「お母さん! 今日も絵本読んで!」
「あらあら、それじゃ、何を読んでほしい?」
「これー!」
「またこれ? あなた、これ全部覚えてるでしょ?」
「うん! でもこれが良いー!」
「はいはい、仕方がない子ね。
……それじゃ、読むわよ」
昔ある国にとても綺麗なお姫様がいました。
お姫様はとても綺麗で色んな国の王子様に結婚を迫られていました。
ですが、お姫様はどの国の王子様と結婚しませんでした。
いつも決まってお姫様は
「私が結婚するのは勇者様だけです」
と言っていたのです。
ですがある日。
お姫様の美しさを知った魔王がお姫様をさらってしまったのです。
お姫様をさらわれてしまった王様は、お姫様を助けるために、色んな国に助けをもとめました。
ですが、どの国もお姫様を助けようとはしなかったのです。
悲しみにくれる王様。
そんなとき、一人の青年が現れたのです。
なんと彼は他の世界から来た勇者だと言うのです。
王様は勇者に頼みました。
『魔王を退治し、姫を救ってくだされ』
勇者は喜んでと言い、お姫様を救いに旅立ちました。
「ねぇねぇ、お母さん」
「なぁに?」
「ボクも勇者様みたいになれるかな?」
「そうねー、お父さんと練習を頑張れば……」
「違うよー! 勇者様みたいに他の世界からお姫様を助けたいの!」
「……違うの世界に行きたいの?」
「うん! ボクもこの勇者様みたいに他の世界に言ってお姫様を助けるんだ!
それで魔王を倒してお姫様みたいな人と結婚したい!」
「ふふっ、じゃあ、お姫様を助けれるように、強くならないとね」
「うん! 明日もお父さんと一緒にシュギョーする!
シュギョーして、強くなって、他の世界に行って、勇者様みたいになる!」
そう、それが俺の夢だった……。
第1話「現実から海鳴へ」
いつものように鍛錬後、風呂に入り、小説を書いていた俺。
そんな時、突然の光に体の自由を奪われ、吸い込まれてしまった。
非科学的と言いたいが、本当の事。
気絶から目を覚ますと――。
「どこだよここ……」
――知らないところに居ました。
どうやら見た感じ公園のようである。
だけど、俺はこんな公園は知らないし、来たこともない。
「とりあえず、ここがどこか調べるか……」
ただ立っているだけなのもなんだしな。
今の俺には情報が少なすぎる。
分かるのは、光に吸い込まれてここにいることだけ。
それなら情報を集めるしかないだろう。
なぜか空が真っ暗と月と星ではなく、青い空と白い雲、輝く太陽に変わっているのが救い。
なんで夜中から朝に変わってるのかを御天道様に問い詰めたいのだが、応えてくれるはずがない。
念のためにポケットを調べ携帯を捜すが、さっきまで家にいたんだから、当然、充電器にさしたままと言うことを思い出す。
携帯があれば時間も分かって、誰かに連絡が取れたんだがなぁ………。
「……お」
よくみると、公園の入り口が見える。
一応、公園の名前でも確認しておくかな。
そう思いつつ、俺は公園の入り口に書いてある名前を確認する。
「なっ!?」
名前を見た瞬間、俺は絶望に打ちひしがれ、その場にへたりこんでしまう。
そこに刻まれていた公園の名前は――
「な、な、なんで……なんで……」
――海鳴臨海公園。
きっと今の俺は上手く言葉が発せてないだろう。
今まで起こったことが無いくらい、俺の頭はパニックを起こしている。
ただ一つ、分かることは……。
……俺はゲームの世界に迷い込んだと言うことだけだった。
「ふむふむ」
俺はベンチに座って、出来立てのたこ焼きを食べる。
おいひいな……。
…………。
………。
……。
…。
って、現実逃避してる場合じゃないや。
はふはふと食べつつ、情報収集の結果をもう一度、確認。
1つ目。
人と会話が出来る。
……いや、馬鹿にしているわけでもボケたわけでもない。
まともな考えだ。
ゲームの世界なんだから、会話しても相手は機械的に――とか、何回話しかけても同じことしか――とか思ったわけだ。
もちろんそんなことはなく、現実と同じで、普通に会話ができたわけだが……。
2つ目。
今日は3月25日の土曜日。
時間は昼の12時半過ぎ。
まずここで一つの疑問。
なんで3月25日なのかがわからない。
とらいあんぐるハート3の世界に来たのなら、なぜゲーム時間の4月7日の金曜日じゃないんだ?
それならまだゲームに巻き込まれたと納得が行く。
だが、なぜか2週間も前に俺はいる。
これは俺が来て何かが変わったからなんだろうか?
それとも偶然なんだろうか。
今考えても、それはわからない。
3つ目。
俺が元の世界で住んでる場所の地名。
誰に聞いてもそんな地名は聞いたことがないといわれた。
……まぁ、これは予想が出来たことだけど。
現実には海鳴市なんてないから、こっちも同じく無いと思ってた。
「分かっていたけど、ショックだよなぁ……」
もしかしたら……と言う気持ちはまだ捨ててなかったんだが。
だけど、もう割り切るしかないだろう。
今は海鳴に俺は居て、俺の居た世界は存在しない。
そう思えるだけでも一歩前進したといえるだろう。
そして4つ目。
これは2つ目と何か関係しているのだろうか?
最近、この周辺に海鳴愚連隊とか言う中二病……じゃなかった。
怪しい名前の奴らが出没しているらしい。
私立海鳴中央や私立風芽丘学園の子がカツアゲやらしつこくナンパされるなど被害にあってたりとか
他にも目があっただけで因縁をつけられるとかされるらしい。
……いつの時代の不良だよ。
今の時代、そんな奴……ちょっとしかいないだろ。
最後5つ目。
腹が減った……。
言った瞬間に空腹音。
たこ焼きぐらいで俺の腹は満たされない。
てか余計に腹が減った。
でも眠いんだよなー。
こっち来る前は夜中だったから、俺の今の体内時計は夜のまま。
眠たいけど、腹が減った。
いつもなら我慢して寝るんだが、今は寝れない――。
「げ……」
――って、今気付いた。
寝る場所ねーじゃん!?
しかもお金ないじゃんか!?
サイフも携帯もないし。
たこ焼きはたまたまポケットに金があったから買えたけど。
「……もしかして超ピンチ?」
たこ焼き買う前に気づけよ!
とか思ったけど、あの時は現実逃避が軽く入ってたから仕方ない。
うん、仕方ない。
……本当にどうするかなー。
あとがき。
かなり遅れましたが、どうにか第1話の修正完了(汗)
そして1話なのに関わらず主人公の名前が出てこない。
さらに原作キャラと誰とも会っていない。
本当に、とらいあんぐるハート3なのか? と言われそうですね(苦笑)
執筆速度はかなり遅いですが、これからもどうかよろしくお願いします。