「ふぅ〜、さっぱりした」
風呂からあがり、タオルで髪をふきながら、パソコン起動させる。
電源がつき、ようこそと文字が出るのを確認し、飲み物を取りに台所に行く。
牛乳をコップに入れ、戻ってくる頃にはパソコンも動かせるようになっていた。
イスに座る前に、寝る時と風呂の時以外はつけている重りを両手両足につける。
今日の鍛錬は一段とつらく、重りは外したかったが、これも鍛錬なので外すわけにはいかない。
「さて、昨日の続きをするかな」
牛乳を飲みながら、フォルダを開き、中にあるメモ帳をダブルクリックする。
すると出てきたのは、俺の書きかけの小説。
そして次にゲームを起動させる。
起動させたゲームの名前は『とらいあんぐるハート3』
ゲーム自体は、かなり前に発売されていたのだが、少し前に友人経由で手に入れた。
その手に入れた理由だが……。
――主人公が武術習ってて、家に道場持ってるなんて、お前とお前の家にそっくりじゃね?
と言う、いきいきとした友人の言葉と共に渡されてしまった。
正直、この手のゲームは興味がなかったのだが、やり始めてからと言うもの、ものの見事にはまってしまった。
同じ年齢で同じ武術家と言う同じ境遇。
友人が俺に貸したのを分かる気がする。
そして、今じゃこうして小説を書くくらいに好きになっている。
小説と言っても、趣味程度なのでネット公開できるレベルではない……と思う。
友人と一緒にあーだ、こーだとしている方が良いと言うのもあるが。
その俺が書いている小説はオリジナル主人公が登場する作品だ。
オリジナルキャラと言う本来存在しないキャラを作って、それを主人公にして『とらいあんぐるハート3』の世界を過ごす。
そんな設定を考えていた。
名前などの設定も決め終わり、着々と話も作り始めている。
以前試しに、オリジナルキャラでの短編を作って友人に見せたところ予想外の大好評。
なので、今回は試しに長編を作ろうと思っている。
「……ふぅ……とうとう全部終わったか……」
おまけシナリオが終了し、全ED制覇の文字が出る。
それを見て、攻略し終わった充実感と終わってしまったと言う虚しさが半々。
明日辺り、攻略したことと長編を書き始めたということを友人に話すとしよう。
暴走しないようにしてほしいけどな。
すぐに熱くなって拳を掲げて語る友人を思い出しつつ、苦笑い。
「さて、執筆でもするかな…………ん?」
文字が消え、画面が真っ黒になり、いつもならタイトル画面に戻るのだが、今回は違った。
真っ黒なゲーム画面の中心に一つの文章とボタンタグ。
『コンプリートおめでとうございます! ここをクリックで……『とらいあんぐるハート3』の世界に!」
世界に! ってなんなんだよ。
もっと、とらいあんぐるハート3の世界が分かりますならともかく……。
それにしても、あいつはクリア後になにかあるなんて一言も言ってなかったぞ。
あったら「クリア後のお楽しみモードも絶対にやるべきだ!!」と熱く語るはずなのだが。
それに、おまけシナリオはもうクリアしたはずだし……。
……まぁ、良いか。
これを今日中にクリアして、明日そのことを追及してやろう。
言い忘れの悔しさで落ち込む友人の姿を現実にさせるために、やってやりますか!
ってなわけで、クリックする。
すると――突然、画面が光りだした。
「な、なんだぁ―――!?」
カメラのフラッシュの何倍もの光を間近で受けた俺は反射的にイスから立ち上がり、目を閉じて画面から顔を逸らす。
が、次の瞬間、足場が無くなったのか浮いている間隔になってしまう。
「!? なんだよ、これ!?」
何が起こっているのか確認しようにも眩しすぎて目があけれない。
今まで体験したことがない恐怖から抜け出すため、身体を無理矢理動かすが、意味はない。
ジタバタともがいていると今度は何かに引っ張られるように感じる。
いや、感じるんじゃない……何かに引っ張られてるんだ!?
「うわあぁぁぁぁっっ!!」
そして俺は――何かに吸い込まれてしまい、意識が遠のいていった……。