!?」

「あんっ、やだ、くすぐったいよぉ…」

「ちょ、本気で、重いっすよぉ…」

「お前たち…いい加減にしないかっ!!」


IS発動、ランブルデトネイター(威力極小)

騒ぐ三人の周囲に展開したスティンガーが小規模の爆発を発生。

見事に三人だけを攻撃。


「うぅ、チンク姉酷いよ…」

「あう〜、踏まれたり吹き飛ばされたりっす…」

「な、なんで俺まで……ガクリ」


威力が極小だったので、小さな爆風だけだったものの、何故か良介だけがモロ直撃で気絶した。


「はぁ…出待ちしてたのね」

「しかもISまで使ってです…」

「愚妹達の粗相、申し訳ないアリサ殿…」


呆れたように溜息をつくアリサとミヤに、赤面して頭を下げるチンク達。


「まぁ、とりあえず座って。簡単な説明とかするから」

「はい、しかし、本当に良かったのですか、私たちは、その…」

「別に、貴方達が戦闘機人だろうと人造魔導師だろうと関係ないもの。使える者は使う、それがアリス流よ?」


そう言って微笑むアリサに、チンクも表情を和らげてソファへと座った。

一応人数分のソファとイスが用意されており、それぞれ座るものの、気絶した良介の隣が誰かでプチ口論。

結果、ジャンケンとなり、勝者となったディードがオロオロしつつも何故か膝枕を強行。

セインとウェンディ、そして何故かノーヴェが激怒する事となった。


「………………んで、なんで数子達がここに居るんだよ?」


目覚めてみれば何故かディードの膝の上で、飛び起きればノーヴェの鉄拳。

頬を赤く染め、それを氷で冷やしつつ機嫌悪げに問い掛ける。


「ま、ここは私が説明するけど。彼女たちは、まぁあの事件の悲しい被害者ってことで、保護観察処分で決着になったの。
あの事件の裏には、最高評議会とか色々絡んでたし、管理局も彼女たちを一方的に責める資格もないから。」

「いや、だからって、なぁ?」


色々腑に落ちない良介。まぁそれが当然の反応かもしれない。


「まぁ、後は私が色々と…ね?」

「「「「「「「「っ!(全力で頷)」」」」」」」」


アリサの意味有り気な視線に、全力で首を縦に振るナンバーズ。そりゃぁもうブンブンと。


「レオーネお爺様の協力もあったし、裁判に関しての心配はしなくて良いわよ?」

「おい、レオーネって…(ヒソヒソ」

「三提督のお一人ですよぉ…(ヒソヒソ」


アリサの口から飛び出た名前に、盛大に頬を引き攣らせる良介とミヤ。

良介の、アリサは管理局上層部とタメ口疑惑に現実味が増してきた。


「で、保護観察の代行と、社会更生の為の教育を、家で引き受ける事にしたの」

「…………はぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」


一瞬、脳がアリサの言葉を理解するまで時間がかかったが、良介が叫んだ。

叫ばずには居られなかった。


「代行と教育って、家でかぁ!? 自慢じゃねぇが、俺はその二つと真っ向から対立した存在だぞ!」

「本当に自慢じゃねぇよ馬鹿」


ノーヴェの言葉に煩いと叫びつつ、アリサに詰め寄る良介。


「だいだい、代行だの教育だの、なんで許可が出るんだよ!?」

「まぁ、代行に関しては定期的に管理局の監査官が来るし、教育に関しては……あれよ、猛毒を持って毒を制する?みたいな?」


可愛くキャハっと笑うアリサ。

毒扱いされたナンバーズは苦笑だったが、猛毒扱いされた良介は頭を抱えた。

良く言えば(?)反面教師という奴だろう。


「まぁ、一部ナンバーズが良介みたいに成ったらどうするんだって恐怖で震えてる人達が居たけど……黙らせたから」


アリサの最後の一言で凍りつく面々。

ナンバーズは思った。

絶対にこの人だけは敵に回すのは止めようと。

良介は己のメイドがどこまで進化するのか、そろそろ本気で怖くなってきていたり。

まぁ、手放すなんて考え、毛頭無いのだが。


「それに、彼女たちは皆優秀な人間だもの、所員としてはこれ以上無いくらい最適じゃない?」

「まぁ…確かに……」


アリサの言葉を深く考える良介。

この探偵事務所に来る依頼は、実に様々。

一般的な探偵に来るような、浮気調査だの何だのよりも、巨大ミミズ退治だの、
凶暴な野生動物を捕獲してくれだのと言った、危ない仕事が実に多い。

それを考えると、彼女たちの戦闘能力は大変魅力的だ。

チンクは活動時間が長いので経験も豊富。おまけにISの破壊力は経験済み。

セインは戦闘能力こそ他の姉妹に比べ低いが、ISは潜入や調査には一番向いている。

セッテは空飛べる上に個体戦闘能力はかなり高い。

オットーは広域攻撃が出来る上に、結界やバインドも得意。

ノーヴェは前衛で活動できる上に、足が速い。

ディエチは砲撃や狙撃が出来る。

ウェンディは限定空戦が可能な上に、人員を運ぶ事が可能。

ディードは空戦も可能な上に、剣装備。しかも二刀流、やったね!


「……良いかもしれん……というか、明らかに危険じゃねぇかこの戦力!?」

「それくらいが必要な依頼も多いのよ。ミミズ退治なんて良い例じゃない」


アリサに言われて思い出す、何故か毎年恒例となっている、とある世界の巨大ミミズ退治。

毎回誰かに助っ人を頼むのだが、何十匹もの巨大ミミズ、大きいモノで100mを余裕で超える怪物相手に戦うのだ。

運良くなのはやフェイト、はやてが休暇中だった時は楽だったが、一人の時は本気で死を覚悟したりした。


「ってな訳で、暫くは所員として働いてもらいます。勿論、給料も払うし保険も安心しなさい。年2回のボーナスもあるわよ」

「わーいっ、お世話になりまーすっ!」

「これでリョウスケさんと一緒の職場…くぅぅ、職場恋愛ってのもアリっすねぇ〜!」

「無いわ、ボケ」


とりあえずウェンディにデコピン。


「まぁいい、色々疑問やら不満やら言いたい事も多いが、俺様は寛大だからな、纏めて面倒みてやろう。感謝しろよ数子ども」

「まぁ、一応の所長がコレだから、色々サポートお願いね。ほどほどなら攻撃しても良いから」

「了解しました、ギンガ殿とも彼の更生を手伝うと約束しましたし、全力で行きます」

「何が面倒みてやるだ馬鹿が、弱いんだからアタシに守られるのがオチだろう」

「でもそんな展開が待ち遠しい親分なノーヴェでしたとさっす」

「ウェンディっ、テメェっ!?」

「まずは、リョウスケさんを怪我させずに取り押さえる方法を考えないとだね」

「うん、私がツインブレイズで攻撃した隙に、オットーがバインドで…どうかな?」

「もしもの際は、私がスローターアームズで…」

「それよりも、私が狙撃した方が…」


胸を張って宣言するものの、アリサはチンクに良介の行動抑制を依頼、チンクもチンクでツッコミ所満載な返答。

ノーヴェは腕組んで嘆息するが微かに頬が赤く、それを突付いて遊ぶウェンディ。

オットー達はさっそく良介“の”取り押さえ方を相談し始めた。しかも実力行使系。


「畜生、俺所長なのに…」

「まぁまぁ、元気だしなってリョウスケ、ね?」

「セイン……」

「危なくなったらリョウスケは一番に逃がすから。じゃないと死んじゃうかもしれないし」

「畜生ーーーっ、俺だって、俺だってーーーーーっ!!!」


セインの優しいが残酷な事実の突きつけに、思わず走り出してしまう良介。


「俺だって、対人戦なら強いんだぞーーーっ!、魔法戦だって、ミヤやアギトが居れば戦えるんだぞこの野朗ーーーーっ!!」


3階・4階を駆け抜け、屋上で叫んでみる良介。

何故か青空に変態医師の顔が浮かび、歯を光らせている。

そんな幻覚を無視して、とりあえず何か叫んでみる。


「アギトーーーっ、カムバーーーックっ!!」

「リョウスケーーーっ!!、また浮気ですかーーーっ!?」


次の瞬間、窓から飛び出してきたミヤに顎を蹴り上げられた。

適当に叫ぶものじゃないと痛感する良介だったとさ。












――――――――――――――――――――




「はっ!?」

「……? どうしたの、アギト」

「今、なんかアイツに呼ばれたような……も、もしかして、やっとアタシのロードになる気になったのかな、へへへ……」







―――――――――――――――――――――










「はうっ!?」

「? どうしたのミヤ?」

「い、今、ただならぬ気配が…っ、お邪魔虫が、お邪魔虫の気配がするですっ!」

「はぁ?」


話もとりあえず終了し、仕事の説明なども終え、現在ナンバーズが住む部屋の部屋割りを確認中。

社宅の一室は良介とアリサ、それにミヤが住むので、残りの5部屋に分かれて住むことになっている。

丁度8人なので、二人ずつで分かれ、チンク・ノーヴェ組、オットー・ディード組、セイン・セッテ組、
そしてウェンディ・ディエチ組となっている。

2階からの階段に一番近い部屋は全員が使用できるリビング兼食堂代わりに使用するので、その隣が良介達の部屋。

その隣の部屋を巡り、セインとウェンディが対立しているのだ。

特に興味が無いチンク達とオットー達は、早々に4階の部屋に決め、現在掃除と荷物の運び入れの最中。

アリサは二人部屋で悪いと謝っていたが、犯罪者だった自分たちには十分過ぎると逆に感謝された。

確かに、社宅代わりだけあって、全部屋バストイレ完備、簡易キッチン在りで、部屋を二つに仕切る事も可能。

広さも十分あり、これで文句言ったら罰があたるとチンクは笑った。


「ジャンケンポイっ」

「あいこでしょっす!」


既に56回目のあいこ。

伊達に強化された肉体ではないので、相手の手の動きから手を振り出す瞬間に変更するものの、相手もそれは同じ。

結果、いつもあいことなってしまうのだった。

つき合わされているセッテとディエチは既に飽きている。


「どうして隣の部屋に拘るんだろ」

「別に何か得が有るとは思えませんが…」

「何言ってるのさ!」

「隣の部屋イコール朝のおはようから夜のおやすみ、さらには夜這いまでし放題なんすよっ!?」

「「! なるほどっ」」

「自重しろ、お馬鹿達が!」


結果、チンク姉さんの仲裁により引き分け。

事態を重く見たアリサの一言で、隣の部屋はチンクとノーヴェが入る事と成った。


「これが漁夫の利か……へへ」

「? どうかしたかノーヴェ?」

「べ、別になんでもないっ、それより早く運ぼうぜチンク姉! ったく、あいつらの馬鹿で運び直しだ…」


ブツブツ文句を言いつつも4階から荷物を戻すノーヴェ。

そのスピードは、4階へ運んでいた時の2倍はあったとディエチは語る。


「とりあえず、現状必要な物を買いに行きましょう。女の子が多いんだから、日用品は必須だし」

「それは良いけど、街中まで出るのか? 歩いて行くには時間がかかるぞ?」


微妙に交通の便が悪いこの場所。

レールウェイに乗るにも駅が遠いし、バス系統も少々遠回りをする事になる。

そんな良介の指摘に、アリサは意味有り気にふっふっふっと笑うだけ。


「ふふふ、このアリサ様が行き当たりばったりな行動をすると思って、ご主人様?」

「それはあれか、俺がそんな行動ばかりだと遠回りに言ってるのか貴様?」


良介の指摘は、無言と視線で肯定されてしまった。

怒りに拳をプルプルさせる良介を放置して、全員を一度1階のガーレジ前へと移動させるアリサ。

ガーレジはシャッターが閉まっており、鍵がかかっていて開かなかったのは良介が確認済みだ。


「事務所の立ち上げと人員増員で“足”が必要になると思って、ちゃーんと準備してあるわよ」

「オープンですっ!」


ミヤが、自分と同じ位あるリモコンのスイッチを押すと、シャッターが自動で開き始めた。

どうやら電動式だったらしく、徐々にガレージの中が露になっていく。

そして、ガレージの中の明かりが自動で点灯すると現れる、メタルブラックの物体達。


「お……おおおお!?」


思わず叫ぶ良介。

ナンバーズ達も現れた物体に大なり小なり目を開かせる。

そこに在ったのは、メタルブラックのボディに金色の装飾の、鋭角なフォルムのサイドカー付バイクと、一台の大型ジープ。

バイクの方は某ヒーローモノに登場しそうなフォルム、ジープの方は大型のジープとボックスタイプを掛け合わせたような車体。

バイクは大型タイプだが、ジープに関しては大きさがマイクロバスの一回り小さな程度。

余裕で10人は乗れる車だった。


「どう? 車の方はミッドの自動車メーカーに依頼して作ってもらったワンオフ使用、
表面に対弾加工と魔力ラミネートを施してあるから耐久性は十分。
バイクは管理局の技術部に製作してもらったオーダーメイド。簡易的なデバイス機能もある特別仕様よ?」

「す……すっげぇぞアリサ! こりゃあいい、こういうのは憧れてたぜ〜〜っ!」

どんなに歳をとっても男の子、良介はバイクに駆け寄り車体を撫で回す。

ナンバーズ達も、バイクや車を見て感心している。


「しっかし、今回は随分太っ腹だなアリサ、前にバイク強請ったら速攻却下しやがったのに」

「まぁね、今回は特別よ。良介も頑張ったんだし……これ位はね?」

「そうだ、リョウスケ…怪我、大丈夫なの?」

「元気そうで忘れてたけど、入院したんだって? 心配した」


数ヶ月前の事件の折、良介はボロボロになるまで戦った為、その後病院へ強制入院となっていた。

ここが海鳴じゃなくて良かったと安堵していた良介だったが、妹が要らんことしてフィリスに連絡入れたものだからさぁ大変。

退院後、フィリス先生によるお説教&検査入院が決定したのだった。

この後、退院まで妹からの着信が拒否になっていた事は、言うまでも無い。


「へっ、どうってことねぇよ。なんせ怪我しているのがデフォだからな、俺は」

「胸張って言う事じゃねぇだろ馬鹿がっ…………心配、かけやがって……」


小さく、聞こえないように呟くノーヴェだったが、チンクには確り聞こえていた。

その言葉に小さく微笑んで、確実に成長している妹の姿に喜びを覚える。

そして、そんな妹たちの姿を見せてくれた男には、苦笑と共に心の中で感謝を送る。


「まぁ、あの事件の時の活躍で管理局からも仕事をする際の許可が取り易くなったし、
これからガンガン稼いでもらいますからね、ご主人様?」

「へへっ、任せておけ。その内札束のプールで泳がせてやるぜ」

「表現が古いな、リョウスケ」

「アタシはそれよりも、南の国で二人っきりのバカンスがいいっす。
そんで、夕日を二人で見ながら『綺麗っすねリョウスケさん、夕日が沈んで行くっすよ…』
『馬鹿だな、お前の方がもっと綺麗さ。沈む前に、捕まえないとな…』
『あぁ、ダメっす、カニさんが、赤いカニさんが見てるっすよぉ…』ってな事に…っ」

「ちょっとぉっ、勝手な妄想しないでよねっ!?」

「って言うか、赤いカニってアタシかコラっ!?」

「つーか俺は死んでもそんな阿呆な台詞いわねぇ!?」

「はいはい、漫才は良いから出発するわよ〜。車の方は運転お願いね、セイン」

「ほいほ〜い、セインさんにお任せ〜!」


アリサから鍵を渡されて胸を張るセイン。


「って、お前運転免許持ってんのか?」


因みに良介はバイクだけ。

何とか教習所を卒業して免許を取っている。


「一応、どんな乗り物も操作できるように知識は入ってるし、免許も一発だったよ?」


流石は戦闘機人と感心すべきか、ズルイなぁと思うべきか。

某執務官さんは車の免許にも落ちてるのを考えると、ちょっとズルかもしれない。


「んじゃぁ俺はバイクだな。へへ、ティアナがバイク乗り回してるのを見て、羨ましがるのももう終わりだぜ」

「それは良いけど、ちゃんとヘルメット被ってよね。またギンガさんに追われるわよ」

「うぐ、それは勘弁だ…」


アリサから手渡されたヘルメット(フルフェイスでバイザーと口元が開くタイプ)を被り、バイクに跨る。


「う〜ん、バイクに跨るリョウスケさんも素敵っすね〜」

「はははは、そうだろうそうだろう。――――で、なにさり気なく後ろに座ってるんだお前は」

「ったく、馬鹿やって事故だけは起こすなよ」

「そう言うお前は何でサイドカーに乗ってる!?」


タンデムする気満々なウェンディと、サイドカーから動こうとしないノーヴェ。

それを見てジト目な残りの姉妹。


「抜け駆けだね」

「侮れませんね、ノーヴェ」

「次は負けません…っ」

「いや、ツインブレイズは止そうよ、ディード。ボクも手伝うから」

「はぁ……すみません、アリサ殿…」

「良いのよ、あれはあれで楽しそうだし。さ、そろそろ出発しましょう」

「うぅぅぅ、運転手引き受けるんじゃなかったぁ……」


セインが良い思いをしている二人を恨めしげに見ているが、誰もがスルー。

唯一ミヤだけが、苦笑しつつ慰めていたのだった。





















デパート狂乱編へ続く……かな?













あとがき
長くなり始めたので、ここで一度区切り。
中途半端ですみません、妄想が溢れ出て止まらず、中々綺麗に区切れないのです(汗)
本編でのナンバーズのあまりの扱いに涙し、こうなったらご都合主義でお馬鹿で色々な意味で暖かい話を書いてやると決意して5分後。
こんなの書き始める私は色々ダメかもしれない(涙)
一応、リョウさんの外伝Vのifに連なる形のお話ではありますが、内容はほぼ妄想です(汗)
良介は誰とも付き合っておらず、探偵紛いなことをして生計を立て、それと同時にアリサが着実に勢力を拡大(笑)
良介の懐は寂しいままですが、アリサが将来の為に貯めたお金は相当な額になっている設定です。
ナンバーズに関しては対談を参考に、かなり味付けしてありますので、原作ナンバーズファンの方には謝るしかないです(汗)
1から4の人に関しては、どうするか考え中。
ナンバーズ達への処分とかも、ご都合主義ですので本編がこうなる訳じゃない…と思います(苦笑)
なお、レリック事件の折に良介とナンバーズとの間に何があり、良介がどんな恥ずかしい台詞を叫んだのかは各自で補完してください(マテ)
残念ながら「〇〇〇、お前が好きだ、お前が欲しいぃぃーーーーっ!」とは叫んでいませんが。
台詞的に、セインが一番語呂が逢うんですよね、レとセの一文字違いだし(謎)
と言うか、叫んだらそれこそなのはさん達が黙っちゃいねぇと滝汗。
妄想が続く限り書き続けようと思います、皆さん、私に妄想を分けてくれっ!!(マテ)




おまけ(と見せかけた蛇足?)
簡易呼称表
チンク→リョウスケ・アリサ殿・ミヤ殿
セイン→リョウスケ・アリサお嬢・ミヤちゃん
セッテ→リョウスケさん・アリサさん・ミヤさん
オットー→リョウスケさん・アリサさん・ミヤさん
ノーヴェ→リョウスケ・アリサ嬢・ミヤ
ディエチ→リョースケ・アリサ・ミヤ
ウェンディ→リョウスケさんorリョースケさん・アリサさん・ミヤさん
ディード→リョウスケさん・アリサさん・ミヤさん

アリサ→基本呼び捨て
ミヤ→基本さん付け




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